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商品説明
村上春樹の小説「ねじまき鳥クロニクル」をテキストとして、社会システムが生み出す悪から、人間関係の中で生まれる悪まで、人間の「根源悪」の問題についてあらゆる角度から考察する。同志社大学「新島塾」講義録を書籍化。【「TRC MARC」の商品解説】
悪に無自覚であってはならない――。
人と人との関係の中から悪は生まれ、自らの悪に気づかないことが、さらなる恨みや憎しみを生む。
人々の悪が社会の中で増幅すれば、やがて戦争や虐殺事件のような惨劇につながることもある。
村上春樹氏の長編小説『ねじまき鳥クロニクル』をテキストとして、資本主義、能力主義、軍国主義など社会システムが生み出す悪から、人間関係の中で生まれる悪まで、人間の「根源悪」の問題についてあらゆる角度から考察する。
母校・同志社大学の教育機関「新島塾」にて行われた講義を書籍化。【商品解説】
目次
- <目次> 第1章 メタファーを読み解く / 第2章 資本主義がつくる悪 / 第3章 軍国主義がつくる悪 / 第4章 能力主義がつくる悪 / 第5章 無自覚になされる悪 / 第6章 自分の悪を受け入れる
著者紹介
佐藤優
- 略歴
- 〈佐藤優〉東京都生まれ。同志社大学大学院神学研究科修了。作家。元外務省主任分析官。「国家の罠」で毎日出版文化賞特別賞、「自壊する帝国」で新潮ドキュメント賞と大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。
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紙の本
読書会の記録
2023/08/31 06:41
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:a - この投稿者のレビュー一覧を見る
ねじまき鳥クロニクルが難しかったと思いながら、書店の村上春樹コーナーを眺めているところで偶然発見しました。これはすごいです。
紙の本
「100分de名著」の方はどうなったの?
2023/06/04 11:30
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Haserumio - この投稿者のレビュー一覧を見る
以前、NHK「100分de名著」で採り上げられる案内まで出たのに放送されずに終わった番組の元本。評者としては、読み終えて以降に何となくモヤモヤ感(作者が何を描こうとしたのか、個々の描写における含意如何などについて)が残存していたので、飛びつくようにして本書を購入。いや、大変参考になりました。
「能力主義的な考え方自体が、神からすれば人間のおごり高ぶりであって、それを神は厳しく叱責したということなんです。すべては努力によってなんとかなるというのは人間のうぬぼれであって、もっと謙虚になりなさいと言うんだね」(133頁、同旨136頁)。
「だから、因果を超えたコントロールできないものがこの世にはあるんだと知って、謙虚であることが大切なんです。運や運命をつかさどる「見えない何か」の働きを認めることだよね」(137頁)。
「結論から言うと、2人は磁石のN極とN極同士だからなんだよ。だから反発する。綿谷ノボルと岡田亨の世界観は、じつは同じなんだ。・・・ 世界観を持っていないんだよ、2人とも。つまり、”世界観を持っていない”という世界観を持っているわけだ。2人とも自分の世界観がなくて、そもそも世の中というものを見下してバカにしている」(158~9頁)。
「岡田亨の問題というのはまさにこういうことで、・・・ 自分の内なる「悪」に気づこうとしないことなんです。だから、「自分の悪に気づかない悪」と言ってもいい。つまり偽善者だよね。悪意はない。むしろ自分はいい人だとさえ思っている。ところがなぜか、人を傷つけたり悲しませたりしてしまう。傷つけるつもりはないのに、なぜだか人間関係で問題が起こる。自分に原因があるという自覚がないから、なおさらタチが悪い。でもこれは岡田亨だけの問題ではない。ほかの登場人物もそういう問題を抱えているし、もっと言えば、今を生きる現代人全員の問題とも言えます。以前にも話したけど、メリトクラシーの社会、自己責任の社会となって、人々はどんどんとバラバラな個、アノミーな状態になっています。それぞれがカプセルの中に入って社会をふわふわと流動しているような状態で、他者との関係がとても希薄になっている。他者と深くつながることがなくなるから、自己完結した人間が多くなる。自己完結した論理が当たり前になれば、自分の内なる「悪」には気づきにくくなる。するとある種の「鈍感さ」が社会に蔓延する。気づかない男、気づかない女が増える。そうやって人々は、お互いに少しずつズレていくわけだ。そういう意味において『ねじまき鳥クロニクル』という小説は、「ズレ」の物語とも読めるわけです。登場人物はお互いが少しずつズレている。その「ズレ」が織りなしてつくられた、一種のタペストリーと言ってもいい」(170~1頁、同旨185~6頁)。
「ユング心理学で解釈するとすれば、井戸に潜るというのは、無意識の奥底のほうに潜り込んでいくことのメタファーだ」(177頁)。
「この「あざ」は、亨の「罪」が形となって現れ出て、「悪」として顕現したことのメタファーだろうね」(190頁、そして亨はギター男をバットで滅多打ちにする)。
「それで岡田亨は、この喧嘩の後、ギター男から奪ったバットを家に持ち帰るよね? このことは、・・・ 自分の内に暴力性があることを受け入れて、・・・ しっかり向き合っていく。そういう決意の表れなんだと思う」(192頁)。
「青春出版社」から出ているだけに、これからの世界を担う若い方々に原作と併せて読んでほしい一書です。(なお、84頁(ノモンハン事件)と185頁(クミコのこともの母親のような存在として)の誤植は残念でした。)