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放浪記(岩波文庫)

放浪記 みんなのレビュー

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みんなのレビュー2件

みんなの評価3.7

評価内訳

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2014/05/06 10:18

投稿元:ブクログ

貧困はこうも人を卑屈にするものかと思いました。また、作者自身の男性との関係のいつまでも未練たらしく優柔不断なところや職を転々とするところなども少しばかり腑に落ちませんでした。正直この作品が後々まで読み継がれていくほどの作品かなと思いました。

2014/10/12 12:52

投稿元:ブクログ

林芙美子の出世作、なんども改稿し続けた1~3部を収録。
表紙には「逆境におしつぶされることなくひたすらに文学に向かってまっすぐに生きる」と書かれているけど、まったくそういう風には読めません。少しも埒の明かない暮らしに、しょっちゅう自棄っぱちになっては悪態を吐き、できもしないことを夢見たりして、それでも文学を捨てきれない人、というのが私の受けた印象でした。
なにしろ、貧乏でも芸術一筋を気どりつつ、生活の苦労は女に丸投げしてきた多くの男性作家とはわけが違うもの。女にとっては、貧しさと、男に依存する/利用されることとが不可分の関係なのだということが、この人の吐き出す思いを読むと、あらためて実感されて、ほんとうに今の時代の女の貧困と、本質的には変わっていないと、つくづく感じます。特に、彼女を愛しているという「松田さん」が、見返りを期待しないと言いながら金を貸してくれることが、むしろ重荷で嫌でたまらない気持ちは、とてもよくわかる。
いっそ誰かと結婚しようか、いっそ売春でもするか、と、本心とも思えない言葉を吐きつつ、それでも文学を手放さないでい続けたのは、「純粋な志」なんてきれいごとでは済まない、意地とか開き直りとか、複雑なものがあったんじゃないだろうか。林芙美子が、成功してからも、あれはプロレタリアート作家よりも落ちる「ルンペンプロレタリアート作家」だと中傷を投げつけられたように、性的にも、志においても、”純粋”でいるという贅沢が許されないのが、つまり貧困な女ということなのです。
もっとも、その日その日の気持ちが火花のように飛び散っていた第一部とくらべると、第三部はかなり整理されて、作家のサクセスストーリーの趣には近づいてくるのだけど。しかし第2部の最後に付記された、今は成功して自分の家も構えた作者がふと漏らす恐れや空しさにこそ、林芙美子の直の肉声がもっとも伝わってくる気がします。特に、苦しいなかで支えとなってきたことは間違いないけれど、重荷でもあり自分を縛る鎖であったことも間違いない家族というものを、ふと客観的に眺めてしまう心持ちを描いている部分が、強い印象を残す。家族への相反する気持ちも含め、彼女の率直な筆が時代を超えて共感を呼び続けていることに納得します。

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