荻生徂徠 みんなのレビュー

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投稿者：休暇旅行　-　この投稿者のレビュー一覧を見る

なにが傑出していたのかとふりかえると特に思い当たらないのですが、なぜか読んでいてずっと楽しかったです。堅実ななかからちゃんと面白さがでてくる。著者の中公新書『江戸の思想史』も同様だったので、一般向け紹介書をかくのがうまい方なのかもしれません。
徂徠の紹介書としては比較的新しいと思うので、その点でも優れている。
もちろん徂徠自身も面白い。本書は一冊徂徠ということで、じっくり引用してくれるので（漢文は現代語訳ですが、正直そっちのほうが負担なく楽しめるからありがたい……）。朱子学が個人道徳にうるさいのを批判した、なんてよく聞く話も、徂徠の生発言で「仏老、文人に碁うち、博徒に娼妓、聖人がいちいち注意すると思うか？　どうして、そのままで堯舜の民にできないことがあろうか！」と大見え切るの読むとおお……となる（しかも娼妓については「一番ひどいのは尼の格好してる」なんてやたら具体的で、修辞じゃないんだ……と）。そこからでてくる『政談』改革案の、身分制度の強固っぷりもなかなか強烈。