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投稿者:やは - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本で初めて現代短歌というものを知ったんですが、とても面白かったです。これを機に木下龍也さんの本なども読んでみたいと思います。
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啄木の生まれた渋民に育ち、盛岡を拠点にして活動している著者の第一歌集。短歌を詠み始めた高校時代から、そろそろ啄木の没年を越えようとしている現在までに詠まれた歌から選び抜かれている。若きエッセイストとしても活躍する彼女の煌めきと鋭さを併せ持つ言葉選びの源が、この10年間の短歌群にあることを改めて実感する。街の息づきも事件も自身の恋も愛した者の葬りも等しく定型の歌に収めて詠むことで、時にフラットに掴むこともできれば時にボッと点火するような熱情を感じるのも面白い。短歌が定型を守りながらも、その中でも自由さも発揮できる表現形式であることも確認。詠むのも読むのも短歌はおもしろい。
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読んでいて気持ちのいい短歌だと感じた。
作者が盛岡出身で、歌の舞台が岩手だろうと思われるものが多いのも郷愁というか共感を感じる。
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『水中で口笛』読了。
現代短歌の本を初めて読んだ。私にとって短歌は馴染みがなく、文字数に制限があったり、季語を入れなきゃならないとか、ルールが沢山あってなんか自由がないな…と、勝手に負のイメージを抱いていた。
ごめんなさい、全然違った。流れるように情景が浮かび、とても面白かった。
著者は私と同世代ぐらいで、生活の情景や心の機微が歌となって溢れていた。
哀愁やら熱情やらが静かに燃えたり消えたりして。短歌のイメージを覆された。
もっと自由でいいんだな。凝り固まった思考がほぐれたような気がする。短歌は作るものではなく、歌うものなんだな(今更)
なんかいいなと思った短歌は「鍵盤が壊れたままでも平気と言いあなたは聖者の行進を弾く」だった。
2022.3.2(1回目)
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うーん、面白い。人生に特別なことが起こらなくても、地方で暮らしていても、31文字あれば魔法は作れる。
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"訛ってないじゃんと言われて無理矢理に訛るときこのいらだちは何"(p.114)
"二両目に乗ると三駅目で桑の実と葉が窓のすぐそばに来る"(p.120)
"青森で不良になるのはむずかしい電車の吊り輪もりんごのかたち"(p.169)
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同郷の歌人、石川啄木の享年とおなじ26歳で初の歌集を出したいと願い、その願いを叶えた工藤玲音(くどうれいん)さん。
彼女の学生時代から社会人になった今までの厳選短歌を収録。
学生時代の短歌には校庭の埃っぽさや、昼間の教室のひかりに満ちているのに淀んでいる空気を思い出すような、普遍性ある懐かしさを感じる。おんなじ経験したわけじゃ決してないのにね。
だんだんと項をめくってゆくと、まるで若い女性の十年日記を内緒で読んでいるような、そんな気持ちになる。
恋の歌は初々しいものから生々しさ、烈しさを感じるものまであって、どきどきした。短歌ってエロいです。
工藤さんは上記したように啄木とおなじ岩手県盛岡市出身で、東日本大震災のことも詠っている。
ここからは気に入った短歌と感想です。トンチンカンな感想かもしれません。
夕暮れを先に喩えたひとが負けなのに負けたいひとばかりいる
→どんな言葉も、本物の夕暮れに敵わないのにね。
夜の海 すこしあかるい黒が夜 暗くて濡れている黒が海
→比べてわかる黒色の世界。世界には同じ黒はひとつとしてない。
ガーベラもダリアも花と呼ぶきみがコスモスだけはコスモスと呼ぶ
→どこでその花の名前を覚えたの?たぶん、好きだから気づく、私のあの人。
ふと見遣る運転席のきみの耳の穴底抜けに暗くて狭い
→耳の穴とか鼻の穴とか口の穴とか、すべての穴はブラックホールに通じてる気がする。
ベランダに初夏を一匹飼っています ひかりのリードでひかりの小屋で
→初夏のひかりはとにかく眩しい。ベランダの陽光で夏の訪れを知る。
ATMから大小の貝殻じゃらじゃらと出てきて困りたい
→思わず、ほっこりとした笑いが漏れる。このATMが縄文時代の貝塚に通じていたらいいな。
ゴミ袋の中にぎっしり詰められてイチョウはついに光源となる
→学校の校庭の大掃除でしょうか。ゴミとして捨てられ、焼かれる運命のイチョウの最後の輝き。
死はずっと遠くわたしはマヨネーズが星型に出る国に生まれた
→マヨネーズが星型に出てくる不思議。平和でないと、その発想はないかもしれない。
無言でもいいよ、ずっと 東北に休符のような雪ふりつもる
→なんて優しく、東北を想った短歌なんでしょう。無言でもいいよ、って一回言われたい。
南天が見当たらなくて盲目のまま窓際にいるうさぎ。
→難を転じる、という意味がある南天。うさぎの眼が開かれるのはいつになるのか。でも、日が当たってくれば溶けてしまうのね。
手羽先を拳銃としてわたくしはあなたの不幸を奪う強盗
→居酒屋で好きな人の悩み事を相談されていたのでしょうか。こんなこと言ってくれると、泣いちゃうよね。
渋谷駅で降りるひとびとなんとなく冴えない顔でどこかうれしい
→わたしだけじゃないんだね。心にモヤモヤを抱えているのは。
音楽はかたちなきものわたくしはかたちはあれど何もないひと
→真ん中のひらがなが生きている。ほんと、わたしは自分て何もない人だなあ、と思う。
もっともーっとあるけれど、キリがないのでここまで。
最後に今のベストオブベスト短歌。
またいつか狂うのかもね押し花になっていらない栞の四つ葉
→恋は狂った状態なのですね。過去の苛烈な恋はカラカラに乾き、思い出になっている。ドライさが何とも言えず好きな一首です。
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個人的お気に入りメモ(再読するたび追加する予定)
雲に顔つっこむように泡立てる洗顔料よ春が来る来る(p.201)
憎しみは夜へと熟れて馨しく逃げ切ればよい薔薇を抱えて(p.192)
働けば働くほどにうれしくてレモンジュースにレモン汁足す(p.148)
笹舟の置かれた場所が川になる あふれて抱えきれない自由(p.126)
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工藤玲音さんは岩手県盛岡市出身の小説家のくどうれいんさんでもいらっしゃいます。
お名前はペンネームみたいな響きですが、本名でいらっしゃるとこの歌集で知りました。
ちょうど私の住む地方でも、雪が降ってきたこの季節に読んだので、雪に関する歌が印象的でした。
ことば選びのセンスにとても瑞々しいかんじを受けました。
工藤さんは同郷の石川啄木に対する腕相撲のつもりで編んだ歌集だとあとがきでおっしゃっています。
○ガーベラもダリアも花と呼ぶきみがコスモスだけはコスモスと呼ぶ
○バカの飲み会から逃げてひとりきり羽根がほしくて肩甲骨揉む
○きみ鼻かむ わたしと出会う前のことすべて飛び出てちり紙になる
○雪の上に雪がまた降る 東北といふ一枚のおほきな葉書
○無言でもいいよ、ずっと 東北に休符のような雪ふりつもる
○ふと予言めいた手紙を書きたくて銀のペン買うそれも太いの
○花束のように抱きとめられたいよ 髪留めの上で溶ける淡雪
○父親がわたしにペンネームのような名前をつけた霧雨の朝
○やわらかに四月の雲を膨らますこの口笛はみずいろの糸
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世界の優しさに甘えて他人任せに自分はとろとろ眠ろうとしていく刹那、鋭利なもので刺されるような鋭さがあるたびに目を覚ます、そんな一句ばかり。
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2022,08(下京図書館)
著者をなんとなく40代くらいと思ってたけど読み進めてるうちに感性や表現がもっと若く同世代では?と思って調べたら1つ歳下やった
同世代歌人の詠む短歌かなり、好きかも
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2021夏の文芸書フェア
所蔵状況の確認はこちらから↓
https://libopac.akibi.ac.jp/opac/opac_details/?reqCode=fromlist&lang=0&amode=11&bibid=2001012672
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ハイウェイを北へ 窓から手を出して掴めるだけの春を横取り 『ほそながい』
・
暗さ、死の予感、みたいな雰囲気がどうしても好まれる短歌という土俵で堂々と明るい歌を作ってしまえるような人間性。そしてだからこそ際立つ歌もあると感じれた
・
夜と死が似ている日には目を閉じてふたりで春の知恵の輪になる 『春の知恵の輪』
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2021.05.08
「ふしあわせが好きなくせにと言えぬままチーズケーキを鈍角にする」と
「発作のごとくあなたは海へ行くとしてその原因のおんなでいたい」が特に好きだった
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工藤さんの、10代の頃から歌い続けてきた歌を厳選して収録した歌集。
この歌はこんな時に歌われたんだろうな、と思いを馳せながら読んでも楽しい。
ユーモラスで、かわいらしくて、郷土愛と雪と海に囲まれて、時折どきりとする、でもこうして歌ってくれてありがとうと思える励まされる歌もあったりして。
どの歌も心地よかった。
たくさん備忘録かねて紹介したいなと思う歌はたくさんあるけれど、あんまり紹介しすぎるとこれから楽しむ人の楽しみを奪いそうなのでいっとう好きなのをいくつかだけ。
「雪降れば口を開け待つ 一生をながい動画と思って生きる」
「円グラフのその他のうすい灰色を見つめてしまう 燃えていたんだね」
「すごい角度で刺さったスイカだけ食べて季節からパフェ救ってあげる」
「地上に暮らすわたしのために地上だけ走ってくれる銀河鉄道」
「にんげんは二頁の本ひらかれるため閉じ閉じるためひらかれる」
「銭湯の富士山はじめてみてうれしい 岩手山だと思ってしまう」
「日々はゆくたとえばシャープペンシルの芯出すようにかちりかちりと」