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3 件中 1 件~ 3 件を表示

2014/12/19 16:13

投稿元:ブクログ

映画監督フランソワ・トリュフォーを相手に、日本における友人といってもいい山田宏一と仏文学者にして映画批評家蓮實重彦が行ったロング・インタビューがトリュフォー没後三十年を記念して、やっと単行本として刊行された。この本に目をとめる人は、おそらく映画ファンで、レビューなど参考にせずに読むにきまっているから、何を書いても空しい気もするが、読後の感想くらいは書いておきたい。

この三人の名が連なるものとしては、すでに『定本 映画術 ヒッチコック/トリュフォー』(晶文社)という本がある。映画監督になっていたトリュフォーが断られるのを覚悟でヒッチコックにインタビューを依頼する手紙を出したところ、意外なことにOKが出て可能となった映画ファン必読の名著だ。そのインタビューの邦訳者が山田、蓮實両氏だった。私見だが、『トリュフォー最後のインタビュー』は、前掲本へのオマージュとして作られているのではないだろうか。和田誠による装丁は平野甲賀のブック・デザインを意識して踏襲しているように思える。

了承されてもずっと先のことだろうと思っていたインタビューが、ヒッチコックのすぐやろうという返事で、あわてたことが本書にも書かれているが、作品を年代順に通して見直し、用意した質問は五百項目に及んだ。インタビューの目的と内容は以下の通りであった。

(1)一本一本の作品がどのようにして生まれてきたか。その具体的な製作事情、発想。
(2)一本一本のシナリオがどのようにして組み立てられたか。その具体的な構想、展開。
(3)一本一本の作品を演出するにあたって生じた諸問題をどのようにして解決したか。その具体的な個々の例。ディテール、等々。
(4)一本一本の作品をヒッチコックがどのように評価するか。当初の抱負とできあがった作品の商業的及び芸術的な価値についての判定。

上記の「ヒッチコック」の部分を「トリュフォー」と入れ替えれば、このインタビューの目的、内容となる。項目別に並べると鹿爪らしいが、映画が好きで仕方がない人間同士が、大好きな映画について語るのだ。しかもインタビュアーは、相手を敬愛していることがよく分かっている。長い付き合いの山田氏相手には語らないことも、第三者である蓮實氏が加わることで、最初に戻って丁寧に答えているので、話がよく見えるのもありがたいところ。

ゴダールと並ぶヌーヴェル・ヴァーグの双璧と目されていながら、五月革命以来、過激化する一方のゴダールと袂を分かち、裏切り者扱いを受けながらも、商業的な映画を撮り続けてきたトリュフォーは、果たして本当に「転向」したのだろうか。ジャン=ピエール・レオーによるアントワーヌ・ドワネルものから、遺作となった『日曜日が待ち遠しい!』まで、ヒッチコックのときと同じく製作年代順に一本一本の映画について、実に具体的に、しかもヒッチコックとちがって、シニカルになったりジョークで煙に巻いたりすることなく、真摯に語るトリュフォーの姿から、本当に映画が好きなのだ、ということがよく伝わってくる。

ウィリアム・アイリッシュの原作が気に入って映画化した『黒衣の花嫁』だが、カラー���撮ったのが失敗だったと語る。フランスのミステリ・シリーズ「暗黒叢書」(セリ・ノワール)好きで、アメリカで有名になる前から仏訳されたアイリッシュやハイスミスを愛読していたトリュフォーは、その独特のミステリアスな雰囲気が派手な色彩によって失われてしまったことを後悔していた。遺作となった『日曜日が待ち遠しい!』は、そのリヴェンジとして、モノクロームで撮影したのだと打ち明け話をしている。

『アメリカの夜』でジャクリーン・ビセットを使ったのは、『いつも2人で』にヘプバーンの旅仲間として少しだけ出たのを見ていたからだが、映画の中で水疱瘡にかかるのがヘップバーンで、ジャクリーン・ビセットがヒロインになる版を見てみたいものだと思った、などとオードリー・ファンなら怒り出すようなことも平気で口にする。もっともたしかにあの映画のヘプバーンの若作りはかなり無理があったのは確かだ。

フランソワーズ・ドルレアックとカトリーヌ・ドヌーヴの脚がきれいだったことを別のところで口にしているが、あの二人ならブロンドとブルネットとの違いはあるが一卵性双生児なのだから、当然だろうなどと思ったりもした(それにしてもきれいな姉妹だった)。映画ファンにとって、一つ一つが貴重な証言であるし、まだ見ていない映画の話も含め、とにかくおもしろい。今年出た映画本のベスト1に推したい。

2014/09/08 21:14

投稿元:ブクログ

もう30年かぁ、、、

平凡社のPR
http://www.heibonsha.co.jp/book/b182394.html

2015/05/14 09:12

投稿元:ブクログ

フランソワ・トリュフォーの訃報に接した日のことは、よく憶えている。
これから先の人生を、トリュフォー不在で過ごすなんて考えられない、と
憂鬱な気分が暫くは抜けなかった。

それから30年が経ち、没後30年を機に彼の作品の回顧上映が日本中を巡回している。
再び大スクリーンで作品を観ることができる歓びを噛みしめつつも、
かくも長い彼の不在に耐えられたのは、スクリーンの中の彼の姿
(自作に出演したりしている)や、生き急いでいるような早口の彼のナレーション
(自作のナレーションをしたりしている)があったから、
とつくづく思う。

私たちが、なぜフランソワを愛するのか、その理由は、
彼の作品を観たり本書を読めば、すぐに理解できる。

子供と書物と女性を愛したこの映画作家は、
どのショットにも映画への愛が満ちているし、
今や滅んだに等しいフランス映画がかつて持っていた、
ナイーブさ、エスプリを感じさせてくれる最後の映画監督たっだ。

トリュフォー自身も、批評家時代に「フランス映画の墓堀人」と
言われた強面ぶりと裏腹に、とても繊細な表情を持っており、
スティーブン・スピルバーグが、『未知との遭遇』のキャストに
彼を加えたのも、それゆえに違いない。

本書は、彼の作品についての詳細なインタビューをまとめたもので、
蓮實重彦氏、山田宏一氏は、まさに絶好のインタビュアー。
インタビュアーが良いと、かくも話しが面白くなる、という見本といえる。
さまざまエピソードは、映画ファンだけではなく、ものづくりに関心が
ある人には、きわめて興味深いに違いない。
かつて、トリュフォー自身がヒッチコックにインタビューし、映画製作の秘密を
垣間見させてくれた『ヒッチコック映画術』に匹敵する面白さとなっている。

インタビューの一部は伝説の映画雑誌『リュミエール』に掲載されていて、
本書が中央公論社(新社ではない)から発刊予告されて、すでに20年。
没後30年を機会に平凡社からの出版になったが、実に待たれた刊行だった。
(刊行の前に蓮實重彦氏が死ぬんじゃないかと心配した。)

600ページ近い大部の書だが、人名、作品名でわからない名前が続出しても
気にせず、エピソードを拾い読みするだけでも面白い。

さて、綺羅星のごとく登場したヌーヴェル・ヴァーグの映画作家たちも、
トリュフォーを含め、次々と鬼籍に入ったが、
数少ない生き残りとなったジャン=リュック・ゴダールは、
今も孤高の輝きを放っており、新作が今年、公開されている。
それも80歳を超えて3D映画とは!

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