紙の本
平家を語り継もの
2023/03/28 08:02
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:nekodanshaku - この投稿者のレビュー一覧を見る
平家滅亡の過程を語り、平家物語成立の謎を語り、「歴史とは勝者が紡ぐもの」という言説に逆らう語り物。平清盛最愛の子・知盛の生涯を通じて、感動的に感動的に描かれる。時代を動かし、次の時代を生み出したのは、多くの敗れ去りし者たちがおり、その隙間から生きのびたものがあり、それぞれの物語が残った。その幾筋もの物語が感動的に語られるべきものである。そしてその一つが、平家物語という語り物として口伝えされ残ったのだろう。最後の2章には鳥肌が立った。
電子書籍
今村版『平家物語』
2023/03/17 17:50
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くみみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
平清盛最愛の子・知盛視点で紡がれる、戦がもたらす景色が導く未来を示した、強くて脆い『平家物語』今村版、下巻。
穏やかなシーンも多かった上巻から激動の下巻。
人気武将・源義経との「源平合戦」がメインで、入り乱れてわかり難くなる斬り合いもリズミカルで、気象を使った緻密な作戦と、心情描写が加わり一層惹き付けられた。現代から見ると原始的に見えるけど、この時代では抜きん出ていて、ある種のハイブリッド戦争だったんだろうなと偶感した。
歴史は勝者が作る――『平家物語』が遺してくれた想いを受け取れていない今の世界へ、改めて突き付けられた生命の唄。
知章と敦盛のエピソードもあって、平家オタの方は必見です!
地図と系図があると尚わかり易くて良かったので、文庫化の際は宜しくお願いします。
今村先生が描くと、ここまで離れた歴史物語も、手が届きそうな親近感を錯覚する。
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後半のなんと切ないことか。
詠み人知れずの平家物語だが、まさに知盛が千年後の人々に伝えているようにしか思えなくなってしまう。
もし平家物語が編まれなかったならば、どのような史実が語り伝えられたのだろう。
一人の口伝が今なお残る平家の思いの強さが感じられる。
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下巻読了。
―― 千年後の君へ ――
やっと届いた下巻。怒涛の胸アツ展開で一気読みでした。
いやぁ、待ったかいがあったというものです。最&高!
一ノ谷、屋島、そして壇ノ浦・・・それぞれの戦がドラマティックで、一ノ谷で次々と命を散らしていく平家の若き公達(敢えて“公達”と呼ばせて頂きます)たちの姿も壮絶でしたし、ハイライトの壇ノ浦決戦では、思わぬ“三つ巴”の中での教経の鬼神のような闘いっぷりに息を飲み、そのカオスを経て皆で手を取り合うかのように海に消えていく平家一門の、なんと哀しくて美しいことでしょう。
これぞ“滅びの美学”ですよね。
そして、緻密な軍略の知盛VS常識を覆す奇襲の義経という二人の“好敵手”の邂逅シーンも見どころです。
義経のキャラ設定については賛否ありそうですが、個人的には、弁慶の“うちの御曹司がスミマセン”的な感じも含めてアリだと思います(笑)。
あと、頼朝もね・・・鎌倉で“碇ゲンドウポーズ”で動かずジッとしている様が目に浮かんでしまった私です。
ところで、上巻から気になっていたこの物語の“語り手”がついに明かされた時、その背景にあった深い絆と「平家物語」に託された想いに思わずグッときました。
そう、それは千年後を生きる人達に伝える愛の唄であり家族の唄であり涙の唄だったのですよね。
「見るべき程のことは見つ」の台詞を最後に、微笑みながら海に消えていく知盛様・・・その生き様を想いしばし余韻に浸らせて頂きました。
という訳で、圧巻の歴史エンターテインメント。どっぷり堪能させて頂いた次第です~。
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平家物語がなぜ編まれたのかを、源平の戦いを追いながらドラマチックな物語に仕上げている。平家物語に描かれている戦いも、具体的な戦略にまで落とし込んで描いていて、強引に感じる部分はあるものの、物語としての合戦でなく、実際にあった戦いとして読めるのは新鮮だ。後半フィーチャーされる義経のキャラはあの大河の義経とかなり被るので、よりイメージしやすくなっていると思う。
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今村翔吾作品なので、
読みやすくて面白いのは当然として、
源平の物語にどのような新解釈を加えるのか、期待していました。
結果は期待以上。
視点人物の平知盛を、人間味あふれる知将として描きつつ、
・だれが平家物語を紡ぎ、だれが託されたのか。その狙いは
・そもそも清盛は、なぜ頼朝を生かしたのか
という謎に大胆なアプローチをしている。
特に後者については、思わずうならされた。
欲を言えば、一の谷のあたりなどは、
地図を付けてほしかったです。
ネットで検索して、照合しながら読みましたが。
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読書記録 2023.4
#茜唄 (下)
#今村翔吾
下巻では義経との戦いが苛烈を極める。
平家の男たちは次々と死出の旅へ。
哀しい結末だけど、美しく、爽やか。
源氏をも切り裂く夫婦の愛。
800年余りにわたって、平家物語が語り継がれる理由の一端を、教えてもらった気がしたよ。
#読書好きな人と繋がりたい
#読了
#平家物語
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「祇園精舎の鐘の音・・・」
日本人なら誰もが知ってこのフレーズ。自分も多分に漏れず、学校で暗記した記憶がある。
またなんとなくの意味を知っている程度のものだった。
しかし「茜唄」を読了後、このフレーズが生き生きと色を帯び、そこに込められた多くの人間の思いが凝縮して、景色が見えるように変わった。
平家物語がこんなに面白い歴史物語だとは微塵にも思っていなかった。もっと深くこの歴史を知りたいと強く心を揺さぶられた。
著者の今村翔吾先生に感謝したい。
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帯紙に書かれてあるように、歴史は勝者のもので、あるが、何故平家物語には、敗者が書かれているのか。
平知盛から正室の希子から、西仏へと語り継がれていく。平知盛と源義経の想い、まさにこれは、新解釈の熱き平家物語と言える。
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令和の『平家物語』。それぞれの思惑や思いがこもった場面場面。素晴らしかった!冒頭や「那須与一」、「木曽の最期」など、中高生でも触れると思うので、、是非この作品も読んでもらいたい!
それにしても、琵琶を伝える人が、あの方だったとは……!
この辺の上手さが、今村さんですね!
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一の谷〜屋島〜壇ノ浦。平家滅亡に至る下巻は全編クライマックスと言っていい。それぞれの名場面が、今村さんの色で鮮やかに再現される。そして10年後の〝最後の対決〟がまた泣かせる…。知盛視点の平家物語と同時にもう一つの「平家物語を守る」物語が進行し、最後まで目が離せない展開、お腹いっぱいになった。屋島と壇ノ浦の間に挟まれる創作エピソードはラストに向けた大きな伏線となるが、そこで描かれる義経のキャラが、ちょっと衝撃的ではあった。いずれにしても、平家ファンの琴線に触れるのは間違いない傑作です。
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奢れるものは久しからず。唄い継がれた物語を思うと真の勝者はどちらか、と思わない事もない。後白河法皇がほんと嫌な役どころで、この人はどの作品でも良く描かれないな、と思ってしまいました。知盛の謀略はなかなか。義仲敗戦に一枚噛み、上手く手を組めば残っていたのは義経と平家だったのかと思わされるほど。良き作品でした。さすがの一言です。
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一族を守ろうと、ただひたすらに懸命に闘った漢たちの愛の唄。
その唄は人から人へ、時代を幾つも超え語り継がれ、その時代の人々の心にしっかりと刻み込まれていく。もちろんこの先の時代へも。
もはや勝ち負けなど関係ない。闘った真実と漢たちの生き様が未来永劫遺されていくのみ。
祇園精舍の鐘の声、諸行無常の響きあり。
娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。
おごれる人も久しからず、唯春の夜の夢のごとし。
たけき者も遂にはほろびぬ、偏に風の前の塵に同じ。
学生時代に暗唱させられた『平家物語』の冒頭部分。当時は意味も考えず、ただ義務的に覚えただけのこの文章も、今作を読み終えた後詠み返すと、かの時代を懸命に生き抜いた漢たちに思いを馳せずにいられない。
そして全てを見届けた漢の散り際の清々しさに涙が止まらない。
上巻からずっと気になっていた語り手。まさかあの方だったとは。衝撃的で、上巻から読み直した。
結末を知っているとはいえ、このラストはやはり辛い。
平家VS源氏の闘いは、戦力的にも戦術的にも互角なのに、ちょっとした隙で勝負が幾度もひっくり返る。運を味方に付けた方が勝ちなのか。
そんな壮絶な闘いの中で生まれる、人と人との温かな交流。チャーミングで魅力ある漢たちの掛け合いはほんの一時でも戦のことを忘れさせてくれた。こんな時代でなかったなら、真の友情が芽生えたであろうに。
今村さんならではの神業的な展開が物語の結末に切なさを倍増させてくれた。
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屋島の戦、壇ノ浦の戦等々源平合戦の総てが目に浮かびそして知盛の心の内が心に沁みてくるそして最終章での希子の語らいそれに悔しがる頼朝、感動の連続だった。
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平家の滅亡を描く平家物語。公家化が進んだ平家が、清盛が亡くなることで、一気に滅亡へと突き進むのは当然のように思っていたのだが、読み終えた今、そうでないことを知る。
勿論、この小説の解釈も実際のところ、正しかったかどうかはわからないが、違う見方をすることで、歴史を何倍も面白く感じることができるのは間違いない。
こんな感想を千年後の現代に投稿させた作品についても、頼朝はさぞ悔しかろうか。今村翔吾さんの独特な解釈が溢れる次回作も期待したい。