紙の本
PTAという任意団体
2022/03/17 16:43
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投稿者:nekodanshaku - この投稿者のレビュー一覧を見る
PTAというものに関与したことはなく、子供の成長過程で、なんとなく横目で見ていた気がする。小学校と地域社会という枠組みの中で、目の前にしている子供たちが、そうしたら少しでも幸福になることができるかを、現状認識の上に、それを実行する任意団体がPTAだという。大人の交流と共同性の確認する場ではない。自発的に作られた任意団体である以上、強制加入であってはいけない。そしてPTAが行うのは労働ではなく、活動であり、対価のないボランティア活動である。家庭を犠牲にする必要のない活動なのである。
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タイトルに惹かれて手に取りました。
学校に勤めていながら、参加する保護者の動機がいまいちつかみにくい「PTA」という組織。
クラスから何人ださなければならない、という「義務」に対して嫌悪感を隠さない保護者の声も耳にする一方で、思わず目を疑うくらい(失礼)生き生きとした表情でPTA活動に精力を注いでいる保護者の方もいらっしゃいます。
毎年の活動内容を正確に踏襲して、遺漏なく業務を遂行する(そしてそれが求められる部分もあるのでしょうが)PTAの活動と、それによって強いられる「不必要な(現代の生活様式とは合致しない不合理な)負担」を目にした筆者が、政治学者という視点から、自身がPTA会長を務めた三年間を振り返った作品です。
PTAは「ボランティア」による「任意団体」であるので、参加する「義務」は生じない、という正論は確かに溜飲が下がる思いがしましたが、一方で「これまでの活動にプライドを持っている現役のPTA役員」にとっては聞き捨てならないセリフとなった、という感情論も理解できないわけではありません。
PTAに参加してくれている保護者の方々は、決して「悪意」から負担を強いたり、仕事を強要したりしているのではなく、あくまで「善意」から「平等(この言葉をPTAのようなボランティアの任意団体で使う事自体が誤用なのだと筆者は主張していますが)な仕事(本来は、報酬があるわけではないので”仕事”ではなく”活動”というべき)分担」をお願いしているにすぎません。
また、筆者の過激な思想(言動)は、ときに町会などPTAのOBOGの方々からの反発を招くことにもつながります。
暴走気味の筆者の振り返りから、
・参加する人だけでなく、参加しない人も尊重する集団としてのPTA
・企業(営利目的の仕事)ではないので、自分の主張を聞いた時に「相手がどう感じるか」ということも考える必要がある
・「あの会長だからできた」という個人のキャラクターに紐づけられる特別な例とするのではなく、誰が担当しても継続して引き継がれるシステム・雰囲気を作る必要がある
という点が強調されているように思いました。
筆者の活動が「最適解」というわけではないと思いますが、PTAという組織を「生活の延長」として認識し、不必要にストレスを溜めない生活を(家庭も、地域も、学校(教職員)も)送れるようにしたい、と思います。
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タイトルからは、政治学者がその知見からPTAを改革する!という話かと思ったら、思ったよりそうではなく、自治というものに対しての正論vs人間、という構図の話であった。常に作者が反省、反省を繰り返しながら、少しずつPTAは変わっていく…が、新たな課題の出現による再反省や、なくすべきと思っていたものの意外な存続意義、そしてコロナウイルス…という、各ステージごとに課題、悩みが巻き起こってとてもおもしろかった。
特に、従来PTAをやっていた方への敬意、という点は、組織があくまでも人間の善意で運営されている、ということを痛切に感じさせるし、正論だけでは渡れない世の中の構図が見える。
自分としてとても共感できるのは、自分が参加していた地元の町内会や青年会といった非営利的な活動に関して、少なからず同様の構図が見られたからだ。その場合重要な、最後に書いてある自治のための不文律を意識しながら今後の活動を行いたいと思った。
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現代のPTA問題をコミカルに描いた私小説的な側面ももちろん面白かった。ただし、組織論の副読本として読むと、著者のいいたいこともより鮮明になると思う。それは一言でいうと先人へのリスペクトを持てということ。もう少し組織論に引きつけていうと、組織的慣性によってのみ維持されているとみえる旧来的な施策にも、表面に上がってこない裏のニーズがある場合があるし、過去の一時点では表面の部分でも合理的であった可能性があるということ。
その他に面白かったのは補佐役としての久部君の存在。組織にナンバーツーを置くのは分派を防ぐために有効なのだなーと思った。不満や反感も主流のラインで吸収してしまうシステムすげえなーと。属人的なご人徳もあるんだろうけど。
なにかで連載していたときにジェンダー的な観点から批判されていたがあの批判は当たらないなーと感じた。
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がんじがらめの制度や仕組みで成り立つPTA改革に政治学者が挑戦!何をどのように変えていったのかが整理された書かれているわけではないが、様々なエピソードを通して改革への基盤を築き仲間を作っていった様子が伝わってくる。立場や考え方が多種多様、正論が通用しない世界での3年間の奮闘、お疲れさまでした。タブーへの挑戦になるかもしれないがドラマ化してほしいなあ。
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任意団体でありボランティアのはずのPTA。多くのママさんを戦慄させる役員決め。政治学者が会長になり組織を改革していく体験談。そもそものPTAの目的に辿り着くまでの感動の3年間。
小学校のPTA。どの役をやったかのポイント制。前例踏襲主義。周囲の反発を買いながら少しずつ会長は落としどころを見つけていく。そして突然のコロナ禍。1度もが学校に行けない新入生とその親のケア、これぞ正にPTAの役割。
4月から子供の高校の父母の会役員になったので実に興味深く読むことができた。
本書のきっかけは毎日新聞の小国綾子さんの記事。お子さんのアメリカの少年野球を描いた「アメリカの少年野球、日本とこんなに違ってた」の作者。こちらも楽しく読んだ記憶があり、本書とどこか似た空気、民主主義の萌芽が感じられる。
実際、ボランティアという名の強制的な役割を押しつけられる親は多いことだろう。そもそもの原点に戻り、学校と生徒をつなぐやりがいある組織のため、有意義な本でした。
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女性だらけの中に居ても全く苦痛では
なさそうで、普通に会話のできる
お父さんってたまにいらっしゃいますね。
PTA会長してくれたりもします。
PTA、スポ少役員、子供会、自治会、
無償なのに必ず一回はしなければいけない
役が多すぎます…せめて楽しくできたら。
そんなふうにちょっとずつPTAを
変化させていったこの方、すごいなと思います。
ほんとに。
引っ越すかもしれないとか親の体調が
とか、色んな嘘を重ねて
役員を拒否しつづける方もいらっしゃいますが
子ども関係に関しては、
楽しかったらやりたいっていう
お母さんも割といると思っています。
なのにいざ決める日となったら
どんよりした空気、
役にあたったら損•悲惨みたいな。
毎年どうにかして〜誰か立候補して〜と
思いながらその日を乗り切っています…
(必要回数はちゃんとしています)
前の方から教わった通りに、引き続きをして。
こんな繰り返しです。
岡田さんみたいな方が登場しない限り。
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PTAに関わる全ての人に読んでほしい一冊。
無意味な労働を理不尽に強制される恐怖の組織、PTA。皆が不幸な現状を支える頑強な前例踏襲主義に政治学者である著者が斬り込む。ただ批判するだけではなく、実際に組織を運営しながら理想と現実の乖離に直面し、葛藤の中で改善していった記録。
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この学校のPTAって本当に大変、、、と思った。
うちの子供の学校はかなりスリム化されていたんだなーと実感。(PTAの活動内容に関しては)
PTA会長の役割って見えないところで、たくさんあるのだな、頭が下がります。
共感したのは、PTAの役員会に出るために、小さいを祖父母を預けたりするのは本末転倒だと思う。
子供のためといいながら子供を犠牲にするようなことは本当にやめてほしい。
サークル的に気軽に子供のために参加できるような気楽さがあれば、、、と思うがなかなか難しいのかな。
世の中のPTAに関わる保護者の負担?がなくなって、楽しくできたらと思った。
コロナの時に、新1年生入学前プログラムというのはいいなと思った。入学前いろんなわからないことがあるが、知り合いがいないとなかなか聞けない。(私自身もそうだたったので)そんな保護者が結構いるので、やってもらえたらありがたいと思った。
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今でも変わってないところ結構あるんだなあ。ベルマークが壮大なガス抜き機構であったのを思い出しましたよ。殿方はいいなあ。
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政治学者のPTA会長の奮闘記。
ときおりPTAの意義や歴史にも触れてくれるため、PTAの現状を理解するのに非常に参考になる。
しかし、リーダー気質の大学教授とオペレーター気質の保護者たちの対立が、日本の縮図のようでおもしろかった。
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管理職としてしんどいときに読んだせいですごいなあという感想しかない
面白いのはときどき反省するところ
ベルマークの切り取りなど無駄の極みと僕も思っていたが、なるほどと思わせる
政治学者が、というところも面白い
政治学者が政治家にではなく、PTA会長なのがよい
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PTAなるものは、嫌々引き受ける誰も得しない組織だとご多分に漏れずそう頭ごなしに考えていた私ですが、そもそもなぜみんな損するのに存続しているのだろうと素朴な疑問はあったところ、ネット記事で紹介されていた本書に出会った。
著者の孤軍奮闘記の要素はありながら、PTAという組織の在り方、本来の意義といった本質的なところにも考察しており、さすが学者さんというところでしょうか。
特に琴線に触れる個所としては、
オペレータとして振る舞うリーダによるすれ違い。リーダーとは不透明な事態と環境をよく観察して、現在の立脚地点を明確に言語化し、持ちうる条件で最大限の対処を行い、同時にメンバーから意見を引き出して、不完全譲歩王尾の世界で苦しい「決断」を行い、その結果を真っ先に受け入れる者。一方、オペレータは既存の手段や手順、慣習に沿って求めれらることを極限まで精度を上げ実施する者。ここの意識の差ってのは、案外気づかないものだろうなと。
後は、そもそもPTAに強制力はなくヴォランティアで成り立つ組織であるはずで、自分の生活や家庭を犠牲に活動する場所では根本的にない。サンクコストが働いて、昭和から踏襲されているルールによってがんじがらめにされる保護者たち。これは辛い、でも現実ってそうなっていることが多分にある。
著者の義憤に燃える正義感も好きですし、翻って対する相手の立場や不要と思われる資源回収やベルマーク集めなんかの隠された意義の発見を、自分の考えの至らなさだと反省する誠実な態度が素敵です。コロナ禍におけるPTA、一年生の初心者保護者の不安に対するケア、教育現場の時代錯誤感など、なぜだという苛立ちつ共感を呼び起こします。今後関わるであろう世界に対して、でも原理原則に立ち返ってみんな幸せに不平等になれるPTAというのは、いばらの道ですが心が洗われる面持ちです。
お食事会や会合は、日々心労疲労でで押しつぶされそうなワーキングママへの思いやりと配慮ってのは、これからの人生で持ってなきゃいけない視点だよなーと、まだまだ未熟な私ですが精進しまする。
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スンバラシイ本だ。
現代で売れる本とはこういうものなんだろう。
・PTAという謎の組織の内実を教えてくれる
・日本に民主主義が根付いていない理由や思想の一端に触れられる
・学校の先生がどんな苦労をしているのか見えてくる
・大学教授っぽくないオッチャンの勢いのある文章読める
・不思議で理不尽な仕組み奔走させられる、特別でないフツウの人たちのあるあるに共感できる
・本の装丁がキレイ
どの1面を取り出しても楽しめる。
難しく考えても良いし、難しく考えてなくても愉しめる。
こんな生活を、私もしていくのだ。
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稀有で、エモい。エッセイの豊穣さを感じた。
ここに書かれていることはPTAに限らず(会社さえも)似たような事は起きていて、色々と応用が利きそうな気がする。日本社会に存在する様々な組織への処方として、汎用性は相当高いんじゃないかと思った。
あと仕事できない底辺社員・オペレーターとしては、既得権益層であった専業主婦層のことが気にかかったりもした。(専業主婦層の人達は俺と違って凄いオペレーションをしてるような気がするけど)
コロナ禍で全てがひっくり返る最終章も凄まじい。その渦中での素晴らしい取り組みには驚嘆したが、ホットイシューを描いた文章として純粋に引き込まれたし、将来的に史料的価値も高いものになる様な気がする。