紙の本
人を想うの力
2022/02/20 09:35
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:TOM - この投稿者のレビュー一覧を見る
人を想うということは、生きてゆく強さに繋がってると感じられた作品でした。この本のテーマとなっている『孤独』ですが、作品の主人公たちは人を想う気持ちと自分というものを確立していて決して孤独ではなく『豊か』なのだと思えました
電子書籍
寂しさを感じている人に
2023/03/20 14:58
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投稿者:future4227 - この投稿者のレビュー一覧を見る
今年の中学入試では栄東、浦和明の星、麻布、渋谷教育学園渋谷などで出題された。『水を縫う』でも感じたことだけど、寺地さんの描く人物はなんか世の中からちょっとはみ出しちゃったような、いわゆる変な人が多い。みんなとちょっと感性が違うために周囲にうまく馴染めず、孤独感や寂しさを感じながらもなんとか前向きに生きようとみなそれぞれに知恵を振り絞っている。殺し屋という設定で生活してみるって面白そう。色んな価値観の違いを認めていく社会、そんな優しい世の中であって欲しいという願いが込められているような気がする。
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『水を縫う』と同じ著者
短編集
それぞれの話は独立しているものの、
どこか孤独を抱えた人たちの話であり、でも周りにいる人たちもそれぞれ、幸せそうに見えても、その人なりの葛藤を持っていて、もしかしたら相手のことをお互いに羨ましく思って見ているかもしれないという話
生きるのが楽になるかもしれない
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現在の私は、恐らく人生で最大のピンチと言っても過言でないくらいの
やるせない日々を送っている。
生きることどころか息をすることさえ上手にできないような主人公たちを見つめる、
作者のどこまでも穏やかな視線が
読んでいる私の心まで温めてくれたみたい。
切ないのにうれしくてちょっと泣けてくる。
この物語を読めて良かったな。
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以前読んだ「水を縫う」が気持ちの良い読後感の作品で印象的だったので、一時期ブクログでよくオススメ?されていたこちらを図書館で予約してみた。
児童文学のような文体で、内容も軽めで読みやすい短編集。さらさらと、どれもさほど引っかかりなく読了。「夢の女」が一番好きだった。唯一、自分の環境とか心境を重ね合わせて読めて、少しだけ泣きそうになった。
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短編集、全部で7編。連作という感じでもない。
「コードネームは保留」…商店街の楽器専門店で事務員として働く女性。同じ年頃の同僚はいるが浮いている。新しく来た男性社員のことが少し気になるが、彼は誰にでも人当たりが良く、他の女性社員も狙っているらしい。主人公は毎日過ごすのが辛いので、自分は「殺し屋」という設定で生きている。男性社員には彼女がいて、結局主人公も同僚も振られてしまった。でもなんとなく女子二人が友達になりそうな感じ。
「タイムマシーンに乗れない僕たち」・・・博物館にほぼ毎日通う草児。両親が離婚して、母と一緒に祖母が住むマンションに引っ越してきた。父親の地元で育ったが、そこでの友達とのやり取りや、今の学校の馴染めない雰囲気を思い出してはつらくなる。働きづめの母親との接点もなく、祖母とも距離感があるようで、まとめていうと孤独を感じている。
博物館で出会った男は、ビジネスバッグにたくさんの駄菓子を入れていて、喋るようになる。草児は恐竜も、恐竜よりも前の生き物も好き。そうするうちに少しずつ成長して、クラスメートとも、家族とも少しだけ距離が近づいた。
「口笛」・・・初音35歳位?会社員。保育園に通う姪の迎えを担当することになった。兄は年下で、美人の女性と結婚した。兄嫁は毎日SNSに豪華な写真を投稿したりしていたが、ある時突然病気になった。うつ病?それに対して兄が欠陥商品を返すような態度をとる。初音の両親も嫁は贅沢だと言う。そして家族はフルタイムで働いてる初音に姪の迎えを押し付けた。職場は職場で、一人で過ごす女性のこと陰で見下げる風潮だ。
初音も、近所に住んでいる年配の女性を少し変わった人だと思っていた。しかし、帰り際に時折聞こえる美しい口笛は、その女性が吹いたものだった。また、勝手に猫を飼い慣らしていると思っていたが、それは住民達で手術費用も払って、世話をしている地域猫ということだった。
《感想》この作品の、「誰にもそれぞれの苦しみがあり、痛みがあり、喜びがあり、願いがある」「幸せというものが一種類でない」というところが印象に残った。この話はあんまりラストハッピーエンドという感じもしなかったし、なんとなく続いているような感じだったけど、これらを伝えたかったんじゃないかなあと思う。
「夢の女」・・・主人公私、40代半ば。夫は50代手前で釣りの事故で亡くなった。娘は自立して家を出た。夫の両親は既にいないので、夫の叔母、ゆうこおばさんがしょっちゅうやってくる。私は仕事をしているが、今はサエリという美しい女性と常に一緒だ。サエリは想像の女だ。夫の。夫が亡くなった後、パソコンのファイルの中に入っていた夫創作の小説。非の打ち所のない女サエリとともに、ひたすら敵と戦うという内容。好意を持っているが、関係が先に進むことはなく、ひたすらサエリの美しさが書かれている。ショックのあまり私にはサエリの姿が見えるようになったのかな?私は夢を見ている。どうやら食事をとらないで意識を失っていたようだ。倒れているのを発見されたことがきっかけで、娘とも夫叔母とも少しわだかまりが解けた。
「深く息を吸って」・・・��ラウン管テレビの時代?「君」は田舎に住む女の子。家はあんまり楽しくない。学校でも華やかなグループには入っていない。学校行事のバスの中で見た映画で、俳優のことが気になる。それがきっかけで映画にも興味を持つようになる。現実の世界は全然楽しくはなさそうだけれども、自分に自信を持って世界を広げる様子。
「灯台」・・・私は高校卒業後不動産屋で働き、夜はコンビニのアルバイトをしている。不動産屋の客としてきたのは、高校時代のベストカップル。人気者の女子と人気者の男子だ。二人に気に入られた事で、よく家に招かれたりするようになるが、ふたりはしょっちゅう喧嘩をしては、私が仲裁することになっている。おそらく私は人畜無害で、何かあったら好きなだけサポートしてくれる機械・やさしさATMのように思われているらしい。それを冷めた目で観察しながら、私はアルバイト先の男子に思い切って声をかけることにする。
「対岸の叔父」・・・妻の叔父マレオ。小さな町で変人・変わり者。一応芸術家として活動しているつもり。しかし妻の一族はマレオのことが大嫌い。僕と妻は中学校時代からの付き合いだ。マレオには息子がいる。短期間だけ付き合った地元の実業家の女性との間に生まれ、女性の下で育っている。僕はマレオとも繋がりがあるし、マリオの息子の落ち込んでる様子にも気づける人みたい。そして「僕」は集団から離れていても、浮いていても頑張れよーという声援を送っている。
《感想》全体を通して、何か事件があっても、いつかはフラットな視線に戻る印象。寺地はるなの長編作品の1シーンを切り取ったような作品。どの作品の主人公も、日常の集団から離れて、もしくは集団から外されて?ものを見ることのできる人たち。日常でちょっとした違和感、例えば、それはもう古い考えじゃないのーといった、チクッと痛むけど流そうと思えば流せることに対して、主人公たちは違うんじゃないかなあというコメントを残す。なぜなら日常の小さなチクッとした物も、溜まり貯まれば大きな塊になって、誰かを傷つけてしまうことになるからだ。単純な優しさというよりかは、今で言うと多様性かな?緩やかに訴えているよ。色んな生き方や、色んなキャラクターがあってもいいんじゃないということを。
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寺地はるな初読。
7編の短編集。
世間的には少し弱くて、自分にはちょっと厳しくて、他者を切り捨てることのできない優しい人たちの物語。
「ひとりはなるほど気楽で、すこしさびしい。でもさびしさを埋めるために誰かと一緒になるのは、それこそわがままではないのか。」(「コードネームは保留」)p25
A型じゃないかな、この人(笑)
「世界と自分とがくっきりと隔てられている。~なんだか分厚い透明ななにかに隔てられている。~透明の仕切りごしに彼らを観察しているだけ、というポーズでどうにか顔を上げていられる。」(「タイムマシンに乗れないぼくたち」)p52
この2作品。
そうなの、わかる。あなたもわかるのね、と作者の手を取りたい気持ち。
大人になった今でも、「設定」の中で日々を生きていたり、「ポーズ」を取ることでどうにかその場に踏みとどまれたり、ということがよくある。
私もきっとタイムマシンには乗れないんだろうな。
好きだなと思う作品。
「コードネームは保留」
「口笛」
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一遍ずつゆっくりじっくり読んで、読後感に浸って、さぁどんな言葉でこの一冊の感想を綴ろうと思ってるうちに数日が過ぎてしまっている。
連作ではない短編集は初とのことで、どんなお話が詰まっているのだろうとわくわくしてお迎えしました。
誰にだって他人に言えない(言いづらい)寂しさや居心地の悪さを抱えているわけで、そういう小さな歪みやヒビを寺地はるなさんは見逃すことなくこうして物語にしてくれる。
その歪みを正すわけでもなく、ヒビを治してくれるわけでもなく、『それがあるのはわかってるよ』と言ってくれるのは、実は案外気持ちがいい。
どの作品にも小さなヒビや歪みがあって、それがあるゆえに少しだけ生きづらくて。
そんな人たちがとても愛おしいし、綺麗じゃないからこそ目が離せないし、読後も心がこの世界から離れようとしない。
私的には『深く息を吸って、』と『コードネームは保留』がとてもすき。
でも5年後に読んだら好きなものが変わるだろうなともおもう。だから長い時間かけて読み込みたいし文庫になったらどこにでも連れ歩いて、お気に入りの一遍を諳んじるほどに付き合っていきたいなとおもう。
たぶんボロボロにしちゃうから文庫になったら二冊は買おう。
この単行本は大事に本棚にいれておくね。
『深く息を吸って、ゆっくりと吐いて。きみはきっと、だいじょうぶ』
お守りのようなこの言葉を抱いて、今夜は眠ります。
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短編集7編
どの章の主人公も現実社会に馴染めず違和感を抱えて生きている。設定ライフハックをしながら現実をやり過ごす「コードネームは保留」が良かった。
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7編のお話が入っています
どれから読んでもok
交わらないけど近いとこにいたりします
少し生きづらさを抱えている人が
なんとなく前を向けるお話
心が疲れた時に読みたい
コードネームは保留:殺し屋の設定が必要な楽器店の事務員
タイムマシンに乗れないぼくたち:家に帰りたくない僕と仕事をサボっているサラリーマン
口笛:姪のお迎えの途中で聞こえた口笛 幸せなんて人それぞれなのに
夢の女:死んだ夫のPCに書かれた小説
深く息を吸って、:修学旅行のバスの中で見た映画
灯台:話をきく 側にいる
対岸の叔父:破天荒な叔父さん 「自由に見える人は、まわりが思うより自由ではないかもしれないね」
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レビューはこちら↓
http://blog.livedoor.jp/bunkoya/archives/52601366.html
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「ふつう」から少し外れた人たちが、周りの人を支えたり支えられたりしながら少し前向きになっていく。連作ではないけれど同じ世界観が描かれる短編集。
派手な展開などはないが、小さなハッピーエンドで終わるので安心して読める。
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【収録作品】コードネームは保留/タイムマシンに乗れないぼくたち/口笛/夢の女/深く息を吸って、/灯台/対岸の叔父
何かが解決するとかいう話ではない。
でも、疲れた心に寄り添ってくれる物語たちだ。
自分は一人だ、でも、一人じゃない。本を読むとそれがわかる。
「WEB本の雑誌」https://www.webdoku.jp/newshz/matsui/2022/03/23/184839.html
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寺地はるなさん初の短編集。
『ひとりぼっちだと思っていた…でも』
その後に続く言葉は皆違う。
人の数だけ人生があって、人の数だけ、でも…に続く生き方や人生、物語がある。
人は皆ひとりぼっちなのかもしれない。
確かなのは、それぞれの人生を抱える読者に優しく寄り添う寺地はるなさんの世界がどの物語にも広がっている。
勢いで読んでしまったが、何度でも読みたくなるし、その日の気分で読む物語を選ぶのも良いかもしれない。
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短編集って本当好きだな。なおかつ寺地はるなさんの短編集とか嬉しすぎる。
少し荒んでて、それは繊細だからで。強さも弱さも抱きしめてくれる。今まで胸に抱いたことのある感情を思い出した私のそばで、一緒に怒ったり悲しんだり、ときは何も言わずにただいてくれたり、そんな物語たち。読み終わって、それぞれの人たちのその後の姿をぼんやりと考えると、なんだかとても心がほこほこした。
対岸の叔父、とても好きだな。あと口笛と、深く息を吸って、も大好き。