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2014/09/15 14:45

投稿元:ブクログ

「難解な量子力学の概念を、数式をほとんど使わずにやさしい言葉で解説した名著」と帯にあるとおり、数式はほとんど出てこないし、出てきても高校の数学がわかっていれば理解できる程度。量子物理を学ぶ学生はこんな数式をいくつもいくつも解かなければならないんだなあ、というようなことを、なんとなく理解すればいいだけだ。

訳者のあとがきによると「詩人のための××学」という言い回しは、アメリカの大学で文科系学生に向けての講義によく使われるものらしい。すなわち本書は私のような文系人間こそ読むべき本なのだ。
量子力学(の概念)を理解するには、量子力学誕生以前の、我々が中学高校で学んだ物理学の基礎をおさらいする必要がある。その上で、それまでのニュートン力学と、20世紀に登場した量子力学のどこがどう違うのかを理解させてくれる。その方法が、わかりやすく具体的なたとえ話と、軽妙な語り口だ。レーダーマンは「物理学界のメル・ブルックス」というニックネームを持つ、というのも頷ける。

たしかに、この本は文系の人間こそ読むべきだ。数学が出来ないから文系に逃げ込んだ私のような人間でも、この本は量子物理の豊穣な世界に引き込んでくれる。アインシュタインは量子物理の語る「確率的な宇宙」を最後まで受け入れることを拒否したが、それは間違っていた。なぜ間違っていたかは、この本を読めばわかる。
最後は、量子論の最新のトレンド、超弦理論やランドスケープまで、この本は私たちを導いてくれる。わからない箇所は読み飛ばしてもなんら問題はない。頭のどこかで「面白い」と脳ミソが感じれば、それでこの本を読む価値があったということだ。

繰り返し言うが、この本は文系人間に向けて書かれたものだ。すぐれた物理学者あるいはサイエンスライターによって、文系にもとっつきやすい科学入門書・啓蒙書が数多く著されている。その多くは、敷居の高いと思われがちな最新の科学に、出来るだけたくさんの(科学嫌いの)人たちに慣れ親しんでもらおうと、心を砕いてくれている。私たちはその誠意をきちんと受け止めるべきだ。量子力学は決して文系の人間にとって理解不能な代物ではない。
そのことに気が付けば、大手新聞社、マスコミによる最近の「科学面でのスキャンダル」を鵜呑みにすることもなくなるのではないか。
子供の理科嫌いも少なくなる。
何よりもまず、自然や生命、宇宙に対してもっと謙虚になれる。
科学とはそういう地平を拓くものだと、本書を読んで改めて気付いた次第である。

【捕捉】「二重スリット実験」やファインマンの経路積分についてより詳しいことが知りたければファインマンの「光と物質の不思議な理論」をあわせて読むことをお勧めする。

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