紙の本
とんでもない作品を読んでしまったというのが、私の読後感
2023/12/04 09:49
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
それにしてもとんでもない作品を読んでしまったものだ、物語はチェコのプラハに住む日本好きなヤナと日本に対する思いが強すぎてシブヤから抜け出せなくなったもう一人のヤナ、そして川下清丸の大正時代の東京という三つの世界が描かれている、はじめ私は川下清丸という作家は当然作者が作り出した架空の小説家だと思って読んでいたのだが、彼の小説、「恋人」の面白さ、菊池寛、横光利一、芥川龍之介といった実在した大作家との生々しい交流からこの作家は私が知らないだけで実在していた人なのかもと思い直したぐらいだった、読んでからしばらくたつがまだ興奮している私がいる、この「恋人」が元はチェコ語で書かれている作品だなんて信じられない
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あかりんがすすめていて読んでみました。
川下清丸が本当にいるかと思いました笑
海外文学は長ったらしいイメージだったけれど面白かったです。
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チェコで日本文化に魅せられ、日本文学を研究する大学生のヤナ。観光で来日し、ここに留まりたいと願ったことから渋谷に囚われてしまったヤナ(の想い)。
謎多き日本人作家、川下清丸の「分裂」という作品に触発されて二つに別れてしまった。彼の生涯を紐解くことで解決の糸口が見つかるかも?
シブヤとプラハの物語が微妙にリンクするところや世にも奇妙な三角関係も面白かった!
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アンナツィマ「シブヤで目覚めて」https://www.kawade.co.jp/sp/isbn/9784309208268/ 読んだ。わたしは本当に話題本と相性が悪いなあ。読書中、翻訳とは何かをすごく考えた。原著からのlost in translarationの逆の gainどころかenormity of transrationもあるよなと。そんなことばかり気になって内容に集中しにくい(おわり
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日本への興味からプラハの大学で日本文学を専攻する大学生のヤナが主人公。渋谷とプラハを舞台に、謎の作家川下清丸を通して繰り広げられる不思議な物語。文体はポップで読みやすい。
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こんな小説読んだことない!謎、恋愛、翻訳、本の中の本…
チェコに留学してたわたしにとって気持ちがわかるというか共感するところが多かった。外国語を翻訳するときのわからないようでわかるような…というもどかしさ、精読するまでの奮闘。翻訳文学という言葉を使うそうだけど、その描写がすごくおもしろかった!
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SNSのTL上で話題、チェコで日本語を学び日本に留学もした著者によるデビュー作、新世代幻想ジャパネスク小説というふれこみで、文庫化を待つとか悠長なことを言ってられなかった。
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日本語にされたことで完成した作品だと思う。チェコ語でどうやって書かれたのかが気になった。こんな本は読んだことがない。著者と訳者のチームプレイに脱帽。
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一口に言えば、夭折により作品数が極めて少ないマイナー・ポエットの未発表原稿をめぐる探索行。いうところのビブリオ・ミステリである。本に関する蘊蓄が熱く語られるのが、この手の作品の常道で、そういう衒学趣味的な部分を愛する読者には喜ばれるにちがいない。もっとも、これを書いたのが、高橋源一郎の『さようなら、ギャングたち』をチェコ語に訳した翻訳者でもあることからも知れるように通常のミステリとはいささか様子がちがう。
というのも、作中に堂々とというか、いけしゃあしゃあとというか、ドッペルゲンガー(分身)を持ち込んでいるからだ。まともなミステリ作家なら、作中に超常現象は持ち込まない。そんなものを読まされた日には、真剣に謎を追う気が失せてしまうからだ。ということは、これはビブリオ・ミステリの形式を借りた、所謂ポスト・モダン小説なのか、とまあそんなことはどうでもいい。読めば分かる。とんでもなく面白いから。
舞台となるのは日本の渋谷、とチェコのプラハ。主人公はプラハの大学で日本文学を専攻するヤナ。彼女は博士論文のテーマに、川下清丸(かわしたきよまる)という作家を選んだ。横光利一らと親交があるので、新感覚派に属すると考えられるが、若くして死んだため、作品の数が極端に少なく、作家についても未知な部分が多い。当然それについて詳しく調べることが論文を書くための下準備となる。ヤナは日本文学に詳しい院生、クリーマの手を借りて、川下の作品と作家その人について追い始める。
二つの世界が同時進行で語られる。一つは、言うまでもなくプラハの大学で、川下という日本人作家とその作品を精査するチェコ人の若い男女の物語。志を同じくする仲間であり、余人をもって代えがたい資質を持つ二人は当然のように惹かれあい、急速に関係を深めていく。しかし、二人とも、言ってみれば日本文学オタクで、本の中に頭を突っ込んで生きている。それ以外の部分についてはほとんど言及されない。二人の恋愛感情は、日本人作家川下の書いたテキストの中で生成変化していく、いうなれば形而上的恋愛である。
二人の代わりに生々しい恋愛を生きるのは、川下が自分をモデルにして創り出した聡(さとし)という若者と、どうやら聡の父の愛人であったらしい、聡の叔母にあたる清子という年上の女性である。大正期の作家川下の書いた「恋人」という作品が、この本の中では本文とフォントを変えて引用されている。部分的引用というより、作中作のように一篇まるごと抛りこまれているようなのだ。いかにも大正・昭和初期を思わせる、いささか古風な文体で書かれた短篇を何度も読まされるうち、読者は奇妙な感覚に陥る。ミステリと思って読んでいたものが、いつの間にか純文学を読まされている、といった思いに駆られるのだ。
もう一つの世界は日本の渋谷、ハチ公前がその舞台。こちらの主人公がドッペルゲンガーのヤナだ。実はヤナは数年前に友だちと日本を訪れたことがある。そのとき、友だちとはぐれた彼女は、待ち合わせのお約束、ハチ公前で街を行き交う人並を眺めながら、このままここにいられたら、という思いに駆られていた。その所為なのかどうか、気がつけば、肉体だけがプラハに帰り、ヤナの<想い>だけがそのまま渋谷に残った。実体のない想念としてのヤナは、まるで幽霊みたいにそれからの年月を今に至るまで渋谷を彷徨い続けていた。
おかしいのは、プラハにいる本物のヤナが頭でっかちで、文学の中で恋愛しているというのに、想念としてのヤナは、憧れの日本にいて、毎日お気に入りのビジュアル系バンドのメンバーで仲代達矢に似た青年を追っかけまわし、停電で地下の練習スタジオに閉じ込められたところを救出したりしている。こっちのヤナは、七年前で成長が止まっているからか、けっこうミーハーで、分身テーマでよくある、見かけは同じだが、中身は別というお約束を守っている。幽霊のヤナの方が、本物のヤナより形而下的であるのが面白い。この一つひねった感じが本作の持ち味。
二つの世界が平行線をたどるばかりでは、話が終わらない。プラハのヤナと、渋谷のヤナを一つにする役目を担うのが、日本に留学中のクリーマだ。プラハに一人残してきたヤナのことを思いながら、渋谷の町を歩いていた彼は、街中でヤナを発見する。誰にも見えないはずのヤナが、なぜクリーマには見えたのか、その辺の説明は特にないが、よしとしておこう。七年前からこの<閾>の中に閉じ込められているヤナは、当然二年前にプラハで出会ったクリーマのことを知らない。このあたりのクリーマとヤナのちぐはぐな会話が愉快。
ヤナの現状を理解したクリーマは、分裂したヤナを一つにするには、もう一度ヤナが日本に来るしかない、という結論に至る。そのためには川下についてもっと研究し、その成果をもとに論文の概要を提出して留学の審査に通るしかない。ずっと渋谷にいたので、川下のことを知らないヤナに、彼は常時携帯していた「恋人」と「揺れる想い出」の二篇を渡し、これを読むように言う。こうして、川下に興味を抱いたヤナは、クリーマと友人の兄であるアキラの手を借り、自殺した川下の未発表原稿を処分した川島の妻に会うことになる。
未亡人が川下の遺した原稿類を処分したのには理由がある。川下清丸の本名は上田聡。父は姪の清子と恋仲になり、清子を妊娠させてしまう。世間への外聞を憚った父は伝手を頼って渡仏する。日本文学をかじったことがあれば、これは誰をモデルにしているかは自明だろう。上田聡は、叔母である清子に恋慕し、周囲の反対に耳を貸さず、関係を持つに至る。その結果二人は川に身を投げ、清子は助けられて命を拾うが、聡は水死する。妻の幸子が、夫の残した原稿を他人の目に触れさせたくないという気持ちも分かろうというもの。
さて、肝心のその原稿は果たして、言葉通り処分されていたのか、それとも秘匿されていて、百年の時を超え、遂に日の目を見ることになるのか、興趣は尽きないが、それは本作を読んでもらうしかない。それより、ヤナとクリーマが探り出してくる川下の書き物の中には、日本文壇の動向、新感覚派をめぐる文士たちの交友関係、さらには文士たちが遭遇した関東大震災についての回想録、などと言った珍品がザクザク出てくる。読んでいるうちに、これが1991年にプラハで生まれた作家の書いたものであることを忘れてしまうほどだ。
この作品の真骨頂は新感覚派の流れを汲む、川下清丸の作���の引用部分にある。いわゆるパスティーシュ。漢字仮名混じりの和文で読んでこそ、その味わいが伝わる。一つ気になるのは、原文ではどうなっているのかだ。これほど日本文学に詳しい作家なら、日本語で創作するのは容易だろうが、それではチェコの人にはまず読めない。よくある、作者によるチェコ語への翻訳という手を使ったか。もしそうなら、川下の作品を日本語で読めるのは、この邦訳しかないことになる。こういう例が過去にあっただろうか、寡聞にして知らない。
日本人には、外国人の目からは、日本や日本人はどう見えるのかを気にするところがある。そういう観点からいうと、この小説は大いに好奇心を満足させてくれるにちがいない。表紙カバーの印象からすると、書店では平台でなければ、外国文学(翻訳小説)の棚に並ぶと想像されるが、ちょっと勿体ない。翻訳小説好きはもちろんだが、ふだんは外国文学を敬遠しているような、日本の純文学が好きな読者にこそ手に取ってもらいたい作品だ。
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初読みの作家さん。チェコ共和国出身の若手作家アンナ・ツィマ氏。
非常に面白く、興味深く読ませてもらいました。
日本文学が好きな読者には結構たまらない感じの本ですね。
著者のプロフィールですが1991年、プラハ生まれ。カレル大学日本語学科を卒業、日本への留学経験もあります。
著者は、日本の小説の翻訳者でもあり、過去には高橋源一郎『さよなら、ギャングたち』、島田荘司『占星術殺人事件』の翻訳を日本語→チェコ語で行っています。
ということで、作者は大の日本通でありますね。
ちなみに本書は当然チェコ語で書かれ、日本語訳されたものです(本人が翻訳者ではありません、ちょっとがっかり?)
さて、本書はカテゴリー的には『純文学』になると思います。
なんとなく、著者が愛する村上春樹っぽいところも感じられますね。
あらすじですが、本書の主人公は2人。小説の舞台はチェコと日本。
といっても、この主人公の2人は同一人物で、一方は、日本文学を研究する大学生のヤナ。そしてもう一方は、10代の時に観光で来日し、日本に留まりたいと願ったことから渋谷に囚われてしまったヤナ(の幽霊?思念体?)。この二人を主人公に、チェコと日本の描写が交互に描かれます。そして二人を繋ぐ鍵となるのが、謎多き日本人作家、川下清丸。
この川下は架空の作者ですが、本書の中では芥川龍之介や川端康成らと親交のあった作者ということで描写されます。
この川下清丸の書いた小説の文章が本書で随所に効果的に使われ、「現代のチェコ」、「現代の日本」、そして「明治、大正時代の日本」という3つの世界での物語が展開されていきます。
本書のカテゴリーは「純文学」と書きましたが、本書にはエンターテインメントの要素もあり、ミステリーの要素もあり、そして恋愛小説的な要素もありと読者をまったく飽きさせません。
僕が特に興味深く感じたのは日本文学を研究する大学生ヤナの周囲ですね。
このヤナは、根っからの日本大好き少女。
しかし、いまはやりのアニメやコミックから入った日本びいきなのではなく、ヤナは子供の頃に村上春樹の『アフターダーク』に感銘を受けて日本文学に興味を持ち、彼女にとってのアイドルと言えば、映画『酔いどれ天使』で主演を演じた青年時代の三船敏郎や仲代達也というあまりにも玄人好み過ぎる感性の持ち主(笑)。そのヤナが大学の日本語学科を受験する時に、周りの受験生たちがアニメ「犬夜叉」のコスプレ姿だったり、ピカチュウの着ぐるみを着て入試を受けているという描写は、可笑しさを通り越して、シュールすぎる絵です。
また、本書の中で描かれる謎の日本人作家川下清丸の小説がたびたび引用されるのですが、、これが本当に芥川龍之介や太宰治が書いた物っぽい小説の文章で、実に見事。もちろん、原書はチェコ語で書いてあるので、本書の文体は、本書の翻訳者阿部賢一氏、須藤輝彦氏らのファインプレーということになるのでしょうか。
最後まで一気に読み進められるリーダビリティの高さ、そして文章のプロットの上手さ。
本書で2018年にデビューした著書ですが、本書���チェコ最大の文学賞であるマグネジア・リテラ新人賞ほか多数の賞を総なめにしています。
僕にとって、本書を読んだ経験は最高に楽しい読書経験の一つに数えても良いくらいですね。
今後もぜひチェックしたい参加さんの登場でした。次作期待。
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日本が好きすぎてシブヤに取り残された想いの残滓ヤナと、チェコに帰国し学生生活を送るヤナ。
それぞれのヤナが、渋谷とプラハで、横光利一に松本清張、村上春樹、犬夜叉とナルト、三船敏郎が渋滞してる物語。
川越もだけど、著者のあとがきの最後の地名、馴染み深い。。
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プラハの大学で日本文学を専攻する三船が大好きなヤナと過去にシブヤに旅行に来たときに残ってしまった<想い>の十七歳のヤナ、この二人のヤナとボーイフレンドたちがプラハと渋谷で「人生に望まれていなかったかのよう」(P208)な作家・川下清丸に関する謎を追い求める物語。<想い>のヤナは自身が囚われてしまった渋谷から脱出できるのか。
日本の純文学の知識が詰め込まれたジュブナイル的小説。
二人のヤナが行動する、プラハと渋谷のパートは臨場感があってとても面白い。プラハパートはもちろん渋谷パートは海外の作家さんがよくここまで渋谷を捉えて描けるなぁと感心した。
大学生のヤナが最初に惚れ込む川下の「分裂」という作品の内容も本作の二人のヤナを暗示する内容になっており、架空作家の川下清丸の設定も驚くほどに非常に練り込まれている。
ただ、日本文学を愛するヤナとそのヤナの翻訳や資料集めの手伝いをする知識豊富なクリーマが、多くの日本人作家がいる中で、なぜ川下にそこまで惹きつけられるのか、という説得力が少し欠ける。というのも、作中作として川下の自叙伝的作品「恋人」を二人で翻訳していくのだが、チェコの作家さんが百年ほど前の架空の日本人作家の作品を創作する、というレベルでは非常に高いものだと思うものの、その作中作の内容がそこまで魅力的なものに思えなかった。
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すばらしかった。
チェコの日本文学を専攻している大学生が主人公。
「川下清丸」、実在の作家かと思ってしまう。
チェコにいる主人公と、シブヤに閉じ込められている主人公の「想い」の描き分けが、読み始めた時にはどこへ向かうのか分からなかったが、後半、だんだんある一点に向けて走り出していって見事だった。
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プラハ・渋谷・純文学の物語の中…とそれぞれの世界に入り込み、
それぞれの展開にドキドキしながら読み耽った。
(その割に時間はかかったが;)
語り口調が堅苦しくなく、翻訳独特の分かりづらさも特になかったので読了。
ラスト…え?と思ったけど。。
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一気に読み終わりました。
著者の日本文学と日本に対する愛をトコトン痛感。
好きな国について、文学について、こんなふうに小説にすることができるんですね!
名前のわからない男性のことを「仲代」と呼ぶセンスにシビレました。
本作に登場する作中作品「分裂」「恋人」「揺れる思い出」だけを、作品ごとに一気に読んでみたいです。ということで、これから再読します!