紙の本
『ミラーワールド』
2021/08/09 20:14
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投稿者:百書繚乱 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ミラーワールド=鏡の世界
男女の立場役割が反対になった女尊男卑社会
池ヶ谷良夫
元公立中学校の社会科教師。結婚して家庭に入り、15年ぶりに学童指導員として働き出す。妻は公立中学校のベテラン音楽教師。子どもは高2と中1の男の子
中林進
元看護師。勤務医の妻と結婚して家庭に入り専業主夫となる。子どもは中3の女の子と中1の男の子
澄田隆司
高卒で信金に勤務して寿退社。妻の実家に入り、義母父と同居。理容師免許を取り義父の理容店を支える。警察官の妻は生活安全課の警部補。子どもは中1と小4の女の子
同じ中学校に通う子どもを持つ3人の“主夫”たちは、子どもの学校、仕事、家庭生活に潜む理不尽な“女男差別”を感じている
そんなとき、ある事件が起き……
「シングルファザーなんて自業自得でしょ。それで子どもを虐待して、シングルに冷たい社会だとか補助金よこせとか、ほんとおかしいと思いますよ。すべて自分で選んだんだから自分の責任でしょ」
「婿はさ、絶対に自己主張しちゃいけないのよ。婿っていうか、男全般よね。とにかく女の言うことを聞いてれば万事OK。男の権利とかガラスの天井とか言って騒いでる男たちがいるけど、これまでの長ーい歴史があるんだから簡単には変わらないってわけ。自分で食べて行く力もないくせに、男は口だけ達者だからね」
「バカになんてしてないわよ。ただ、女のほうが上だってだけ。生まれ持った性質なんだからしょうがないでしょ。この世の中は女社会で成り立ってる。だから物事がスムーズに回ってる。男は女に尽くすようにできてるのよ。長い歴史が証明してるじゃない」
女男を入れ替えればどこかで見聞きしたセリフばかり
日本社会の悪弊を描き出す痛快パロディ小説
《映画化『明日の食卓』の著者が描く 心にささる男女反転物語》──帯のコピー
「小説 野生時代」の連載(2020年12月号〜2021年4月号)を改稿し単行本化、2021年7月刊
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ふーむ。。。わたしそこまで男尊女卑をあまり感じたことがなく、そこまで差別も受けたことなく、今の世の中に満足してるから、そこまで響かなかった。そんなに世界に怒ってないんだなとおもった、自分が。まぁコロナのことに関しては怒ってるけども。
だから男女逆転の世界を描かれて単に読みづらく、逆転させてもさほど響かないのはわたしが女性だからなのかな、男性が呼んだら違うのかなぁ。
それでタイトルがミラーワールドってちょっと好きではないかな。
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圧倒的でした。物語の構成、特に反転した世界を挟んでの、プロローグとエピローグの見せ方に、本書にミラーワールドという題名をつけた作者のセンスを感じます。このような問題提起型エンターテイメントは、韓国が一歩リードしている印象を持っていましたが、この作品は、海外に引けを取らないパンチ力があります。
この作品をどう捉えるかで、令和と昭和の世代間ギャップが強く出ると思いますし、作中でも実際にそれが表現されていて、最初から最後まで大変よく練られていると感じました。大人はもちろんですが、ぜひ若い世代、特に中・高・大学校生に読んで頂き、活発な議論のきっかけになればと願います。
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男女反転社会、男は家庭、女は外で働くまさに現実とのミラーワールドをえがく。
読んでいて気分が悪くなる(腹が立つ)シーンがあるけれど、これが女性なら?と考えるとああ…現実ではよくあることだ…と。
理不尽すぎることが当たり前になっている。
女性への偏見を持っている反フェミニストの人にこそ読んでほしい。フェミニストがどうとか言う前にもし男性であるあなたがこれをされたらどう思う?
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もしも、男と女の立場が逆転していたならば・・・。
政治は女社会。
仕事面では女は仕事、男は家事と育児。
結婚したならば、婿が妻のところに嫁ぐ。
これらが当たり前という世界で、三家族のそれぞれの主夫が、女尊男卑社会の中、日々の生活に奮闘していた。そんな時、ある生徒が夜道に何者かに襲われる。
男女が反転するという面白い設定で、気軽な気持ちで読み始めたのですが、意外とリアリティーやシリアスさがあって、真剣モードで読んでいた自分がいました。
夫婦(作品では婦夫)の関係や親子の関係、友達の関係など、それぞれが生きづらさを抱えながらも、コミュニケーションすることの大切さが伝わってきて、色々考えてしまいました。
三家族にスポットを当てるということで、別の作品「明日の食卓」と似ていますが、ミステリーというわけではありません。
「明日の食卓」では、ある子供が死ぬというショッキングな始まりで、この子供は誰なのか?という念頭において、三家族を紹介しています。
この作品では、各章の始めは、ある生徒の独白なのですが、誰なのかは後で明らかになります。この生徒は誰なのか?というミステリーっぽい面白さはありますが、基本的にはヒューマンドラマになっています。
それぞれの三家族の主夫が、妻や子供のために家事や育児にと大変な日々を送っています。小説に出てくる登場人物を男→女、女→男に変換すると、やっていることはほとんど現実と同じです。
なのに、より身近に感じました。
今までは、なんとなーくぐらいしか理解できなかったのが、変換されることによって、登場人物の気持ちが理解されやすくなったように感じました。
特に女性の上から目線や積極性に腹が立ちました。でも、現実に置き換えると、男性が同様なことをしていると思うと、同性として情けなく感じてしまいました。
男性が読むと、同じような気持ちになるのでは?と思いましたし、女性が読むと、共感する気持ちやスカッとした気持ちになるのでは?とも思いました。
とにかく、読む人によって、様々な楽しみ方が味わえると思います。
一応、現実とは別の世界という設定ですが、近い将来、小説のような現実があってもおかしくないなと思いました。
色々な事情があれども、人と人とのコミュニケーションは大切だなと改めて感じました。
しっかりと会話をし、感謝する気持ちを常に忘れない。
軽い気持ちで読んだ「入口」が、いつの間にか真剣に考えてしまった「出口」になってしまったことに自分でも驚きでした。
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全身をタコ殴りされた気分だ。
身体中が痛い。そして、心も痛い。
この痛さはなんだ。この気持ち悪さはなんだ。
わかっている。いやわかっている気がしていただけだ。
今までの人生で何度も何度も「女の子なんだから」とか「女なんだからしょうがない」とか言われてきたか。
そしてそれをそういうものだ、と思うようにして、生きてきた。
そのすべてが今、私の全身を殴りつける。
男と女の立場が逆転している社会。
この小説は今、私がしょうがないと受け入れている社会の全ての、そのグロテスクさをたたきつける。
まるでからだの中で知らない間に腐り続けていた内臓を引きずり出すように。
開けなければ気付かないまま朽ち果てていったこと。
理不尽と不公平と不平等。それを当たり前だと信じている自分たちの愚かさ。
誰かが変えてくれる、ではない。
あなたが、私が、変えるんだ。その一歩を助ける一冊だ。
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男女逆転の世界に戸惑って、読んでる間何度も頭の中を整理しなければならないほど、日本の性差別は刷り込まれているんだなあと感じた。
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もし男女が逆の立場の世の中だったら…
それぞれの性的特徴はそのままで、社会的な地位とか役割だけが逆という設定で面白かったけど頭が混乱した。
今はこの中にあるような男尊女卑はないと信じたいけど昭和はこんな感じだったかな。
今はジェンダーレスというもう一つステップが上がったように思う…思いたい。
私自身、ジェンダーにはまだ偏見を持ってしまっているなと感じる。
同性からの告白にありがとうと伝えた俊介みたいな人が増える世の中になればいいと感じた。
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最初は女尊男卑の世界に少し違和感を感じた。
生まれた時から性差が身近にある世の中にいてそれがずっと昔から当たり前になってるから男尊女卑はなくならないし無くせない
性別関係なく、仕事してお金稼いでる方が偉いと思ってる人、男は外で働いて家事育児は当たり前に女がやるものと思ってる人に読んで欲しい
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荒れっぽい女の子と、大人しく優しい男の子。
部長としてバリバリ働く妻と、家庭を支える夫。
パワハラを強行する女と、セクハラに耐える男。
そう、ここは男女(女男)が逆転した世界だ。
逆にするとなんで違和感が生じるんだろう。という、社会に対する問いと挑戦。
現実社会はあまりにも性別による差がありすぎるなと気づく。
なんで、現実の女性たちは、違和感がありすぎる理不尽だらけの世界で、まるで何ともないようにしているんだろう。
物語の中の男たちは、女尊男卑されているだけでこんなに苦しんで叫んでいるのに。
いや、現実でも叫んでいる女性がいるはずだ。なのに社会ではそんなに深刻に捉えられていない。
それと同時に、優位に立たされている男性側って普段こんな気持ちなんだなとも擬似体験することができた。
めんどくさいことは全部あっち側に押し付けることができる。理不尽なことをしても別にいい、仕方ないなと思う。
優位に立たされている性別側は、もう一方の性別側に対して「関係ないな」と思う。
ただ、性別が違うだけで。
「当時、仕方がない、こういうものだ、と思っていた出来事は、まったく仕方のないものでも当たり前のことでもなかったのだ。悪はいつだって女の無自覚と無関心だ。いつまでも女に従順な男でいる必要はないのだ。」
(26ページより)
「心のどこかでは自分の過失を認めおびえているくせに、女の自分が男に対して大きな声でまくし立てれば、自然と問題が解決して、犯した罪さえも消えると思っている、見当違いの自信に満ちた卑屈な顔だ。」
(97ページより)
なぜ、男と女を入れ替えるだけでこんなに違和感が発生するのか。
本当の意味で男女が平等になるのは難しくて、現実がそんな世界になるのはまだまだ遠いんだなと思わされた。
気づきは多くあったけれど、私も無意識の刷り込みがされていたのでいちいち脳内で変換して内容を消化しないといけず、物語としては楽しめなかった。
そして、脳内で変換してしまうと、それはただの男性優位な現実の日常を描いただけのものになってしまった。
たくさんの気づきがあった。
俊太くんが素敵な子だった。
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図書館で借りたもの。
同じ中学校に通う子を持つ3人の主夫たち。女尊男卑社会を理不尽に感じながら、妻子を支えようと毎日奮闘していた。そんななか、ある生徒が塾帰りの夜道で何者かに襲われ…。男女反転物語。
女尊男卑の世界。
男女が逆転していることで、現実世界で女性が置かれている状況が浮き彫りになってる。地獄じゃん。
全人類読んでー!
男女を取り巻く状況も、今は少しずつ変わってきていると思いたい。
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嫌ぁぁな話。これは誰がターゲット層の小説なの?男尊女卑ならぬ、女尊男卑のパラレルワールド。女性が外で働きふんぞり返り、男性が主夫となって甲斐甲斐しく家事育児をする。女性が男性にパワハラ・セクハラをして喜ぶ。絶対あり得ない!とまでは言い切れないけど、自分の想像力の欠如か無理のある描写が続いて苦痛。プロローグとエピローグも?ようわからん。完全に消化不良。本書のメッセージとしては「性別にかかわらず、人を思いやれる心が大事」ってことでいいのかな?意欲作だとは思うけどうまく機能してない印象。?だらけの読書となった。
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+++
『明日の食卓』著者が本当に描きたかった、心にささる男女反転物語。
「だからいつまで経っても、しょうもない女社会がなくならないのよ」
「男がお茶を汲むという古い考えはもうやめたほうがいい」
女が外で稼いで、男は家を守る。それが当たり前となった男女反転世界。池ヶ谷良夫は学童保育で働きながら主夫をこなし、中林進は勤務医の妻と中学生の娘と息子のために尽くし、澄田隆司は妻の実家に婿入りし義父とともに理容室を営んでいた。それぞれが息苦しく理不尽を抱きながら、妻と子を支えようと毎日奮闘してきた。そんななか、ある生徒が塾帰りの夜道で何者かに襲われてしまう……。
「日々男女格差を見聞きしながら、ずっと考えていた物語です。そんなふうに思わない世の中になることを切望して書きました」――椰月美智子
+++
男女の立場が反転している世界が描かれているのだが、なんとも言えない気持ち悪さが先に立った。なぜだろうと考えてみたのだが、女性の描かれ方がヒステリックというか、単視点的という感じで、女性が優位に立つ世界の利点が全くと言っていいほど描かれていないせいではないかと思い至った。女性が上に立ち、社会の指導的立場の多数になって、より繊細な対応ができるような世界が描かれていれば、見方も違ったかもしれないが、この描かれ方だと、女性が上に立つ世界にはなってほしくないとしか思えない。優位に立つとこうなってしまうだろうという著者の視点なのだろうか。本当の意味で、男女それぞれが本来持つ能力や特性を生かして共生できる社会になってくれればいい、と切実に思わされる一冊でもあった。
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男女の役割が逆転した社会で、女尊男卑の考え方に疑問を覚えた男たちと子どもたちの話。
すごい労作だ。
現状に悶々としている身で読むとびっくりするぐらい衝撃がない。むしろ長年身に染みついた価値観にびっくりした。いずれにせよ、不平等、不公正に疑問を抱く者としては、どちらもおかしいわけで、どっちが上だからという話ではないんだよなと思う。
飜って、現状に違和感を抱いていない人が読んで、ぴんとくるかというと…… 悩ましい。これでぴんとくる人ならとっくにわかっていそうだし。わからない人には伝わらなそうだし。
作中、子どもたちに希望がもてた。
テーマとしては、Netflixオリジナルのフランス映画『軽い男じゃないのよ』を思い出した。
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男尊女卑ならぬ女尊男卑の世界を描いたミラーワールド!女性が稼いで、男性は家を守ることが一般的である世界。結婚したら、苗字は妻に合わせる。男の子は夜道を気をつけなくてはいけない。婿養子をいびる姑。
現実と違い過ぎて、頭の中が混乱したが、実際にあったであろう事件の登場、シングル家庭の大変さなどリアルに書かれていて、勉強になった。
ありえないなぁ!と思いながらも、現実は女性がここまで虐げられているのかと悲しい気持ちになった。