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紙の本
スワン (角川文庫)
著者 呉 勝浩 (著)
【吉川英治文学新人賞(第41回)】【日本推理作家協会賞長編および連作短編集部門(第73回)】ショッピングモール「スワン」で起きた無差別銃撃事件。事件の渦中にいながら生き残...
スワン (角川文庫)
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商品説明
【吉川英治文学新人賞(第41回)】【日本推理作家協会賞長編および連作短編集部門(第73回)】ショッピングモール「スワン」で起きた無差別銃撃事件。事件の渦中にいながら生き残った少女、いずみのもとに、ある日招待状が届く。生存者たちを集めた“お茶会”の目的は、残された謎の解明だというが…。〔2019年刊の加筆修正〕【「TRC MARC」の商品解説】
ショッピングモール「スワン」で無差別銃撃事件が発生した。死傷者40名に迫る大惨事を生き延びた高校生のいずみは、同じ事件の被害者で同級生の小梢から、保身のために人質を見捨てたことを暴露される。被害者から一転して非難の的になったいずみのもとに、ある日一通の招待状が届いた。5人の事件関係者が集められた「お茶会」の目的は、残された謎の解明だというが……。文学賞2冠を果たした、慟哭必至のミステリ。【商品解説】
目次
- 解説 瀧井朝世
著者紹介
呉 勝浩
- 略歴
- 1981年青森県生まれ。大阪芸術大学映像学科卒業。大阪市在住。2015年、『道徳の時間』で第61回江戸川乱歩賞を受賞し、デビュー。17年『白い衝動』で第20回大藪春彦賞を受賞。他に『ロスト』『蜃気楼の犬』『マトリョーシカ・ブラッド』『雛口依子の最低な落下とやけくそキャノンボール』『バッドビート』がある。
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真実を知ること
2022/08/21 04:57
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ゆかの - この投稿者のレビュー一覧を見る
実際こんな事件が起きたら、確かにネットではいずみが叩かれたりするんだろうなと思う。
何も知らないのに、知らないからこそ外から好き勝手に言いたい放題な人間にはなりたくないなと読んでいて改めて思った。
それと同時に、被害者だからといって必ずしも真実を語っているとは限らないし、自分がその立場なら全てを明らかにできるかは自信がないなとも…
考え込んでしまう内容です。
紙の本
読ませる力がすごい
2023/02/27 14:48
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あや - この投稿者のレビュー一覧を見る
多少話の展開に唐突さを感じる場面があったものの
先が気になってどんどんめくってしまいます!
呉さんの本は読ませる力がすごい。
これより後に書かれた本はもっと話が磨かれていて、
今後の作品も楽しみです!
紙の本
スワン
2023/08/02 10:34
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:なみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
無差別殺人事件で生き残ったいずみは、他の人達を見捨てたとして、マスコミ、ネット、学校関係者などあらゆるところから非難を受ける。理不尽すぎる。被害者なのに、何故ここまで?
同じく生還した小梢は、保身の為とはいえ、何故いずみを告発するのか? いじめっ子が更にいじめる以上のものを感じるし、何故いずみは全て受け入れているのか?
徳下の真意は何か、いずみの真実や目的は何か。たくさんの理不尽と、何故?と、やるせなさが満載だった。
紙の本
スワン
2024/01/16 19:29
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
速いテンポで描かれる無差別殺戮事件は、映画を観ているような臨場感。しかし、本書はその後の
「お茶会」がメインテーマなのだった。すでに犯人は自死し、事件は解決したはずなのに。何が問題
なのか?いったい何が起きようとしているのか?もしかしたらこれはホワットダニットのミステリな
のか?
疾走感あふれるプロローグに比べ、その後の展開は精密な論理構築。同じ様な問いかけが閉鎖空間
で、かつ細部にわたる繰り返しに息がつまりそうだった。
それを補って余りある評価はやはり主人公いずみの独白。人間の二者択一の考え方に対する諦観と
それにオーバーラップさせながら踏む白鳥か黒鳥かのステップ。心の奥に隠された叫びは読む者の胸
を熱くさせる。このエピローグの数ページは奔流に呑み込まれそうだった。
紙の本
人の醜さと弱さ
2024/01/08 14:55
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:DB - この投稿者のレビュー一覧を見る
無差別大量殺人を生き残った人々の苦悩を描いた作品でした。
タイトルになっている「スワン」は郊外にある大型ショッピングモールだ。
四月の初め、このスワンで三人の男たちによる無差別殺人が起こった。
三人のうち一人は内輪もめで殺されていたが、実行犯となった二人の男は死傷者四十名に迫る大惨事を引き起こしたのだった。
通常なら犯人の心理を分析していくか、犯行の中で助け合うヒューマンドラマが描かれるのだろう。
だが本作は被害者であるはずの人たちを責める世論という醜い現実を描き出していく。
大学を中退しそれでも親が送ってくれる生活費でトレーダーの真似事をしていた通称「ヴァン」、そしてもめ事を起こして警備員の職をクビになった通称「ガス」、それに未成年の引きこもり「サント」が犯人グループだ。
大量に制作した3Dプリントの拳銃は二発しか発射できない使い捨てだったが、それを六十丁も半年かけて作り上げる。
その労力を他に生かせばよかったのにとも思うが、不毛なことしかできない人間もいるものだ。
念入りな計画のもとに迎えた犯行当日、テンション上がりまくったサントは仲間の手で射殺され、ヴァンとガスはスワンの両端にあるモールの象徴「白鳥」と「黒鳥」からそれぞれ出発して次々に居合わせた客を撃っていく。
逃げまどい死傷者の血が流れる光景をネットで実況しながらの犯行だ。
自分をいじめていたクラスメイトであり同じバレエ教室に通っていた小梢に呼び出された高校生のいずみは、当日スワンのスカイラウンジでヴァンにつかまってしまう。
そこに取り残されていた客たちを順に打ち殺していったヴァンだが、いずみに銃を突きつけ彼女に語りかけながら銃を撃っていったのだ。
かなりのトラウマになりそうなシーンだが、事件のあとに小梢が「いずみが犯人に次に打つ相手を指示して自分が助かろうとした」と告発したことからネットで叩かれることになる。
学校にもバレエ教室にも行けず家にこもるいずみと、娘を守ろうとするあまり不安定になってしまった母親の姿が描かれます。
そんないずみが「お茶会」に誘われたのだが、主催者はスワンで母親を亡くした実業家の依頼を受けた弁護士だった。
いずみの他に四人の男女が出席し、当日起きたことをそれぞれの視点から語っていく。
お茶会を重ねるにつれて、被害者であるはずの人たちが抱え込んだ罪悪感が明かされる。
事件の被害者たちの抱えるトラウマと人間の弱さを浮き彫りにしていく話だった。