すり替えられた誘拐 （創元推理文庫）

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時は1969年、大学紛争華やかなりし頃である。
場所はイギリスのブランチフィールド大学･･････小オックスフォードという人もいる･･････田舎大学だ。
これがリアルに描かれる。
つまり――人が多い！
これ誰? 　学生？　いや先生か。
これ誰？　え、大学職員まで出てくるの？
これ誰？　名字か名前かどっちかにしてよ！
何度人物紹介表を見たか知れない。
まあ、大学だから、人が多いのは当然だ。
大学なのに、登場人物がたとえば３人だったら、不自然ではないか。

そして、大学に問題を解決させるべく、狂言誘拐が計画される。
なぜと思ってはいけない。
学生運動とはそういうものなのだ。

その狂言誘拐が本物になり、殺人事件が発生する。
なぜと思ってはいけない。
そこから面白くなるからだ。

人物の多さにひるんではいけない。もったいない。
人物紹介に指を突っ込んで、繰り返し見ながら、あるいは誰だったかは無視して、読み進めるのがいい。
誰を覚えている必要があるかは、次第にわかってくる。
話のだいたい半分くらいだろうか。

作者D・M・ディヴァインの、未訳長編のラストを飾るのが、この『すり替えられた誘拐』である。
ディヴァインの話はシリーズものがなく、すべて独立している。
ということは、どれから読んでもいいということだ。
ディヴァインだから、必ず面白い。

誰が犯人か？
専念して楽しもうではないか。

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一気に読んだ。めちゃ面白かった。アレコレ推理しながら犯人探しをしたが、私の想像力では到底及ばなかったし、脱帽でしかない展開に拍手。著者は既に亡くなっているが、古さを感じさせないのもさすがと思った。

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これで、ディヴァインの未訳作は無くなり、あとのディヴァイン未読作は、他社刊行の2作のみ。追々、〈創元推理文庫〉で出てくれることを期待する。
舞台はスキャンダルで揉める大学という、いかにもディヴァインな設定だったが、他作との違いは、犯人が全体2/3くらいで明らかになり、後の1/3で、犯人、犯人に嵌められた者、謎を解いた者の三つ巴のドラマが語られる点だろう。

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・あらすじ
1960年代のアメリカ、ブランチフィールド大学が舞台。
学生の除籍処分に抗議するために、資産家の娘バーバラを誘拐する計画がブランチフィールド大学当局に入った。
狂言誘拐と思っていたがバーバラは実際に誘拐され、容疑者は消えてしまった。

・感想
前半は誘拐事件の真相を暴くミステリーで終盤はサスペンス。
犯人は割とわかりやすく書かれてたと思うけど、ブライアンの淡白さ？があまりに怪しくてずっと疑ってたw
味方のふりしつつお前本当は犯人なんだろ？ってずっとうたがってた…。
ほろ苦い最後だったけどブライアンが成長したのは良かった。
ローナもあれは逆恨みなのでは？と思わないでもない。

被害者のバーバラは結構可哀想だった。
今でもああいう子いるよね、機能不全家庭で育ってしまい、他人との関係性を金品でしか保てない悲しい子供。

犯人の動機も身勝手だったけど、マイケルがものすごい情けないクズ野郎だったw
ちょっと同情したところでクズエピソードやモノローグが入り「いやこいつめっちゃクズやん」と一切共感や同情心がなくなっていく。


登場人物が多くて大学内での派閥争いとか色々詰め込み過ぎな印象もあったかも。事件が動くまでいまいち物語に入り込めなかった。
解説のクリスティとヒッチコックという巨匠の名前を借りたキャラクターの暗喩が興味深かった。

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やっぱり少し古めの海外本格ミステリーはいいなぁと思いながら読みました。なんでしょうか、読んでいて、変な展開にならないという安定感？安心感があります。とはいえ、今作の内容は、残念ながら起伏に乏しく、終盤も何か意外性があるかといえば、そんなことはなく、クライマックスがないまま、そのまま静かに幕を閉じたという印象でした。