- カテゴリ:一般
- 発売日:2023/08/28
- 出版社: NHK出版
- サイズ:21cm/113p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-14-223155-3
紙の本
シャーロック・ホームズスペシャル 歴代最強の名探偵 (NHKテキスト 100分de名著)
著者 廣野 由美子 (著)
世界一の名探偵は、いかに生まれたのか?英国の作家コナン・ドイルが生み出した一人の探偵は、世界中にフォロワーを生み出す「最強」の探偵となった。「緋色の研究」「グロリア・スコ...
シャーロック・ホームズスペシャル 歴代最強の名探偵 (NHKテキスト 100分de名著)
NHK 100分 de 名著 シャーロック・ホームズ スペシャル2023年9月
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商品説明
世界一の名探偵は、いかに生まれたのか?
英国の作家コナン・ドイルが生み出した一人の探偵は、
世界中にフォロワーを生み出す「最強」の探偵となった。
「緋色の研究」「グロリア・スコット号」「赤毛組合」「ボヘミアの醜聞」など数々のホームズ作品を通して、
人間性の闇と光を考えるとともに、探偵小説がもつ文学的な意味を探究する。【商品解説】
著者紹介
廣野 由美子
- 略歴
- 英文学者、京都大学教授。1958年生まれ。専門はイギリス文学。京都大学文学部卒業後、神戸大学大学院文学研究科修士課程修了、同文化学研究科博士課程単位取得退学。主な著書に『批評理論入門――「フランケンシュタイン」解剖講義』『小説読解入門――「ミドルマーチ」教養講義』(いずれも中公新書)、『深読みジェイン・オースティン』(NHKブックス)など。
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紙の本
ホームズ物をより広いパースペクティブで捉えることができ有益
2023/09/29 21:51
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Haserumio - この投稿者のレビュー一覧を見る
単に娯楽作品として読むのはやはりもったいなく、ホームズ物への向き合い方を変えてくれた番組とこの一冊。これらに触発されて、現在、ホームズ物の完読トライ中です。
「ジャンルとしての探偵小説は、職業としての「探偵」が歴史上に誕生した時代に初めて成立したと私は考えています。・・・ 文学作品に探偵という存在を導入することによって、人間の悪の秘密を白日の下に晒し、その罪を徹底的に、しかも理路整然と暴くことができるようになります。ですから探偵小説とは、人間の弱点や人間性の暗部を探究するうえで、格好の文学ジャンルなのです。」(90~1頁)
しかし、改めてホームズ物を読み返すと、探偵と助手の協働と掛け合い、Who-done-it(意外な犯人)/How-done-it(犯行のトリック)、Why-done-it(人間性の奥底に潜む動機)が三位一体となっており、探偵小説の初期完成形態であることがよく理解できた。正に傑作群かと。
紙の本
「シャーロック・ホームズ」を異なる視点で、楽しむ!
2023/09/15 11:36
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:野間丸男 - この投稿者のレビュー一覧を見る
NHKの「100分 de 名著」という番組のテキストであるが、
「シャーロック・ホームズ」の解説書の一つとして、楽しめる。
(はじめに)世界一有名な探偵、シャーロック・ホームズ
(第1回)名探偵の誕生
(第2回)事件の表層と真相
(第3回)ホームズと女性
(第4回)人間性の闇と光
「緋色の研究」、「赤毛組合」、「唇のねじれた男」、「ボヘミアの醜聞」、「ボール箱」、「ボスコム谷の謎」などが取り上げられるが、
さまざまな角度から、ホームズの探偵像を解説してくれる。
「探偵小説は平和だからこそ楽しめる」の言葉が、心に残る。
紙の本
はじめて
2023/09/19 08:43
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:にゃんぱり - この投稿者のレビュー一覧を見る
はじめて,番組と並行してテキストを読みました。
番組では取り上げられていない話もあって面白かったです。
この番組のおかげで中学生の時以来40年ぶりに「緋色の研究」を
読みました。
当時は大作だと思っていましたが,あっという間に読んでしまいました。
でもドキドキするほど面白かったです。
ありがとうございました。
番組と並行して利用することをおすすめします。
紙の本
人間性探求の名探偵ホームズ
2023/10/07 21:48
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kapa - この投稿者のレビュー一覧を見る
TVアニメ『アンデッドガール・マーダーファルス』第二章「ダイヤ争奪編」で登場したホームズ&ワトソン。ルパン&ファントムと宿敵モリアーティ教授率いる「夜宴」とのバトルで活躍した。ちょうど第三章「人狼編」が始まる前に、100分de名著シリーズでシャーロック・ホームズスペシャルが放映され、読んで観た。
また、折しもNHKではジェレミー・ブレット主演のテレビ・ドラマが再放送されているし、第3作製作も予定されている、「アイアンマン」ロバート・ダウニー・Jr主演の映画『シャーロック・ホームズ』(2009)と続編『シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム』(2011)も見た。原作にほぼ忠実なNHKドラマ、原作のキャラクターとプロットを使って創作された新たなアクション映画(ワトソン役ジュード・ロウも派手に活躍)、そしてジェレミー・ブレットを彷彿とさせるキャラ設定と語り口の『アンデッド』と、三者三様のホームズを見たことになる。
ホームズ&ワトソン・シリーズは、確かに読んで楽しめる作品ではある。しかし「小説」として「名著」と言われると、なぜなのか、という疑問が湧いてしまう。その疑問に答えるのが、今回のスペシャルである。英文学とイギリス小説の研究者で、『ミステリーの人間学-英国古典探偵小説を読む』も上梓している著者・講師は、代表作を読みながら、その疑問に答えていく。
ホームズ・シリーズは、「探偵小説」であり「ミステリー」である。「探偵小説」は、秘密・謎・不可解なものであるミステリー的要素を高度に発達させてジャンルである。多かれ少なかれ文学作品にはミステリー的要素があるのだが、探偵小説は「謎解きに対する読者の好奇心と知的欲求を掻き立てる効果を集中的に狙った知的な遊び」である。しかし単に謎解きのゲームではなく、底辺では文学とつながっている。そして小説とは人間を描くものであり、探偵小説は探偵の登場によって人間の悪・罪を徹底的に、しかも理路整然と暴き、人間の弱点や人間性の暗部を探求する文学ジャンルである。
ホームズは冷徹な推理能力だけの探偵ではない。人生の機微を知り抜き、人間性の底に潜む闇と光を鋭くあぶり出す思考能力を持つ。まさに「人間学」の精華ともいうべき洞察だ。
筆者による各国の探偵小説の特色の整理が面白い。アメリカは人間を非感傷的に扱う、純粋に数学的・論理的に分析し、人間性に対する関心は希薄である。フランスは犯罪を取り巻く人間ドラマでメロドラマ的傾向がある。そして英国探偵小説は、人間性の探求が底流にある、事件の筋や謎解き、トリックといった表面的な部分に隠された、人間が抱く欲望や怒り、恐怖といったものが人間に及ぼす心理状態や行動の側面を探求していく。動機面を重視するミス・マープル、容疑者たちとの尋問や何気ない会話に力点を置き、会話から人物の思考・行動傾向を探る心理分析を駆使するポアロも同じである。
このような人間性の闇に根差す犯罪は無くなることはなく、何時かは自分も巻き込まれるかもしれないという恐怖・不安を、名探偵が解決してくれ、それらを昇華してくれるというところが探偵小説の魅力なのだ。現実世界で死に直面しているようなところでは、「探偵小説」を読む気は起きないだろう。したがって、殺人を扱う探偵小説は、平和な時代の下で読まれるという逆説的な文学である。
このような人間性探求に根差した名探偵ホームズは、トリックがわかったら終わりではなく、人間性の探求の部分は何度でも味わえる物語である。そのため、映画でリメイクされ、また、別の物語に登場しても違和感はないのだろう。