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ネルーダ事件(ハヤカワ・ポケット・ミステリ・ブックス)

ネルーダ事件 みんなのレビュー

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みんなのレビュー7件

みんなの評価4.4

評価内訳

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  • 星 1 (0件)
7 件中 1 件~ 7 件を表示

紙の本

南米的混沌

2016/03/13 12:42

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:かしこん - この投稿者のレビュー一覧を見る

北欧ミステリブームが私の中でぐんぐんと盛り上がる中、別に北欧に飽きたわけではないけれど、これは南米チリの話。
チリで探偵をしているカジェタノはカフェで、この稼業を始めるきっかけとなった出来事をふと思い出し始める。 それは1973年、アジェンデ大統領による社会主義政権が崩壊の危機を迎えていたときのこと。 キューバからチリにやってきたばかりのカジェタノは、政府側の有力者であり、ノーベル賞を受賞した国民的詩人のパブロ・ネルーダと知り合ったカジェタノは、ある医師を捜してほしいと依頼される。 彼はしぶしぶ調査を始めるが、ネルーダの依頼には別の意図があって・・・という話。

<事件>といっても結局は人探しに終始する。 途中で誰か殺されたりはしない。
けれどなんだか読ませるのだ。 チリ・アジェンテ政権末期ということは映画『No』で描かれていた時期と一致するので(その映画を結構最近観たばかり)、あの時代を思い描くことが比較的容易だったのと、映画では描かれていなかった庶民の生活面が詳しかったのもよかったのか。 とはいえ人探しの旅はチリから始まり、メキシコ、キューバ、東ドイツ、ボリビアへと続く。 1973年当時、社会主義政権の後ろ盾があればベルリンへも容易く(?)行けるんだ!、ということにも驚いたし。

革命の闘士として生きることを決めたカジェタノの妻と、政治的信条はそこまで強くないカジェタノは「仕事を得るため」という理由でネルーダの依頼を受ける。 とはいえプロの探偵ではない彼にネルーダが施した教育的指導が「ジョルジュ・シムノンを読みなさい」だったのは興味深い。 ホームズやポワロは探偵個人が超人的すぎ、一般人には応用が難しいから、メグレ警部の地道な捜査法から学べ、ということなのだ。 そして実際、本を読みながらふむふむと納得しているカジェタノが面白い!(しかしパリ人であるメグレと違って、カジェタノの前に広がるのは南米的混沌なので、すべてがすべて参考になるわけではなかったが。 メグレがチリに来ても解決できないに違いない、と毒づいているし)。

けれど名探偵や名刑事が自分たちの住むテリトリー内において最高のパフォーマンスができるような設定になっている、という指摘にはとても納得した。
そんなわけでカジェタノは、このあと“チリにおける名探偵”の道を歩むことになるんだろう。

それにしても、“国民的詩人”であるネルーダについてここまで書いちゃって大丈夫か、と心配になるほど、下手したら遺族から名誉棄損などで訴えられそうな感じもするんだけど・・・ある程度は知られた事実なのかしら?
それを許容するのもまた、南米的混沌?(2014年11月読了)

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2017/02/15 20:48

投稿元:ブクログ

ハヤカワミステリって初めて読んだけど、パッと取った割にはアタリで良かったです。というのも作者はチリでは絶大な人気のある人だそうで。恋愛のシーンで、この縦長のデザインだと、ええ歳してハーレクイン読んでるとと思われたらどうしましょ症候群でビビりつつ装丁に助けられつつ。南米への憧れ、さらに東ドイツやら、そして革命のくだり・・・少し隔たりありながらも楽しく読みました。ッス。

2014/07/22 13:05

投稿元:ブクログ

 南米チリについて、正直な話、ぼくは何一つ知らない。

 ぼくの勤めていた医療機器メーカーが、チリで大地震が起こるたびに医療物資の援助を行う日本赤十字社から特別オーダーを受けた特需景

気にボーナスが加算された。太平洋の向う岸で惨事が起こると喜ぶこの会社なんてまるで死の商人だね、と同僚と皮肉を交わした覚えがある

くらいだ。

 そのチリに、1973年には、軍事クーデターの嵐が吹き抜けたのだそうだ。ニクソンの支援を受けたピノチェト将軍による軍事独裁政権は

17年の長きに渡って続くことになる。そんなことすら知らない日本人のぼくは平均的なのか? それともぼくだけが無知であるのか?

 主人公のカジェタノ・ブルレは、現在7作まで出版されているシリーズ探偵であるそうだが、本作はその6作目であり、カジェタノが探偵

という職業になったきっかけを回想する内容のものである。彼は、病床にあるネルーダの玄関の扉を叩くことで、私立探偵の道に進んで行っ

たのである。この小説で登場する実在のノーベル賞受賞詩人ドン・パブロ・ネルーダは、この頃には前立腺癌を患っており、軍事クーデター

後12日目でその人生を閉じる。

 ネルーダと関わることになった若きカジェタノ・ブルレは、ハバナ生まれの亡命キューバ人である。彼はアメリカで出逢ったチリ人の妻ア

ンヘラとともにチリに移り、パルパライソに住んでいたが、アンヘラは祖国に迫ろうとしている右派と闘うため、軍事訓練を受けにチェ・ゲ

バラの国メキシコに旅立つ。個人の幸福よりも思想的闘士の義務を優先する考えで、夫の元を去ったのだ。祖国を持たないカジェタノは妻の

信条をついぞ理解することができず、自らの将来を憂えるどん底の状況に陥った頃に、あまりにも有名すぎる隣人ドン・パブロ・ネルーダに

出逢ったのだ。

 ネルーダの血を分けた子供かもしれない娘、また彼女を生んだ元愛人で医師の妻ベアトリスを探すよう依頼を受けたカジェタノは、捜索の

旅に出る。探偵心得を学ぶためにネルーダから渡された何冊ものジョルジュ・シムノン作、メグレ警視の小説シリーズを鞄に詰めて。ベアト

リス母娘を追う旅は、メキシコ、キューバ、東ドイツ、ボリビア、そしてチリはサンティアゴへと続く。そのたびに、ベアトリスという女性

が、その時代その国々で様々な顔を使い分け、全く違う女に移り変わってゆく踪跡に出会うのだが、どの国のどの地も複雑かつ危険極まりな

い政情を抱えており、カジェタノは、平和で安定した場所を舞台に落ち着いた捜査ができるメグレ警視を羨ましく思う一方、自らが立つ危険

に満ちた世界で成し遂げつつある追跡行の成果を、これは小説などとは違うが達成感は格段のもの、と誇り高く思う。

 そうして徐々に探偵としての素質を見せ始めるカジェタノと、何人もの妻と結婚しては捨ててきたノーベル賞詩人の罪悪感に苦しむ私生活

の意味深げな対比が、長いお互いの電話連絡やネルーダ���独白の章を通して描かれてゆくところに、世界と個人の、それぞれの罪や贖いが呼

応し、比較され、この小説世界に、かつて見たこともないような奥行やスケールが生まれるのだ。実に優れた力作であると思う。

 ラストシーンは、チリの軍事クーデター、ネルーダの死、カジェタノの捜査の完了などが、すべてほぼ同時点・同地点に集約されてゆく見

事さなのだが、この作家のエネルギッシュな描写力は並大抵のものではない。クーデターが行われているとはとても思えない美しいチリの港

の朝を見つめるカジェタノの耳に、迫ってくるどこか遠い空爆や発砲の音、雑音で消えてゆくラジオのニュースなど、当の作家本人が長いあ

いだ亡命を強いられることになった1973年当時の一日の体験の重さを響かせて、大変重厚に仕上がったアンサンブルとなっている。

 どこを通しても一級の娯楽作品であり、一級の品格である。史実に存在した人物や出来事と、作者がイマジネーションさせたベアトリス母

娘の仮想の旅を通して、読者はカジェタノとともに世界の動乱の日々を目にしてゆく。チェ・ゲバラ亡き後の砂塵。カストロのもたらしたハ

バナの張りつめた静寂。未だ崩壊には遠かったベルリンの冷たい壁。籠城するアジェンダ左派政権のラジオから流れる決意の叫び。ネルーダ

の棺桶(イコール希望)にすがる市民たちの姿。時代のうねりと人間たちの悲しい愛情とが徹底して心を打つ、危険でリリカルな一大行脚の

旅をどうぞご賞味あれ! 

2014/07/31 21:08

投稿元:ブクログ

 ソマリランド→ネルーダ事件の順番で読むと、いま「あたりまえ」と思う日常が、西欧化された……ある意味特殊なものなのかも知れないな、と思う。
 面白かった。

2014/07/22 22:40

投稿元:ブクログ

南米チリで探偵をしているカジェタノが、稼業を始めるきっかけになったネルーダ事件について語る。

うーん。ミステリ…。
ミステリなのかなぁ?
確かに人探しではあるんだけど、どちらかと言うと文芸要素の方が強いんじゃないかと思う。
それでもカジェタノが探偵を始めるに当たってシムノンを当面の手引書にしたり、マーロウやホームズを引き合いに出す件はくすりとした。
役者あとがきにあったとおりラテンアメリカ的混沌。

2014/05/07 12:43

投稿元:ブクログ

この本の前に、「ネルーダ回想録」でも読もうかな、、、
松岡正剛の千夜千冊 1301夜
http://1000ya.isis.ne.jp/1301.html

早川書房のPR
http://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/211883.html

2014/06/15 20:02

投稿元:ブクログ

非英語圏のミステリは北欧を中心に邦訳が出ているが、その中でも珍しい、南米はチリのミステリ。南米で邦訳というと矢張り純文学に分類されるものが多く、エンタテイメント畑の邦訳はなかなか見られない。
主人公が『自分が探偵となるきっかけとなった事件を回想する』という体裁で、実在の人物も数多く登場する。
ネルーダの依頼で主人公はキューバ、東ドイツなど、様々な国を転々とするが、同時に、当時のチリの社会情勢が描かれており、クーデター前夜の緊迫した情勢と、悪化するネルーダの体調がタイムリミットの役目を果たし、物語を盛り上げている。
訳者あとがき冒頭にある『ラテンアメリカ的混沌』というと、南米文学の書評ではよく見られる表現で、今作にもそれは感じられる。

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