紙の本
日本経済の停滞は危機的
2022/05/29 17:10
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投稿者:つばめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書はダイヤモンド・オンライン、東洋経済オンライン、現代ビジネスに公表された内容を基にしている。「日本経済の停滞が、危機的な段階にまで達している。」というのが、著者の問題意識である。日本のビッグマックの価格は、アメリカの6割程度であり、これが「安い日本」と言われている現象である。財・サービスの価格が安いこと自体が問題ではなく、賃金が安いことに問題がある。賃金や一人あたりGDPでみても日本の数字は低い。時系列で比較すると、日本はほとんど増えていないが、アメリカは顕著に増えている。韓国や欧州諸国も増えている。アベノミクス以前の2010年には、日本の地位はもっと高かった。アベノミクスの期間に日本は急速に貧しくなった。「円安の麻薬効果」に依存し、円安になれば企業の利益が増えるため、企業が技術開発や新しいビジネスモデルへの転換を怠った。その結果、賃金が上昇しなかった。賃金を引き上げるには、技術開発によって生産性を高める必要がある。日本の現在の状況は極めて深刻だが、決して克服できないものではない。ただし、その解決法を実行に移すのは、絶望的と思えるほど難しい。以上が著者の見解である。
著者の著作には全て索引がつけられ、丁寧な本の作りに一家言の持ち主であるが、今回の著作では著者らしくないミスが見られる。(出版社の校正ミスかもしれないが)第4章のタイトル「物価が上がらないのは、賃金が上がらないから」とすべきところを「賃金が上がらないのは、物価が上がらないから」と真逆になっている。(これには正誤表が挟み込まれている) <この図には示していないが、台湾もほぼ同様の傾向だ。>との記述があるが、図には台湾についても図示されている。
紙の本
日本の賃金は上がらないのはなぜか。明確な答えがここにある
2022/03/15 18:19
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投稿者:もこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
サラリーマンの賃金が上がらない中、原油価格の高騰と円安で食品など多くの物が値上がりし、日に日に生活が厳しくなっていく。その原因はなぜか、日本は何をすれば良いのか。現実を直視するのは辛いが、明確な答えがここにある。
サラリーマンの味方の政党が現在の日本にはない、と言う指摘にもハッとさせられる。難しい内容なのに身近な例で説明され大変わかりやすい。
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円安が加速している。2022年3月28日の外国為替市場で円相場は一時1ドル125円となった。借金漬けの放漫財政の悪影響である。数少ない希望は円安を悪いことと評価する論調があることである。新聞記事では「円安効果は一部の輸出企業や富裕層に限られる半面、その痛みは資源高もあいまって個人や中小企業に広く及ぶ」とある(大塚節雄「円安悪循環、警戒強まる 為替の「理論値」も急低下」日本経済新聞2022年3月30日)。輸出で稼ぐ昭和の経済感覚から脱却し、消費者感覚に立っている。
昭和の感覚では円安では輸出が伸びるため、円安を歓迎する傾向があった。海外から日本政府が意図的に円安にしている為替ダンピングと非難されることもあった。円安を悪と見る論調が登場したことは価値観の転換を示す。
円安で利益を受ける層がいれば円高で利益を受ける層もいる。昭和は輸出産業が基幹産業で円安の恩恵を受ける層が厚かったと言える。産業構造がサービス業にシフトしたことで変わっている。しかし、この問題を単に多数派が変わったと見ることは浅薄である。昭和の価値観の最大の問題は、輸出産業が基幹産業であり、その発展により、消費者にもおこぼれが来るのだから我慢しろという、全体最適のために個々人の犠牲や負担を正当化する全体主義の論理である。
消費者の立場として調達力が下がるから円安は悪という主張が堂々と出るようになったことを評価する。リーズナブルで良いものを購入したいという消費者利益を犠牲にして、消費者も国内産業の保護育成に協力しなさいとの論理は、昭和の全体主義になる。
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これから社会に出ようとする学生、現役ビジネスマン、リタイアして株式投資で生計を立てている投資家…全ての人、必読の書だと思います。
小難しい事を言う様ですが、私が読後に率直にその様な感想を抱いた理由は、過去数十年からいま現在の、そしてたぶん将来に渡っても決して「景気が良くならない、貧困化する我が国」を取り巻く状況の「理由」を、この書籍がわかりやすい図表をもとにして納得させてくれた、と感じるからです。
もちろん「納得できて良かった」様な過去、未来では決してなく、まだまだ落ち込んでいくであろう最悪の状況、を明白に知らしめ、個々人が出来ることは何か?政治に期待すべきことは何か?を教えてくれた様に思うからです。
人によっては「そんな事わかりきってるよ」と言う意見もあるかもしれません。ただ、日本の景気後退が具体的に何が原因なのか?という事を改めてわかりやすく教えてくれる、良書であると思います。
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アベノミクス、黒田緩和による円安の麻薬効果に依存したために、日本が貧しくなった!技術開発やビジネスモデルの転換を怠った!
円安で企業の利益が増え、株価が上昇すれば、皆ハッピーのように見えるが、、、円安で企業が儲かるには、賃金は固定しないといけない。
固定された円建ての賃金をもらった労働者は、海外で買えるものが減ってしまう。テイの良い賃金カットに会ったのと同じ!輸入物価の高騰によるインフレにも苦しめられる。
アベノミクスの本質は、賃金カットによる株価上昇だ!!
賃金が上がるから物価が上がるのだ!だから、賃金そのものを引き上げる政策が行われなければならない!
岸田政権の「分配なくして成長なし」は、逆。
「成長なくして分配なし!!」
経済敗戦、デジタル敗戦、コロナ敗戦!!日本人は、いつになったら目覚めるのか!
世界の中での日本の地位が低下していることを、正しく理解し、これまでの仕事を惰性的に続けるのではなく、新しい仕事のために能力を高めなければならない!
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納得する部分は多々あったが、もっと早く警鐘を鳴らす必要があったのでは…。遅くとも「失われた20年」と言われた時期に。
韓国にまで抜かれ、安倍が抹殺されてからアベノミクスを批判するのでは遅すぎる。(著者がもっと前から批判していたのかは知らないが)日本の若者の留学が減ったり論文の引用数が低下したりしているのは、私でも数年前から聞いている。
また派遣の法律がどんどん適用範囲を拡大させたのも原因の一つでは…。企業からすると都合が悪くなれば調整できる派遣社員の存在は正規社員の給与上昇の牽制にもなっていたと思う。
イイ時を享受した年老いた政治屋が牛耳る日本は茹でガエル状態で、このまま若者世代にツケを先送りするのが怖い。
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048
政治は、円安による安易な利益増を求める
054
アベノミクスの本質
賃金を下げて、株価を上げた。
087
賃金が上がらないのは、物価が上がらないから
094
サービス価格は、アメリカでは上昇を続けたが、日本では停滞した
106
新しい資本主義は、資本なき資本主義
GAMMAと情報処理産業
GAMMAの時価総額は
日本の上場企業全体の1.4倍
108
資本なき資本主義は、データ資本主義
124
情報産業が金融に参入する
ファブレス化したアメリカの製造業
ファブレス 工場を持たない製造業
アップルの驚異的な成長の基本的な要因は
ファブレス化
こうした企業は、日本では
キーエンスなど、ごく少数
130
アメリカの生産性が高いのは、ファブレス化したから
166
2003年から本格化した為替介入
169
アベノミクスによる円安が、日本を貧しくした。
227
老後生活資金は、3,000万円必要?
高齢者の9割は賄えない
270
政府の役割は補助金をバラまくことではなく
既得権益と戦うこと
274
劣化した政治を変えなければいけない
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この本を評価するには、円安の是非を問う必要があり、それに対する政策介入の成果を確認する必要がある。円安は日本にとって良いのか、悪いのか。見方や立場によっては円高だって悪者にされるのである。本著の立場は、通貨の相対的価値の前に「良い」「悪い」と修飾語をつける事。
外国為替市場で円に対する需要が増え、ドルに対する需要が減るので、為替レートは円高になる。
政治には円安を求める傾向がある。円安になれば輸出企業の利益が増え株価が上昇するからだ。大企業を優先するなら、円安誘導が正しく、しかし、それにより輸入物価が上がり、コストプッシュインフレでは賃金も上がらず生活は圧迫される。国民には嬉しくない「悪い」円安だ。
GDPの議論に入る。そこから産業構造の比較へ。改めてショックなのは、本著で試算したアップルの平均年収で4年働けば、日本の40年に相当するという事実。野球選手や投資で儲ける人と比較しているようなもので、アップルに務められる希少性を考えればこんな比較に意味がないとも思うが、問題は、アップルに限らず、平均的に日米賃金格差がある事だ。
暗い話題が続く。1965年以降に生まれた人は、70歳にならないと年金を受給できないように、支給開始年齢の引き上げが行われる可能性がある。高齢者への生活保護費が拡大しそのために消費税率引き上げが必要である。転職により、自ら退職金を減らす若者が増えている。流動化が賃金向上を呼び起こすなら良いが、そうはならない。確定拠出年金のような予防措置でお茶を濁される。給付時の年齢や課税の得失を考えれば、これも巧妙にB層を取り込んだものと思えなくもない。かくすればかくなるものと知りながら、やむにやまれぬ、弥縫策。
生産性向上とかデジタル化とか大学が大事とか言っているが、迂遠、他人事。高齢に日本を語らせても、実行策は乏しい。詰まずにやり抜くには。
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わかりやすく日本の未来に警鐘を鳴らしてくれている1冊。タイトルではその日が「近い将来」であるかのようだが、もうほぼ通告待ちではないかという厳しい現実。ただこの現実を直視し、日本人は立ち上がるしかない!!
全国民必読書認定(笑)
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https://presidentstore.jp/category/BOOKS/002451.html ,
https://president.jp/category/c03668
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“ジャパン・アズ・ナンバーワン”は、今は昔。近年は、経済成長が止まり、給料も物価も上がらない。そんな“安い日本”の原因について、わかりやすく解説する書籍。
マクドナルドのビッグマック価格を日米で比較すると、日本はアメリカの62.8%と安い。価格が安い国は賃金も安い場合が多く、日本の賃金はアメリカの55.5%。欧州諸国や韓国よりも低く、日本は賃金水準でOECDの最下位グループにいる。
日本のビッグマック価格の低下は比較的最近のことだ。2012年は、アメリカとあまり変わらなかった。つまり日本は、2013年以降のアベノミクスの金融政策で為替レートを円安に導いたため、国際的に見て物価や賃金が安くなったのだ。
政治が円安を求めるのは、円安で輸出企業の利益が増え、株価が上がるからである。そして企業は、ドルで評価した場合に労働者の賃金が安くなること、輸入物価の値上がりを消費者物価に転嫁することによって、企業利益を増加させている。
技術革新などで生産性が上がれば、企業の利益は増え、株価も賃金も上がる。1980年代頃までの日本はそうだった。だが、1990年代中頃から、円安になれば企業の利益が回復するため、技術革新を怠った。そして日本の労働者の賃金を抑えることで、株価を上げた。これが、アベノミクスの本質である。
アメリカの「情報・データ処理サービス」部門の2020年の1人あたり賃金は、全産業の平均賃金の2.6倍と高い。こうした新しい産業が成長して、アメリカの経済を牽引している。
アメリカで賃金の伸び率が高いのは、新しい産業が付加価値の高い経済活動を行っているからだ。日本は、そうした変化がなく、古い産業構造が続くため、経済が停滞し続けている。
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●=引用
●日本では、人口高齢化に伴って、 労働力不足が今後さらに深刻化する。多くの日本人は、日本が認めさえすれば、海外から労働力を日本に呼ぶことができると考えている。 しかし、日本円の購買力が低下し続ければ、日本に来て職を得るのは、魅力的なことではなくなる。 だから、外国人労働力に期待することはできなくなっていく。 例えば、介護人材を外国人労働力に求めるには難しくなる。 逆に、日本人が海外で仕事をすれば、日本に戻ってから 豊かな生活をすることができる。 だから労働力が流出する。日本人が、外国で介護を行うような時代になるのだ。
●日本が長期停滞から脱却するには、日本で技術革新がなぜ90年代以降進まなくなったかを解明することが重要だ。その理由として考えられるのは、すでに述べたように、円安になれば企業の利益が増加することから、円安を望む声が強まり、経済政策としても、そのようなバイアスが生じたことだ。 そして、円安に安住することによって、技術革新を怠ったのだ。安易に円安に頼る経済政策からの脱却こそが、日本再生に向けての第一歩だ。
● つまり、 産業構造の変革がなければ、 健全な物価上昇はありえない。 しかし、産業構造の改革は、金融政策で実現できることではない。 だから、日本銀行の消費者物価目標は、金融政策では実現不可能なことなのである。
● それだけではない。 日本国内に留まっていても問題だ。日本は多くのものを輸入している。 それらの価格が高くなれば、日本人の生活は貧しくなる。 実は、このことこそ、今日本が直面しつつある 問題だ。 2021~22年にかけて輸入物価が急上昇している。これまで企業は輸入物価の上昇を国内物価に転嫁してきたが、今後はすべてを転嫁できるかどうかわからない。企業が負担すれば、企業の利益が減る。これまでは円安が企業の利益を増やした。 今の円安は、企業の利益をも圧迫する可能性が高いという意味で「 悪い円安」だ。 仮に国内物価に転嫁ができたとしても、それで問題が解決されるわけではない。 これは実質賃金を下落させるからだ。
● 結局のところ、つぎのようなことになる。日本で物価が上がらないのは、賃金が上がらないからだ。そして、賃金が上がらないのは、生産性が上がらないからだ。 生産性を上げるためには、技術開発を促進することが必要だ。 デジタル化はその重要な手段だが、それだけではない。さまざまな面において新しい技術を導入し、生産性を引き上げなければならない。 そのような努力を行なわずに、日本の物価を上げることはできない。
● 結局のところ、アメリカで賃金の伸び率が高いのは、情報産業のような新しい産業が登場しているからである。 その部門が付加価値の高い経済活動を行っており、それがアメリカ経済全体を牽引しているのだ。それだけでなく、雇用者がその部門に移動したことが、経済全体が成長した重要な原因だ。 (略)日本停滞の原因は、産業構造が古いタイプのものから変化していないことだ。 終身雇用や年功序列は崩壊しているのに、さまざまな制度がその当時のままに残り、人々がその当時 して同じメンタリ��ィーを持ち続けている。この結果、会社の外の条件変化に鈍感になる。
● 製造業においても、経済価値を生み出しているのは、今や工場や機械ではない。そうではなく、開発や設計などになっている。つまり「 工場という資本のない製造業」に移行しているのだ 。
● アップルの場合、売上に対する付加価値の比率が高いのは、売上に対する原材料費などの比率がきわめて低いからだ。 こうなるのは、アップルは製造を行なっておらず、 設計と販売に特化しているからだ。すでに述べたように、こうしたファブレス( 工場なし)は、アップルに限ったことではない。 半導体の エヌビディアも、設計に特化したファブレス企業だ。また EV( 電気自動車)メーカーのテスラの付加価値は、ハードウェア より ソフトウェアで生じている。 アメリカの製造業は、モノづくりから情報に向けて大きく シフトしているのだ。
● まず、従業員一人あたり売上を見ると、 東芝はアップルの約10分の1しかない。 東芝はさまざまな製品を作っているが、高い価値のものがない。それに対してアップルは、他のメーカーが作れない製品を、集中して作っている。 そして、売上のうちの付加価値の比率が、東芝はアップルの半分程度でしかない。
● 賃金停滞問題は、生産性が高まらなくては解決できない。経済の実態面では生産性を引き上げることによって しか、賃金を引き上げることはできない。生産性を引き上げるために最も必要なのは、デジタル化を進めることだ。
●それが実現すれば、いま銀行の支店や官公庁の窓口で紙の書類と奮闘している人たちの仕事はなくなる。その人たちが生活するためには、新しい別の仕事を見出さなければならない。それは容易なことではない。デジタル化という技術革新によって経済全体の生産性を上げるとは、そうしたプロセスに取り組むことなのだ。 日本は、これまでの数十年間、そうしたことに取り組まず、これまでと同じ仕事のやり方を、文字通り「十年一日のごとく」 続けてきた。 その結果、10年前と同じような生活を、大きな波乱なしに続けてきた。「生産性が低下し、賃金が低下を続けている」とは、そのようなことなのである。
●これらを考慮すると、実質賃金を今後 20年間で 34% 引き上げるのは、絶望的と言わざるをえない。 こうした状況で「等しからざるを憂えず」と言っていられるだろうか?国民の不満は高まるのではないだろうか?こうした事態を一変させるためには、これまでとは異なる強力な成長戦略を実施する必要がある。そうしない限り、 いかに分配を適正化したところで、「貧しさを分かち合う」という結果になってしまう。
●しかし、1割を超える保護率は「 例外的」とは言えない。それは「普通のこと」と 言うべきものだろう。つまり、将来の日本社会では、高齢者が生活保護を受けるのが「普通のこと」になるわけだ。日本社会の様相は、現在とは異質のものになると考えざるを得ない。
● これまでの仕事を惰性的に続けるのでなく、新しい仕事のために能力を高めなければならない。それには勉強が必要だ。 そして、生産性向上のために真剣な努力をすることが必要だ。
● 賃金を引き上げるための方策は、付加価値を引き上げることしかない��� それには、売上を増やし、原価を減らす必要がある。さらに、技術革新を実現することだ。 そして、経済全体として、高度サービス産業が成長し、新しい産業構造に向けて経済が変わることだ。 こうしたことに向かって真面目な努力をしない限り、 賃上げが実現できるはずはない。
●生産性向上のためには、 既存技術を活用するだけでは不十分で、技術開発が必要だ。