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人を信じて傷つく方が、たぶんいい。
2021/08/17 11:58
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kc1027 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書はある過激な考えから始まる。
「ほとんどの人は本質的にかなり善良だ。」
マキャベリやホッブスなど政治学の泰斗が聞いたら卒倒するかもしれないが
ほとんどの人は本当はそう感じているかもしれないことを本書は主張する。
カギとなるのは二つの理論。プラセボ効果とノセボ効果。
偽の薬を飲ませたら病気が治る現象を語るプラセボ効果は有名だが、
ノセボ効果はその反対で、これを飲んだら病気になると言われて
偽の薬を飲んだら本当に病気になってしまう、というもの。
倫理的に問題があるはずで積極的には試験されてこなかったこのノセボ効果は
実は世の中に蔓延している。
利己的な個人の性悪説で埋め尽くされる政治学と経済学の世界。
悪くないと取り上げられないマスコミのニュース。露悪的な刺激が売りな
小説、映画、ゲーム。万人の万人に対する闘争を前提とした世の中では
性善説がまるで悪でさえあって、人類は悪なのだからそれを前提に
怪物としての人類を管理しないと人間社会は立ち行かない。
誰もがそう信じ込んでいる。
本当に人類は性悪なのか。
人類のルーツを遡り、ネアンデルタール人とホモサピエンスの違いをたどると
ネアンデルタール人の方が強く賢いみたいだが、ホモサピエンスの方が
フレンドリーで人懐っこく、人懐っこい方が生き残りやすいという説があるそうだ。
社会性のある種族は表情でいつも感情を表現していて、他者の模倣が得意。
天才はたまにしか現れないが、模倣が得意なら天才の所業も広がりやすい。
まず協力して生きていけることが人類の善悪の遠い彼岸にあったようだ。
『蠅の王』の現実版では少年たちは救済されるまで助け合っていたし、
戦場では兵士は目の前の敵をほとんど射撃していなかったし、
イースター島では森林伐採の末の同族殺しも起きていなかったし、
スタンフォードの監獄実験も電気ショック実験も操作されたフィクション
だったようで、これら前説をどんどん覆していくところはほとんど革命だ。
人は身近にいる人に共感する。
共感はときに偏狭な連帯を生み出し、それがナチスにつながったりもする。
顔の見えない遠くの人に爆弾も落とせたりもする。
絶え間ない共感はしんどくもある。しかし、人類は人を思いやることができて、
他者を理解しようとする心は、AIが隆盛を極めようとする今、
最も求められる人類の特徴なのかもしれず、思いやりを土台にしないと
人類にとっての新たな時代は描けないのかもしれない。
金八先生も以前言ってたみたいに、信じられぬと嘆くよりも、
人を信じて傷つく方が、たぶんいい。
信じる効用を知らないと、たぶんずっと辛い。
疑うと信じるでは今や信じる方が勇気がいる。
でも、現状を変えるにはいつだって勇気が必要だろう。
性善説を肯定するには、相当な勇気がいる。
近代はおそらく性悪説で創られた。
近代の先は性悪説のままで創れるのだろうか。
本書はこう結ばれる。
「新しい現実主義の時代が訪れた。
今こそ、人間について新しい見方をするべき時だ。」
紙の本
人間の本質は善であるとすれば
2021/09/19 18:17
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投稿者:nekodanshaku - この投稿者のレビュー一覧を見る
人間の本質は善である、というのはおそらく正しいのだろう。ただし、それをどのように理解して、自らの生き方に、行動に結びつけていくかが重要だ。共感は人の目をふさぐ。共感は、人を消耗させ、私たちの寛大さを損なう。それは少数を中止すると、その他大勢は視野に入らなくなるからだ、と。共感を抑え、思いやりの心を育て、他人を理解するよう努めよう、たとえその人に同意できなくても。
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レビューはブログにて
https://ameblo.jp/w92-3/entry-12698854566.html
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<目次>
PART3 全員が悪人になる理由
第10章 共感はいかにして人の目を塞ぐか
第11章 権力はいかにして腐敗するか
第12章 啓蒙主義が取り違えたもの
PART4 新たなるリアリズム
第13章 内なるモチベーションの力
第14章 ホモ・ルーデンス
第15章 民主主義は、こんな風に見える
PART5 もう一つの頬を
第16章 テロリストとお茶を飲む
第17章 憎しみ、不正、偏見を防ぐ最善策
第18章 兵士が塹壕から出るとき
<内容>
『Humankind 希望の歴史 人類が善き未来をつくるための18章』の下巻。下巻では、人間が霊国であるという証拠とされる、様々な事例が比定される。『スタンフォード監獄実験」「ミルグラムの電気ショック実験」「キティ・ジェノヴィース事件(傍観者効果)」など。いずれも学者やマスコミのでっち上げ。イースター島の話は、すごく面白かった。
それでも人は、この話を信じないだろうな。それが「多元的無知」。いわゆる「裸の王様の一般の人々」だ。変に共感してしまう(もしくはいわゆる「空気を読む」状態)、人間の本性。それを逃れるための10の指針がエピローグに載る。自分も努力したいと思う。最近感じていたことだから。そして、これを進めていくと、いわゆる「資本主義」のグローバリズム化を防ぐことができそうだから。
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希望の書。著者は言う、「わたしたちが、大半の人は親切で寛大だと考えるようになれば、全てが変わるはずた。」
現在の社会の様々なシステム、民主主義、資本主義、教育、刑務所、介護・・・全ては「人間は本質的に利己的で、攻撃的で、すぐにパニックを起こす」という「最悪な人間を想定した」システムである。
これに対して「大半の人は親切で寛大」だと考えて政治(税金の使い道を決める)、刑務所、介護施設・・その他のシステムを動かし始めた人たちがいる。そしてそれは、前者よりもはるかに上手く機能している。そういう幾つかの実践を記す。
訳者あとがきが本書を完璧にまとめてくれている。
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著者の人生の指針10か条
1.疑いを抱いた時には、最善を想定しよう
2.ウィン・ウィンのシナリオで考えよう
3.もっとたくさん質問しよう
4.共感を抑え、思いやりの心を育てよう
5.他人を理解するように努めよう。たとえその人に同意できなくても
6.他の人々が自らを愛するように、あなたも自らを愛そう
7.ニュースを避けよう
8.ナチスを叩かない
9.クローゼットから出よう。善行を恥じてはならない
10.現実主義になろう
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金銭的インセンティブはモチベーションを下げる、マネジメントしないマネージャーなど、内なるモチベーションの力の章は興味深かった。たしかに、一文も得にならないこと、疲れるだけのことを、自ら望んで継続的にやってますからね。
ナチスの軍人は洗脳されていたわけではなく、戦闘に駆り立てていたのは友情だった。憎しみ、不正、偏見を防ぐ最善策は、アイデンティティを持ち、交流すること。ロシア軍の前線がウクライナの人々が隣人である事を再認識して、自らの過ち、それを指導する体制の過ちに気づき、遠く離れたクレムリンまで逆流する事で、悲劇に終止符が打たれるという歴史が作られれば、この本の主張の正しさが証明される事になると思った。
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人間は元来は平和を好む友好的な生き物であり、通常、対立構造に置かれそうになっても、平和的手段で解決をしようと試みる。
ただ、そうした友好的な性質が故に、集団に対して抵抗するということがやや苦手であり、時として多元的無知と呼ばれる、誤った方向への暴走が見られる。
こうした暴走は、私有財産に端を発した階級社会の登場により、社会構造が歪められたことで発生しやすくなったと筆者は主張する。
これに対する対策として、共有地の設定があるが、長らくこの共有地は、共有地の悲劇と呼ばれ、全くうまくいかないという意見が当たり前であったが、その意見すらも、人は生来的に悪であるという思想からくるものであり、現実社会での共有地は、暴走者が現れれば排除されるように、エコシステムがうまく働き、機能している。
人は、他人から期待されたような人になると言われ、10歳、厳しく囚人を罰するアメリカの再犯率が高く、一方で尊厳を持って接せられるノルウェーでは低くなるという顕著な結果に表れている。
性悪説に立つことは、ネガティブな側面をあらかじめ予測する現実主義として、これまで褒め称えられてきたが、筆者はこれを冷笑主義として、好ましくないものとしている。
そうではなく、人は本来善であり、そうした行動を他人に期待することで、全ての人がより幸せな状態になる、これが一番のメッセージと受け取った。
悪い出来事ばかりを報道するニュースによって、我々のこうした見方は歪んでいるため、ニュースから適切な距離を置き、真の現実を見る現実主義者になりたいと思う。
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やっと下巻も手に入れ読みました。
【善悪も人が決める】
― 農耕 ー
農耕を始めたことによるよくないことを下記に示します。
人はもともと筋肉質で無駄な贅肉は無かったが、穀物を食べるようになり体に貯えることができるようになり贅肉がつくようになりました。
また、農耕が始まったのはつい1万年ほど前であり、人類200万年の歴史の0.5%にすぎません。まだまだ農耕に対応できる体になっていないのです。
人は血糖値をあげるホルモンは備えていますが、血糖値を下げるホルモンは備えていません。つまり、人類の長い歴史において血糖値を上げることはあっても下げることはなかったということです。血糖値が上がると肥満につながることはわかっています。そして、血糖値をあげる食べ物が穀物になります。
しかし、人の寿命はここ1万年で長くなったではないか?
と反論があると思いますが、寿命が延びた要因が穀物であるというよりも、医療、栄養状態の改善により、乳幼児の死亡率が劇的に改善されたことによる影響が大きいと感じます。
穀物は物理的に保存できることにより、私有という概念が生まれました。基本的に狩猟採取では保存が効かないため、私有という概念はなく、共有という概念しかありませんでした。
穀物だけが悪いわけではないでしょうが、肥満、私有財産による富の差は穀物に要因があると考えます。
富の差が発生することにより、ヒエラルキーも養生されてきたと考えます。
さらに恐ろしいのは、穀物は即効性の毒というより、タバコやお酒よりさらにスパンが長く、じわじわと心身をむしばむ恐ろしく遅効性な毒という言い方もできます。
ー 人の善悪 ー
199万年間、人は争わずに生活をしてきました。共有という概念しかなかったからです。根本的には「善」しかないのです。
農耕が始まり、悪も蔓延るようになりましたが、199万年の歳月をそう簡単に覆すことができず、根っこは善のままなのです。
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人間の善性/良心/優しさを信じたくなった。
国や人種や信教が違っても、交流しお互いを知り共感する事で、ヘイトは捨てることができる。
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人間の本性が善であることを論証するとともに、性悪説が今日の社会で通説となっているメカニズムを解き明かすことで、冷笑的な人間観から脱却し、信頼に基づく新たな現実主義を提唱する啓発書。
著者は、性悪説の根拠として有名な「ミルグラム電気ショック実験」、「キティ・ジェノヴィーズ殺人事件」、「イースター島の悲劇」などの事例を丁寧に検証し、それらの多くが事実誤認や捏造によるものだったことを突き止める一方、戦争や大規模災害といった非常事態において人々が善意に基づいて行動した数多くの出来事を紹介した上で、そもそも社会的動物として信頼・友情・愛を基盤に進化してきた人間の本質は善に他ならないが、1万年前に狩猟採集から定住に移行したことが私有財産と人口増加による不平等を生み出し、権力や階層構造の固定化、さらには自集団への共感と帰属意識が排他主義につながり、集団間の相互不信が性悪説を「自己成就予言」として定着させているのだと主張する。
性悪説は法制度や企業経営、教育といった幅広い分野において現代社会に根深く浸透しており、そのような中で性善説を唱えることはともすればナイーブな理想主義として批判されるリスクがあることは認識しつつ、それでも著者は、今日においても信頼に基づくマネジメント手法によって成功した複数の企業や自治体などの事例を引き合いに、楽観主義でも悲観主義でもない、人間の本性=善に基づく新しい現実主義を提唱する。決して夢物語ではなく、未来への希望を圧倒的な説得力を持って語る良書。
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【希望の歴史】 ルトガー・ブレグマン 著
これはいい本です! 原題は「Humankind: A Hopeful History」ですが、何となくこちらのほうがしっくり来ます。
「FACTFULNESS」では、人間の歴史は良い方に向かっているとデータで実証するのに対して、こちらでは、「人間は基本的に助け合う生き物、つまりホモ・コーペランスだ」ということをさまざまな事例をもとに語りかけています。
「危機が引き出すのは、人間の最悪の部分ではなく、最善の部分」と、これまで負の側面を中心に語られてきた事実も、実はそうではないと反証し、各章を読むごとに明るい気分にさせてくれます。
知らない事実・側面も数多く紹介され、少なくとも複眼的にものを見ることの重要性を教えてくれます。
コロナ禍で暗い気分が蔓延するなか、寝る前に読み、いい気分で眠りにつくのに最適の1冊(上下2冊)です。
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寛容に生きること、利他的であることを誇っていい。そういう善なる行為や思いに対して、背中を押してくれる本だった。心に信念の灯火が灯った。
上下通して、一番心に残ったのは、教育とマンデラを扱った章でした。
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「人の本質は善である」との観点から、これからの社会について、希望を与えてくれる本です。
確かに、ある集団に対して偏見や嫌悪感を抱いていたとしても、実際に接したことがある人に対しては親愛の情を抱くのが人間の本質であることは、経験則上、理解できるところです。
個人的には、主として北欧の国で実施されている刑務所の改善と、南アフリカのネルソン・マンデラ大統領誕生に際しての双子の物語に感銘を受けました。
犯罪をする人は、社会に対する疎外感等でやり場のない怒りを抱えているケースが多いと思います。そのような人には、刑務所内での交流による人から尊重された経験が、更生に繋がる大いなる可能性を感じました。
我が国は解決すべき問題が山積みで、刑務所改革まで意識が向かないのが実際のところですが、あとは国民がどのような政治家を選択するかというところでしょうか。
「人の本質は善である」ことが人々の共有認識となり、よりよい方向へ社会が向かうことを祈りますし、自身もそのことを意識していこうと思います。
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まず、この本のメインテーマは、
『人類の性善説を過去の事例により証明する』
です。
これだけ性悪説が信じられている現代に、
「それ本当?証拠は?そのデータは正しいの?性悪説だと言うのなら、この事例はどう説明するの?」
という疑問を持ち、自分の足で取材をして、たくさんの人に会い、話を聞いた筆者が書き上げた本です。
とても興味深く、面白い話がたくさん載っています。