紙の本
生存と抵抗の火種。
2023/02/26 02:02
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ゲイリーゲイリー - この投稿者のレビュー一覧を見る
なぜこんなにも生きることは苦しいのか。
なぜこんなにもこの世は変わらないのか。
諦観、絶望、虚無感に満ちた生に縋り付くことに果たして意味はあるのだろうか。
そうした疑問に対して、著者は「生きること」自体が社会に対する「抵抗」になると力強く訴えかける。
いや、力強くなんて生温いものではない。
本気で真っ向から我々に言葉を届けようという著者の想いや祈りが本書には詰まっている。
また本書は、我々の生存と抵抗を願い信じるだけではなく、著者が社会の何に対して拒絶反応を示しているのかも明確に綴られていく。
「国家・家父長制・異性愛規範・資本主義をはじめとするあらゆる権力・差別・中心主義を批判・破壊・拒絶する」と断言する著者は、ルッキズムやコンプレックスは社会問題を個人の問題にすり替えパーソナルな課題へと矮小化していると指摘し、愛や文化と言った漠然とした概念は批判も自浄能力も失った全体主義を生み出すと警鐘を鳴らす。
社会に蔓延る問題の輪郭や、知らぬ間に刷り込まれていた既成概念を捉える著者の慧眼に何度も感服することになるだろう。
上記の通り、権力や差別等に抗うためにこそ、まずは生き延びることが最重要となる。
自己を律する通俗道徳に洗脳された現代に異を唱える著者は、「頑張る」「頑張らない」、「立ち上がる」「立ち上がらない」に優劣をつけるのではなく生き抜くこと、そのただ一点のみが抵抗に必要である、と述べる。
ここまで我々の生存と抵抗を祈り、願う言葉に触れる機会はそうそうないだろう。
著者が綴る言葉の重みや熱量に圧倒され本書を読み進めていくうちに、気がつけば生き延びるための抵抗するための火種が生まれるはずだ。
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最近、アナキズムに興味がある。
国や政治家がわたしの生活を楽しくしてくれることはどうやらなさそうだなと思うから。けれどもわたしはこの国で生きているし、そこそこ恵まれた状況にある。そこで貰えるものはしっかり貰い、権利はしっかり主張し、自分の手が届く範囲(物理的にだけでなく、心理的、精神的にも)で仲間たちと助け合って、機嫌よく生きていくためにはアナキズムなのではないかと思うのだ。
この本で著者はとにかく生きろという。がんばらなくていいからとにかく死んじゃいかんと。そうすることによってあらゆる権力に抗うのだと。
すてき、最高じゃないか。
今、布団から出られない人のためにわたしが動く、わたしが動けなくなったら誰かが動いてくれるといいな。
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フェミニズムは大事だ。もしかしたらアナーキズムにも耳を傾けるべき何かがあるのかもしれない。
でも、この本は正直言って、よく知らない人の独り言をひたすら呟かれているような感じがしてとても読んでいられなかった。
もう無理、と本を閉じてから、どうして無理なんだろうと考えて、極左の書くチラシを思い出した。
汚くて余白が無くて、読ませる気がまるでないような…あれだ。下の方に無駄な余白をたっぷりとって、文章自体は余白を少なめに読みづらくしているところとか、なんのこだわりかわからないけど、とにかく読みづらい。この読みづらさを越えてまで読む価値のある本なのかわからなかったので、今はもういいや。
みんなそれぞれ自分のいる場所でできることをしていればいいのよ。
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自分のめんどくささをさらけ出す文章なので、読者には読みづらくなりそうなものだが、この人の文章は読める。著者のアナキストとしてのスタンスの確かさと日々のグラつきぶり混迷ぶりが安定しているからだろう。言葉選びも上手い。詩人だと思う。
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知れて良かったし読めて良かった
全く同じ考えではないが同じような怒りが私にもある
事は認識していたので、どうにかしたい!の別の形に触れられたことで見える景色がひとつ増えた
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これを今読むべきかもしれないと思って読んだため、勇気づけられたり、考えさせられたり、共感したり、色々な感情が呼び起こされた。
そして、もう少し頑張って生きてみても良いかもな、なんて思ったりもした。
あと文章も書きたくなった。
意外とやりたいことがあってまだまだ死ねないな、と思えたことが何より嬉しかった。
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アナーキズムとフェミニズムが交差するところ、アナーカ・フェミニズムへの訴えかけが力強い。アジってる文章は個人的には好みではないが、暴力と女性・フェミニズムをめぐる考察はとてもよかった、いいぞもっと書いてくれという感じ。
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アナーカ・フェミニズムの入門書としてすごく良くて、日々社会的なマイノリティとして上手く適合できずに布団の中から出れないでいる自分にとても刺さる本だった。エッセイ形式でどこから読んでも良い、というのもありがたい。
家族というシステムに適合できないこと、通過的な儀式への参加を「しない」という事に強い意味を見出す社会。マッチョイズムへの批判。結局は対象と向き合いたくないという無責任な気持ちから生まれる野放図な殺意や好意。抽象的でふわっとした「善い」で包んで押し広げられるナショナリズム、「伝統」、家族主義……などなど。景観の、「日常に溶け込む」暴力性。意思表示する野良犬はいればいるほど良い事。「シスター」という、家族の中の血の繋がりを大事にした言葉で家父長制に対抗する空虚さ。でも性差別を打破するためには戦略的に「シスター」という言葉を書き換えながら利用していく必要があること。
今羅列しただけでも、自分の中でずっともやもやと考えていた事象ばかりですごく勉強になった。付箋をたくさん貼ったし、また何度か読み直すと思う。
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生存こそ抵抗
高島鈴さんが苦しみながら生み出した言葉たちの凶々しいまでの鋭さは確実に希望だと思った。というか同じようなことを考えて、苦しんでいる人がいるんだという発見でもあった。
特に三章、ルッキズムに関する章立てはハッとすることだらけで、自分の今までの鈍感さを恥じる。
僕もアナーカ•フェミニストを名乗っていきたいと思います。自分の加害性も同時に引き受けた上で。
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「今日もまた一日生き延びた」
そんなことを思わせてくれる一冊だった。
「生きづらい」という言葉が人口に膾炙して久しい。
実際、生きづらい。
税金はべらぼうに高いし、物価上昇は止まらないのに賃金は上がらないし、老後の不安は消えないし、差別は蔓延しているし、格差は広がる一方だし。
だが、私はこの言葉が嫌いだ。
少なくともすんなり口に出すことができず、ざらりとした違和感がある。
諦めばかり感じられるから、我が身を憐れむばかりに思えるから、ありきたりな“キラキラ”に回収されて終わることが多いから、そう言いつつ「頑張ろうね」と個人の努力を請求してくるから……「生きづらい」と言おうとする度に何かが抜け落ちるような違和感がある。でも、実際、生きづらい。
そんな葛藤をこの本は丹念に言葉していく。
儀礼と「優しい」「美しい」言葉に流されそうになる時は、ただ布団の中に力なく寝そべるだけで既に抵抗だ。
誰も殺さず、誰にも殺されず、日常の小さな違和感を言動に反映させることが蜂起の始まりだ。
そう解釈した私は、筆者のサイン会で旧姓でサインされることを希望した。
愛する人との生活と引き換えるかのように、家父長制が奪っていった私の名は金色のインクで書かれ、確かに輝いている。
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全ての人とは分かり合えないし、自分も変えられなしし、誰かの為に自分を変えたくもない。
ましてや他人なんて変えられないし、私のために変わって欲しくもない。
世界は私にとって100%ではないけど、誰かと戦って何かを勝ち取る労力をかけるぐらいなら、自宅に引きこもって好きな本を読んでる時間を大切にしたい。
人生で何かに成し遂げたい気持ちは全然なくて、いつか運命の人に、いつか運命の本に、いつか運命の料理に、いつか運命の何かに出会えたらいいなって思うけど、でも、それが成し遂げられなくても、きっとそれまでに出会った人たちで人生は満足するんだろう
そんな私にこのエッセイで共感できる部分は全然といっていいほど少なかったです。
それでも彼女の言いたい事は理解はできるし、きっと人は認めあうこともできる。
わかりあうことはないだろうけど人は認め合うことはできる。
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私のための本だった。もやもやを抱えて、世の中の理不尽に抵抗したいとは思っていたものの、私には思想というものが無かった。いろいろ教わる事が多かった。
いつも疲れて横になってるだけで、一貫した思想すらなくとも、生きるのが良い事と思えなくても、とりあえずほんの少しだけ生き延びることを目標にしようと思う。
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途中まで読んで離脱。紀伊国屋じんぶん大賞で1位だったので読んでみたのだが、主観的な権力批判ばかりで読み進めるのが辛くなった。不満を撒き散らして生きていくより、今・ここの自分をしっかり見つめて、できることを地に足つけてやっていく方が良いのではないかと勝手ながら感じてしまった。
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弱者を弱者のまま受け入れるには、効率性とか達成といったマッチョさ(≒経済性、真性さ)から離れなければならない、という理解であっているのでしょうか。
何もしなくても抵抗になる、だからこそ何もできなくても人は尊重されなければならない、という強烈な煽りを受け取りました。
電車のルールの攪乱という章は個人的に興味深く、「誰にも迷惑をかけずにルールを破る人に驚愕しないという心構え」はルッキズムやジェンダー差別をしないための心の準備にもなりそうです。
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この本を手に取ったのは『布団の中から放棄せよ』というタイトルに惹かれたのもあるが、自分は序文の力強さに掴まれてしまったからだ。
アナーカ・フェミニズムを標榜する著者の主義主張には賛同するものもあれば、疑問を呈してしまいたくなるものもある。実際に本著は批判されてる部分も多くある。
だが、それでも自分は本著を読んで扇動された。
著者は読者を生へと扇動すると書かれており、その術中にまんまと嵌ってしまった。
今の日本で生き続けるのは、なかなかに辛くて絶望感に苛まれるときも多くある。
生きることは苦しい。死にてえと思うこともある。
だが著者は生きること自体が社会に対する抵抗になると説く。
そこには巷に溢れかえってるような薄ら寒い言説ではなく、本気でそう信じており、読者を生へと扇動してくれる。
今を生きることに苦しみを覚えている人には響く本だと思う。
個人的には映画評のいくつかは今まで見たことない方向からの批判が書かれてあったりして、そこも面白かった。言われてみれば、確かにその批判は納得だなと思えるのが多かった。そういう面も面白かった。