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グライス理性の哲学 コミュニケーションから形而上学まで
著者 三木 那由他 (著)
言語哲学や語用論に大きな影響を与えたポール・グライス。心の哲学・理性論・形而上学を含む幅広い射程を持つその哲学体系が、「理性」というテーマに貫かれていることを指摘。彼の素...
グライス理性の哲学 コミュニケーションから形而上学まで
グライス 理性の哲学
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商品説明
言語哲学や語用論に大きな影響を与えたポール・グライス。心の哲学・理性論・形而上学を含む幅広い射程を持つその哲学体系が、「理性」というテーマに貫かれていることを指摘。彼の素顔と哲学の全体像を描き出す。【「TRC MARC」の商品解説】
会話的推意の理論など、主に言語哲学の業績で知られるポール・グライス。その素顔と広範な射程を持つ哲学の全体像を初めて描き出す。
会話的推意の理論と非自然的意味の分析の哲学者として知られるグライスは、心の哲学、理性論、形而上学といった分野でも多くの業績を持つ。その哲学体系を貫くのは、理性というテーマである。グライスにとって、理性は推論の能力であるとともに、理由を与える能力でもあった。歴史的な背景とともに、その哲学体系を一望のもとに描く。【商品解説】
目次
- はしがき
- 第一章 グライスの生涯
- 1 父から受け継いだ異端性
- 2 哲学との出会い
- 3 論理実証主義の到来
- 4 第二次世界大戦とグライスの初期哲学
- 5 日常言語学派
- 6 オースティン、そしてストローソンとの交流
- 7 日常言語学派への不満とオックスフォード哲学の衰退
著者紹介
三木 那由他
- 略歴
- 〈三木那由他〉1985年神奈川県生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程指導認定退学。博士(文学)。大阪大学文学研究科講師。著書に「話し手の意味の心理性と公共性」など。
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高度な知的探求
2022/05/04 21:25
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投稿者:科学道 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書はグライスの哲学における言語分析や理性論、形而上学などの多岐にわたるテーマを、一冊の本の形で著者が統一的に議論するものである。
グライスの生涯にわたる文献もさることながら、カントなどの関連する哲学者の文献及び、著者以外のグライス研究者の視点も交えられており、並大抵の努力では到達できないであろうレベルの議論が構築されていると感じた。
本書の第1-2章はグライスの生涯と哲学の方法論について語ってあり、グライスや言語哲学に疎い読者でも本書の世界に入ることを可能としている。第3-5章ではグライスの代表的な業績である会話的推意の理論や非自然的意味の分析について概説されており、こちらは比較的専門性が高いため分野外の読者が議論についていくためにはある程度の努力を要すると思われるが、著者が例示を交えて丁寧に解説しているのでキャッチアップ不可能ではないだろう。圧巻だと感じたのは第6-8章で、ここでは第3-5章で議論のテーマとなった言語やコミュニケーションは話し手の行為や心理によるという観点から、まず第6章で心理論・行為論へと議論の範囲を進める。さらに第7章では心理・行為は推論・理由の概念を核にするという観点から、推論・理由に関わる理性を論じる。第8章ではそれらの基礎となる形而上学によって、全体の哲学に概念や原理を与え、グライス哲学を俯瞰できる様になる。
本書の最終節になる哲学的終末論のパートは未完の議題とのことだが、ここで扱われている「アナロジーによる推論」は実に興味深く、このパートによって本書は著者の言の通りに、多くの人が「語り始める」ためのきっかけを提示する性格を強めていると言っても過言ではないだろう。
総じて、本書は読者に知的探求を与える良書であると言える。言語とは?意味とは?コミュニケーションとは?といった疑問を持つ人や、要素還元論に満足できない人等にとっては読後に必ず得るものがあるだろう。