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生きる力 新潮社創業者の今も、将来にも通じる処世訓話

生きる力 新潮社創業者の今も、将来にも通じる処世訓話 みんなのレビュー

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2015/02/01 15:11

投稿元:ブクログ

願はじな世はうたたねの肱枕【ひぢまくら】左かなへば右は苦しき
 作者未詳

 新潮社創業者である佐藤義亮の訓話集「生きる力」復刻版を読んだ。当初は、自己啓発本の類だろうとやや軽く見ていたのだが、日中戦争前年の1936年刊行でもあり、当時の出版人の考えを探ろうと読み進めた。

 読むと、意外にも、戦争や時局の話題はほとんどない。「働くことの喜び」「人生の事みな試験」「一人一業【いちごう】であれ」など、主に働き方、誠意を持った対応などが簡潔に書かれた内容だった。

 佐藤は1878年(明治11年)、秋田生まれ。読書好きな少年で、進学を切望したが、経済的な事情で親は渋い顔。ならば自分で、と十代後半で上京。印刷工や校正係をしながら、夜間部の大学に通い、その後ようやく出版業を始めたという。

 掲出歌は、「他所の花を羨むな」の章に引用された歌である。世の中は思うようにいくものではなく、左枕が解放された瞬間、右枕の方に負担がかかる。けれども、それを念頭に、他人と比べず日々真剣に働くのが良い、というアドバイスである。

 また、その真剣な働きには「休息」が必要とも述べている。休息を、炊飯後の蒸らす時間にたとえ、「働く前と後の間に挟まって、重要な役目をする『蒸す時間』」と名付けているのもユニークだ。

 ほか、「人生五十」とは50歳から本当の仕事ができるという意味で、それまでの年月は「基礎工事」であるという見解も奥深い。謙虚で、分【ぶ】をわきまえた働き方こそ「生きる力」につながるのだろう。

(2015年2月1日掲載)

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