すばらしきアカデミックワールド オモシロ論文ではじめる心理学研究

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世の中には変な研究をしている人もいるんだなー。そんな本。研究の内容紹介などには難しい単語も使われており、読みづらさもある。

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オモシロ論文の要旨と解説をまとめた本。心理学の面白い結果を並べる本は無数にありますがこの本は怪しい点もきちんと指摘し類似の論文や追試を明記している点が良いですね。堅い表現はなく、バランスが取れた文体も良い。おすすめ本です。

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心理学の面白論文をニページずつまとめた本。重箱の隅を突くアカデミックワールドで、世界中のおもしろ論文が紹介されている。

心理学だけで無く、他の研究ジャンルでも同じ様な本があったら面白いと思う。

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＜目次＞
第１章　　「♥」を読み解く
第２章　　気になるあの人の「なぜ」にせまる
第３章　　イライラするのはなんのせい？
第４章　　愛すべきあんなこと、こんなこと
第５章　　あんがい繊細なココロとカラダ
第６章　　おいしい経済
第７章　　名前にまつわるエトセトラ
第８章　　おそるべきミュージック
第９章　　ウソと不正と犯罪と
第10章　　すばらしきアカデミックワールド

＜内容＞
心理学系の論文を取り上げつつ、その珍研究を解説したもの。副題で「オモシロ論文」とあるが、基本、論文の研究者も著者も、それを面白がったり揶揄したりしているわけではない。でもちょっとずれている感じ。そして科学系の論文って「追試」がおこなわれることで、その仮説の信憑性が上がり、「真説」になっていくのだが、この本を読む限り、「心理学」は「科学的ではない」感じがする。「追試」が当初の論文の説を実証してないから…。

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心理学は、人間の行動を科学的に明らかにしようとする学問です。
研究対象の人間をじっくりと観察することが重要です。

イグノーベル賞と同様に、オモシロ視点の研究がイロイロありますね。
プロの研究者が「素晴らしい！」と思っても、評価に値しないという態度をとりそうなテーマが満載です。

・キスをするとき人は頭を右に傾ける
・セルフィーを撮るとき人は左顔を見せやすい
・あなたは自分で思っているより魅力的でない
・絵文字を使うやつはエロい
・金持ちは横断歩道で歩行者に道を譲らない
・隣に人が立つとおしっこを早く切り上げる
・飼い犬から飼い主を当てることができる
・偽薬を偽薬だと言って投与しても効く
・脳っぽいことを言うと信頼性が増す
・マーラーを聴くと坂道は急に見える
・目の写真を貼ると不正行為が減る
・ウソの見破り方を学ぶと「ウソだ」とする誤った判断が増す
・論文が引用されるかどうかはタイトルで決まる

このような研究論文の解説が60程取り上げられています。
どのような条件で、どのように実験し、どのような結果が得られたのかに興味を持って読みました。
読んでいると、「そうなんだ」「そうかもね」と信じてしまいそうになります。

本書のいいところは、このようなオモシロ論文を読むときの心構えとして、
見抜くのは難しいが以下のような不正もあるから騙されないようにと注意が示されていること。

１．たまたま得られた調査結果が結論になるような仮定を設定して論文を構成する。
２．有意差が認められたデータのみ採用する。
３．有意差が得られた時点でデータ収集を停止する。
４．都合の悪いデータを「外れ値」として削除する。

金を払えばどんな内容でも掲載される「論文誌」も沢山あるらしいです。
厳密な査読を経て出版されているか否かを調べた方が良いと言っていますが困難ですよね。

本書の内容は、マクロの傾向として合っているとしても、全ての人に当てはまるわけではありません。
少し条件を変えると違った結論になるかも知れません。
不特定多数を相手にするときの戦略を練るときに、判断材料の１つにはなりそうです。

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短編集的な感じのテンションで読める！
オモシロ研究を読むのが好きな作者が海外の研究（特に心理学系）をわかりやすくまとめてくれている本。有意、相関などの研究用語にも少し触れられていたり、その研究トピックに関する関連研究（反論論文など）にも触れてくれているので、大学生にもおすすめ！

p.32　いい男あるいは美女が今夜一緒に寝ませんかと言うとどのくらいの人がオッケーするか
男性は女性よりも一般に要請を受ける傾向にあったが、それ以上に興味深かったのは、女性が深い関係を要求するに従って拒否率が上がるのに対して、男性はその逆に深い関係性になるほど承諾率が上昇した。誘いのタイプはデートアパート寝るの3つである。

p.57　ロマンス小説愛読者はコンドームが嫌い
　恋愛のスクリプト[注:恋愛行動の典型的なルールや流れ]をわれわれは、小説や映画で(最近は漫画やアニメなどでも)学ぶ。そして、実際の恋愛においてもこれらのスクリプトを利用することになる。女性においてはロマンス小説がスクリプトを作り出すときに重要になるかもしれないロマンス小説とは、性的な行動も含めた恋愛小説であり、主に女性が読者である。有名なのは、ハーレクインロマンスシリーズで、自分日本を含めた世界中でかなり読まれており、熱狂的なファンもいる。ただ、このような小説を読んで、恋愛スクリプトを形成することには、いくつかの問題点もある。例えばこれらの小説では男性は女性に対して支配的な態度をとることが多く、女性は従属的な地位を地位に置かれることが多い。これは、男女の(恋愛活動も含めた)格差の縮小には、マイナスの効果をもたらす可能性がある。しかし、この研究ではその問題ではなく、もっとストレートの性行動に対する関する問題を扱う。セックスにおけるコンドームの使用の問題である。ロマン小説においては、主人公の男性の関係は情熱的で衝動的なことが多く、それよりそれ故、そのセックス描写においてはコンドームの使用について描かれていない。もし、女性がロマン小説を読んで恋愛スクリプトを形成するのだとすると、コンドームを使用しないセックスが行われやすくなる可能性がある。しかし、性感染症や予期しない妊娠のことを考えるならば、それは適切な行動とは言えないだろう。本研究では、これをロマン小説の読書量と、セックスにおけるコンドーム使用に対する態度と行動を測定することによって明らかにしようとしている。
→予想通り、ロマンス小説の愛読者はコンドームについて、よりネガティブあるいはアンビバレントな印象を持ち、コンドームの使用経験は少なく、将来の使用の動機も少なかった。

p.74　ケビン・ベーコンまでの距離
ミルグラム（Milgram, S.）のスモールワールド実験は心理学の歴史の中で最も有名な実験の1つである。この事件は、ボストンとネブラスカに住んでいる数百人のスタート人物からマサチューセッツ州に住む株式仲介人のゴール人物までいくつの友達の話でつながることができるかを調査したものである。彼はまず、スタートとなる人物にゴール人物を知っているかどうかを尋ね、もし知っていたら直接、その人物に��紙を出す、そして、もし知らなかったら、ゴール人物を知っているような人散った理想の人物、少なくともそこに近づくような人物(ただし、ファーストネームで呼ぶような関係性の人物)に手紙を出して、 ようなお願いを繰り返すと言うものであった。このような実験を行うと26.25%の手紙が最終的にゴール人物のところに届けられたが、その平均経由人物人数は、5.83人であった。これは世界中(この実験では少なくともアメリカ中)の子見知らぬ2人が6人経由する程度の関係でつながっていると言う事と解釈され、話題になり、心理学の授業ではよく取り上げられるネタとなっている。

さて、このスモールワールド事件にヒントを得て行われている1つのゲームに「ケビン・ベーコンゲーム」がある。ケビンベーコンは多作で有名なアメリカの俳優である。これは、ある任意の俳優からスタートし、共演した人物をたどってケヴィン・ベーコンまでつなげていくというゲームである。例えば、ニコール・キッドマン→「インビジブル」→スティーブアルテス→「ピースメーカー」→ケヴィン・ベーコンとつながっていく(この場合、隔たり数は2)。ちなみに、このゲームのアカデミックバージョンとして、ポールエンディシュゲーム

知られている。えんで手話著名な数学者でこの場合、論文の共著者をたどって、彼にたどり着くか試すゲームである。さて、このケヴィン・ベーコンゲームでの平均的な隔たりはいくつになるんだろうか。幸いなことに現代は映画のデータベースが充実しているので、自動的にその隔たりを検索することができる。しかも、これを専門的に行うThe oracle of BACONと言うサイトまで存在する。これを使って、ベーコンと1次、2次…の隔たりがある杯を検索していくとその平均的な隔たりは、2.948となった。 俳優業界は思われているよりもはるかにスモールワールドだったのである。ミルグラムのスモールワールド事件は、心理学とコミュニケーション科学のテキストの定番ネタである。「世界中の誰もが6人程度のネットワークを通じてつながっている」と言うのは、まさに驚くべき現象と言える。→しかし、のちの実験によると、この数は少し怪しいという結果もある

p.86　ダリーら（Daly et al., 2011）は、西欧諸国の幸福度指数や障害幸福指数が自殺率とr=.25~.5程度の相関を表すことを明らかにしており、幸せの地域に自殺が多いこの現象を「ダークコントラスト」と呼んでいる、これも皆これも皆が不幸であるよりも皆が幸せである状況下で自分だけ不幸であると言う「幸せの格差」の顕著化が自殺を増加させるからだと解釈されている。→自殺論

p.101　スマホの会話を聞くのは普通の会話を聞くより迷惑
・ハーフアローグ・フィルタなし（片方の話者だけの内容がわかる場合）で最もエラーが多い
→ 会話の内容が予想しにくいことによる妨害要因と発話タイミングが予測できないことによる妨害回効果がある第二実験第二研究では、会話をフィルタリングし、音としては聞き取れるが、話の内容を聞き取れない状況にして同じ実験を行った。その結果、ハーフアロングによる妨害効果は消失した。つまり、問題なのは話の内容が予想できないことによると言うことがわかった。これは我々が横の人が日本語でスマホで話しているのを聞くとイライラするのに対して、理解できない外国語で話している
場合はそれほどイライラしないと言う現象をうまく説明する。

ところで近年の研究では、スマホでの会話だけでなく、そもそもスマホを見ているだけで認知的な作業に対する妨害効果が生じることが明らかにされている。例えばプシビルスキーとウェインスタイン（Przybylski&Weinstein, 2013）とチェンら（Cheng, Genevie, &Yuan, 2016）は単にスマホがそばに置かれているだけで会話の質(例えば共感、関係の質、信頼)が低下することを、ソントンらを単にスマホが机の上に置いてあるだけで (ノートを置いたときに比べて)、注意課題や認知課題の成績が低下することを示している。

p.170 売り上げと味はメニューの名前で決まる
論文の中で、著者は一言加える場合の一言について、44種類のアイディアを提案している。

1つ目は、地理的一言であり、これは料理や原材料の産地を付け加える方法である。つまり「アイオワポークチップス」「本物のカリフォルニアバーベキュー」なのである。

2つ目は感情を刺激しハッピーな記憶を想起させるようなラベル付の「伝説的チョコレートムースパイ」「クラシックオールドワールドイタリアンパスタ」。

3つ目は感覚的なラベルである「シャキシャキの季節のにんじん」「心のこもった温かい ステーキ」など。

そして最後はブランドラベルである。これは著名なブランドを付与するものである。「ブラックアンガスステーキ」「ジャックダニエルバーベキューリブ」なのである。

さて、もし、このような効果があるのだとすれば、これを学校現場で使わない手は無い。例えば、子供は一般に野菜が嫌いだが、学校のカフェテリアで出す野菜に「かっこいい」名前をつければ子供はそれをより美味しく感じる、喜んで食べるようになるのではないか。と言うことで、ワンシンクら（Wansink, Just, Payne, Klinger, 2012）は、ニューヨーク州の5つの小学校の食堂で、学校野菜煮「X線にんじん」「パワーパンチブロッコリー」などの名前をつけて提供することを試みた。その結果、予想通り、子供たちの野菜摂取量が増加した。

p.174　マックのラベルがついていると美味しく感じる
　ハンバーガーではマクドナルドの放送の影響はなかったが、そのそれ以外の食品（チキンナゲット、フレンチフライ、ミルク、にんじん）においてはマクドナルドの包装のものが有意においしいと評価された。

次に、家に何台のテレビがあるのかということと子供がどのくらいの頻度でマクドナルドを食事するかについて、両親に評価させたものとマクドナルドに対する嗜好の程度の関係について分析を行った。 その結果、家にテレビがあればあるほど、またマクドナルドのでの食事が多いほど、マクドナルドの商品をおいしいと判断することがわかった。

キャラクター商法は、売り上げを伸ばしたり味の認知を変化させるのだろうか。これを検討したのがロベルトら（Roverto et al., 2010）である。彼らが、クラッカーなどの商品選択において、人気のあるキャラクターがパッケージに書かれていると、子供はそれを選択しやすく、また、おいしいと感じる傾向があることを示している。この傾向は特にカロリーが高く栄養価が低いジャンクフードで顕著であった。ジャンクフードは子供の肥満の原因であるので、彼らはジャンクフードのパッケージに人気のキャラクターを使うことは公衆衛生上問題であると指摘している。

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すごくバカバカしいテーマを真面目に研究した論文を、真面目に整理して解説した本。

あまり、「なるほど」と唸るような内容ではないが、暇つぶしにはなるかな？？