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ロシア革命とソ連型社会=政治体制の成型 ソビエト社会主義共和国連邦史研究1917−1937
著者 藤田 勇 (著)
1917年十月革命、同年10月25日に始まる第2回全ロシア労働者・兵士・農民ソビエト大会とそこでのソビエト政府の成立から、1930年代後半における「ソ連型社会=政治体制」...
ロシア革命とソ連型社会=政治体制の成型 ソビエト社会主義共和国連邦史研究1917−1937
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商品説明
1917年十月革命、同年10月25日に始まる第2回全ロシア労働者・兵士・農民ソビエト大会とそこでのソビエト政府の成立から、1930年代後半における「ソ連型社会=政治体制」の成型にいたる歴史過程を検討する。【「TRC MARC」の商品解説】
ソ連研究の第一人者である著者の生涯をかけた研究。ロシア革命からソ連の社会=政治体制が成型された1937年までを丹念に検証。【商品解説】
目次
- 序
- 第1章 1905年ロシア革命期における政治的自由・民主主義と社会革命
- 第1節 1905年ロシア革命期における自由主義と社会主義との対抗
- 第2節 ロシア社会民主労働党における社会改革と政治改革
- ――ボリシェヴィキとメンシェヴィキ
- 第2章 1917年十月革命期における政治的自由・民主主義と社会革命
- 第1節 1917年二月革命における臨時政府の諸改革とメンシェヴィキ、エスエル主導の全ロシア・ソビエト中央執行委員会
- 第2節 革命的プロレタリアートが極貧農の支持という条件の下での「新しい高揚」をめざすボリシェヴィキ党の路線
- 第3節 十月革命によるソビエト権力の成立と憲法制定議会問題
- 第4節 ソビエト体制構築の端緒と最初のソビエト憲法
著者紹介
藤田 勇
- 略歴
- 〈藤田勇〉1925年朝鮮生まれ。東京大学法学部卒業。同大学名誉教授。法学博士。著書に「近代の所有観と現代の所有問題」など。
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「第一次的構造」と「第二次的形成物」
2021/11/28 15:31
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投稿者:kapa - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者の藤田勇氏は、まだ東西冷戦下の大学時代に、「ソビエト法」の担当教授としてシラバスで名前を目にしたことがあった。当時の日本で、「ソ連」の法律、また、「社会主義法理論」が役に立つとは思えず、えらくマイナーな分野の研究者がいるものだ、という程度で通り過ぎた。しかし、東西冷戦終結、また、1991年ソ連・東欧の崩壊である。その間東西ドイツ統一もあり、いわば二つの全体主義体制、ナチズムとスターリニズムの残滓も消え去ったのだが、その頃から俄然二つの体制について興味を持つようになり、以後自分の読書の主要なテーマの一つとなっている。
関心があったのは、二つの全体主義体制がヒトラーとスターリンという独裁者の体制ではあるが、それを支える国家・社会の組織や制度、また法律などの制度的基盤があったはずであり、それがどのようなもので、現在と比較してみた場合の特徴、また、現在との連続性があるのか、という点である。
ヒトラー=ナチス体制については、毎年かなりの書籍が出版され、直接ではないにせよ、当時の経済社会体制、そして法制度について記述されているものもあり、ある程度の情報を得ることはできる。しかしスターリン体制については、いわゆる「大テロル」による「人民の敵」の殲滅と「個人崇拝」確立といった、スターリンの伝記として記述するものが多く、制度的な側面は余りふれられない。
本書は、「ソビエト法」の権威の名前と書名「ソ連型社会=政治体制」を見て、この関心に応えてくれると期待して購入したのである。
関心に応えてくれるのは、「第4章ソ連型社会=政治体制の成立」である。いわゆる「スターリン憲法」は、かつて教科書などでは労働者の権利保護に手厚い社会主義憲法として扱われていたが、同時に「大テロル」という憲法の内容と真逆の実態が静かに進行していたのである。著者は、1936年憲法は当時のファシズムの勃興と資本主義国の包囲網の中で、一国社会主義路線を「成功」させたソ連の体制を示すいわば体制の「ファサード」であり、現実の乖離は当然あったとする。また、よく目にする「人民の敵」という言葉は憲法上の概念であり、いわば憲法が予定した権利剥奪・制限のための装置であったのだ。
この憲法と現実の乖離現象を、著者は「第一次的構造」と「第二次的形成物」にわけて解明していく。「第一的構造」は、生産手段の国家的所有、均質的な「ソビエト社会勤労市民」、社会的諸団体の単一組織化、党=国家の癒着体制、支配イデオロギーとしてのマルクスレーニン主義を基本原理とする。この体制を必要条件として、党=国家の癒着構造の下での集権制の論理の「せり上がり」の極限として、スターリンの個人独裁と人格のカリスマ化、集中された権力の超規範化という異常現象が生み出される。そしてその端的な発現として、政治弾圧、粛清・テロル、それを強行するための非常措置の発動と非常機関の組織という「第二次的形成物」が生み出される。そこでは明示的・黙示的権力配分によって「ミニ・スターリン」の叢生をもたらし、あらゆる領域で恣意の横行する現象が噴出し、取り巻きグループが権力の中枢となる。
著者は、この「第一次的構造」はそれとして問題があるわけでなく、「第二次的形成物」が問題であったとする。「スターリン批判」以後は、これを除去していく過程であり、それが新しい社会主義への途を開いていったとする。本書は著者の最後の作品のようだ。これを最後に世に送り出したのは、この「第一次的構造」は、現在の危機の時代にあっても有用であり、一つの解決方法になりうることを示したかったのではないだろうか。