電子書籍
貸本屋
2023/06/20 13:00
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投稿者:くみみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
女手一つで貸本屋を営む腹の据わったおせんが、本にまつわる面倒事に自ら首を突っ込んでいく奮闘記。
貸本業をはじめに、彫り師や挿絵師や書店と、江戸時代の出版事情を深く知れる、本好きには堪らない一冊。少しおせんが強すぎる気もしたけど、置かれてる環境が人を良くも悪くも狂わせる、そんな人生の転換期を覗けるバラエティに富んだ5篇の連作集。
人死にが絡んだり、ネガティブな事件が多かったから、恋愛色の濃い「松の糸」のオチが意外すぎてほっこり笑えた。「火付け」のおせんの本への想いが巡り巡り帰ってくるシーンも感動的だった。
しっくりこない事を「物語と挿絵の場所がずれてる」と喩えたのが、いかにも本好きの表現でとても印象に残った。続篇があればおせんの恋模様に期待。
紙の本
江戸の市井の人たちの「本愛」が愛おしい
2023/03/23 09:46
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:higassi - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトル通り貸本屋のおせんの物語。娯楽が溢れ、本もAmazonで注文すれば翌日には届く現代からすると、江戸の市井の人たちの「本愛」を愛おしく感じます。健気に生き抜くおせんも魅力的ですし、登を始めとする人情味のある脇役たちも良いですね。
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これはいいものを読んだ。五編からなる天涯孤独の江戸の貸本屋おせんが、本を愛する(執着とも?)がゆえに様々な事案に巻き込まれ、また面倒を引き寄せていくことで、物語が展開していく。謎解き要素もあり楽しめるが、何より江戸時代の庶民の暮らしぶり、本や歌舞伎などの娯楽、遊郭、幕政などが垣間見えるさりげない著述が、物語全体をしっかり支えていて、骨太な内容となっている。おせんの江戸っ子な勝気さと、女ひとり生きる不安、関わる人々の人情など、編が進むごとに徐々に盛り上がり、特に第三編から最終第五編まではどんどん読み進めたくなってしまうほど集中できた。続編希望な楽しみな作家さんだ。
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3話目の「幽霊さわぎ」から、おせんのキャラが掴めてきて話の筋も面白く思えるように。
江戸時代の貸本の仕組みや、本にまつわる人々の生き様を知れて興味深い。
時に作り手の企みを秘めて、そして読み手の想いを乗せて変化していく江戸の本は、それ自体に命があるかのようだ。
「本は一場のたわむれだ。ありもしないことを、さも当たり前のごとく書き記した本や絵巻は、人の目にふれなければ無いに等しい。だったら無くてもいいと御公儀は断ずるのだろうが、ささやかなたわぶれ心によって、町の民びとは希みを得ることもあるのだ」p88
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江戸下町の生き生きとした描写と、主人公おせんが営む貸本屋の文化、そこに絡む事件...もろもろ読みやすく一気読み。
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貸本屋梅鉢屋おせんの父親は
腕のいい彫師だったが無念の死を遂げる。
天涯孤独となったおせんは周りの者に助けられ
高荷を背にしたたかに生きていく。
〈たかが本〉
その本は〈長い年月人の手にあり、何十年、何百年と読み継がれていく〉
P120より。
5話それぞれに物語があり
その時代を精一杯生きた人々の矜持が窺える。
老舗問屋、「蔦屋耕書堂」
創業者の蔦屋重三郎 が、第二話「板木どろぼう」にも登場する。
あのTSUTAYAだ。
参考文献にも読みたい本がたくさんある。
やはり、本は読み継がれていくものだと改めて思う。
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寛政の改革以来、厳しい出版統制が続いている頃。
読物は高価で庶民には手が届かないことから、「貸本屋」が重宝された。
おせんは「梅鉢屋」を名乗り、本をかついで振り歩いて五年。
自分自身が本の虫であることはもちろんだが、本と人を繋ぐ役に立ちたいと思っている。
「けしからん」の一言で、多くの本が出版停止になるのはおかしい。
お上に逆らうことはできないが、裏道を通ってでも、本を生かし、読み継がれる手助けをしたいとおせんは考えている。
明確な意思を持った、影の活動家かもしれない。
いつか店を持つのが夢。
第一話 をりをり よみ耽り
せん自身のこと。12歳で両親と別れるきっかけになったのも出版統制だった。
第二話 板木どろぼう
災害で命を落とした母の災難を勝手に美談に置き換えられ、娯楽小説として出版されることに憤る。
現代でも当てはまる事はあるだろう。
第三話 幽霊さわぎ
大店の主人が亡くなり、その通夜に女将と手代が睦み合っていた。怒った故人がよみがえり・・・?
当時の浮世絵と風俗が良くわかる。
第四話 松の糸
遊び人と名高い、大店の若旦那が本物の恋をした相手は、若い後家。
幻の書物を見つけてくることが求婚に応じる条件と言う。
意外なオチにウケる。
やはり、生きている人間が幸せにならなくては!
第五話 火付け
せんは、危ないことに首を突っ込みすぎなのかも。
火事や災害で失うものがあっても、江戸の庶民は何度でもたくましく立ち上がる。
お金も、本も天下の回りもの。
頑張れおせん。
続く・・・のかな?
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亡き父親の影響により貸本業を営むおせんさんが、お上、泥棒、幽霊、幻の書、火事、等々に出会い、立ち向かっていくお話(?)。
貸本業の様子がわかったり、まだいろいろ展開(登さん関係)しそうな感じもあり、楽しかったです。
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第100回オール讀物新人賞受賞作
江戸後期の浅草を舞台にした貸本屋おせんの連作短編集。
おせんのキャラクタがいい。なんともいい。この境遇でこういう話だと主人公は清く正しく美しく、けなげでいじらしい、ってなってしまうのだけど、おせんはそれだけじゃない、たくましさとある種のふてぶてしさを持ってるところがいい。
腕のいい彫り師だった父親を失い、母も失い、天涯孤独になったおせんを見守る周りの人情もいい。幼馴染みでおせんにぞっこんの登もいい。そして本にまつわる5つの「事件」もそれぞれに面白くていい。
おせんが解く事件の鍵にぐいぐいと引き込まれる。紙好き本好きにはたまらないね、これは。
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一行目:ゼミの声と入れ替わるように、重羽こおろぎが鳴きはじめた。
絵を描く人、彫る人、刷る人、昔はそんなふうにわかれていたんだっけ。
思っていたより面白かった。
短編だけど、燕ノ舎は繰り返し登場するのかと思ったら、肩透かしで残念。
ラストのおせんの台詞「たかが本だよ」が良かったなあ。
本を愛する人ほどそんな言葉を使う。ふと、漫画「金魚屋古書店」でも同じような台詞が出てきたことを思い出し、無性に読みたくなる。
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親を亡くし一人で貸し本屋を営むおせんの日々を描いた作品。本をめぐりふりかかってきた事件を解く捕物帖にもなっている。
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”貸本屋”と聞いて小学生の頃、マーガレットや少女フレンドなどの漫画を借りていたお店を懐かしく思い出した。青山文平さんの小説「つまをめとらば」(https://amegasuki3.blog.fc2.com/blog-entry-269.html)でリタイアした武士・貞次郎が好きな算術を中心に貸本屋業を営んでいたとあり、江戸時代にもすでにあったと知り驚き嬉しかった覚えがある。(最近青山文平さんの『本売る日々』も上梓されている)
貸本屋の歴史にも興味が湧いた。
小説でたびたび使われる『写本』とは? 江戸時代にも勿論出版規制があった。(おせんの父親は版木職人だったが、御公儀を愚弄する内容と判断され指を折られ、それを苦に自殺している)そこで、裏技として使われたのが写本だった。規制の対象となる木版印刷の出版統制の対象から逃れるために、問題となる書物は写本され規制の網の目を潜り抜けていたのだ。
江戸浅草で女手ひとつで貸本屋を営む〈おせん〉の奮闘を描く。読本をめぐって身にふりかかる事件の数々をおせんが謎解いていく。おせんのような貸本屋が時代を経て大手のレンタル店を生み出し、技術革新でまたそのレンタル店が姿を消している現在、貸本屋おせんのような真似事をしてみるのも面白そう。
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第100回オール讀物新人賞を受賞した「をりをり よみ耽り」から始まる、5篇収録の連作短篇集。文化年間の江戸・浅草を舞台にした人情噺で、主人公の貸本屋おせんがいい。
貸本屋といっても、店を構えて客を待つのではなく、お得意様の喜びそうな本を見繕って訪問するスタイルだ。必然大荷物となり、まさしく表紙絵のような状態だったと思われる。
実際に起きた事件も盛り込みながら、行く先々で起こる様々な出来事を彼女ならではの機転で解決していく。続篇も楽しみだ。
NetGalleyにて読了。
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幼い頃に両親を失い、一人で貸本屋を営みながら生きるおせん。
彼女の目を通して、この時代に生きる人たちの生活が、今もそこにあるかのように見えてくる。
女一人、必死に逞しく、でも軽やかに生き抜いていく彼女の姿に励まされ勇気付けられる人も少なくないはず。
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なかなか楽しい本だった。江戸時代の出版事情がいくらか分かった。
主人公のせんも魅力的に描かれている。
次作が待ち遠しい