偶然の散歩

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『何かを使えるということと、何かを理解することのあいだには、本当は果てしない距離がある。理解しようとする辛抱をやめ、効果的に使うことばかりを求めていると、未知の他者に対する想像力や感受性は、知らず知らずのうちにやせ細っていく』―『「わかる」と「操る」』

自分の本棚を見返してみると「計算する生命」の中から引用している文章が見つかり、その章題が『「わかる」と「操る」』であることに気付く。二年程の時を経て再び同じような言葉に惹かれていることを知り、つくづく人は知りたいことしか知ることが出来ないのだという事実に思いが至る。でも知りたいことしか知ることが出来ないと判っていても知ろうとし続けることによって何かが何処かで変化する。多分「理解する」というのはそういう境地に達することを言うのだろう。

「数学する身体」「計算する生命」のような数学的思考を通した哲学的考察を記した著書とは異なり、本書は「生きる」ことの意味を問い直すようなエッセイ集。とは言え、論考と名付ける程に研ぎ澄まされてはいないが、路傍の花の神秘にふと気付くような新鮮さが溢れている。それは日常の中に起きた変化がもたらした思考の接ぎ穂であり、偶然と思える出会いが導くものでありながら、例えばアイザック・ニュートンとリンゴが木から落ちる瞬間との偶然の遭遇の時にニュートンに起きたことと同様、思考そのものは既に著者の中で意識・無意識の内に繰り返し吟味されていたものである筈だ。しかし繰り返し考えても辿り着かなかった「Ah, ha!」の境地に、小さな自然との出会いの助けを得て急に視界が開けるように辿り着く。その過程は言葉にならないけれど、先人たちも繰り返しもどかしく言語化しようとしてきた道筋に違いない。森田真生もまたそんなことを語ろうとする。

もちろん、そんな風に小難しく読んでしまう必要はなく、著者の親としての成長の記録を読むような気持で文章を辿ることも可能ではある。しかし子供の成長の中にある「理解」の過程、「真理」という概念への接近に、著者の視線は向かう。そこから「数学的真理」という実態もなく証明することもままならないものへ漂っていく思考を追いかけることこそ、本書の醍醐味なのではないか。少しばかり環境問題への傾倒が気になりつつも、著者森田真生の感性の確かさを改めて感じる一冊である。

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専門と社会を繋げるようなパイプのようなエッセイを想像してたけど、その期待からは外れた感じだった。
もちろん最後まで興味深く読めたけど、物書きとしてはもっと上手な方がいらっしゃる中で、森田さんのエッセイを、ということであれば縁遠い分野や世界が垣間見れるようなエッセンスがもう少しほしいというのが本音。誰の文章を読んでるかわからなくなる感じだった。

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考え方や境遇が近そうな人のエッセイを読んで自分の思考の癖の理解を深めようシリーズ。
子供の成長と共に書かれていそうだったので。

・日常の細かいことと自分の知識を紐づける視点があると、人生が豊かになるなと思った(空を見上げる我が子、うんちを出し続ける我が子、と、人生一回の唯一性に尊さがある話を紐づけるとか、なかなかワザワザやらないと出てこない発想)

・たぶんその瞬間に思ってるわけではない、振り返ることで思えているのだろうから、その意味で振り返りの大事さは大きい。夜の1人時間の過ごし方はやはり振り返りがあるべきだなあ

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最近本屋で全然本を買っていないなと思いたち本屋へ行った際に見つけて、この自分の行動にマッチしていると感じてタイトル買いした。著者の「数学する〜」シリーズはいくつか読んでいたが、本作はエッセイで他作よりも軽やかで読みやすかった。
　お子さんとの日々の生活を軸にして、数学ひいては科学の観点から思考を展開していくところがオモシロい。特に視点とスケールの移動が楽しくて、宇宙に思いを馳せることもあれば、庭の生物を見ていたり、さらには人間の身体が幾千もの細菌で構成されていることを考えたり。硬い内容を解きほぐして行間たっぷりの朴訥な語り口で書かれているので心が浄化されるような気持ちになった。自分が生き急いでいるとは思わないものの、日々のあれこれに気を取られて何か大切なことを見失っているのかもしれないと子どもが生まれてからは特に考えるようになり、そういった雑念との付き合い方について改めて考えさせられた。
　著者が稀有な点は科学的なことをいわゆる文系の語り口に収めることができる点だと思う。この安易な二項対立はもはや機能していないとは思うものの、自分自身が理系出身で文系チックなものに惹かれがち。ゆえに著者の言葉がパンチラインとして心に響くことが多い。いくつか引用。
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あっちへ走り、こっちへと駆け、ズデンところんではぎゃあと泣きながら、子どもは身体の知性を鍛える。それに比べ、ちっとも転ばなくなってしまった自分は、どこか停滞しているのかもしれないと思う。

自分が主体的に変わらなくても、便利なサービスのほうがこちらに寄り添ってきてくれる時代に、それでもあえて時間とコストを割いて主体的に自己を変容させていくこと。その意味と喜びをいつかはきちんと伝えたいと思いながら、今日も息子の手の届かない場所に、スマホをしまっておく。

知性は身体や、それを囲む社会や文脈の中で初めて生きる。個人としての知識を蓄えるだけなら、いまより効率のいい方法はいくらでもある。

自分の存在が何に依存しているかを精緻に描写していくことは、いまあることの「ありがたさ」に目覚めていくことでもある。
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　あとがきにある偶然と必然、一瞬と永遠を巡る論考もとても興味深く、とにかく必然と永遠を求めるようになった社会において、偶然と一瞬を大切にするように生きていきたいと思えた。

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森田さんのトークを聞いて、その光り輝く知性に慄き、どんな方なのかもっと知りたくなって購入しました。
2017年から日経新聞「プロムナード」に掲載されたエッセイ集です。シンプルな文章にもかかわらず、受け取る情報量が多くて、詩的で美しい風景が心に次々と浮かびます。いったいどうしたら、こんな文章が書けるのかしら、と思います。誰にも似てないのですが、読後感は保坂和志さんや福岡伸一さんから受けるものに似ていると感じます。なにげない日常での思考の流れの描き方とか科学や自然への眼差しが。

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ブクログ新刊案内でミシマ社発見して気になった『偶然の散歩』(森田真生）。

ミシマ社は『計画と無計画のあいだ』(三嶋邦弘)で知って、「こうすればうまくいくというような仕事の型があって、それに無理やり自分を押し込めるのではなく、わたしにはなにができ、逆になにができないかを考え続けて、日々の仕事を試行錯誤しながらつくっていく」っていう言葉が好きです。

読んでて「良い言葉」は大量に出会い、あげるとキリがない。

ので、この本読んで思った事以下2点にまとめてみた。

①話題の組み合わせ

「こうくるかっっ」っていう組み合わせがいっぱいあって楽しかった。

【歩行×ロボット】【時差ボケ×久々にあった息子の顔】【音楽×数学】……いろいろです。

こんな風に頭から捻り出せたら…と思う日々。

国語辞典の力を借りたとしてもウンウン唸ってしまうこの頭、どうすればいい。

②以前に読んだ「語」の振り返り。

「この現象、何だか気になるし覚えておきたい」と思ったのが【アポトーシス】(細胞の自死)。

イモムシからチョウチョになる時、がん細胞やっつける時に起こる現象だと以前読んで気になってるんです。

「「必死で覚えたわけじゃない。けれど、何かぼんやり覚えてる」という感覚がほしい」と思い続けていたので、嬉しかった……。

※ちなみに以前読んだ本としては『池上彰と考える「死」とは何だろう』(池上彰)と『アポトーシスとは何か』(田沼靖一)。

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……自分の事だけな内容に終わりました。

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数学者のエッセイなので少し堅いイメージを持って読み始める。数学の演奏会とはどんなのだろう？機械と人との比較。最初は構えて読んでいたので難しく理解できないって思っていたが息子とのやりとりや祖父の事、日常で感じた様々な型にハマらなくても自分の世界を持つ大切さを端々に感じられる。7足す5は11でも自分の世界なら大丈夫。雑草でも命の繋ぎがちゃんとある。人間が害があると思っているだけだ。人との関係においても言えるよなぁ。と充実した心満たされた時間を過ごせた。

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言葉がとてもシンプルであること、何層もの奥行きのある記憶風景のように、振り返る（読み返す）たびに意味を豊かに、ありありと受け取れることに驚く。
いつか死ぬ、生きているということ、もう会えないひと、会いに行けるひとのこと。この本を贈りたい、大切な人ひとたちのことが思い浮かぶ。
いくつもの光を、手を伸ばしてキャッチするように瞬間瞬間の切なさを味わい、何度も読んでいます。

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偶然を恐れないで楽しむ。一度きりと永遠の近しさ。空間だけではなく、時間にも解き放たれるような読後感。森田さんの言葉はいつも希望に満ちている。

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数学者の森田さん。その感性から紡がれる言葉は素直でシンプル。すっと心に入ってくる。
折に触れ、開きたい。手元に置いておきたい本。


・読むことは書くこと。何かを読むことは、自分の言葉で書き直すことである。
・旅するということは、ただ長い距離を移動することではない。地上の自分とは違う場所で、小さく、深く生きるものたちと出会うことである。
・財布がないと出かけられないのは、地球上でも人間だけだろう。
・役に立つものばかりで環境を染め上げてしまえば、僕たちはやがて窒息するだろう。
・自分ではないものの力を借りなければ、僕たちは一日たりとも生きることができないのである。
・散歩とは、偶然に身を委ねることである。そして、それは生きることそのものなのである。

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こどもとの散歩で、そこで起きた出来事や偶然を丁寧に拾い上げ、思いもしなかった考え方を見つけていく楽しさがありました。

32ページごとに紙質を変えている装丁も新鮮な気持ちでページが捲れる楽しさもありました。

こどもと散歩をする森田真生さんはどことなく、人間社会の常識に染まっていないこどもたちを羨ましく思い、むしろ染まらないでほしい気持ちも伺えます。
わたしもこどもがいるので、わかります。

時々、何億年という地球や宇宙の時間軸の話しになると少しイメージ力が必要となりますね。

「永遠と一度きり」のお話しは「無限と1」「宇宙と地球」など、いろんな例えに置き換えて想像することのできるテーマでした。

所々で人間社会に対する偏見や領土争い、環境や気候変動の疑問視をお話しされていましたが、批評家とは違い誰かのせいにしたりせず、優しく語りかけていて、人間性が滲み出ていました。

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考えごとに煮詰まった時、無意識と意識の境目あたりに考えごとを置いて散歩すると思わぬ閃きがおりてくることがある。著者が考える、単に歩くこと以外の「散歩」を教えてもらいたい

#偶然の散歩
#森田真生
22/9/22出版

#読書好きな人と繋がりたい
#読書
#本好き
#読みたい本

https://amzn.to/3BIXneo

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普段の日常にどれほどの発見が潜んでいること。
子どもの目には私たちには見えない世界が見えていること。永遠と一度きりがとても似ていることに気付かされた。

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一度として、同じ散歩はない。と、筆者さん。

学者さんの日常を垣間見れる楽しみと、
子供の驚くべき成長か丁寧に綴られた一冊。

読んだ後、尊い、と言わずにはいられない。