紙の本
オンライン・オープンソースを駆使して真実に迫る手法は見事
2022/08/11 18:47
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投稿者:巴里倫敦塔 - この投稿者のレビュー一覧を見る
情報技術を駆使することで調査報道を根本的に変える「報道のDX」を紹介した書。新聞では英調査報道機関と形容されることの多いべリングキャット(Bellingcat:猫に鈴をつけるの意味)社の成り立ちと調査プロセスの詳細を創設者自らが語る。地図情報(GoogleMap)やSNS、画像、動画、流出データベースなど、手に入る膨大な“オンライン・オープンソース”を駆使して真実に迫る手法は見事である。
最近では米ニューヨーク・タイムズなどが同様の手法を取り入れ、「シン・調査報道」は広がりつつある。日本では日本経済新聞がレベルは低いものの取り入れ始めている。取材をせずインターネットの情報だけで作り上げる「こたつ記事」の評価は低いが、オープンな情報を使いこなして真実に迫るべリングキャット社の「安楽椅子探偵」の手法は一線を画す。今後のメディアの在り方に興味のある方には必読の1冊だろう。
筆者は、ロシアのプーチン政権やシリアのアサド政権など、平然と捏造や隠蔽、嘘をつく権力者に立ち向かった具体的な事例の数々を紹介する。基本方針は特定、検証、拡散である。見過ごされている問題や発見されていない問題をネット上で特定し、あらゆる証拠を検証し、けっして推測に頼らない。わかったことを拡散し、広く知らしめる。
べリングキャットが躍進したキッカケは、ロシアがウクライナ領域で撃墜した「マレーシア航空17便」の事件である。ロシアは、4D法(Dismiss否定、Distort歪曲、Distract目眩まし、Dismay恐怖)を駆使してしらばっくれる。べリングキャットは、公開情報を駆使して、ミサイルの種類、ミサイルの位置と場所などを特定し、ロシアの犯罪だと追い詰める。SNSの写真の背景からGoogleMapを使って場所と時刻を特定する過程はスリリングである。同様の手法が中国にも通用するのか興味のあるところだ。
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https://www.amazon.co.jp/gp/customer-reviews/R1RQPBPLAL62JT?ref=pf_vv_at_pdctrvw_srp
https://www.amazon.co.jp/gp/customer-reviews/R1JKA8A6IJPRAS?ref=pf_vv_at_pdctrvw_srp
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べリングキャットの姿が創設者の言葉で語られている。
その真相を知りたい、正しく世に広めたいという気持ちから始まったネット探偵の成長、発展の記録。その真実にたどり着く執念には感動すら覚えた。
ロシアを始めとして偽情報の氾濫する中、正しい情報を見極める目が自分には無い気がして不安だ。彼らのような嘘を見抜く人々の活躍を期待する。
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日経新聞2022514掲載
東京新聞2022514掲載 評者:武田徹(ジャーナリスト)
産經新聞2022515掲載
朝日新聞2022521掲載
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事件に関する文字情報や画像情報から読み取れるあらゆることを、SNS、YouTube、Googleアースなどの無料で使えるインターネット情報を駆使して、真実に迫る手法を編み出した著者らBelling Catのチーム。
彼らは、ウクライナ上空の民間機撃墜事件にも、ロシア大統領対立候補の毒殺未遂事件にも、ロシア政府が関わっていることを、次々に突き止めてきた。ネット探偵たる彼らが、ネットを駆使することで、どれだけの犯罪の真実を暴いてみせることができるかを示したことで、マスメディアや警察だけでなく、政府機関のあり方までも問い直されることになるだろう。
マスメディア、警察、各国の諜報機関が、Belling Catのようにオープンソース情報を駆使して真実に迫ることができたら、ロシアが北朝鮮並みのならず者国家であることをもっと早く多くの国の人々が認識できたし、もっと早くロシアと正常に国交などできるわけがないという結論に達することができただろう。
Belling Catの手法はプライバシーの悪用も可能なので、そこに不安は残る。とは言え、Belling Catが今後も新しい調査手法を編み出して、それらを世界中の犯罪捜査に生かしていくことが望ましい。
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恥ずかしながら本書で初めて存在を知ったのだが、著者がリーダーを務めるべリングキャットとは、英国に本拠を置く調査報道グループ及び運営するウェブサイトを指す。とはいっても、現地や関係者への取材をベースとする通常の報道機関とは全く異なる。なぜならべリングキャットは、SNSなどに公開されたオープンソースの情報だけを用いて一切現地には赴かず、その画像やテキスト、人物検索などでだけで様々な不正義を暴く”インターネット探偵団”とも言える活動をしているからである。
べリングキャットの活動は、ロシアによるマレーシア航空機の撃墜事件や、シリア紛争などの分析に端を発する。紛争が起きている現地で住民や兵士が何気なくSNSにアップしている画像などを丹念に分析していく。例えばGoogle Mapなどと突合しながら、ある紛争が起きた正確な場所を特定し、同時にロケットなどの破片の画像を様々な軍事兵器のデータベースサイトなどの情報と突合して正確な品名を特定し、それらが紛争介入を否定するロシアの行為に他ならないことを全世界に知らしめる、というように。
特にべリングキャットが対象とするテーマはロシアが関与するものが多く、ロシアが国を挙げて介入を否定する様々な紛争・軍事行動に対して、圧倒的なファクトを丁寧に積み重ねてその嘘を暴いていく様子は極めてエキサイティングですらある。
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情報操作や隠蔽などに対抗する、こういう人たちがいるんだ…。今起こっているロシアのウクライナ侵攻につながっていく話も出ているので、タイムリーともいえる。戦争犯罪を暴いたり、暗殺者を特定したりする道程は、安楽椅子探偵もののようにスリリング。
とはいえ、裏を返せば、私たちの情報って、こんなにだだ漏れなんだな…と、ひやっとするものがある。
そして、ロシアと国境を接する国々の情報操作への対策を知ると、日本、大丈夫?とも思ってしまった。
訳者の方も書いているように、楽観的だなあとも思ったし、若干の偏りも感じないではないのだけれど、権力の暴走にブレーキをかけるチカラのひとつになっていけばいい。
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この2点により年に数冊しか出会えないような良書。
1.事実に基づいている
(というか事実を探求している)
2.市民の協力
著者はネット上の動画や画像(フェイクを踏まないように細心の注意を払って)を元に
それがいつどこで起きたのか(行われたのか)を特定する
インターネット探偵(?)を始めた。「OSINT」という。
全ての人がアクセス出来、検証可能なこの手法で
国家的な詐欺や犯罪に事実を突き付けていく。
ただ貪欲に事実を突き詰める姿勢に感銘を読者としても感銘を受けるし、ネット上にも同士が集合し、活動を支えている。また、ネットに繋がる全ての人にそういったものを識別するリテラシーをつけてほしいと、教育プログラムにも力を入れている。
これだけ情報が多いのに、
ニュートラルで冷徹な真実のみに辿り着くのは、なんと難しいことか。
見たい現実に沿った記事しか流し込んでこない各サービス。(無料なので当然なのだが)
いっそのこと、目を閉じ、耳を塞ぎ、口を閉ざすしかない。
と、考えていたが、このような事実を突き詰める活動があり、今後も注目して微力ながらサポートしたい。
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1 ラップトップ上の革命―ネット調査の可能性に気づく
2 “ベリングキャット”の誕生―探偵チームの形が整う
3 事実のファイアウォール―デジタル・ディストピアへの反撃
4 ネズミが猫をつかまえる―スパイ事件が時代を画する事例に
5 次なるステップ―正義の未来とAIのパワー
補遺 暗殺者と対決―“ベリングキャット”、暗殺団に電話する
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ネットを駆使して、国家が隠した犯罪を暴く、という役目のことである。インターネット探偵団である。国家が行った犯罪をみつけることである。日本での事例は全くないので、あまり参考にはならないかもしれない。しかし、すでに日本でも行われておりこの本であげてないだけなのかもしれない。
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【オープンソース調査の過去と現在と未来は、すべて協力にある】(文中より引用)
オンラインソースを用いて、事件や犯罪の内幕を次から次へと暴くことに成功している「ベリングキャット」。設立から間もない開かれたチームは、いかにして世界を驚かせるスクープを量産することに成功したのか・・・。著者は、「ベリングキャット」の創設者であるエリオット・ヒギンズ。訳者は、翻訳家として活躍する安原和見。原題は、『We Are Belligcat: An Intelligence Agency for the People』。
ドキュメンタリー番組などでも取り上げられるようになっている「ベリングキャット」ですが、その立ち上げ期のエピソードに、ネット社会のフロンティアを開拓していく人たちの意気込みを感じました。不正に対する義憤ももちろんですが、純粋な好奇心というのは人を動かすとてつもないエンジンになるんだなと再確認。
ベリングキャット的なオープンソース報道と、インフォグラフィックを駆使したプレゼン手法は日本でも根付いてほしい☆5つ
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「猫に鈴をつける」の諺は知っていたけれど、「べリングキャット」の存在を知ったのはごくごく最近のこと。そもそものなりたちから読みすすめると、“あの”事件や事故を海外メディアの翻訳ニュースで見た時の衝撃がよみがえる。日本のメディアも頑張っているのだろうけど…きっと大手メディアだけでは「猫の手」が足りないのだ。
並のスパイ小説よりもよほどハラハラさせられるがこれが現実なのだから、このノウハウを学び連帯するしかない。
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ナワリヌイに出てきたネット情報分析の指摘調査会社(インターネット探偵)の話。
一人の会社員が、隙間時間に趣味で始めたインターネット遊びが、為政者や政府の悪事を暴く世界的なプラットフォームにまでなった経緯が、実際の出来事と実名を持って生々しく語られる。
調査の方法は至ってアナログ。
例えば、わい戦争映像などに映る背景とGoogleアースの衛星画像とを照合し、街路の形や街路樹、建物の形状で場所を特定する、というもの。
他にも写真の影から撮影時間を推測したり、Facebookなどsnsから個人を特定したり。
2012年シリア、アサド政権の内戦では、フリーランスの記者が現地で拘束されたり殺害されたりする中、政府軍の無差別爆撃、そして化学兵器の使用の証拠をオープソースから丹念に調べる。
ロシア軍によるウクライナ領でのマレーシア民間機の撃墜(ブークという対空ミサイルの動きを追い、ロシア軍による誤爆だったことを暴く)、2018年元ロシア情報局大佐だった亡命者や政敵へのノビチョクによる毒殺(健康食品の営業マンの仮面を被り暗殺容疑を否定した二人の情報局員の実際を暴く)、2019年ナワリヌイ毒殺未遂(実行犯の身元を暴く)。
そして、政府の情報戦、ディープフェイクそしてそれに呼応する反事実コミュニティとの戦い。
どれも死者や暴力がニュース画像で映し出された陰惨な話ばかりではあるが、著者のユーモラスな語り口や、そのただひたすらに悪事を暴くことに没頭する明るいひたむきさがこの本を読み易いものとしている。
べリング・ザ・キャッツ、猫に鈴をつける。
日本にもこんなチームが必要だ。
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こんな人達がネットの世界で出てきたとは驚き。
英語や中国語などに比べると日本語人口は圧倒的に少ないので残念ながら日本語サイトはできないかも知れない。
何が起きているか、を日本のマスごみ報道だけに頼らず知ることができる有力なサイトなので読みたいし、協力したいがもっと英語を勉強しないとダメか。
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毎日のように様々な情報がツイッターなどのSNSで流れていますが、ロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに日本でも「べリングキャット(bellingcat:鈴がついた猫の意)」というイギリスに本拠を置く調査報道ユニットが急速に注目を集めるようになりました。
ベリングキャットは、一般に公開されている情報=オープンソースを使って情報の真偽を確かめて情報のシェアを行う有志のアマチュアの集団です。そんないうなれば素人集団が、大手メディアや各国の諜報機関すら超えるスクープをあげ、実績を残し、世界中から今注目を集めています。
本書は『ベリングキャット』の創始者であるエリオット・ヒギンズが執筆をしています。著者は、大学を中退し仕事に興味を持てず、くさってオンラインゲームに没頭していた時期もある、いわゆる大学でジャーナリズムを学んできた正義心の強いエリートとは一線を画す存在です。
きっかけは、「アラブの春」の動画を見た時だったそうです。そこからインターネット上の仲間達とオープンソースを使った、これまでにない調査方法を磨き上げてきました。
ロシアの例をみるまでもなく、日本でもそうですが世界中の国家や権力者は平然と虚偽情報を垂れ流します。インターネットや情報技術というのは、一市民が世界中に流れる情報に瞬時にアクセスできる自由を手に入れた一方、偽情報やプロパガンダを流すことで民衆を混乱させ、権力者や国家の力をますます増大させる役割も果たしてきました。
情報操作という武器を手に入れた国家や権力者に対して普通の市民がどうやって立ち向かっていくか、その参考になるのが本書です。
ベリングキャットが活用するのはあくまでSNS上などにある公開情報のみで、フェイクもプロパガンダもリークもある玉石混淆のネット上の情報の中から真実に辿り着くその手法に大きな可能性を感じました。
ただし、訳者があとがきにも述べているようにベリングキャットの手法は真実を探すだけでなく、悪い方にも応用できるし、本書中著者は政治的に中立であると再三述べていますが、本当の中立などありはしないし、一歩使い方を間違えるとさまざまな危うさを孕むものではあります。
ただし、日本でもこうした手法(オープンソース調査、OSINT)がもっと活発に出てきて欲しいと思うし、私自身こうした手法をもっと勉強していきたいと思っています。