紙の本
公共政策における「ショック・ドクトリン」と企業経営におけるそれとの違い
2023/06/27 21:39
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Haserumio - この投稿者のレビュー一覧を見る
『ショック・ドクトリン』そのものは2度も購入しておきながら、ボリュームに圧倒されて手が出ていないのですが、本書(というか本番組)は裨益するところ非常に大。収められた具体例もそれなりに多く、大いに勉強になりました。
企業の場合、それまで出来なかった経営改革が「ショック・ドクトリン」で実行され経営の実が挙がることも多く、割とpositive imageみたいなところもありますが(例えば、COVID-19禍をテコにこれまで出来なかった生産性改革を実現し、業績が前よりも改善)、そうした事象との落差が、正に政治的なるものにおける公平性や公共性の存在(重要性)を示していると思う。
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ショック ドクトリン ショック
2023/07/18 15:14
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:太陽電池 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ショック ドクトリン ショック
私は「100分de名著」を見るまで、「ショック ドクトリン」の存在を知らなかった。ナオミクラインの著書も上下巻買いはしたが、あまりの分厚さにまだ読む暇が無い。番組テキストを読み、番組を全4回共見た感想を述べたい。一言で言うと、経済学に名を借りた国家的強盗殺人である。確かにミルトンフリードマンは、ノーベル経済学賞を受賞しているが、こんな無謀な搾取的殺人を経済学と呼んでいいのか?まず、各国にフリードマン経済学を学んだシカゴボーイズを送り込み、ブッシュ大統領のように政権を奪取し、その後行われる戦争や、戦後の復興予算を通し、軍需産業で大儲けし、戦後は、チェイニー副大統領やラムズフェルド国防長官のように、元居た企業のCEOに戻ってその復興事業でまた儲ける。例えばイラク戦争の大義は、イラクに大量破壊兵器があるということだったが、現在では、イラクに大量破壊兵器は無かったとCIAなどが結論づけている。正当な理由もなしに戦争を仕掛け、軍需産業と復興事業で大儲けしたのが、このショックドクトリンの実態である。思えば、日本人は昔から「哲学無関心、経済小学生以下」と言われるが、アメリカには「経済学を学ぶ真の目的は経済学者に騙されないようにするためだ」と言うことわざまである。日本人は真面目だがお人好しと言われるのは、約20年前から続くオレオレ詐欺がいまだに終わらないことでもよく分かる。要するに政府を信用し過ぎているし、まさか政府が首謀者とつながっているとは思わないだろう。国営だった国鉄民営化の本当の目的は十数万人もいたと言われる国鉄の労働組合を解体し、結果的に野党の票を消滅させるのが目的だったし、郵政民営化は労組の解体に加えて、一千兆円近くあったと言われる郵貯の資金を海外、とりわけアメリカに移動させるのが目的だった。おかげで景気は悪くなるし、6%近くあった銀行の金利はほぼ0%になった。当時郵貯に1000万円預けると10年で倍の2000万円になった。今の利息は年間百円である。これは景気のせいではなく、国家的搾取と言えよう。その証拠に企業の法人税は大きく下がっているのに消費税などの一般市民の負担は倍増し、企業の利益の貯金である内部留保は500兆円以上ある。本来、儲かった企業が銀行に払うべき利子を極端に少なくしたために、企業の内部留保は増加し、市民の預けた預金に利息が全く付かなくなったのである。
また最近は日米同盟という言葉が頻繁にマスコミで流布されるが、日米安保条約は極めて従属的で、日本側に基地で起きた米国の犯罪人を取り調べる権利すら無い。昭和30年代に出版された本にはこうある。「日本の米軍基地は日本を守るためにあるのではなく、日本を監視し、いざという時は日本を攻撃するためにある。」これは当時、元日本陸軍参謀であった辻政信氏の発言である。
こうなると、日本政府が主張する核の傘理論もあいまいになって来る。核の傘があるとすれば、中国やロシアの核の傘なのかも知れない。私はかねがね何故北朝鮮の正式名称が朝鮮民主主義人民共和国と言われているのか疑問に思っていた。そう言えば、かつての東側陣営であった北ベトナムも東ドイツも、民主共和国であった。西側先進国と言われる国々に民主の文字の付いた国は無い。こうなると、民主主義とは一体何なのか?ということになる。アメリカがもはや軍国主義の国になった以上、日本もアメリカとの付き合い方を考え直す時に来ている。折りしもフランスの大統領がフランスはアメリカの下僕では無いと言って話題になった。今の日本人にその勇気はあるだろうか?
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Eテレでやってるのを録画してみた
社会に壊滅的な惨事が起きた際に、人々が茫然自失している時を、チャンスとして捉えて巧妙に利用するする政策手法
1,ショックドクトリンの誕生
フリードマン理論 シカゴボーイズ
チリの民営化 サッチャーの民営化
2, 国際機関というプレイヤー
アジア通貨危機 IMF
中国 改革開放 人民武装警察 格差拡大 搾取工場
ロシア ソ連崩壊 創造的破壊何単なる破壊に オリガルヒ
3, 戦争ショックドクトリン
政府中隔までの民営化 911 イラク戦争 新植民地主義
4, 日本、そして民衆のショックドクトリン
ハリケーンカトリーナ 学校の民営化ビジネス化 復興特区
日本の民営化 有事の時に機能するか? 数値で価値が測れないところは? 地域の参画は?
スマトラ沖地震 被災者自身による復興 政府との交渉 自力復興
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「ナオミ・クライン『ショック・ドクトリン』」堤未果著、NHK出版、2023.06.01
123p ¥600 C9433 (2023.07.05読了)(2023.05.29購入)
【目次】
【はじめに】今こそ日本人が知るべき、「衝撃と恐怖」のメカニズム
第1回 「ショック・ドクトリン」の誕生
第2回 国際機関というプレーヤー・中露での「ショック療法」
第3回 戦争ショック・ドクトリン株式会社化する国家と新植民地主義
第4回 日本、そして民衆の「ショック・ドクトリン」
☆関連図書(既読)
「もし小泉進次郎がフリードマンの『資本主義と自由』を読んだら」池田信夫原作・藤咲ユイ絵、日経BP社、2011.11.28
「ルポ貧困大国アメリカ」堤未果著、岩波新書、2008.01.22
「メディアと私たち」堤未果・中島岳志・大澤真幸・高橋源一郎著、NHK出版、2018.12.05
「ポストコロニアリズム」本橋哲也著、岩波新書、2005.01.20
(アマゾンより)
今こそ知るべき、「衝撃と恐怖の資本主義」の正体
ジャーナリストのナオミ・クラインは、1970年代のチリの軍事クーデターに始まり、ソ連崩壊、アジア通貨危機、米国同時多発テロ事件とイラク戦争、また台風や津波のような自然災害など、社会を揺るがす大惨事に乗じて導入された過激な市場原理主義改革の事実を、歴史的な視点で丹念に追い、この「ショック・ドクトリン(惨事便乗型資本主義)」によって先進諸国が危機状況にある国の富を収奪する構造を明らかにした。新自由主義が世界を席巻し、私たちの暮らす日本も「ショック・ドクトリン」の標的となり得る現在、改めてこの本を読みとき、社会を裏側で動かす構造を見抜く方法や、それに立ち向かうためになすべきことについて考えていく。
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惨事に便乗してイデオロギーを広める手法よりも、そうして広められた新自由主義を批判した本、という印象を持った。
新自由主義批判の本は他にも多くあるので、目新しさは少なかった。
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端的に、わかりやすくまとめてくれている。
良著です。
いまの世の中を誰が作っているのか。
何が必要なのか。
これらを知ることが出来る。
ただ、これは入門書なのでここからの勉強は必要。
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さすがに偏りすぎではないか。ナオミ・クラインもここまで偏っているのかわからないけれど、少なくとも著者のアンチ新自由主義は酷い。
確かにフリードマンに代表される新自由主義には酷い面があるのは事実なんだけど、効率化やイノベーションに資する面もあり、例えば国鉄や電電公社のままでいま日本が享受している便利さは実現できただろうか、、、。
なので全面否定ではなく必要なのは是々非々の態度で、むしろ著者のような立場の人が採用すべきはそのような対話もできずにただ対立構造に陥ってしまう現状であって、全面的な対抗の姿勢ではないと思うのだけれど、、、、。
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番組も含めて読了しました!まさにパニックに乗じた落とし穴ですね。一度止まって考える事の大切さを改めて感じました
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こういうのはどこまでか本当かは分からない。
自分はどちらかと言えば新自由主義の立場なので、それを否定する意見を読めたのは良かった。
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案の定デタラメ。
簡単なのはアフガン戦争には国連決議が無いというもの。
こんなのを公共の電波に乗せたNHKの責任は?
最低限、超分厚い正誤表を出すよね?
https://seisenudoku.seesaa.net/article/500437367.html
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恐るべき真実。恐ろしい戦略。資本主義と底なしの欲望。世界を操る一部の人たち。それが、日本の同盟国である。すでに日本にもシカゴボーイズは存在しているのだろう。
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ショック・ドクトリンという単語は東日本大地震の時によく耳にしたので知っているつもりだったが認識が甘すぎたのを本書にて思い知った。歴史認識もちょいちょい変わるくらい「ショック」を受ける内容だ。
つくづく災害便乗型資本主義(新自由主義)の人非人ぶりには恐れいる。CIAの拷問プログラムを参考にしたやり方というのがまずすごい。ほとんど敵国と戦う時のような戦争時の姿勢ではなかろうか。
何らかの事件や災害によりショック状態に陥った国や地域にミルトン・フリードマンの弟子シカゴ・ボーイズを派遣し、国民の頭がまともに働かない間に電光石火の勢いで、普段だったら非難轟轟になるような多国籍企業や外資を優先する政策「規制緩和・民営化・社会保障削減」を無理矢理通してしまう。住民の幸せや国の未来など踏み潰して、自分たちだけが効率よく儲けられたらそれでいいという図々しい完全無責任スタイル。
昔から火事場泥棒ってのはいたが、現代の火事場泥棒は海を越えて押し寄せるのが恐ろしい。もう規模が違う。イナゴが大量発生して農作物が全滅するイメージに近い。
エリート男性が書いている新書『リバタリアニズム』では、先進的でフロンティア精神に満ちた街と紹介されていたサンディ・スプリングス市も、金の切れ目が縁の切れ目、新自由主義者の富裕層だけで固まって周りが荒廃している街と身も蓋もない書き方でちょっと笑った。でも、そりゃそうだよねとしか言いようがない。こっちの方が新自由主義のあり方を端的に表していると思う。
竹中平蔵氏がフリードマンの弟子というだけで色々納得できた。日本はまさに進行中なのだな。
それに新自由主義者の旗振り役としてのメディア。『アメリカの原爆神話と情報操作』でも、悪い意味で活躍したニューヨークタイムズ紙がここでも活躍しており、こちらも色々と納得(それにしても、こうしてちょこっと本を読めば手に届く範囲内にこうした情報がゴロゴロ転がっていたのに、何も知らずに、何の問題もなく生活できてしまう現代社会の怖さを感じる。SNSにある「マスゴミ」というスラングからは感情以外何も伝わってこない)。
それでも最後の章にはちゃんと新自由主義に対抗して成功してる人たちの実例もあり、希望が持てる内容だと思う。できればナオミ・クライン『ショック・ドクトリン』も読んでみたい。
カラーページや写真、同ページ記載の用語解説などもあり、番組を視聴してなくても問題なく楽しめる充実した内容だった。600円でこの情報を効率よくゲットできるのはお買い得です。などと新自由主義的な物言いをしてみる。
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NHKがこの本をこの番組で取り上げてくれたことで、払いたくなかった視聴料を払ってもいい気になった。
堤未果は、この薄い書物の中に、ナオミ・クラインの大部の名著のエッセンスを見事に盛り込んでいる。
そして第3回のところで、ナオミ・クラインが書き込んでいなかった(少なくとも私の記憶では)驚くべき事実を暴露している。
イラク戦争で生み出された「戦争と再建の民営化モデル」はブッシュ政権以後、アメリカの外交政策に組み込まれ、イラク占領から一年半後、アメリカ国務省は次のような発表をしたというのである。
「将来なんらかの理由によりアメリカ主導による攻撃を受ける可能性のある世界二十五カ国(ベネズエラからイランまで)について、その詳細な国家復興計画の作成を民間事業者に発注する」と。
惨事が起きる前に、事前にドクトリンを準備するということ。
そして、戦争を惹き起こす気満々、ということ。
新自由主義=グローバル資本主義、ここに極まれり。
第3回の番組で、この事実はオンエアされるのであろうか。
楽しみだ。
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この本はEテレ番組に連動したテキストで、
2007年に刊行されたナオミ・クラインの著作「ショック・ドクトリン」を解説しています。
私はまるっきり経済に無知なので、「ショック・ドクトリン」という著作や見方・考え方を全く知りませんでした。
知らなかった人は、これを知ると、きっとショック・ドクトリン・大ショックを受けるはず。
資本主義のゆがんだ欲望がこれほどまでに世界に蔓延し、非道で恐ろしいとは。
(私は番組に気づくのが遅かったので、番組は後半2本を見ただけですが)
著作「ショック・ドクトリン」は、ノーベル経済学賞を受けたシカゴ大学のミルトン・フリードマンの提唱する、フリードマン理論こと新自由主義とその悪しき進化形(新植民地主義)によって、
米国を中心とする国際金融資本、多国籍企業、世界銀行や IMF(世界金融基金)、そして政府が、
クーデターや戦争、テロリズム、巨大自然災害、巨大債務などの有事によるショック、
また言論統制や市民の監視・監禁・拷問などの恐怖、
メディアによる偏った、あるいは虚偽の情報操作などを悪用して、
自国市民や他国の思考停止を促し、世界の各地でいかにマネーで私腹を肥やしてきたのか、
新自由主義の行きつく先は独裁国家という事実、
また、その結果どんな悲劇が起きたのか、について、
さらに新自由主義に抵抗する手段についても論じています。
この解説書や番組では、国際ジャーナリストの堤未果氏が「ショック・ドクトリン」をかいつまんで解説するだけでなく、一部は堤氏の調査研究による、
日本の国鉄、電電公社、郵政、東日本大震災の復興事業・民営化・復興特区、種子法廃止・種苗法改正などの民営化の事実と認識にも触れています。
とはいえ、クライン自身は日本ついては多くを述べていないようなので原著作の解説という番組の趣旨として、堤氏による日本の事例は端折ったのかもしれません。
しかし、我々にとっては重大な問題なので、さらに一歩進んで学ぶ必要を感じています。
本解説書では、番組に比べるとそれなりに多くの専門語や事例が現れるので(原著作ほどではないはずですが)、新自由主義のしかける悪に対抗する手段に関する大事な部分がやや目立ちにくくなっているように思いました。読者は少し時間をかけて丁寧に理解する必要がある印象です。
堤氏は本解説書で、「ショックドクトリン」は膨大な情報量を含むため、挫折しないよう、ディテールを記憶しようとしないで読むことを勧めています。
本解説書だけでは理解が不十分になりがちだと思われる、ショック時の政策に対する市民側の重要なチェックポイントを、番組放送では堤氏がうまくまとめて述べています。
- 有事の時に機能するかチェックする
- 個々の民営化の成果にとらわれず、大きな視点で考える
- しかけられた善悪二元論の罠に注意して、広く・長く・深く検証する
- 民営化する場合は当事者・地域住民が主導して民主的に運用する
- どんな法律が国会で審議・施行されるかチェックする
- 有事によるショック時��しかけられるスピード政策に惑わされず、立ち止まって冷静に見極める
- 与えられた選択肢が限られていないかを見極める
- 勝者側から見た歴史を疑う
米国をはじめ日本でも所得格差が広がってしまっている原因、
東日本大震災復興事業やコロナ禍での諸政策の真実、
ウクライナを侵略するロシアの意図や行動原理、
戦時下でも始まっているウクライナの復興の行方、
中国のテクノロジーによる言論統制、香港、新疆ウイグルやチベットの植民地化、
一帯一路やゼロコロナ政策の意図、
などなど、現代の重要な諸問題を、
メディア社会・デジタル社会の中で巧妙になっていくショック・ドクトリンという視点で正しく解釈し、
対応していく必要があるはずです。