日本のブロードウェイ・ミュージカル６０年 プロデューサーたちはいかにしてミュージカルを輸入したのか

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以前『深読みミュージカル』という本で、akikobbさん・なおなおさんとミュージカルナンバーの邦訳について熱く語り合ったことがある。(その節はとても楽しかったです^ ^！！)
海外ミュージカルのオリジナル・邦訳それぞれの良さを引き出していく内に、翻訳に至る過程等その辺事情も知りたくなって本書に辿り着いた。

著者の専門は「戦後日本におけるミュージカル受容」で、本書は彼女が書いた過去の論文を基に執筆。日本がどのような過程で海外ミュージカル(主に米ブロードウェイ)を輸入し、それらを普及させていったのかを戦前から追っている。
各章で取り上げられる演目は、第1章『モルガンお雪』第2章『マイ・フェア・レディ』第3章『ジーザス・クライスト＝スーパースター』第4・5章『ライオンキング』第6章『アナスタシア』である。

ここまで内容が脳に吸収されていくのはいつぶりだろう。
自分がミュージカル好きだからか、前の項目を逐一おさらいしてくれるような親切な構成だからか、はたまた著者が同世代(1990年生まれ)でそこから来る親近感からか。んー…全部かな笑
個人的に萌えた(死語？)のは、謝辞が執筆できたことへの喜びに溢れていた事。まるで劇中シリアスにナレーションをしていた本人が、最後満面の笑みでカーテンコールに登場したかのようでこちらも自然と笑顔になっていました(^ ^)

読む上でのキーワードとなってくるのが下記2点。
・「ノンレプリカ」：脚本と音楽のみを海外公演から踏襲する形式。演出等その他の要素は日本でアレンジし、舞台も日本の俳優が日本語で上演する。
・「レプリカ」：出来る限りの要素を海外公演から踏襲、それを日本の俳優によって日本語で上演する形式。

興味深かったのが本書で取り上げられている劇団の、「ノンレプリカ」と「レプリカ」の導入順がそれぞれ違っていたことだ。例えば宝塚歌劇団では、1970年代半ばまで海外演出家や振付師による「レプリカ」の演目を上演していたが、『ベルばら』を境にオリジナル作品や「ノンレプリカ」公演に移行していったという。
それぞれ順番が違う理由も、各劇団の信条に則っており全て納得のいくものだった。(ただし劇団四季創設者の浅利慶太氏が、アジア系外国人俳優を重用しながらも帝国主義的な特権意識をチラつかせていたという、耳を疑うような話もあったりする。俳優本人の証言もあることから、これだけはショックを隠せなかった)

「ノンレプリカ」だろうが「レプリカ」だろうが、またそれぞれの信条は違えど、日本でなければ観られない、日本ならではの舞台づくりを目指しているのは共通していると思った。
思えば冒頭の邦訳問題も(文化・価値観の違う)海外オリジナルをそのまま「レプリカ」せず、日本人がしっくり来るように配慮されているのでは？

いつか本場でオリジナルを堪能したい。そう思えるのは、丹念に用意された"リハーサル"があってこそだと言える。