紙の本
「あたりまえ」を頭から信じないこと、自分で確かめることは大事です。
2022/01/07 19:45
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書のタイトルを見て「落ちてくるんじゃないの」と思う人も少なくないのでは。本書はそんな「定説」を自分たちで確かめて変えていった小中学生の話である。面白い。考えさせられた。
2011年から始まった四日市の子どもたちの「ヤマビル研究会」。著者は彼らを指導(というかともに活動)している元教師。手近な「体験学習」の材料として取り上げたヒルだが、子供たちが素晴らしい姿を現していく。
「おそるおそる」「遊び半分」から「観察」「実験」「発表」をするほどに成長していく仲間たち。でも特別な子供たちという感じはしない。会話をたくさん入れ込んだ文章はちょっと冗長にも感じるけれど、そんな「普通の子どもたち」の雰囲気がよく出ている。
発表などで「木から落ちてこない」を聞いた人は「そうなの?」とはなかなかすぐ納得してくれない。それどころか「調べ方が正しくない」とか「昔からそういわれてる」とかたくなな人もいる。「落ちてくるので注意」と書かれている文献もある。「あたりまえ」にぶつかった時に人間がとる反応の見本市みたいであった。自分たちで調べた子供たちは戸惑いながらも一つ一つ説明を続けていく。
一度できた定説に異を唱えることは大人だって難しい。でも「自分で見たことを信じる」こと。違っているときは「違う」と言えること。最初から「あたりまえ」と思考を止めないこと。それが大事だと教えられる。
「ヒルは木から落ちてくる」と思う人も「落ちてこないのかも」と思う人も、ぜひ読んで欲しい。ヒルそのものの話はちょっと気持ち悪いかもしれませんが。
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山登りをしていてひょんなことで調べものをして、子どもたちがヒルを研究してるらしいと知って読みましたが、とっても面白かったです。
子どもたちのヤマビル研究会での様子や取り組みなどが淡々と?紹介されているのですが、一つのことに一生懸命取り組むことの大切さも教わったように思います。
山に行く人にはぜひ一度読んでみて頂きたいなと思います。
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三重県鈴鹿で活動している小中学生らによるヤマビル研究会の活動記録。
誰もが当たり前に思っていたヒルは木から落ちてくるというのが実は正しくなかったというのは驚き(イデオンの1話で樹上からヒルが落ちてくる描写があるが、あれはソロ星の固有種で地球のヤマビルとは異なる種ということだろうか?)。
その姿や血を吸うということから嫌われていることからか、ヒルはその生態があまり知られていないらしい。そこに子供たちの好奇心が巧くハマった感じなんだろうか?誰も知らないことを子供たちが自力で解き明かしていく姿は格好良い。
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何とも衝撃的なタイトルです。
興味本位でも怖いもの見たさでもでもなく、必要に駆られて私は手に取りました。
いきなりショッキングな映像などが出てこないかと、恐る恐る心してページをめくりました。
などと大層な前置きですが、私は山歩きを趣味としていますので、ヒル問題は避けて通れず、目下私の中では重大な懸案事項となっております。
そのヒルについて研究をしてくれているのですから、目を通さない理由はありません。
子供たちが、三重県の鈴鹿の山のふもとでヒルについて調べている、というのはネットで見て知っていました。
本を手に取り、あ~あの子達だ!とすぐわかりました。研究を重ねてこんな立派な本に仕上げたんだ、それも山渓から出版・・・と感動したものです。
私も、鈴鹿山系を歩く機会が多いものですから、知っている地名や山が出てきて、より親近感を持っているのですが、いかんせん題材が題材ですので。
でもページをめくらないことには進みません。
まぁ、子供たちというのは怖いもの知らずというか、好奇心旺盛というか、わざわざヒルの出没スポットに行って、ヒル採集をするという、身の毛がよだつようなことは基本中の基本、(そりゃヒルを持ってこなくては研究にならない)
まずヒルの形状から始まり、何に反応するのか、弱点は何か、そしてタイトルにある木から落ちてくるのか等々、実験は進みます。
樹木の下にシートを敷いて(シートの周りには忌避剤を振ってある)ヒルが木から落ちてくるのを3時間も待ってみたり、それも条件を変えて何度も。
全身すっぽりビニール袋をかぶり(顔だけ出して)サウナ状態になりながら足元のヒルが何分で首まで上がってくるか、などまさに体を張った実験を繰り返したり、解剖をしてヒルの臓器を調べたり(う~~ブルブル)
彼らの興味は次々と湧き上がり実験はどんどん高度化していくのです。
彼らはヒルを駆除するのが目的ではなくあくまで研究対象、片や私はどうしたら避けられるかというのが問題なので、相いれない部分もあるのですが、「敵を知り己を知れば百戦危うからず」ではありませんが、大いに参考にさせてもらう部分はあると思います。
これからの彼らの研究にエールを送りたいです。
※本文中の写真が白黒でよかった。
それとページ数の代わりにいろんな形をしたヒルのイラストが怖かった。ちょうどページをめくる手に触りそうで・・・
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未来、というものに明るさを見出すことが難しい、少子高齢化が爆速で進行する現在の社会。自分たちが子どもだった頃の「世界はよくなっていくのだ」という楽観論ではなく「世界で乗り越えて行かなくていけない問題にどう向き合うか」という悲観論とまで行かなくても重い課題を未来人材に背負わせてしまっていることに申し訳なさみたいなものを感じてしまっています。だからこそ2020年の大学入試制度改革の目玉がアクティブラーニングというキーワードだったような気もしますが、今、コロナ禍に巻き込まれた教育現場の中で、いまどこにしまわれてしまっているのだろう、と思っていました。が、ここには自分で考える、自分で見つける、自分で語るアクティブラーニングがありました。子どもヤマビル研究会、10年間の記録。書名の「ヒルは木から落ちてこない」は「ヒルは木から落ちてくる」というなんとなくの定説を子どもたちがひっくり返した偉業の証です。ひとりひとり興味や得意なことが違ったり、集中力が続かなくて水遊びに走ったり、おやつやお弁当も活動の大切な要素だったり、ごくごくフツーの子どもたちの研究が繋がれて、学者も注目する成果を上げていることに、ものすごいうれしさを感じました。決して信じようとしない高齢者の頑迷固陋に動じないプレゼンにも「負けるな!」と応援気分になってしまいます。翻って上から目線の定説人間になってないか、と怖くもなりました。決して子どもたちを導こうとせず、徹底的にフォローに回る、樋口大良というおじいちゃん先生の存在が大きいのだと思います。きっと。この本を読んでいる間、これで日本の未来は大丈夫!と、つんく♂的ポジティブ・モードに入りました。ありがとう、子どもヤマビル研究会!
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10年間ヤマビルを子どもたちと研究してきた人のまとめた本。
ちょうど高野聖を読んだ頃にこの本の存在を知ったので読まないわけにはいかなかった。
自分もヒルは木から落ちてくるんだなと思ってたし。
ヒル自体、自分は見たこと無いけど、この本を読むといるところにはマジでうじゃうじゃいるんだな、と知った。
「ヒルは足元から上がってきて、血を吸われても痛みもなくて30分くらいついてることもあるから、首の血を座れてるということはこれは上から落ちてきたに違いない、と勘違いしてしまうことがある」、と。
また、「ヒルがいるような森の中では木も多く、ミノムシや木の実、枯れ葉が上から降ってきてそれをヒルと思ってしまうこともありそう」、と。
なるほどー。
「そもそも木の上から落ちてくるということは木に登らなきゃいけないわけだが、木についているヒルを見たことはなく、地面には山程ヒルがいる場所の木の下で3時間待っていても落ちてこない。ハレノヒも、雨の日も。」
「しかもヒルは乾燥に弱く、いつもは草や枯れ葉の間にいるから、木の上という乾燥しそうな所にいるとすぐ死んでしまうだろう。」
などなど、言われると確かに〜、となりっぱなしのことを子どもたちが次々と思いつき、そして先生のサポートもあって次々と証明していく。
まるで爽快な推理小説のよう。
他にも、そもそもヒルが人に寄ってくるのはどういう仕組みなのかということで、捕まえたヒルに向かって息をかけてみたり、色んな温度のものを用意してどれに寄ってくるか確かめたり。あとは塩に弱いということで何%の食塩水まで耐えられるのか。果てはカッターやメスで解剖していくという、ありとあらゆる研究をしていく。
これは子どもたち、楽しいだろうなー。
理科の実験では答えありきのことを確認していくだけだが、ヒルの研究では答えがないので、気になることをとにかく確認していく、それを先生が全力で応援してくれるという、それは子どもたちもやる気が上がる。子どもたちの好奇心とひらめきの強さ、そして教育についても色々と学びになる本だった。
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本の雑誌ベストから。これは、ノンフの一つの理想形。純粋に、ヒルが木から落ちてこない事実一つとってみても興味深いし、小学生中心に行われた研究だから、そんなに小難しいことも行われないから、分かりやすい。仮説の立て方や解釈の仕方につき、自然の流れで説かれていくから、気が付けば研究のイロハについても教えられている、という結構。比較的近所ということもあり、我が子も参加させたい欲求にまで駆られてしまった。素晴らしい一冊。
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小学生・中学生のこどもたちがヤマビルを研究する。大人はコーディネートするだけで、研究を引っ張ったり指示したりはしない。道具を用立てたりと環境を整えてやるだけ。
表題にもある通り、ヤマビルが人間が来るのを察知して、その人間を狙い澄まして木の上から落ちてくるという例はほぼない。それを己の体を使った実験で実証する。
そもそも木の上に登るヒルを見ることがないらしく、また木の上に登ったとしても、常時風があたり乾燥しやすい木の上でヒルが待機するメリットもなさそうだ。
これらを発表したとき、しつこく彼らヤマビル研究会を否定する高年齢男性の記述も1つのクライマックス。いわゆる俗説・通説から抜け出せない典型例として悲しく描かれている。この男性も、この発表が子どもたちの手によるモノではなくどこかの大学教授とかだったらまた全然違う態度になるのだろう。あわれみを感じるとともに、他山の石とすべき、と痛感する。
ヒルの広がりについての要因、いわゆる俗説では鹿である。鹿にとりついたヒルが遠隔地で落ちてその場で広がる。
このことについても研究会は考えている。彼らの研究・考察では、水の流れによるものが大きいのではないかということ。ヒルが繁殖しやすい場所(ヒルスポット)にいるヒルが、獣道・山道などを流れる雨の水流で移動すること大きいと。
しかし、一方でヒルの血液から鹿のDNAも見つかっている(カエルも吸血対象らしい)。そこで宅配便で例えると、拠点から拠点への物流は鹿などの長距離移動可能な生物に便乗して、拠点から各住宅などのラストワンマイルは水流が要因などでは、ととりあえず落としどころを見つける。
彼らはヒルを解剖してその体内の構造にもアプローチしている。吸われた血液の流れや心臓の有無などとどまることを知らない。
自発的な探究心から仮説を立て、それを自ら検証する、という行為を繰り返している彼ら。コーディネートする大人達も主役は子どもたちだとして、インタビューや発表を子どもたちに全て任せている。これは子どもたちの自発や自立につながる。自分たちで思考して決断する。このような機会が得られることは尊い。子どもたちの一人はインタビューでいう。
「学校の実験は、結果が決まっていることをただなぞるだけだが、ヤマビル研究会は違う」
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子供の力は素晴らしい。大人は気持ち悪いと思うヒルを可愛いという。何百匹も何千匹も捕って観察を続け、発見をした。ヒルを語らせたらこの子たちの右に出るものはいないとまでになった。私は挿入写真も見たくなくて、知りたいけど読みたくないという葛藤と戦いながら読み終えた。心の奥では没滅を密かに願っている。
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そもそもヒルって見た事無いんですよね。映画や小説なんかでは出てきますが、山登りもフィールドワークもしない身としては遭遇する可能性は低い生物です。
でも尺取虫のように人に迫ってきて、気が付かないうちに人から吸血するヌメヌメした生物なんて好きな人居ないですよね。僕もちょっとつかむの躊躇すると思います。ミミズ触れるけれどやっぱり嫌だもんねえ。
そんな嫌われ者のヒルの通説を、小学生たちが地道な研究で覆した痛快なノンフィクションです。
当然導き手の大人たちは居るのですが、彼らも初めて知る事な訳で、答えが分かっている実験に導いている訳ではないんですね。そこが本当に素晴らしい。
ヒルが木から落ちてくる、シカがヒルをばら撒いている等、常識とされていた通説を覆していくのは本当に読んでいて胸が熱くなるし、好奇心というのは新しい事を発見する一番重要なエネルギーなんだと実感しました。
ヒルにも詳しくなったし、ちょっとかわいくも思えてきます。実物見たらとても受け入れられないと思いますが・・・。
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とても面白く読めた。わかりやすいように書くことが理解を図ることではなく、子供たちの目線で書いたことが理解の伏線なんだろう。
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10月6日新着図書:【知らない間に血を吸うヤマビルの生態研究に挑む小中学生が解き明かしてきた生態の数々を紹介しています。子どもたちの感受性に驚嘆する1冊です。】
タイトル:ヒルは木から落ちてこない。 : ぼくらのヤマビル研究記
請求記号:483:Hi
URL:https://mylibrary.toho-u.ac.jp/webopac/BB28193439
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主体的な学びという、学校ではよくテーマになる学習を地でいっている感じ。しかし自分や自分の子供たちの経験を通してみれば、実際の小学校で、主体的な学びというものは、あまりないように思える。学校の先生の筋書きがあって、そちらに誘導されているような風に思えてならなかった。しかしヒル研は一人一人の子供が主体的に学んでいて、その姿が頼もしかった。
写真が白黒でちょっと見にくいのが残念。イラストなどを入れていくれたら、分かりやすかったように思う。またちょっと文章がとっちらかているようにも思えた。先生は一人一人の子供の人となりが分かっているから、このような書き方でもいいのだろうが、子供の前情報がない読者には、話が細切れになっているように思えた。
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2011年から10年ほど三重県で活動している「子どもヤマビル研究会」の活動の様子や成果が綴られている。ヒトの血を吸うヤマビル、その生態はあまり研究されたり知られたりしていないと言い、知的に興味深く読んだ。もちろん、ヤマビルに対して素直に探究心をぶつけ、自分たちの疑問や考えへの答えを追求していく姿、感心したり応援したり。
そして、著者の樋口さんを含め、周りで支える、ガイドする大人たちが素晴らしい。こんなチャンスがもっと多くの子どもたちの身近にあれば、自然や考えることが大好きな子どもが増えるに違いない。
見るからに気持ち悪く、そしてヒトの血を吸うという生態から、嫌がられる、避けられる存在のヤマビル。だからこそ、思い込みや迷信が多く、その代表的なものが、タイトルになっている「ヒルは木から落ちてこない」だと。子どもたちは、それを証明するための実験方法を考え実践し、そして発表会で迷信を捨てられない多くの大人たちと論戦を繰り広げ、どんどん逞しくなっていく。
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読みやすい内容だった。
実験の目的や発見の楽しさ、子供たちが自ら学んで成長する過程が、羨ましく思えた。
学校での一律の教育ではなく、子供自身が好奇心を持つことで学ぶ楽しさと自然環境の不思議を体験する。
読んでいて私もワクワクした。
けどヒルのリアルな実験の記述などは、虫嫌いの私には気味が悪った。