紙の本
「嫉妬」ほど怖い小説はない
2023/06/01 10:38
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
作者は2022年のノーベル賞を受賞している、彼女の作品を早々に文庫本で読める幸せに感謝。「嫉妬」ほど怖い小説はないだろう、恋人に自分から別れを告げておきながら、彼氏が今、どんな女と付き合っているのか気になって仕方がない、でも、ネット検索したり、電話を手当たり次第にかけまくって探ろうとする、「ついさっき、ちょうどきみのことを考えていたんだ!」と言われて、「ついさっき」以外の残り時間はずっと忘れられているのだと打ちひしがれる、男はどうすりゃいいんだ、「事件」は主人公が中絶を試みる話、1960年代のお話だがフランスには中絶は重罪という法律があったのだ、奔走する間にフランスの影の部分が如実に表れてくる、支配する側と支配される側、上層社会と下層社会、西欧って、やっぱり階級社会だよなあ
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「オートフィクション」とは何なのか。「私小説」とは違うのか。残念ながら、私には2作ともあまり面白く感じられなかったし、文学的価値もよくわからなかった。
『嫉妬』は、自分の心の動きをこれでもかと冷徹に書いていく筆致はよかった。どんどん嫉妬にはまってストーカーのようになっていく心理は怖くて、嫉妬ってやだねーと思うけど、他人事だから言えるんだよね。でもこれって男と別れた時に割と誰でも感じることで、もうちょっと特異なものを期待していた。
『事件』は嫌な話だった。
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本年度のノーベル文学賞を受賞したアニー・エルノーさんの著書2冊を1冊にまとめたお得な本。……と思ったが、本文のフォントサイズはでかいし、空行は多いし、解説込みでも223ページしかないのに1,188円もする。
んで、ノーベル文学賞には興味がなくて、「事件」を原作とする映画が12月に公開されるので読んでおこうと思った次第。解説によれば小説でもNFでもないらしい。自らの体験を綴ったものだそうだ。
「嫉妬」はタイトル通りだが、かなり観念的で難解なお話だった。「事件」は堕胎が法律により禁じられていた時代のフランスで、うっかり妊娠してしまった女子大生の話。女性にのみ負わされた痛みは実にリアルで、読むのも苦痛を感じた。
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そんなに難しくもなくむしろ読みやすい類であったのに時間がかかってしまったのはどうにもやりきれず気が進まなかったからだった。
読みながら「つらい」という思いが頭を占めていたのだ。特に自身の中絶のことを書いた「事件」の方。
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2022年〈ノーベル文学賞〉受賞のアニー・エルノーさんの「嫉妬」「事件」を合わせて文庫にした本。
「嫉妬」は、別れた年下の男が、他の女と暮らすことを知り、嫉妬に苦しむ話である。
嫉妬とは、目に見えない醜いものだと思っている。
できるなら嫉妬は、したくない。
嫉妬に狂うとなにも見えなくなる。
穏やかな日を過ごすことができなくなる。
「事件」は、1963年、中絶が違法だった時代のフランスで、大学生が妊娠してしまい、なんとか堕胎できないかと葛藤する話。
身体にも影響を及ぼすほどのかなり危険な覚悟をする彼女に驚きしかなかった。
「事件」の解説では、中絶に関する世界の状況が詳細に書かれている。
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2022年ノーベル文学賞作品
届いた小説は、文字が大きく行間が広く、むかし読んだ山田詠美の小説みたいなレイアウト。
その割には1080円と値段が高い文庫本。
ネット注文だったので、届いた時に、見た目にはガッカリする。
読んだ感想は、読みやすい。
その時の“私”の気持ちを淡々と解説し続けている。
『嫉妬』の気持ち、伝わる。
さっさと切り替えられたらいいのに、なかなか段階を踏まないと終わらない気持ち。
『事件』
フランスが1975年まで非合法だったとは。
もしかしたら、映画で見てるのに年代は意識してなかったかな?
非合法で中絶を自身で行うとか、どっかの医者ではないおばさんにやられて大変なことになるような映画は見たことがあるから。
男の方は、オレかんけーねーみたいな感じは腹立たしい。
トイレのシーンは、想像したら怖い、痛い、恐ろしい。
不衛生な中で非合法なやり方をして体に危険が及ぶから、中絶を禁止にする法律はない方がいい。
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ノーベル文学賞に身構えたが、非常に読みやすかった。
作者の経験をから書かれた、ノンフィクションとも私小説とも言えない感じの文章。
それだけに生々しく苦手な描写も有り。
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嫉妬という感情に真っ向から向き合っている小説。非常に冷静に綴られているので、この醜い負の感情も、陰湿さが薄れ、人間の特権であるような高次の心情に思えてくる。すとんと腑に落ちる言葉の数々。読み手の内面を映す、鏡のような文章。
「私」は、元恋人の新しいつれあいをあれこれ想像する。関心が、元恋人からその会ったことのない女へ完全にシフトし、その女をこのようであろうと想像、創造する。ここでの嫉妬はまさに創作。ここでは、嫉妬とフィクションを書くことは相似形を成すように思われる。
嫉妬は、自分が占めていたはずの場所に、他人が入り込み奪取してしまった事実への、いわば馴らしとなっており、それとあまり違わない行為として「書くこと」がある。
もう一篇の「事件」は、中絶を扱った小説。1975年までフランスでは、中絶手術は非合法であった。作者は、女という性をもった以上書かないではいられなかったのかも。主人公の大学生が、孤独に闇の中絶手術を受ける場面、凄まじいことこの上ない。何度も読むのを中断した、辛い読書だった。
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自身の思考、感情などを言葉にしようとする意志の力に感嘆するものの、それ以上にこころをゆすぶられるものはなかった。
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2023.1.14
喉の奥に胸の奥に、後味がざらりと残る。
追体験とはこのようなことを言うのか、
と考えさせられるくらい、とめどない感情の波に呑み込まれ揺さぶられてしまう。
読者の想像力や思考力を試しているかのような、畳み掛けるような筆致が続く。
これは、遠い昔の話ではないのではなかろうか。
いま我が身に起こったばかりのような迫真さ。
中絶にまつわる世界情勢が巻末で解説されている。
この本がノーベル文学賞受賞の話題と共に世界に広まることで、女性の人権と政治と宗教を見つめ直す契機とせねばならない。
だからこその受賞ではと思い巡らせる。
邦題は「事件」だが、映画版のタイトルは「あのこと」である。
私にとっての決定的な出来事を指すならば、このタイトルの方が身に迫ってくる。
映画を観に行こうと思う。
しかし、喉元の奥に引っかかるのは、主人公の子供への思いのようなものが描かれていないと感じた点。
敢えてのこの描写なのだろうか。
それとも、「中絶は子供の命を奪うこと」「罪である」という社会通念自体(または私に刷り込まれた考え)を、その成り立ちと共に冷静に批判的目線で見つめ直した方がよいのだろうか。
女性が感じる、感じさせられる罪悪感は、社会が罪悪視していることを内面化させられているのでは。
堕胎した女性が罪の意識に苛まされてしまう世の中がおかしいのかもしれない。
この感覚は日本だからだろうか。フランスの感覚とは違うのだろうか。
流産と中絶は異なるが、水子供養のようなものは世界にもあるのだろうか。
堕胎罪は。
日本の現状や文化や慣習や法整備の歴史を辿りながら、読後の違和感の正体を考えたい。
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本作は、ノーベル文学賞受賞者のアニーエルノ著の作品で、映画化もされているみたいです。
本作品は、一人称で書かれており、実体験をもとにしたストーリー展開で、主人公の内面の葛藤を生なましく描き、とてもリアルでした。
著者の作品は、心に内在する熱い情熱が吹き出してくるような作品が多く、火傷したような読後感になります。
ぜひぜひ読んでみて下さい!
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ノーベル文学賞受賞者による。
筆者の体験したことかのように書かれている。
事件は、中絶が禁止されていた時代のフランスで妊娠してしまった学生が中絶を果たすまでの体験。
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短編集2篇
自伝風の小説。簡潔に隅々まで詳しく内なる感情をその流れるままに記録して、その時の心情が余すところなく再現される。思わず引き込まれ感情の海にどっぷり浸かって追体験した気になった。中絶場面の恐ろしさに気分が悪くなった。
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シンプルな情熱同様、体験の共有を求めてくる強い力を感じます。出来事は他者に理解できるものとして、たたみかけるように表現され、感覚、思考を試されている気がします。
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私は終えた。嫉妬に囚われた想像界、ここではそれは、嫉妬の虜であり、かつ観客であつわた私自身よ想像界だったわけだが、そこに現れるさまざまな形象を抽出することを。