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新聞の書評で見て、面白そうだと借りた。
野間文芸大賞受賞の表題作『ケチる貴方』と大阪女性文芸賞受賞の『その周囲、五十八センチ』の2作が収められている。
両作とも一見シュールで、どちらも自分にしか興味のない、自分大好きな女性が主人公。
いかにも理系っぽい中身に、著者履歴を確かめたら東工大卒。ははーん、なるほど。誰か他の作家で、こんな雰囲気の作品書く人いたなぁと思ったけれど、思い出せず。
個人的には、後半に収録の脂肪吸引の依存症の主人公の作品の方が好きかな。
次作が出たら、ひょっとして読む気になるかもしれない。
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予想の3倍面白かった。ドライな独白(毒舌ツッコミ)に笑ってしまう。
刺さる人には刺さるのではないか。私は刺さる側でした。
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前代未聞の冷え性を背負わされた主人公の荒ぶる思考と豪快な生き様に何度も笑ったけど、報われなさにだんだん切なくなり、更なる展開に周囲への苛立ちを募らせ。
終始ヘンテコで見たことない感じなんだがめっちゃ人間模様。
〈人に寛容である〉と〈自分を安売りする〉の有って無いような境界線。
冷え性なのを周囲にひた隠しにしてサバイブする主人公の自意識もろもろがだいぶ大袈裟めいてて楽しいんだけど
旧体制然とした職場での女性の扱いとかも相まって、この冷え性も何もかも、他の人は請け負わなくて良いはずの生きづらさを何故か請け負わされてる人達の不公平さ/理不尽さが目前にばーーーんと広げられて。
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想像を絶する冷え性と闘う女性の日常を描く「ケチる貴方」と、痩身願望から脂肪吸引依存に陥った女性を描く「その周囲、五十八センチ」の2作。
面白い。
「我が友、スミス」では筋トレに情熱を注ぐ女性を描き、今回は冷え性と脂肪吸引。
取り憑かれたように心血を注ぐ女性を描きながら、同時に彼女たちを取り巻く人たちのおかしさを炙り出していく点が共通している。
それは「女らしさ」を求める世の中であったり、性別による役割分担であったり、ルッキズムであったり。
どの作品も主人公が真面目にそれぞれの目標に邁進する姿が楽しくユーモア溢れる文章で綴られ
、そしてちょっと立ち止まって考えさせられる。
太い脚がコンプレックスでそれと闘っていたと思っていた女性に、美容整形外科の医師がかけた言葉が良かったな〜。
「人は見た目じゃない、内面だ」って簡単に言うけど、見た目と内面、どちらかひとつで決まることじゃないんだろうね。
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「ケチる貴方」文章は今村夏子さんみたいで面白かったんだけど、結局何を伝えたかったんだろう。女性の生き辛さが所々描かれてるけど、我慢してニコニコしなさいってこと?「その周囲、五十七センチ」私も同じ悩みをもってるので、脂肪吸引、興味深かった
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表題作の『ケチる貴方』を、読了後の感想は、
「女が、ただひとりの人間として生きるということは、これほど難しく、【冷たく】あらねばならないのか。」
と、思ったのだけれど、その後読んだ著者インタビューでは、あまりジェンダーとか、そんなことを考えて書いてはいないらしい。←インタビュー記事を見失ってしまったので、ちょっと記憶が曖昧。
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『ケチる貴方』の主人公は極度の冷え症。
見た目は“まさかりかついだ金太郎”のごとくで、周りからは全然そんな風に見られないし、自身も冷え症のことを絶対にばれないようにひた隠しにしている。
しかしある日、冷え症と闘う日々に変化が起きる。
やむにやまれず、人に寛容にしたら、体がポカポカしてきたのだ―――。
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最初、主人公の女性がハードボイルドでかっこいい、と思った。むやみに笑顔を見せず、人に媚びない姿勢が好ましく思えたのだ。
だから、冷え症が人に寛容になることで解消される、と理解した後の主人公の行動に、私は翼をもぎ取られたような痛みと悔しさも感じたのだが、それは、傍から見ているから言えることで、主人公としては必然だったのだろう。
あと、打算的な寛容さ、というのも面白い、と、思った。
『その周囲、五十八センチ』は脂肪吸引に取り付かれたようにハマる女性のおはなし。
こちらも、面白かった。
常に読者をコチョコチョくすぐってくるような可笑しさの文章。比喩が秀逸。
地味で薄い印象しかなかった同僚が、話してみると滅法面白く、大好きになってしまった、というような印象の小説だった。
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冷え性の抱える悩みはバカバカしく思えるが、当人は死活問題だったりするだろう。そんな気づきを得るわけでなく、ただただユーモラスに描いた作品を不謹慎かもしれないが面白く読み終えることができた。
今作も石田さんの独特な着眼点に唸らされる。
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2作収録。『ケチる貴方』極度の冷え性のOLがポカポカになった奇想天外な方法とは。私もここまで病的ではないが冷え性仲間として共感を持って読んだ。なぜか工業用タンクにも詳しくなれる一粒で二度おいしい?作品。『その周囲、五十八センチ』太ももが極度に太いOLが脂肪吸引にハマる。ダウンタイムの苦痛が快感というちょっと危うい感性の作品。総括:前作よりエンタメ性が減ったぶん文学的になったような、芥川賞っぽい雰囲気。ユニークな文章とニッチな視点とジェンダー問題提起は健在でこれからも追っていきたい作家さんだ。
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著者、初読み。
2作とも一人称で、自身の体と心の痛い連携がテーマだ。
どちらも滑稽で極端な話に思えるのだが、読み進めるうちに、誰にでもありえることだと気付く。
太腿コンプレックス、私もあるある。
脂肪吸引って、そんな痛いダウンタイムがあるんだ。
やはり筋トレ、ストレッチで地道にやるか・・・
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「その周囲、五十八センチ」は「我が友、スミス」の前に書かれたものだそうだが、この人がずっと身体への違和感と、身体のコントロールに拘っているかよくわかる。身体との付き合い方が石田夏穂のテーマなのか。コントロール不能の身体を抱えて右往左往する主人公を描いたポストモダン的作品といっていいと思う。
とりわけ、「その周囲、五十八センチ」は、面白かった。この人の身体への執着が初めて言語化された作品なのかな。パンチが効いてて、自分の捨て具合が、「文学」だ。
この人の身体への関わり方は、リストカットと同じだ。身体に目を向けて物理的な痛みを感じることで、内面の痛みを忘れる、というわけだ。
その痛々しさと、滑稽な自分をクールに見つめるユーモアが、この人の小説の魅力だと思う。
私もかなりの冷え性で寝る時に靴下を一年の4分の3は履いているのだが、(因みに5月の今でも電気毛布を使っている)そうか、性格ケチだったのか、と思い当たることはある。お節介と割りきれなさと怒りがないと、冷え性は治らないらしいので、治らなくてもいいやと思う(笑)
こうやって書いてみると、冷え性の本質を突いていてすごいなと改めて思う。
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「我が友、スミス」で、すばる文学賞佳作を受賞した著者の新作で、この時のテーマは筋トレに励む女性でしたが、今作では、冷え性に悩む女性と、脂肪吸引にハマる女性をテーマに描かれていました。表題作の「ケチる貴方」は、冷え性に悩むタンクの会社に勤める女性、佐藤の日々を描いているのですが、小さい頃から続いている冷え性との闘い、何とか解消するために色々な方法(温活)を模索するが、ある時、会社の上司から新入社員の教育係を任命されてしまう佐藤だったが、そこから冷え性と並ぶ彼女の新たな試練が始まった。
その他にも、脂肪吸引に取り憑かれた、女性を描く「その周囲、五八センチ」など、前作の「我が友、スミス」を彷彿させるような、自分の身体を
ストイックに絞ることが、生きがいのように感じる女性を描いた作品を上手く描いています。
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すばる文学賞佳作で、芥川賞候補にもなった
「我が友、スミス」で
前代未聞の筋トレ小説を描いた石田夏穂さん。
今回のテーマは、
「冷え性」と「脂肪吸引」!
野間文芸新人賞候補となった
表題作「ケチる貴方」
極度の冷え性をなんとか改善したいーー。
冷血が流れてると言わんばかりのドケチな主人公が
「冷え」に悩まされ続ける日々の中で、
温かい人間になるすべを見い出す。
身体的にも心理的にも
ケチでいることのメリットとデメリット。
温かく「寛容な私」から見た「ケチる貴方(私)」を
備蓄用タンクにリンクさせて丸く収めるあたり
作者の才能はケチらないのだな、と感服するばかり。
大阪女性文芸賞を受賞した
「その周囲、五十八センチ」も同時収録。
自分の外見を見つめる中で見えてくる内面や、
排除することで蓄積されるわだかまり、
肯定と否定の歪みで振動する矛盾を、
脂肪吸引というテーマで見事に吸い上げて見せている。
とにかくユーモア溢るる表現力で、
確実に笑いを突いてくるのが石田節!
ペン先で読者をくすぐるテクニシャン!
目が離せない才能を持つ、今、注目すべき作家です。
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面白かった。設定が『よく思い付くなぁ』的な面白さ❗ でも、仕事が出来る女性は皆、こんな感情、感性なんだろうか…、と勘違い(?)してしまう。 ともかく、本の厚さにせよ、ストーリーにせよ、良かった✨
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「我が友、スミス」の方が好きだけど、「ケチる貴方」と「その周囲、五十八センチ」も楽しく読めた。
脂肪吸引が生きがいの主人公は、外見に対するコンプレックスと執着が行き過ぎているけれど、外見が綺麗だと周りの扱いが違うというのは、悲しい。私も自分を可愛い方だとは思ったことないけど、そんなに違うものなのかな…。考えると辛くなりそうだからやめておこう。笑
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冷え性と脂肪吸引を題材にこんなにおもしろく話を書けるのすごいな...
佐藤が、体温のために周りに愛想を振り撒いて、NOって言わずに寛容になっていけばいくほど、周りから舐められてこの子は言えば何でもやる、っていう態度をとられていく過程が明確に分かってすごかった
自分の外見が全く褒められたものじゃないから、こういう、見た目のことに触れた本を読むと心がザワザワする