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別の生き物になりたい。フィットネスジムでストイックに筋トレで励む主人公は、真面目でどちらかというと地味な女性。スミスというのは筋トレ用のマシンの。ストイックに筋トレをしていた主人公が、誘われて別のジムに移籍し、ボディービル(BB)大会、しかも女性BB大会を目指してどんどん変わっていく過程が成長物語のようでもあるが、そんな百田尚樹のような単純なお話しでもない。主人公は、大会での成功を目指して他人の作った基準にしたがって変わっていくのだが、どこか違和感を感じていて、最後には筋トレを始めた原点に戻る。他人や社会が押しつける「成功」の基準に駆り立てられる現代人のカタルシスが語られている様に感じた。
などと小難しいことを言わなくても、普通には知られざるBBを楽しく垣間見ることができる稀有な小説でした。また筋トレ始めてみたくなる。
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ボディビルの世界をこの本で初めて知って,そのストイックさに驚いた.
筋肉増強の魅力に取り憑かれた主人公,引き抜かれボディビル大会を目指し始めてから,こちらもどんどん物語に引き込まれ,そして驚愕の舞台でのふるまい.何よりも自分でいることを選んだ主人公のタフさに,爽やかに吹き抜ける風を感じた.
肉体改造の面白さとジェンダー警鐘,淡々とした文体ながら奥深い小説だった.
芥川賞は取れなかったけれど,賞以上の面白さがあった.
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図書館で借りたもの。
U野は筋トレに励む会社員。自己流のトレーニングをしていたところ、O島からボディ・ビル大会への出場を勧められる。大会で結果を残すには筋肉のみならず「女らしさ」も鍛えなければならず…。
今作でデビュー。
初読みの作家さんだったけど読みやすかったし、面白い表現が多かった。
スミスとはスミス・マシン(バーベルの左右にレールがついたトレーニングマシン)のことらしい。
U野のストイックさがすごい。
将棋盤のように見事に割れた腹筋…。
大会では女性らしさも求められる。
髪を伸ばしたり、ピアスを開けたり、脱毛や日焼けサロンに通ったり…。
筋肉を鍛えるだけじゃないんだな。
“女は、審査項目が多いということ。そういう意味で、この競技は「クラシック」なのだ。”
“この競技は世間と同等か、それ以上にジェンダーを意識させる場なのだ。「女らしさ」の追求を、ここまで要求される場を、私は他に知らない。”
決勝の場で女らしさを取っぱらったU野。
「やったるぞ!」という感じではなく、淡々としているところが良い。
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石田夏穂の我が友、スミスを読みました。
ジムで毎日筋トレしているOLが見込まれてトップビルダーの居るジムに移ります指導の下ボディービルの大会を目指します。
もとミスユニバーサルの日本代表のトレーナーの指導でドンドン変わって行くのですが、ボディービルの世界を知ることが出来て中々面白かったです。思わずゆーちで大会を観てしまいました。
凄い筋肉です
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なんの予備知識もなく読み始めたら、なんとボデイビルの話だった。
うっかりと、ボデイメイクの世界に入り込んだ女子が、競技への参加をきっかけに成長していくお話し。
普段、スポーツジムで見かける攻めてる人達も、こんな世界を生きているのだろうか?
厳しく取り組む、その世界は、私がやりたいところ、到達したい世界ではないなと、改めて思った次第。
でも、お話としては面白かった。
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筋トレにハマって、仕事と筋トレを両立すべくどちらも集中、身体は絞れ、食事入浴の効果を再認識。筋トレは若さより経験や継続する気持ちの問題と悟り、メンタルまでたくましく、なにやらいいことばかり。しかし、後半、ボディ・ビルの大会を目指すことから、見られる女性の側面を強調するため、ジムの指示は、髪の手入れ、ピアスの穴開け、脱毛、日焼け、エクステンション、12cmハイヒールなどなど、広範囲に渡る。なんだか違うと思って行動に出て良かった。筋トレした身体は女性の場合、服を着たらしゅっとした人くらいの目立たなさ。人知れずそれをキープする苦労が楽しいジム通いを応援しようと思える話でした。
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ページをめくるといきなり筋トレの描写が始まる。
それもかなり詳しく、器具を使った本格的なトレーニングであるとわかる。
主人公が頑張っているのだが、そもそもジムについてあまり詳しく知らないし、主人公が男性なのか女性なのかもわからず、人の名前もU野だとか、O島などと記号で表記しているので、ややこしくて馴染めない。が読み進めるうちになんと引き込まれているのである。
単に筋肉を鍛えていただけの主人公が、ボディビル大会への出場を目指し、ストイックな筋トレと食事管理に明け暮れる。
さらに驚くべきは、大会で優勝を目指すには、女も磨かなくてはならないと。
ピアスに脱毛、日焼けサロン、そして大会に必須の12センチのハイヒール。
普段すっぴんで、スニーカーで過ごしている主人公には難題山積み・・・
筋肉を鍛えるだけではだめなのか。
指先から足元まで女性らしさをアピールするだなんて。
ふ~んである。
かくして大会に臨んだ彼女は、努力の甲斐があったのか。
まあまあそういう結末ですか。
いいんじゃないでしょうか。
知らない世界を見せてもらいました。
ちなみにスミスとは、筋トレの器具のことです。
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Gジムにあしげく通うU野さんがひょんなことから女子ボディービルの大会にエントリー。
プロフェッショナルとしてそこで筋肉とは無関係な美意識や順応性を試されることになる。
クレバーな息遣いが聞こえそうな濃密な140ページ。
大いに愉しみ、大いに胸打たれた。
そこには没頭があった!!
わーすげー、めっちゃおもしろかった!!!
ボディービルダーらしい?ちょっと大袈裟でパワフルでユーモラスな言い回しが終始愉しくて
主人公の即!実!践!な行動力と生真面目さに惚れ惚れ。
勝手に課された曖昧な社会的役割への違和感とか、外見に関するある羞恥心の部分は僕も同類だったし、とかく至言で溢れてた。
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文芸誌すばる3月号で著者と岸本佐知子氏で対談をしていた。著者の程よい気抜け感と純朴さがとても好印象で、この本を手に取る。岸本氏もかなり推し褒め。
まずはボディビル女子を題材にする、その企画力に個人的にそそられてしまう。
筋トレからボディビル大会にチャレンジする主人公U野の気持ちが独白で綴られ、U野の気持ちの変化や周囲の様子など、現実味があって浮いてない。わかる、わかるー
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ハードボイルド筋トレ小説。筋トレしてないと伝わらないであろう表現が多く、思わず笑ってしまう文章が多かった。砕けた文章なので筋トレしてなくても楽しめるが筋トレしていれば尚面白い小説。
一見ユニークだけど女性の筋トレに対する偏見や、筋肉の評価であっても女性らしさが求められるボディビル大会に対して主人公が葛藤しつつ戦う、社会派な小説でもあると思う。
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「別の生き物になりたい」と通い始めたジム。筋トレだけに集中し、自分を取り巻くあれこれから解放される心地よさに身を委ねていたU野はある日、ジムでスカウトされボディビルの大会に出場することになる。元来の真面目さと集中力で日に日に身体が出来上がっていくが、女性ビルダーの大会で勝つにためは、筋肉を鍛えるだけではない「女らしさ」
が求められることにモヤモヤしたものを感じる。
ロングヘア、ピアス、脱毛、タンニング、12センチのハイヒール、美しい動きと満面の笑み……
標準仕様のように求められるあれこれに真面目に取り組んだU野が大会の本番でとった驚きの行動とは。
芥川賞候補作にしては珍しくとっつきやすい作品。筋トレをする人の心境や筋肉の奥深さ、そしてボディビル大会の知られざる姿など、まさに筋肉文学と呼ぶに相応しい。
日常からの逃避で始め筋トレにハマっていった主人公が、突き詰めていったところでたどり着いたのがやっぱり窮屈な決まりごとだったという事実。
それに気づいて彼女がとった行動が潔くてラストはスッキリした思いになる。
競争とか、優勝とかじゃなところで戦って勝利したU野は前よりずっと強くなったと信じたい。
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ハードボイルドな?筋トレ小説。
テンポ良く無駄なく読みやすい中編だけど、
筋肉マシマシの長編化や映像化も面白そう。
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たまたま、パーソナルトレーニングでスミスマシンのスクワットで絞られた直後に読みました(苦笑
筋トレにはまってしまった人は特に面白く読めるし、「クラシック」な世間に関するおさえた描き方がよかった。
芥川賞候補作らしくない(よい意味で
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キワモノ好きとしては知らない世界を知る楽しさを十分に堪能できた。とはいえ、最後まで読めば、単なるボディビルに留まらず、結構深い話で驚く。
次回作はどういう題材を書かれるか分からないが、期待して待ちたいと思う。
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主人公の女性が、「ある競技」を通して成長
していく物語です。
と言ってしまうと、ありがちな内容に思えま
すが「ある競技」とは、ボディービルなので
す。
そしてスミスとは、筋トレマシンの名称なの
です。
ボディビルの大会に出ると決意した主人公が
ストイックに身体を鍛え、絞り、身体を作り
上げていく過程には、生き方の根幹を突きつ
けられます。
そして大会当日に主人公が選んだ生き方には
ある種の「悟り」に通じるものを感じます。
どんな競技、種目であってもそこに生き方に
対する悟りは必要であり、自然に生まれてく
るものでもあるのでしょう。
生き方とは何?を問い直す一冊です。