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タイトルから想像していたのとは全く違う物語だった。
企業の採用担当者の裏事情と、自分に対する会社のかつての仕打ちに対する、長いスパンの復讐が、日々仕事をこなす中で淡々と語られていて、背筋がぞくっとする。人はどこでどんな恨みを買っているか判らないし、恨みによる原動力は萎えることがないのだと、空恐ろしくなるとともに、ふと応援する気持ちも芽生えてしまう。
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新聞の書評で絶賛されていたので読んでみた。
研究開発を志しながらも人事部へ異動となった主人公は、会社にとって損失になる社員を採用しようと心に決める。その見分け方は顔のパーツが黄金比になっていること。こういう人物は早めに才能を示し、早めに退職するのだという。。。
人の採用は本当に難しいと思う。何かのヒントがあればと思って読んでみたが何もない。基本的に文章が下手だというのも致命的
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初めて石田夏穂さんの小説を読んだけど、
くすっと笑える文章も多くて楽しかった。
人事部に左遷されたことから、
会社に復讐するために
会社のためにならない人材を採用しようとするという
ストーリーも面白い。
人が人を評価する(特に採用にあたって)難しさや矛盾。
そして「表情」に関する一文が心に残った。
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主人公の仕事に対するひたむきさと聡明さ、動機の不純さがチグハグ過ぎて目がチカチカする。そしてピヨピヨする。
どの口で言うてますのん?となる場面も大いにあるが、これは彼女の恨みと矜恃を混ぜ合わせてできたマーブル模様なんだと思うとすんなり腑に落ちる。落ちて良いのん?
しかしそれでも最後は恰好良かった。
人事部新卒採用チーム歴10年の彼女が採用に用いる唯一絶対の評価軸。顔の黄金比。
整ってる奴ほど転職する。だから採る。
会社にとって不利益になる人材を採用し続けるさながらノワール就活小説。
ケチる貴方の時といい、目がクワッと開いてるのが似合いそうな女性が覇道を征くのを描くのが素敵過ぎる。
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文章にスピード感あり楽しめます。その界隈の人としてはあるある過ぎて笑ってしまう。ご縁とは主観的なものというくだりは頷きまくりです。就活生諸君、ご縁とはこんなものなのでお祈りされても人生の中ではたいしたことではないものなのです。
さてこのページ数でこの本の値段はいかがなものか。単行本化するにあたり倍くらい加筆して欲しかった。続編を期待!就活生向け小説です。
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「就活生よ、もっと我が社に集まれ。もっと我が社にESを送れ。一次面接に来い。そして、私の推した黄金比の諸君。入社の暁には、とっとと辞めてくれ」
痛快!
旧態依然とした(株)Kエンジニアリングで採用担当を務める女性社員の小野。ある個人的な理由から採用の指標に「黄金比」を用いることにする。
彼女の意に反してその仕事ぶりは周りから評価され、一目置かれる存在となる。この、彼女の企みと表層のギャップがなんとも言えず面白い。
人が人を選考するということの胡散臭さ、人事というものの曖昧さをユーモラスにされど舌鋒鋭く描く面白さ。作者自身が「ルッキズムを単純に悪いということへの違和感を描きたかった」と言っているように、誰しも外見に左右されるくせにルッキズムは悪と簡単に断じる嘘臭さも描かれていて痛快。
そして、小野の会社への思惑はどういう結末を迎えるのか?
「我が友、スミス」ではボディビル、「ケチる貴方」では冷え性と脂肪吸引、そして今作では採用。次は何をテーマに社会を映し出してくれるのか。今一番楽しみな作家さんの1人です。
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以前の会社で部内における人事シャッフルをしたことがあった。私は人事課に配属になったが、1ヶ月足らずで元いた課に出戻りになった。「私には人事の仕事の適正がないのだろうか」と当時悩んだものだが、そのファイナルアンサーを本書から頂戴した気分だ。「そもそも人事部に適正なんぞない」と。花形部署から人事部に左遷的異動になった主人公は、その腹いせに会社の不利益になる人材ばかり採用する。その奇想天外な採用基準とは。主人公に対して良いとも悪いとも思えない不思議な人物像。最近筆がノッている(と思われる)作者らしさが炸裂だ。
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就職活動の話。人事部目線というのは珍しい。
会社に不満がある人は多いと思う。しかし、こんな行動をとる人はなかなかいない。それでいて、外から見ると完璧に仕事をこなしてるようにみえるところもすごい。とても面白くサクサク読めた。
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「会社の不利益になる人間を採る」
この逆説的な採用方法が、これからの時代、会社存続のための正しい戦略になる、と本気で考えさせられるビジネスパーソン必読の文芸作品です。
本書は、新卒採用において、顔の黄金比を評価軸として可否を判断する採用担当者が主人公だ。
しかも、本人が会社に復讐するためにそんな出鱈目をするのだという。
就活中の方からすると、「とんでもない」と憤らずにはいられないだろうが、屁理屈を捏ねくり回すと、そんな採用方針でも一定の合理性を帯びてくるところがおそろしい笑
大笑いしながら読んだ。
石田さんの作品は、掛け値なしに面白い。
芥川賞候補作の「我が手の太陽」も早く読まなくっちゃ!
♪黄金の緑/UA(2007)
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心の声が語り続ける一人称の激白。
本当に何を基準に採用は行われるのか、そうこんなものなのよ、現実は!。
顔の黄金比、こんなきっちりした基準があるほうがある意味、わかりやすい(笑)
けど、最後の決断がなんとも残念なんだけど、これも現実、そんな世の中なのです。
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そんなに長い時間かけて復讐とか、ムリ
主人公の小野さんってもしかしてイヤな女なのかな
けれど、なぜかいやミスのようにどんよりとした不快感もなく、「Kエンジの天海祐希」が頭の中にインプットされてしまったせいか
文章も文体もシュッとして理知的で、適度にユーモアも散りばめられていて、やっぱり工学部を出た人(作者)って違うなぁ、東野圭吾も工学部だし、って関係ないか
とにかく楽しく読めたのだった
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悩める現役就活生の諸君、エントリーシートについてこちゃこちゃ考える時間があるならなるたけ早くこの本を読みたまえ。
…と声を大にして言いたくなるくらい、首を縦に振り過ぎてムチ打ちになるんじゃないかと慄いた一冊。と共に、20年ほど前に就活生だった自分自身にも是非とも薦めてあげたい一冊。読みゃせんかも知れないが。
本書について最も最適な紹介は『青春と読書』2023年6月号に掲載の著者・石田夏穂先生による「自分が会社に入って同期とかが採用担当をやってるのを見ると、え、こいつが選んでるんだ……みたいに感じる。一回中の人になるといかに胡散臭(うさんくさ)かったかがわかって」(https://news.yahoo.co.jp/articles/2a8c858f7b9bf0be2896d4b6ce69dd722f398a7f?page=1より)というフレーズ。そうなんだよ、案外、人事の人間てそんな感じの人ばかりなんだよ。で、酒の席なんかでよくよく話を聞いてみるとマジでいい加減なもんだよ。判断基準とか。勿論、きちんとビシッとやってる人もいるにはいるだろうけど。というか、会社員なんて大抵みんな碌でなしで胡散臭いよな。だって人間だもの。ごめんなさい。
という訳で、面接対策の本を読むくらいならこの本を読んだ方が余程身になるだろうと声を大にして伝えたい訳であります(暴言)。
一方で、オチに持ってきた’とある要素’については何だか歯切れが悪いというか、それまで一貫してドライでハキハキした主人公の拗らせ捩じくれたスタンスからしたらだいぶぼやけてしまった感じが拭えず、読み比べた訳ではないので推測だが、恐らくは加筆した部分がそのまま違和感に繋がっているのではないかと。
主義はブレてはいないし作中の視点は動かない訳で、だったら徹頭徹尾で主人公が本懐を成し遂げる結末の方がスッキリ閉じられたかな、という私の感想です。今後、もし人事部を離れたら主人公はどう生きるのだろう。
喩えの表現が癖になりますね。たくさん喩えは出てくるのですが、一番好きなのは「私は自分が卑弥呼になったのかと思った。」(p74)という一節。人事採用判断って、さながら占卜のように不確かで不確実で、その割に周囲はその’神託’を勝手に崇め奉り信心を寄せ盲信する、まさに「卑弥呼」状態という表現が実にしっくり来る。
要注目の作家さんであります。
1刷
2023.7.21
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面白かった。日本の昭和然とした企業をシニカルな視点で描いたエンタメだ。他の方のレビューで批判的なものもありましたが、これはこれで社会正義と行動の矛盾、さらにクライマックスに向けた展開とニヤニヤしながら読めるよ。
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理不尽な理由で花形部署を逐われた女性が、異動先の人事部で会社にとって不利益になる就活生の採用に全力を注ぐことで会社へ復讐するという、迂遠な復讐譚。
◇
プラント設計会社に入社し、希望通りプロセス部という花形部署に配属された小野は、エンジニアとしての輝かしい人生をスタートさせたかに見えた。
だが、経済産業省からの視察と打合せのあった日のこと。若手職員と雑談に興じていた小野が、たまたま話題になった自社のAIシステムのひとつであるチャットボットを見せようと、ノートPCを彼の方に向けたことが騒動の発端だった。
そのチャットボットの擬人化女性キャラ「マドカちゃん」の露出度の高いコスチューム姿が霞が関で問題になり、(男女)共同参画センターからのクレームに発展。さらにマスコミに取り沙汰され非難の的になったことで、社内で責任者探しが始まった。
そして生贄として選ばれたのが、マドカちゃんの制作チームでもなく、最初のクレームに対処しなかった広報部でもなく、経産省職員にチャットボットを見せた、入社間もない小野だった。
辞令に従い人事部に異動した小野の、暗い情念に包まれた復讐が始まった。
* * * * *
なんと奇想天外でトボケた物語だろう。一読後に感じたのはそれだった。
この作品の柱は2つある。1つは就活というものの側面。もう1つは復讐である。
人事部で新卒者採用チームの一員としてできる、効果的な復讐。それが、「会社の不利益になる人間を採る」ことだ。
採用面接を担当しながら試行錯誤すること10年。「人事の小野」と呼ばれるベテランになった小野さんは、独自の選考基準を確立させていた。
それは「顔の縦と横の黄金比」を重視するというものだ。
顔の造作による美醜ではなく、ある程度整った、なんとなく好感の持てる顔立ち。ここがミソだ。そうして入社させた人間は優秀ではあるものの、なぜか入社3年以内に退職(転職)する者が多いのだ。
せっかく1人前の戦力に育てた新人に退職されることは会社にとって大いなる痛手となる。小野さんはそこを目指す。
これはバカげた話でありながら、何か不思議なリアリティと説得力がある。
確かに、企業が行う採用試験は胡散臭い。厳正なる審査とは本当だろうかという思いは捨てきれない。それこそ顔の黄金比で判定していても不思議ではない。
浅倉秋成さんの『六人の嘘つきな大学生』のモチーフにもなっていたが、「総合的に」受験生を判断するなどできようはずがない。だからこそ、ほぼ出身大学で内定を出したりするのだと思う。
このあたりの描写から感じる就活というものの真実が、本作の魅力だろう。
もうひとつおもしろかったのが、小野さんが意とする採用者数を増やすため、できるだけ多くの受験生を集める努力をするくだりだ。
会社を魅力的に見せるためパンフレットやホームページに工夫を凝らし、自らは服装や髪型に気を遣い話し方を磨くなどプレゼン能力を高めていく。まったく凄まじい情熱だ。
そうして毎年採用を続けた若手社員たちが、目論見通りに中途退職していくのを見て密かにほくそ笑む小野さん。
砒素が人体をじわじわと蝕んでいくように、彼女の復讐計画は会社の体力を少しずつ奪っていく。
淡々として、ときにユーモラスに綴られる文体なのでさほど感じないが、このゾッとするような復讐にかける情念が作品の大きな魅力になっていた。
採用する側とされる側を結ぶ縁。それは恣意的なものに支えられているのかも知れない。
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なにこれ、面白っ。
「ずるずると勤続年数を重ねる凡人」の一人である私にとって、小野さんの考え方は斬新だけどめちゃくちゃ共感できた。
『会社に対し、一介の従業員が与え得る最大の損害は何か。自己都合退職である。』笑える。ほんとそう。
会社勤めされてる方、就活中の方、ぜひ読んでみてください。肩の力が抜けるはず。
薄い本なのであっという間に読めちゃいます。