紙の本
カバー裏にもお楽しみがあります
2023/03/11 09:15
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投稿者:キック - この投稿者のレビュー一覧を見る
タワマンに住む二家族を中心に、仕事や子育てに葛藤する家族の有り様を描いたタワマン人間模様。上層階と下層階の住人の生活レベルが違うというタワマンの特異性を活かし、他人との比較から自由になれない現代人の心理を巧みに活写。加えて、郊外暮らしや田舎暮らしにも言及し、多層的に現代日本人の生活風景が理解できます。そして幸せとは何かを自問自答するでしょう。個人的には、銀行の日常が描かれている第二章は興味深かったです。なおカバー裏にもお楽しみがありますので、忘れずに・・・。
電子書籍
誰にもある天国と地獄
2023/02/28 22:34
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投稿者:rose - この投稿者のレビュー一覧を見る
誰にも地獄の部分がある。人の芝生は青く見える。
もがき悩み苦しみそれでも苦悩の中で成長していく人間を愛おしく思った。
全員が主人公。
紙の本
イヤミス好きな私としては・・・
2023/03/16 16:23
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投稿者:マツモトキヨシ - この投稿者のレビュー一覧を見る
タワマン、マウント、お受験ときたら
ドロドロの内容かと悪い期待をして読んでみたら
特に事件は起こらないし、それぞれの内側に触れる
ドキュメンタリーみたいな小説だった。
登場人物の中でミリも共感できないさやかが
その後どうなったのかちょっと気になる。
さやか以外の登場人物はみんなちゃんと前に進む。
空回りやさか、今どうしていますか?
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タワマンというメディアで羨望の的にされたり、揶揄の対象となったり、その注目度ゆえに、色々と弄ばれる舞台で、そこに住む人間のリアルな様子を描写した本。
タワマンに住むのは、資産家、サラリーマン、地権者、という言葉通り、それぞれの立場から見た人生と、その子供の中学受験の様子がメインストーリー。
少し本論から外れるが、客観的に見ると東京の受験競争がいかに異常かを理解するきっかけにもなった。
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最後がハッピーエンドで終わって謎の感動。どちらにせよ自分の幸せは自分で決めて他人と比較しないことが大切なんだなぁと再確認。
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窓際三等兵さんとおぼしき人が著した小説。
Twitterで「タワマン文学」なるものを一つの分野として確立させた方と思う。
これまで読んできたツイートの要素が散りばめられているという意味で、新しさは感じられない。
ツイートでは、登場する人を少し突き放した印象だったが、この作品ではちょっと「いい話」に落としてしまっていて、少し残念。
でも、それはそれでよかったかな。
今後もTwitterで一層活躍してもらいたい。
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正直、話題のタワマン文学を読んで笑い飛ばそうくらいの気持ちで手に取ったのだが、妙にリアルな手触りがある物語にどっぷりと浸ってしまった。タワマンというのは地理的には固定されながらも様々な社会階層が交差する、物語の舞台装置としてうってつけの存在なのだ。
一人一人違う地獄をもつ、というポリヴェーガル理論につながる一節が印象的だった。
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タワマンに住む人それぞれの視点から描かれた物語。4つの章でそれぞれ分かれているかのように見えるが実は繋がっている。他人からは見えない葛藤や苦悩が必ずしもあり、それが人生なのかもしれない。人の数だけストーリーがあるがこの1冊でさまざまな味わいができる。現実世界から一歩離れたいときにも、実際に人付き合いをしてて悩み始めたときにも何度も読み返しても面白い。子育て、親との関係、収入や仕事など多面的な気づきができる最高の1冊。
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東京23区在住既婚者30代みんな首がもげる程頷くんじゃないかって共感できる。え?これはノンフィクション?どっかで心を覗かれてた?
タワマンだろうが一軒家だろうが、みんなそれぞれの地獄があって、息が詰まって死にそうになりながらも毎日仮面を付けて生きてるんだよね。きっと。
豊洲とか麻布とかタワマン近くの本屋に山積みしても一日で売り切れるんじゃない?なのになんで楽天にもAmazonにも紙の本売ってないの!?
とりあえず買って。
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麻布競馬場さんのこの街から東京タワーは永遠に見えないが、Twitter形式のまま綴られた短編(140文字ごとに途切れる)に対して、こちらは長編の、普通の小説形式でのタワマン文学です
地方出身、みずほ銀行勤務のパワーカップル夫婦が基本的には主人公ですが、
憧れる最上階に住む開業医×元芸能人の専業主婦夫婦も、視点が彼らに移るとそんな彼らの苦労が垣間見える展開はお見事でした
中学受験小説、翼の翼よりは受験要素は薄めです
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湾岸タワマンに住む三種類の家庭『資産家』『サラリーマン』『地権者』。東京のタワマンで暮らすことができる時点でごく一握りの成功者であるはずなのだが、各家庭にはそれぞれの悩みがある。子どもの受験戦争や進路がその筆頭だか、本当に子どもにとって正しい選択は何なのか?
東京にしがみつくのはプライドを守るため?銀行員の仕事は何のためにやっているのか?子どもや旦那のことではなく、自分のやりたいことは?
息が詰まる東京から「降りて」千葉に移った友人は大きな家で楽しそうに暮らしている。
もちろんその友人にも隠れた悩みはあるのだろう。
隣の芝生は青いとはいうが、人生で大切なことは何なのか?考えさせられる作品。
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みんなそれぞれ背負っていて大変。だけど隆が自分の意思で医者ではなくアメリカ留学を決めたことが、なんだか勇気もらえた。勉強って親から言われたからとか病院継ぐためとかじゃなくて、選択肢を増やすって事につながるって示してくれて、スッキリした。
タワマンの世界の人間関係ってどうなんだろうって思って読み始めたけど、いつのまにかそれぞれの登場人物の気持ちが手に取るようにわかり、夢中になって読み終えました。
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「ネットミーム全部盛り」なむつこい感はありながらも、読後に一服の清涼感を感じるのは登場人物がそれぞれの地獄を抱えながらも、その中に救いを見出すからだろうか。
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人には人の地獄がある。そんなメッセージを受け取った。最初はうわぁかなりリアルでそのリアルさがしんどい…と思ったが、隆や充、琉晴の思いやその両親の苦労が見えて面白かった。特に隆の決心はとても勇気づけられた。そして、健太の巻き込まれた会社での色々がかなり心に刺さった。
p.17 「タワマンには、3種類の人間が住んでいる。資産家とサラリーマン、そして地権者だ」一昔前、下世話なネットニュースで読んだフレーズだが、ローゼスタワーの住民を分類する上で、これほど適切な表現もないだろう。資産家とは開業医や企業経営者、スポーツ選手やタレントなど、いわゆる富裕層で、高すぎてもここに含まれる。タワーマンのエレベーターは改装ごとに分かれているが、高層階の住民専用のエレベータに向かう人たちは一目でわかる。着ているものが違うのだ。
一方、サラリーマンは平田家を含む、数の上では、多数派を形成している勢力だ。高層階の富裕層とは住んでいる世界が違うとは言え、社名を聞けば、すぐにわかるような有名企業に勤めている人が多い。いな穂銀行だって、世間では叩かれているが、立派な大企業だ。タワーから駅の改札までの専用通路は、毎朝、通勤に向かう人々で溢れ、通勤ラッシュさながらの光景となる。
もっとも、エリートといっても形だけ。世間では勝ち組とされる年収1000万円に到達しても、累進課税で国にがばっと持っていかれるし、児童手当は所得制限でフルにもらえない。いま家ファミリータイプで、あの7〜8000万円もする。ダーマンのローンを組んでしまえば、生活に余裕などない。もして都心の子育ては、習い事に中学受験に、とにかくお金がかかる。周りをようとしても、さやかのように結婚してからも仕事を続ける。共働き世帯が主流派だ。自動車ローンや駐車場代、保険代といったものを考えると、多くの住民は自家用車すら持てずにカーシェアで済ませる。もちろんタクシーなんてめったに使えない。それが現代の「エリート」の実情だ。
そして最後の地権者。ターマンの建設予定地にもともと住んでいたり、商売をしていたりする人たちのことを指す。さやかは今の魂に引っ越して、梨恵と出会うまでは存在すら知らなかった。
p.52 仲睦まじい下に歩く綾子と玲奈を見ながら、さやかは頭の中で「もし」を繰り返す。全国転勤が当たり前の人事制度、夫1人の稼ぎでは、買えない、価格の都心、マンション、限られた、出産、適齢期。親の助けを借りず、夫婦で働きながら、東京で子供を産み育てると言うのがこんなに難しいとは、学校の先生も会社の人事も、誰も教えてくれなかった。
p.64 サッカー元ていくら上手くてもプロになれるわけでもないし、万一、プロになってもちゃんと稼げるのは一握りだ。その点、勉強は上位1割にいれば、安定した将来が約束される。世の中のことを何も知らない子供に対し、確実性が高い方向にさりげなく誘導するのも、親の務めだ。そこに通帳は無い。ただ、写真に写っているゆういちくんのような、充の満面の笑みを最後に見たのはいつだったのか。
p.104 学年1の秀才と言うから、頭でっかちなもやしっ子を想像していたが、おしゃべりに気を��られて、服を汚して母親に怒られる、どこにでもいそうな普通の小学生男児だった。それは充も一緒だ。琉晴と3人、この辺にカブトムシがいるかいないかで盛り上がる様子は、健太の小学生の頃と何も変わらない。子供たちを子供のままにさせてやれないのは、東京と言う街の環境のせいであり、それを用意した我々大人のせいだ。この子たちが半年後には偏差値と言う指標で選別され、別々の進路に進むとはとても信じられなかった。
p.112 深夜に自己陶酔が極まった状態で書いたとしか思えない独りよがりな文章が並んでいた。チームの若手社員曰く、大企業から新興企業に転職する若者の間で流行っている、転職エントリーと言うものらしい。大企業の社員と言う地位をして、行こうって挑戦することを大仰に書くことで、いかに自分が優秀な人材であるかを世界にアピールする効果があるのだと言う。
初めて見たが、こいつらは自己顕示欲と引き換えに、大事な何かを失っていることに気がつかないのだろうか。いつの時代も、若者の間で流行するものを10年が理解するのは難しい。
ベンチャーだかスタートアップだか知らんが、古巣に対して感謝していると言いつつ、後ろ足で砂をかけることに対して、最近の若者は何の疑問も抱かないんだろうか。矢島のやつ、窓口業務も営業企画も法人融資もほんの少し触っただけなのに、何をいっちょ前にわかった風に語っているんだ。そもそも、退職すると言う重要なことについて、同僚に対する挨拶のメールも送らないと言うのはどういう了見だ。何より、矢島は、日本経済の将来を売れるような熱いやつだったろうか。約2カ月間見てきたが、無気力と言う言葉を体現したかのような最近の若者でしかなかった。何から何まで理解不能だった。
p.121 帰りの山手線で代表取締役からそれではに受け取った名刺をじっと見つめる。会社名と名前と連絡先だけが記載された、シンプルなものだ。大企業にありがちな、スローガンやロゴマークでごてごてと埋め尽くされたようなものと明らかに違う。企業によりかからず、独力で道を切り開いていこうとする若者の熱気の残り香がそこにあった。矢島にとって目指すめきロールモデルは健太ではなく、この男だったんだろう。厄介者をつけることができて、ほっとしたような、少し悔しいよな、何とも言えない気分になる。
p.126 東京砂漠にそびえ立つ、済むもの全てを狂わせる、砂上の魂。気がつけば、さやかはすっかり狂気の世界の住人となっていた。充も、本心で勉強したいと言っているわけでは無いんだろう。毎回ボーダーラインスレスレで、母親からのプレッシャーを受けながら、優秀な友人に劣等感覚えながら、塾に通う日々がどれだけ辛いものか。悩んだ末に出した答えが、さらに勉強すると修羅の道であったとき、親として背中をすべきなのか、止めるべきなのか。健太にはわからなかった。
p.134 綾子の心を見透かしたような母の言葉に、返す言葉がない。18歳の冬。「女に書くなど必要ない」と主張する。父の母、反対を押しきって、東京の短大に進学することを応援してくれたの母だった。旅館のパートでコツコツ貯めた3百万円。口座開設以来、10年以上にわたって1円を引き出されずに、数字が積み上がった群馬銀行の通帳を手渡しな���ら「綾子は私が見られなかった景色を見ておいで」と背中を押してくれた。別に勉強したかったわけではない。ただ、山に囲まれたこの街で一生を得たくなかった。
p.143 一緒に言葉をつなごうとするが、続きが出てこない。短大卒で、学生キモ、教養も人脈を持たない地方出身の人間が、東京で「上」に続けることがどれだけ難しいと思っているの?大学進学率が2割のこの街に住み続けている。あなたにはわからないでしょうけど。喉まででかかった言葉を飲み込み、曖昧に微笑んでごまかす。しかし、渡辺君の瞳はじっと綾子を捉えていた。「東京でやっていくのも大変なんだろうけど、もっと力抜いたら?まぁ俺に言われるようなことじゃないか」
p.144 振り返ってみれば、今日会話した旧友たちは、皆、地元にとどまり、定職に就くなり、家庭を築くなりしていた。何かすればすぐ噂話が広がるような狭いコミュニティー、同窓会に参加できる資格は持っているのは、「失敗」をしていない人間だけだ。東京で成功をつかむと言う夢が破れ、息をひそめるように、地元で暮らす日々。誰1人として顔を思い出せないが、一方間違えると自分がそうだったかと思うと酔いも覚める。
p.146 私はこの知り合いだらけの湿度の高い空間が嫌で、東京に出たんだった。
p.147 決して果たされることのない、空虚な約束。かつてコートで一緒にテニスボールを追いかけ、放課後に将来の夢を語り合っていた私たちは、いつからこんな無機質な会話を交わすようになったのだろうか。山道へと消えていく軽自動車のテールランプを見送る。久美子はこれからもこの街で生きていくのだろう。デリカシーがないけれども、気さくな夫と、近くに住む子供や孫の成長を見守りながら、勝手知ったる友人達と一緒に歳を重ねる、人生。高望みすることもなく、失望することもなく、「こんなもんだ」と言い聞かせながら紡がれる、予定調和な暮らし。そうした選択肢を受け入れることができなかった。私の居場所は、もうここにはない。
p.156 「日本の医者、特に開業医が高級なのは、世界的に優秀だからと言うわけではなく、ただの既得権益ですからね。優秀な若者は、小坂さんのような、海外の視点を持った人の背中を見て、社会保障制度に帰省するような生き方ではなく、イノベーティブな方向に人としてほしいですね」と全面肯定している。代々医師の家庭で裕福な暮らしをしているからかすぎて、そしてそこに嫁いだ綾子に対して「既得権益者」と言うレッテルを貼られたような気がして、血の気が引いた。
p.181 さやかが心底疲れたと言う表情で愚痴る。確かに偏差値だけ見ればそうなのかもしれないが、職業選択の自由がない時点で、何を持って選びたい放題と言えるのだろうか。生まれる前から敷かれたレールを進むことを義務付けられた隆と、試行錯誤しながら、自分なりの正解を目指して悩む満、幸せなのは果たしてどちらなのだろうか。
p.228 息の詰まるようなこの場所で、これまでの人生で得たものと失ったものを指折り数えてきた。家族が寝静まった、夜、ルーフバルコニーから望遠鏡を覗きながら、自分の選択は間違っていなかったと言い聞かせる人生。それを隆に繰り返して欲しいとはどうしても思えない。興奮した母が肩で息��している音だけが部屋に響く。目に涙を讃え、堪えている綾子。申し訳なさそうな顔をしながらも、それでも背筋を伸ばしている隆。少し気まずそうな表情で、ジュースの入ったグラスをストローでかき混ぜている玲奈。全てが思い通りと言う人生ではなかったけれど、この家族に出会えてよかった。
p.242 内気な私は、あまり小学校に対して多くを期待していませんでした。足も遅く、喋るのがあまり得意ではないので、いつも本を読んでいました。休み時間、校庭でサッカーを楽しむ、同級生をうらやましいと思いながら、それでも一緒に混ぜて欲しいと言えず、文字を目で追うふりをしながら、ただ時計の針が進むのを待っていました。そんな私を変えてくれたのは、腕が第二章で出会った人たちでした。ある友人は、孤独にさいなまれる私に手を差し伸べてくれました。えーる先生は、私の得意な分野で活躍できるよう、背中を押してくれました。みんな、短所の指摘ではなく、長所を認め合うことの大切さを教えてくれました。埋立地で並び立つ、人工的なコンクリートの塊。ここが私たちの故郷です。それでも、ここに住む人たちは、皆、血の通った人間です。野球が上手だったり、絵が得意だったり、英語が流暢だったり、大きな夢を持っていたり、話が面白かったり、誰よりも優しかったり。多様性を認め合う湾岸と言う地域が自分の故郷でよかったと、心から思います。私たちはこれから中学校に進学し、心地よい環境から一歩踏み出します。未熟な私たちですが、小学校で、そして湾岸で学んだ経験を、心の燃料として、どんな困難が待ち受けていても、情熱の炎を絶やすことなく進んでいきたいです。
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タワマン文学。東京砂漠のじめじめした人間関係が巧妙に描かれており一気読み。上を見れば切りがないし、それぞれ悩みも違う。守りたい、この多様性