紙の本
格差による不平等
2023/07/19 15:12
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:nekodanshaku - この投稿者のレビュー一覧を見る
ピケティが得意とする不平等、格差の問題を扱った講演集である。経済的格差は、それを無くそうとする試みはなされているのだろうが、結果としては表れていない。不平等というものが、生まれながらのものではないというデータを示している。資源国であるとかないとか、地理的な要因とかえはなく、社会システムの不備・不平等が大きな要因であるようだ。さらに環境破壊により生じている気候変動に目を向けても、二酸化炭素排出量は、資産上位10%層の排出が顕著であるとも示している。システムの大きな改革が必要だが、どの政府も腰が重い。
投稿元:
レビューを見る
2022年3月18日のジャック・シラク美術館で行われた講演録。
「社会的不平等の違いや度合いや構造は・・・・参政権をはじめとする政治参加のほうが大きな要因だったかもしれない。その一方で、「自然」の要因、たとえば個人の能力であるとか、天然資源などに恵まれているといったことが果たす役割は、思うほど大きくない。」
スウェーデンの例は「ある国が本来的に不平等だとか平等だということはないと示した点で興味深い」「肝心なのは、政権運営を担うのは誰か、何を目指すのかということである。」
そして「不平等の大幅な解消無くしては、また現在の資本主義システムとはまったく異なる新しい経済システムの出現なくしては、気候変動問題は解決することはできない」と結論づける。
投稿元:
レビューを見る
2022.3.18にケ・ブランリ=ジャック・シラク美術館で行われた講演の原稿を加筆訂正したもの。講演は民族学会の招きで行われた。
・不平等を生む体制が社会によってどれほど異なるとしても、過去数世紀にわたって基調的な流れ~社会的な平等へと向かう底流はあった。18世紀末という特定の時期に水脈が現れ、政治的・社会経済的平等の実現をめざして勢いを増したていった。
・不平等を生む体制は社会によって大きく異なるが、自然、文化、不平等の間にはまったくちがう種類の関係性が存在する
・気候変動問題は、現在の資本主義システムとはまったく異なる新しい経済システムの出現なくしては解決できない。それは「民主的でエコロジカルな参加型社会主義」である。
・スウェーデンは今日きわめて平等的な社会だといわれるが、20世紀初頭はそうではなかった。1920年に普通選挙が実現し、社会民主労働者党が1932年に政権党となり以後2000年代までほぼ切れ目なく政権を担当し、税収は教育や医療へのアクセス拡大に充当された。
・不平等に関しては二つの問題がある。累進課税と環境破壊だ。
・経済成長の真の原動力となるのは教育だ。
・単に金銭的な再分配だけが福祉国家の仕事ではない。
・自然の破壊とは自然資本の破壊にほかならない。
・気候変動の影響がこれまで以上に日常生活で実感できるようになったら、現在の経済システムに対する考え方が急激に変わる可能性は十分にある。
・不平等の問題は経済学者だけでは解決できない。狭い視野ではなく、歴史学者、社会学者、政治学者、人類学者、民俗学者たちの力が必要だ。経済や歴史の知識と知恵を共有することで、より民主的な社会と権力のよりよい配分をめざす運動の重要な一翼を担うことができるし、またそうしなければならない。
2023.7.10第1刷
投稿元:
レビューを見る
【「格差」とは何か? 世界的ベストセラー『21世紀の資本』著者による大注目作!】ピケティの最新思想がコンパクトな一冊に。資本主義の加速で「不平等」が拡大している。『人新世の「資本論」』斎藤幸平氏も絶賛!
投稿元:
レビューを見る
講演の原稿が元なのでわかりやすくまとめられている。
ぼんやりとわかっていても実際どうなのかな?
が、あーそうなってるんだになる。
格差を是正するのに必要な素地の形成には時間がかかるだろうけどやらなくちゃいけない。
意見を持つ、実現可能か考える。
非現実な飛躍は話をしてないのと同じ。
そうでなくて大藩の藩士善良な人たちと前に進む道標になる一冊なんじゃないかな。
勉強になった。
投稿元:
レビューを見る
r>gで有名なフランスの経済学者のトマ・ピケティが過去データを分析して、不平等を切り口に世界で起こっている様々なことを論じる。
所得、ジェンダー、教育格差など。驚いたのはヨーロッパなどでは1800年代から統計データがあること。累進課税などの導入により、十分ではないが、格差は縮まっていること。教育に国がかけるお金は重要であり、これが格差を縮めるのに重要な役割を果たすが後回しにされること。炭素の排出量は一人当たりに換算すると北米が群を抜いて大きいにも関わらず、同様の排出量が求められていることなど、筆者が述べるように分野を超えて専門家の知見を集約することが重要である。
投稿元:
レビューを見る
不平等・格差の歴史についての講演会をまとめた一冊。
講演会なので比較的分かりやすくまとめてあり、読みやすい。
スウェーデンの社会民主政党をサンプルとして取り上げており、スウェーデンの政治について知識がなかったので、興味深く読んだ。
投稿元:
レビューを見る
トマ・ピケティの著作が、さまざまな場面で取り沙汰されるのを見るにつけ、「21世紀の資本」を読まなくてはなあと思ってはいた。
だが、いつも後回し。読みたい本がたくさんありすぎて腰を据えて読む気になかなかなれず。
そんな時に、この講演録は、章立てが細かく、データを駆使してわかりやすくピケティの分析を披露してくれているので、経済学に暗い自分でも十分に読める。
データは中央値や平均値を見るのでは実態が掴めないこと。データ分析が鮮やかでさすがだ。
そこから浮かび上がる格差について、ピケティはあらゆる格差をゼロにしようと思っているわけではなく、一部の富裕層と圧倒的多数の一般庶民の格差を5対1.あるいは10対1くらいに抑えたいと考えていること。資本主義社会の枠内の現実路線を目指しているなと思う。これは意外。
そして地球温暖化と経済格差の相関性も鮮やかにデータで示している。
気候変動の影響はこの暑い夏でひしひしと感じることだが、これまで以上に日常生活で実感できるようになったら、現在の経済システムに対する考え方が急激に変わる可能性があるという仮説を立てている。
確かにその萌芽はすでにあると思うが、やはり一筋縄でないいかないだろうな。
私はこの件に関してはとても悲観的だ。
知れば知るほど、日本は、世界は、人類は決して解決できないと確信してしまう。
確信がひっくり返されることを願ってまた次の本を読んでいくのだが。さて。
投稿元:
レビューを見る
不平等をテーマにした、トマ・ピケティ氏の講演録。どうすれば不平等がこの世の中からなくなるのか。難しい問題だが、解決する日が来ると信じたい。
投稿元:
レビューを見る
一般的な知識で格差や平等を語っていたが
違う視点でこれらを考えさせられた
不平等とは それらを生む体制を歴史的に考える
所得格差 資産格差 ジェンダー格差
図で説明されると
説得力がある
人間はそれでも平等への道を歩んでいる
歩みはのろく範囲は限られるが
そして著者は気候変動の影響が日常生活に
影響を及ぼすようになると
現在の経済システムに対する考え方が
急激に変わるとしている
今だと思う もう始まっている
どうなる
投稿元:
レビューを見る
ピケティの思想がギュッと詰まったコンパクトな一冊。個人的には、50ページほど増やしてもう2-3ずつ論拠を示して欲しかった。反論の余地がある部分がいくつか。このページ数でこの価格、というのもちょっと抵抗あり。
投稿元:
レビューを見る
一般的に、ここ1世紀でだいぶ不平等が解消されたような印象があるが、『世界不平等リポート』のデータで見ると中間層が増えただけで資産ゼロの貧乏人の割合は実はぜんぜん変わっていない。フランスもフランス革命の栄光を自慢するほど平等にはなってない。
それでも全体がゆるやかに平等へと向かっているのも事実。例えば平等世界一を誇るスウェーデンも、第一次世界大戦までは税金納付額に準じた票数を富裕層で割り振って貴族が首相をつとめる国だったが、識字率の高い労働者階級が参政権運動に励んだ結果1932年社会民主主義系の政権が成立し、今のように変わっていった。スウェーデンが特殊なのではない。社会構造は永続的な物ではなくいつでも変化するものである。だから希望を捨てず、経済学者まかせにせず、教育に公的資金を投入し、みんなで平等への道を歩いて行こうぜ。
最近自由研究のテーマとして新自由主義関連本を読んでいるせいで、地球はもう強欲商人の遊園地として焼け野原になるしかないようで気が滅入っていたが、まだこんなまともな文化人もいたのかと元気が少し回復した。
所得の再分配に関して、第二次世界大戦後のドイツに相続税の引き上げを指示したアメリカの話も興味深い。民主政が金権政治に脱しないようとの意図だったと。新自由主義にそまったレーガン大統領以前のアメリカは旧大陸的な不平等社会を反面教師にして富の再分配にも非常に積極的だった。それが現在は第一次世界大戦前のヨーロッパ並みに逆行している。まるでオセロゲームのようだ。社会構造は決定論では語れないとのピケティの言葉はここにも当てはまる。
分厚くて読みづらそうなイメージで名前しか知らなかったピケティを講演録というダイジェスト版で、しかもこのタイミングで読める価値を考えると、薄めの本だが投資分の収穫は充分ある。
投稿元:
レビューを見る
『21世紀の資本』で有名なピケティによる2022年3月に行われた講演の内容を書籍化したものとなっているので、分厚い『21世紀の資本』と違って、1時間くらいで読み終えてしまった。
内容としては、やはりピケティらしい不平等についてのもので、
不平等の問題は、まだまだあるものの、全体として不十分ではありながら平等への歩みは続いているとしたうえで、
所得格差や資本格差、ジェンダーや議決権の不平等などついて、データを示しながら、語られている。
また、不平等が生まれる背景には、社会的、文化的な原因があるため、フランスやスウェーデンの歴史的事例を通してそのことが述べられている。
これらの中で特に印象に残ったのは、自然への影響(環境問題)と不平等の関係で、格差と環境問題がどう関係するのか、と思ったが、CO2排出量が、国際的にはいわゆる先進国に偏りがあり、また、国内でみれば所得上位10%に偏っているとあり、CO2の排出量規制への努力を格差を無視して平等に強いるのは、実態に則してしないと気づかされた。
読んでいて、気になったのは、
資本格差は、所得格差よりもはるかに大きく、また、不平等の解消度合いも低いこと。
不平等の解消には、教育が必要であること。
不平等の問題を解決するには、より平等な資本主義社会か、資本主義に替わるシステムが必要なこと。など、ピケティの考えていることが端的に述べられているものの、もとが講演会の内容のため、この本だけでは十分に理解できなかったのが、ちょっと残念だった。
でも、短くても発見のある本だと思う。
投稿元:
レビューを見る
フランス革命は、中産階級の所得と資産を押し上げただけで低産階級にはほとんど意味を持たなかった。スウェーデンはもともと平等な国ではない。戦前においては、上位20%の資産を持つ男性しか選挙権を持たず、しかも投票権は寄付額に応じて定められていた。そのため、ある地域では1人が投票総数の50%を占めることもあった。累進課税制度のような国ごと、人ごとの二酸化炭素排出量に合わせた排出量規制が不可欠。
投稿元:
レビューを見る
講演のまとめだったようで、結構なお値段のわりに分量は少なめ。
著者の本を読むのは初めてだったので、「不平等は自然なものではなく、制度などによって人為的に生まれる」という内容は参考になった。
以前の著作を読んだことがある人にとっては物足りないかも。