パチンコ （ものと人間の文化史）

投稿元：

レビューを見る

パチンコの歴史について書かれた本。やや、クセのあるまとめ方ではあるが、マニアックなまでに詳しい。パチンコの起源が何で、誰がどのようにして開発し広めていったかを、実名や地名を挙げて説明している。著者は、歴史的なパチンコ台を数多く所有しており、また、当時の新聞、映画、書籍などを詳細に調べ上げるなど、緻密に研究しているので、説得力がある。感銘を受けた。是非、著者の自宅である「パチンコ誕生博物館」にも行ってみたい。

「（昭和30年）タバコの大半がパチンコの景品になったため、タバコ屋からタバコが消え、タバコが貴重品となった。そこに目をつけた暴力団は「買人（ばいにん）」を使い、客からタバコを買い、転売し、それを資金にした。（昭和35年から、名古屋で景品の換金が行われるようになる）」p25
「大阪が、市域人口ともに東京市を上回る日本一の都市となり、「大大阪（だいおおさか）」と呼ばれたのは、大正14年(1925）から昭和7年（1932）までの７年間である。ヨーロッパから持ち込まれたウォールマシンはこの７年間のあいだに大阪でコピーされ、大阪でパチンコとなり、昭和7年、大阪で禁止となる」p78
「パチンコは「一銭パチンコ」から始まっている。一銭パチンコの「一銭」は、遊戯機に一銭を入れるところからきている。では「パチンコ」の語源は何か。ゴム紐で玉を飛ばす武器のパチンコの名称は、パチンコ店のパチンコ以前より使われている。武器のパチンコも、パチンコ店のパチンコも語源は同じで、「パチン」の擬音語に接尾辞の「コ」がついたと考えられる。今でも、ランニングの「かけくらべ」を「かけっこ」というのと同じである。（現存最古の一銭パチンコは、昭和４年製）」p87
「（パチンコは香具師営業を前提とした日本人の発明）ヨーロッパから入ってきたウォールマシン、ドロップマシンがコイン投入の無人マシンであるのに対し、一銭パチンコはコイン投入ではあるが、ウォールマシンの裏側の機能を取り払った有人のマシンである。一銭パチンコは、自動のコインマシンの形式に見せかけた友人のギャンブル機である。香具師営業が前提なので、台の軽量化と簡単な操作性と効率の良さが必要とされた。人間一人に対して一台では効率的ではないので、はじめから何台か並べることが必要であった。現在、パチンコ店でパチンコ台が一列に並んでいる状態を「島（シマ）」と呼ぶが、パチンコは最初から、シマを前提として編み出されたものである。有人操作のシマ構造こそ、パチンコの神髄である。シマから発想して一台一台を製造したのであるから、パチンコは香具師営業が前提の、日本人の発明ということができる。もともとが露店営業なので、台は手荒に使用しても壊れず、シマは風雨に耐えられる構造で、かつ持ち運びが楽であらねばならず、また客を呼び込むためのトークも必要であった」p92
「（パチンコは東京では認可にならず、最初の認可は大阪）昭和7年に日本で初めてパチンコが禁止されたのは、パチンコ誕生の地大阪であった。誕生当時から、第二次世界大戦が終わるまで認可されることのなかった東京では、パチンコといえばパチンコタイプの菓子販売機で、パチンコの元が菓子販売機という説はここから生まれた」p104
「昭和7年（1932)に大阪で禁止となった自動球遊機（一銭パチンコ）を全国に広めたのは、名古屋出身、上野鈴吉率いる鈴富商会である」p113
「大阪でパチンコが禁止となり、パチンコ台から現金を出せなくなったため、メタル（メダルのこと）を出し、メタルと「現金の交換」を行っていたが、それも禁止され、タバコ等の賞品（景品）となった」p120
「鈴吉は、海外の日本の植民地ならばメタルに替えることなく一銭パチンコを堂々と営業でき、絶対に当たると踏み、中国大陸に進出したのであった。遊郭地に射的やパチンコは付き物で、鈴富商会はまちがいなく海外遠征していたのである」p132
「正村商会の正村竹一、かもめ商会の大野安信、ツバメ商会の竹内竹次郎は、戦後名古屋のパチンコを大産業に導いた中興の祖、「名古屋パチンコ御三家」と呼ばれている」p133
「メタル式パチンコは昭和11年（1936）頃、ほとんどの県で禁止されている。これを受けてか、玉を入れ、入賞すると玉の出るスマートボールが昭和11年前後に登場している。入賞すると玉の出る今日のパチンコは、台から玉の出るスマートボールのシステムを参考にして、昭和12年に名古屋で誕生している」p151
「（戦後パチンコ産業を支えていたのは朝鮮人）正村竹一のブレーンが有能な在日コリアンであったことがわかる」p236
「一般にパチンコは戦後名古屋に始まり、民族産業となったのは、昭和30年に連発式禁止が施行され、日本人経営者が撤退し、就職差別等により、ほかにやるべき仕事がなかった在日コリアンたちがこの業界に残ったためといわれている。だが、戦後まもなくから、在日コリアンの実力者たちがこの業界に揃い、リーダーシップを取っていたのであった」p238
「（連発式パチンコの復活（昭和44年頃））自他ともに認める戦中から右翼でならした武内国栄は、連発式復活の認可をとるため、パチプロをともなって警察当局に出向き、プロならば軽く１分間100発以上打つことができることを実践して見せたという。彼は、プロとアマの差が極端では、パチンコが真の大衆娯楽とは言えないと強調したのである」p283
「重要なのは、パチンコが警察管理のもとで行われているということである。パチンコは開業から、玉の大きさ、貸し玉の値段、出玉の数、景品の内容に至るまで隅から隅まですべて規制されている。警察の許可がなければ何一つできないのがパチンコ店とパチンコ機である。（平成元年(1989）パチンコ問題集中審議）審議では警察庁の森広保安部長が、各都道府県の遊技協同組合に警察のOBが計69人天下りしていることを明らかにし、社会党は、プリペイドカード導入は警察庁主導だとして、「警察の利権ありき」と強調した。警察は業界の監督官庁として店の営業許可、玉の値上げ、景品最高額の引き上げ、機械の基準緩和などの許認可権を握っている。こうしたことが警察OBの業界天下りにつながっていることは否定できないようだ」p310