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大江健三郎自選短篇(岩波文庫)

大江健三郎自選短篇 みんなのレビュー

文庫

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みんなのレビュー8件

みんなの評価4.4

評価内訳

  • 星 5 (2件)
  • 星 4 (2件)
  • 星 3 (1件)
  • 星 2 (0件)
  • 星 1 (0件)
8 件中 1 件~ 8 件を表示

2015/04/05 10:11

投稿元:ブクログ

デビュー作から後期まで、23篇の短篇集。
初期短編
・奇妙な仕事(1957年5月)
・死者の奢り(1957年8月)
・他人の足(1957年8月)
・飼育(1958年1月)
・人間の羊(1958年2月)
・不意の啞(1958年9月)
・セブンティーン(1961年1月)
・空の怪物アグイー(1964年1月)
中期短編
・頭のいい「雨の木レインツリー」(1980年1月)
・「雨の木レインツリー」を聴く女たち(1981年11月)
・さかさまに立つ「雨の木レインツリー」(1982年3月)
・無垢の歌、経験の歌(1982年7月)
・怒りの大気に嬰児が立ち上がって(1982年9月)
・落ちる、落ちる、叫びながら…(1983年1月)
・新しい人よ眼ざめよ(1983年6月)
・静かな生活(1990年4月)
・案内人ストーカー(1990年3月)
・河童に噛まれる(1983年11月)
・「河童の勇士」と愛らしいラベオ(1984年8月)
後期短編
・「涙を流す人」の楡(1991年11月)
・ベラックッワの十年(1988年5月)
・マルゴ公妃のかくしつきスカート(1992年2月)
・火をめぐらす鳥(1991年7月)

2016/07/16 00:18

投稿元:ブクログ

・「奇妙な仕事」
 狡猾な手を使わずに真正面から犬を叩き殺す犬殺しの誠実さに奇妙な感動をおぼえた。社会的にはいかがわしいとみられる仕事でも、誇りは持てるものなのか。

・「死者の奢り」
 「奇妙な仕事」と似た構造。今度はアルコールで満ちた水槽に満ちた解剖用死体を移す「奇妙な仕事」。そしてそれが無益な仕事であるという点でも共通している。

・「他人の足」
 脊椎カリエスにかかった若者たちの療養所。性と政治の主題が前面に出た。両者は決して相容れないものの、あるいは不即不離であるものの象徴。

・「飼育」
 谷間の村に米軍飛行機が墜落する。一人の黒人が捕虜になる。その捕虜をめぐる少年のみずみずしい感性が、日本側をも相対化する。森の描写と、黒人の描写とが何より良い。

・「人間の羊」
 アメリカ軍の兵士に恥辱を受けた日本人学生。そしてそれを糾弾しようとする日本人教師。「飼育」に続いて、何事かを正義という名のもとにあえて主題化することによる欺瞞と狂気を暴く作品。2.26事件の反復への予兆。

・「セヴンティーン」
 熱しやすい少年の肉体にとって、選ぶ思想は単なる偶然に左右される。したがって右派左派の違いにどれほどの根拠があるのか。村上春樹なんて、本作に影響を受けた口ではないか。

・「空の怪物アグイー」
 アグイーという怪物が見える作曲家の付き添いのバイトをする大学生が語り手。以前の短編の端正な語り口が崩れ始め、文体が変化しはじめたのがわかる。

・「頭のいい「雨の木」」
 ひやりとさせられるほど、文体に凄みが備わっている。うねうねとした言葉の運びがいったいどこへ向かうのやらと思いながら読んでいると、まったく思いもよらぬ場所へ連れていかれた。ここらから、事実に根ざしたフィクションが先鋭化されてゆく。

・「「雨の木」を聴く女たち」
 男の持つ厭らしさと脆さが前面に出た作品。「高安カッチャン」の報復がささやかすぎて痛々しい。私小説を偽装したフィクションにドライブがかかる。

・「さかさまに立つ「雨の木」」
 物語はどこへ向かうのか、もう五里霧中で息を飲みながら読み進めた。「泳ぐ」というライトモティーフが目をひいた。パトロンで友人である作曲家Tと高安カッチャンのノートをもとにレコードを作った彼の子供が音楽を介してつながる。

・「無垢の歌、経験の歌」
 イーヨーもの。ウィリアム・ブレイクが登場。イーヨーの発言がいちいち胸に突き刺さる。「家族」にフォーカス。

・「怒りの大気に冷たい嬰児が立ちあがって」
 死の主題、導入。後頭部の傷とイーヨーの二つの脳。ブレイクと「独学者」の死。

・「落ちる、落ちる、叫びながら……」
 プール小説。不穏な、日本人なのになぜかスペイン語で会話するM(三島由紀夫)信奉者たち。溺れるイーヨー。
 
・「新しい人よ眼ざめよ」
 二十歳になったイーヨーがイーヨーと呼ばれることを拒否する場面で、この複雑な短編が一挙に生命を得る。

・「静かな生活」
 めずらし���、イーヨーの妹がコミカルな語り手。外国へ出かけた両親のいない家で子供たちが留守番をする。すでに一人前の男になったイーヨーの性的問題を妹はひそかに心配している。

・「案内人」
 タルコフスキーの「ストーカー」について長女と次男は議論する。長女の心配の種であるイーヨーがじつは妹のことを守ろうとしている。そのコミカルさが胸にずしんとくる。

・「河馬に噛まれる」
 ある日、語り手はアフリカで日本人青年が河馬に噛まれたというニュースを新聞で読む。それは彼がかつて頼まれて文通をしたことのある相手。自身の出した手紙がその事件の遠因となっているのを知る。

・「「河馬の勇士」と愛らしいラベオ」
 かつて浅間山荘事件に加担して逮捕された「河馬の勇士」が、未来への活路をかすかに見いだす。

・「「涙を流す人」の楡」
 谷間の古い記憶が、語り手の現在に暗い影響を及ぼす。

・「ベラックワの十年」
 ダンテ「神曲」と想像妊娠。

・「マルゴ公妃のかくしつきスカート」
 性と聖の両立。

・「火をめぐらす鳥」
 伊東静雄の詩が著者の人生を統括するかに見える。

2015/10/13 11:40

投稿元:ブクログ

ノーベル賞作家、大江健三郎の自選短篇集。短編なのでキリが悪くなりがちな通勤通学時にも読みやすく、初期~後期の作風の変遷も楽しめる一冊です。全作品加筆修正がなされているので大江作品を読んだことがあるという人にもオススメ。
(金属工学科 B3)

2014/10/19 17:21

投稿元:ブクログ

・大江健三郎「大江健三郎自選短篇」(岩波文庫)を 読んだ。帯に「全収録作品に加筆修訂が施された大江短篇の最終形」とある。本書収録の23編に関しては、以前の「全作品」や「全集」ではなく、これが最終形、もしかしたら定本になるといふことであらう。それを意識して読んだと書いたところで、私にはそれ以前との違ひなど分かりやうはずがない。ただ、かうして初期から最近の作品まで通して読むと、大江の変貌の具合と文体の推移、つまり読みにくくなつていく過程がよく分かる。私が大江を読み始めた時、既にかなりの作品が文庫になつてゐた。それらは初期の作品であつたはずだが、それゆゑにそんなに読みにくいとは思はなかつた。もちろん初期の作品の文体からして大江である。かなり特徴的な言ひ回しがあつたりして、決して読み易い文体ではない。それでもまだましなのだと、本書から改めて思ひ知つた。「大江短篇の最終形」といふコピーに引かれたこともあるが、同時に、そんな文章の変化が、私にも感じられる形での変化が表れてゐるかといふ興味もあつた。結果は、最初から最後までやはり読み易くない、しかも後期、つまり最近の作品ほど読みにくいといふ、これまで私が感じてゐたことを再確認しただけであつた。
・しかしである。内容的には大きな改訂もあつたのである。これは自分で気づいたわけではない。『読売新聞』に「『大江健三郎』を作った短編…デビュー作など自選23編、文庫に」(14.09.28)といふ記事があつた。この中にかうある。「作品の根幹に関わる校正はない。ただ東大在学中の22歳の時、発表 した『奇妙な仕事』では、ある変わった仕事に携わる『僕』『私大生』『女子学生』の3人のうちの1人の設定を、『私大生』から『院生』に直した。」さうか、私大生とあるのに違和感を持つた覚えがあると思ひ出したものである。大江が直したのはもちろんこんな理由ではない。「『私大生』では、学生の『僕』 との違いが出てこない気がした。『院生』にすれば、知的な面や人生経験の違いが出てきますね」。あの現場での対応の違ひがこの改訂によりより鮮明になるとい ふことであらう。もしかしたらこれに関連する小さな改訂があるのかもしれない。手許には何種類ものテキストはないので私には知りやうがない。ただ、50年 以上前の作品にも手を入れて完璧を期さうとする執念(?)には感服するばかりである。万が一、他にもかういふ類の改訂があつたとしても私には気づけない。 たぶんそれで良いのである。読者にはそんな細部に気づくことは求められない。大筋が問題である。だから、「『空の怪物アグイー』の冒頭は、<ぼくは自分の 部屋に独りでいるとき、マンガ的だが黒い布で右眼にマスクをかけている>。以前の『海賊のように』の語を、『マンガ的だが』に入れ替えた。」などといふのにも気づかない。確かにこの方がよりふさはしさうではある。それに気づかずとも読める。分かつた気になれる。さうして「雨の木」連作あたりから読みにくさの度合が一気に強まるのを感じ、ここに至つて大江は日常生活の冒険から抜け出して新たな段階に至つたことを知るのである。それは文体だけでなく、内容、物語からも分かる。己が生活を核にして物語を作る、私はかういふのが嫌ひだから、その文体と相俟つてこの頃から大江嫌ひになつていつた。しかし、今もまだた まに大江を読んでゐる。これがノーベル賞作家の魅力か底力かと思ふのだが……。とまれ、個人的には、物議を醸しさうだが、「セヴンティーン」完全版(第1部、第2部)が読みたかつた。そんなことを考へながら時間をかけて本書をやつと読み終えた次第である。

2015/10/02 06:19

投稿元:ブクログ

もうお腹いっぱい。
大江健三郎さんの短編が23編収録されています。
文庫で840ページだから、まるでレンガみたいな厚さ。
デビュー作「奇妙な仕事」から「空の怪物アグイー」まで初期短篇8編は愉しむことができました。
緊密な文体で独特の緊張感が漂っていて、読む方も気が抜けません。
芥川賞受賞作の「飼育」も好きですが、私は「セブンティーン」に結構な衝撃を受けました。
正視に耐えないグロテスクな心情と鬱屈を抱え、学校に居場所のない17歳の「おれ」が、右翼の大物に認められたことで急速に右翼に傾斜していく様子を描いた作品です。
これは今、「ネトウヨ」と呼ばれる人たちにも重なるのではないかと思いました。
右翼的な勇ましい言動をすることで不甲斐ない自分を慰撫する傾向が「ネトウヨ」と呼ばれる人たちに強いのは、各方面の識者から指摘されているところです。
「セブンティーン」は1961年の作品。
先見の明があると云えるのではないでしょうか。
中期以降の「『雨の木』を聴く女たち」などの短編は、すみません、頭の悪い私にはちょっとついていけませんでした。
アカデミック臭もかなりして、「これはどういう意味なのか」「もしかしたら、こんなふうに解釈すべきなのでは」などとあれこれ考えて、遅々として読書が進まないということも何度かありました。
でも、池澤夏樹さんも云っていましたが、読んでいてこれだけ大変なのですから、書く方はもっと大変に違いありません。
池澤さんといえば、大江さんの「家族ゲーム」に強い影響を受けたそう。
この機会に本作も読んでみたいとぞ思ふ。
なんかレビューになってないですね。

2014/08/26 13:17

投稿元:ブクログ

初期、中期、そして近年の短篇から、著者が自選の上、改稿した短篇集。
自選短篇だけあって、ストレートにイデオロギーや政治的なテーマを表現した初期短篇から、徐々に幻想的私小説へと繋がる作風の変遷を俯瞰するには最適。

2014/10/06 19:05

投稿元:ブクログ

大江健三郎という小説家がどのような経緯で現在に至っているかがわかる貴重な一冊。初期の名作『空の怪物アグイー』や中期の名作『レインツリー』シリーズ、『静かな生活』上げていくときりがない。

満足感でいっぱいです。

11月8日追記
まさか『王様のブランチ』で紹介されるなんて思いもしなかった。大江さんが言われるように一冊の本が救いになる瞬間がある。そうした本が持てる読者はやはり幸福なことなのだと思う。

2016/02/10 09:27

投稿元:ブクログ

初期短篇に含まれている、「奇妙な仕事」「死者の奢り」「飼育」などは再読でも十分楽しめました。ところが中期短篇でさっぱりわからず1年ほどほっておいて、続きを読み始めました。とにかく読み終えようとして読み終えましたが、なにも得るものは無し。評価は初期★★★★、中期後期★★、自分で理解できない為

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