紙の本
効果的な視点転換と不穏な作中作。
2021/11/20 00:06
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投稿者:ゲイリーゲイリー - この投稿者のレビュー一覧を見る
英語教師のクレア・キャシディは、「見知らぬ人」という怪奇小説の作者であるR・M・ホランドの研究を行っている。
ある日同僚のエラが殺害され、現場には「見知らぬ人」から引用されたと思わしきメモが。
犯人は「見知らぬ人」と一体何の関係があるのか。
そこから物語は語り手が変わり、今まで見ていた事件はあくまでクレアの視点に過ぎないことを思い知らされる。
本作は3人の語り手により物語が進んでいく。
語り手を複数人登場させることによって、主観と客観の相違や私たちの持つ先入観が徐々に明らかになっていくも、容疑者は一向に絞られない。
これこそが本作の見どころ。
主観と客観を巧みに使い分けることにより、語り手当事者のみが知る事実と客観視した時に生じる疑惑とが見事に混在し、真相がどんどん遠ざかっていくのだ。
本作の帯には「この犯人は見抜けない」と書かれており、犯人当て小説として手に取る方も多いだろう。
もちろんそういった楽しみ方もできる作品ではあるのだが、中には途中で犯人が分かってしまう方もいるかもしれない。(私も3分の1ほど読んでいて犯人とその動機がなんとなく分かってしまった・・)
しかしそれでも本作を充分に楽しめたのは、ミステリーとしてフェアな姿勢と作品に付きまとう不穏さのおかげだ。
犯人が明らかになると冒頭からしっかりと伏線が張り巡らされていたことに気付く。
この一文はこのことを示していたのかと腑に落ちる瞬間はミステリーの醍醐味と言える。
そして何より作中作の「見知らぬ人」が持つゴシックホラーとしての不気味さ、不穏さが現実にも侵食していくかのような展開は見事。
フィクションとリアル、ホラーとミステリー、そして主観と客観の境界線が曖昧になっていき、一体何を信じればよいのか分からなくなっていく。
奇妙さと不穏さを内包しつつもミステリーとしてはどこまでもフェアな本作はMWAを受賞するなど非常に高い評価を受けており、続編が執筆されている。
この唯一無二な読後感を再び味わえる日が早くも待ち遠しい。
紙の本
ミステリーにならないミステリー
2021/10/30 12:05
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投稿者:のりちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
正直言ってがっかり。「見知らぬ人」という小説がこの作品の殺人にどうかかわって行ったのかというのは最大の肝だったのに、その在り方は不十分であった。
どちらかというとイギリスの高校教師のふしだらな生活ぶのの方が目立つ小説。という印象。
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新しいタイプのミステリーかと思ったけれど、その背景は実に古典的で一種懐かしい学校モノとも感じられる。美しい女性教師クレア、その娘ジョージアは青春真っ只中。事件を追うハービンダーもインド人の魅力的な優秀な刑事。三人のそれぞれの視点から殺人事件に巻き込まれ考察を重ね、深まる謎にまた組み込まれてゆく。
一字一句見逃せないほどのめり込んでしまった。挿入される怪奇小説が見立て殺人の恐怖を煽り、また、日記帳に書き込まれてゆくストレンジャーの文字が謎を深める。
この作家さんの他の作品も読んでみたい!
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帯にこの犯人は予想出来ない、みたいに書いてあって、そうなのかじゃあ予想外の登場人物なんだろうな、最初の方に出てきた創作クラスの人かしら?とか思ったんですが見事に違ってた。発想はちょっと良かったかもしれないけど。
殺されたのはエラさんだというのに、なんでクレアさんの話ばかりなのかな~と思ったらそういう事だった。迂闊に日記も書けないな(笑) ハーナビー(だったかな)さんじゃないけど、人に見せる訳でもない日記を書き続けるのは何のためなんだろう?興味深い。
娘が親を安心させるためにステレオタイプのティーンエージャーがしそうな行動を取るってのも面白い。子供だからと言って何も考えてない訳でもないんだよなぁ、確かに。作中では刑事のバーナビーさんが気風が良くて好きでした。母君の作るインド料理も美味しそう。思わせぶりの白魔女とか言うアヤシイ教師のアヤシイクラス、いかにもって感じで怪しいなぁって思ったんだけどそれほどでもなかった。
それにしても視点を変えると、それぞれが持っている情報が違うので視点の違いが面白いというか、同じ出来事でも理解できる範囲が変わるというのは面白いな、と思いました。
続きもあるみたいなので、発売されたら読んでみたいな。
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作中作の見立て殺人ミステリー。パートごとに視点が変わり、間にうち一人の日記と怪奇小説「見知らぬ人」が挟まれる。情報量が多い割には読みやすいのは流石と言える。
全体的に靄がかった感じが怪しくて良。続編があるみたいなので、翻訳希望!
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CL 2021.10.3-2021.10.6
3人の視点から交互に語られるので、全体像がつかみやすい。そのわりに犯人は意外だけど、面白味がないというか。犯人探し、謎解きの部分より3人のそれぞれの生活と思いが興味深く読めた。
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レビューはこちら
http://blog.livedoor.jp/bunkoya/archives/52600112.html
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刑事と教師、そして教師の娘、という三人の一人称で入れ替わり立ち代わりつづられる物語は、実際の時系列を辿って事件を追うだけでなく、架空の作中作や日記も混ぜ込まれて描かれています。そんななかなかに複雑な構成で、実在の戯曲などからの引用も多いので、かなり読み応えがあります。そもそもイギリスが舞台なので、学校のシステムだとかも耳慣れない単語も多く、なんだろうと引っ掛かるところはありました(説明は随所あるのですが)。
つまり、さらっと読みこなすというよりじっくり腰を据えて読むタイプの作品ですが、事件そのものはシンプルですので、入れ替わる視点などにさほど混乱することはなく、見えてきそうで見えてこない真相を追っていくのはとても楽しめました。
真犯人はなるほど意外な線…、かつ奇想天外すぎてもいない、と納得できるものの、動機がそれ一本というのは少し弱いようには感じましたが、好みもあるでしょうか……。
刑事のキャラクタになかなか個性があって(ところどころ挟み込まれる家や同僚などへの他愛ない愚痴が楽しい)、また彼女の活躍が読みたいと思えたので、それが(無事翻訳がされれば)叶いそうなのは嬉しいです。
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視点が、複数あって、それぞれの思いや、受け取り方等、相互理解ができるし、わかりやすくなっている。謎解きとしては、最後迄、複雑だけど、結果は、呆気ない。
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前半が間延びしていたので評価3だけど、後半はスラスラ読めた。前半2、後半4の評価。
怪しい人が多すぎて、最後ええっ⁈ってなるけど、考えてみたらそうだなぁと腑に落ちる感じ。架空の小説家と架空の小説が出てくるんだけど、適度におどろおどろしさが出て、まああっても良いかなというところ。最初の方は意味不明だったけど。イギリスのミステリーって感じの暗い感じは好き。
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イングランド、ウェスト・サセックスの中等学校タルガース校で英語教員として働くクレア。
中間休みの期間に自身の研究対象、R・M・ホランドの『見知らぬ人』を題材に大人向けの創作クラスを開催している折、同じ英語科の同僚であり親友のエラの死の悲報が届く。
死体の傍らには『見知らぬ人』のキラーワード”地獄はからだ”のメモが。
R・M・ホランドは架空の作家。
『見知らぬ人』はいわゆる作中作。
その不気味な作中作を効果的に章間に挟みつつ、クレア、娘のジョージー、事件の捜査担当でタルガース校出身の警察官ハービンダーの3人の視点で語られていく物語。
事件自体は複雑性や怪奇性は少なく、どちらかというと単純なものだが、キラーワードの使い方、3人の視点の絶妙な時間軸のオーバーラップ、時に挟まれるクレアの日記など、進行がとにかく巧みで引きつけられる。
作品としての完成度が高く、小説として大いに楽しめる一冊。
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設定、構成、キャラクターもよく出来ていて、なかなか面白かった。犯人と犯人の動機はちょっと弱かった気はするが。
ハービンダー・カーに興味津々。続編にもハービンダーは出てくるらしいので、ちょっと読んでみたい。
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イギリスの学校の英語教師が殺された。同僚のクレアは、かつて学校がその住まいであったホラー小説家の研究をしながらその学校で教員をしている。やがて、第2の殺人が起こる。どちらもホラー小説家の小説と同じ方法で。
クレアの視点と捜査に当たっている女性警官ハービンダー、クレアの娘のジョージーの視点からストーリーが進む。中盤以降、話はどんどん進む。最後に真犯人が知らされ、クレアとジョージーの命が心配になったところで一挙に結末に向かっていく。
ホラー小説家の作品の題名が「見知らぬ人」で、作中作として出てくる。こういう書き方が最近の流行りなのか?
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煽り文句が間違ってると思う。
英国女流でゴシックときたらこういう風にしかなり得へん気もする(勝手なイメージ)。
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ホラー短編小説家の旧邸宅の学校で起こる殺人事件。
主人公?、刑事、主人公の娘の3人の視点が切り替わりながら物語が進んでいくのは面白かった。
もう少しホラー小説と絡んでいくのかと思ったが、少し残念。動機もちょっと納得いかない。
あとがきを読むとこの作者には別にメイン?のシリーズ物があるようで、未訳みたいだが、そちらも読んでみたい。