紙の本
犬の姿を借りたもの
2022/11/27 08:09
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
オーストラリア出身の絵本作家ショーン・タンのことは、
2006年に発表された『アライバル』(日本では2011年に出版)で
その名前を記憶している人も多いだろう。
この本は、文字がなく、絵だけで物語を紡いでいく、
とても斬新なものだった。
この作品でショーン・タンは一躍有名になり、
その後も多くの作品が出版されている。
今は絵だけの作品ではなく、
ちゃんと文もはいっているが、
それでも多くを語るのはやはり絵といっていい。
2022年7月に刊行された『いぬ』には
多くの言葉が綴られている。
それはタイトルに示す通り、
人間の歴史とともに常に歩んできた犬という動物への
愛情にあふれたものだ。
「あとがき」の冒頭に、
「犬と人間の関係は、ほかのどんなものとも似ていない。」と書いた
それがショーン・タンの、
犬への素直な思いなのだろう。
けれど、人間と犬の間には
大きな道があることもあったし、
河が流れていることもあった。
戦場で燃える鉄路が横たわっていることもあったし、
雪で閉ざされることもあったし。
ショーン・タンは、
その時々の人間の姿を変えるように、
犬の種もまた変えている。
そして、最後、
人間は犬とふたたび抱き合える時を持つ。
この本に描かれているのは犬だが、
それはもしかしたら、
愛する人かもしれないし、家族に見えないこともない。
あるいは、見知らぬ世界の人たちともいえる。
そういう多様さを感じられることこそが、
ショーン・タンの魅力といっていい。
紙の本
初ショーン・タン
2022/10/03 21:49
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投稿者:向日性の未来派娘 - この投稿者のレビュー一覧を見る
世界がどれだけ変わっても、古代からきっと永遠まで、変わらず人間の友であり続けるであろう「犬」へのラブレター。
こんなに短い文章で、犬と人との関係を、犬がくれるすべてを表現し尽くしたショーン・タンは只者ではない。
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私はネコ派なので、残念ながら犬と特別な関係を築いたことはない。しかし、これまで一緒に暮らしてきたネコの何匹かとは、人間の家族に対するのと似た感情のようなものを感じたことはある。
「犬とネコでは違う、犬と人間の関係は特別だ!」と怒られるかもしれないけど。
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文章が好き ◯
作品全体の雰囲気が好き ◯
内容結末に納得がいった ◯
また読みたい ◯
その他
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「せみ」同様に、決して子ども向きというわけではない絵本。
人と犬はいったいいつであったのだろう? 最初になかよくなったきっかけはなんだったのだろう? 太古のなれそめを想像し、犬と人間の他にないような結びつき、すでにあたりまえのような信頼関係をあらためて思う作品。
文字のないページの絵をじっくりあじわう。
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犬を飼っていてもいなくても。なんというか、「可愛い、可愛い」を越えた存在なんだよね。
ピラール・キンタナ『雌犬』とセットでも、と思うのは、ちょっと意地悪だろうか?
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とても静かな絵本です。
人と犬の愛情、友情の絵本。
1ページごとに違う国の人と犬のペア。
世界は僕らのものだ!
いい言葉ですね。
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何万年も前からの人と犬の関係。
でも、本書では中盤、別々に離して描かれている。
言葉では語れない色々な歴史があったのだろう。
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いぬとひとの感情が溢れるように伝わってきて、胸がいっぱいになる。日々のニュースで知らず知らずのうちに緊張していた心がほっと弛んだような気がした。石井千湖さんがポリタス沈思読考#4で紹介
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太古の昔より犬と人間は寄り添いながら生きてきた。互いに影響しあいながら。「言葉」を介さなくても「想い」で通じ合えたのだと思う。子供の頃から振り返ると犬がそばにいてくれた。そして、嬉しいことも悲しいことも犬に話しかけてきた。もしも、違う方向に向かうことがあっても、お互いを必要としていることには変わらないと思う。
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犬と人を繋ぐ。
姿かたちは、違うけれど。
いっしょに並んで歩き、風を感じながら歩き、走り、すべての美を見た。
すべての光と影を知り終わりを知る。
長い時が流れる。
絵に描写に惹き込まれる。
絵本だが、大人向け。
深い青と黒にぼんやりと背を向けている犬と人の姿。
やがてほんのり朱色と白を帯び犬と人の姿も変わる。
朱色が紅く染まり、犬は上を向き人は座っている。
黄色味を帯びたところに座る犬と膝をつく人。
白い雪の降るなかに黒い犬としゃがんでいる人。
緑と黄色の景色に犬と人。
赤茶色に染まる鉄橋の下に犬と橋の上に人。
モノクロに線路を挟んで犬と人、そして紅い火。
道路を挟んで振り返る犬と人。
横断歩道で犬を抱きしめる人。
軽快に散歩する犬と人。
犬と人も変わっていくが、近くにいる。
そしてまた出会う。
犬がたくさんのことに気づかせてくれる。
犬がたくさんのものを見せてくれる。
犬が前に進めと誘ってくれる。
犬はいつもいっしょにいる。
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夏休み-23
文字がほとんどない中で、犬と人間の出会い、人間の生活が変わっていった長い時間のこと、今も我々の生活が犬とともにあること、作者が犬を愛していること、人間が犬を亡くしたり、犬が人間を亡くしたりする運命があること、離れても相手を思って、時には待っていること、、、いろんなことを訴えられた気がした。どこか寂しい雰囲気が強い。
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以前、ショーンタン展で原画を拝見したものが一冊の絵本になっていて、懐かしく手を取りました。新刊なのが驚き。私は正直なところ猫派で、犬を飼ったことはないのだけれど、飼い主と犬ならではの信頼関係や、犬のひたむきな眼差しには何人も踏み込めない尊い美しさを感じずにはいられません(羨ましいもの)。そういった飼い主と犬の間に流れる時間の美しさをこの絵本は見事に表してくれているように思います。全ての犬好きさんと、愛犬を失ってしまってもう犬を飼いたくない、って思ってるかたに、そっとオススメしたくなる本でした。
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太古の昔から続く、人間と犬の友情を描いた絵本です。
暗めの色彩ですが、パウル・クレーやシャガールのような雰囲気があり、とてもきれい。
全体的に暗く、静かな印象。でもとても力強い。
大きなエネルギーを持った絵本だと思いました。
犬が欲しくなりました
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ずっとずっと昔、出会ったパートナー。今再び、一緒に歩こう。
「アライバル」では超絶な画力と構成力で圧倒的なストーリーを描いてみせたショーン・タンが犬を題材にどんなお話を作ったのか気になっていました。ストーリーはわりとシンプルで、犬と人の絆を時を超えて描く。といったものなのですが、この単純なお話は意外に犬好き、特に長く犬を飼って亡くした人には刺さるのでは。この絵本のように、彼岸でもなんでもいいからいつかまた会いたいと心底願っているのは僕も同じだし。しかしこういう心境を描けるところが、ショーン自身がとても犬が好きだったり、おそらく飼い犬を亡くして救い難い失意に沈んだことがあることを物語っているようにも思います。また、必ずきな臭い絵を放り込んでくるのも彼らしいメッセージで共感。
ともあれ、犬を飼ったことがある人の多くは知っている、人間の最良のパートナーであり、魂の友である犬についてかくもシンプルに描き切ったこの本は犬好きによる犬好きのためのレクイエムに違いないのであります。
(とはいえガブリエル・ヴァンサンの「アンジュール」を超える名作にはなり得ない)
ショーン・タンの描き出す世界観は暗くて孤独で寂しいけれどもそこに一片の灯火を忘れないところが好き。他にも色々出てるので折を見て読んでいこう。