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みんなのレビュー47件

みんなの評価4.5

評価内訳

47 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

文章に気品があり、燃え立つ情感が知性の冷ややかさと明晰さという外皮をまとっている

2014/12/22 17:40

6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:abraxas - この投稿者のレビュー一覧を見る

いい小説だ。読み終わって本を置いた後、じんわりと感動が胸のうちに高まってくる。一人の男が自分というものを理解し、折り合いをつけて死んでゆくまでの、身内をふくめる他者、そして世間との葛藤を、おしつけがましさのない抑制された筆致で、淡々と、しかし熱く語っている。「文章に気品があり、燃え立つ情感が知性の冷ややかさと明晰さという外皮をまとっていた」というのは、作中で主人公がかつて愛した女性の著書を評した言葉だが、そのまま本書を評したものともいえる。

読む人によって、それぞれ異なる主題が見つかるだろう。主人公は大学で主に英文学を教える助教授である。そこからは、大学というアカデミックな場において繰り広げられる身も蓋もない学内政治の暴露が、また、師が弟子の資質を発見し、己があとを託すという主題が見える。さらには、シェイクスピアの十四行詩と『リア王』が全篇にわたって朗々とした音吐を響かせていることも発見するだろう。

男と女が夫と妻となったが故にはじまる家庭内での葛藤を主題とした小説でもある。自分を見失った中年男が理想を共にする歳若い女性との秘められた情事のなかで再び自分を回復していくという、些細ではあるが忘れることのできない挿話もある。自分以上に自分を知る友との出会いと別れ。また、その反対に、故知れぬ悪意を抱く競争相手との熾烈な闘争、とよくもまあこれだけの主題を逸脱することなく、一筋の流れの中にはめ込むことができたものだと、その構成力に驚く。

忘れてならないのは、戦争という主題である。主人公が大学で教鞭をとるのは二つの大戦期である。戦争に行くことに価値があり、忌避は認められていても誉められる態度ではなかった。優れた素質を持ちながら、主人公が終生助教授の地位にとどまるのは、戦争との関連を抜きにしては語れない。主人公の中にあって、自らは知らない教師としての素質を見抜いた師が迷う弟子に言い聞かす言葉がある。「きみは、自分が何者であるか、何になる道を選んだかを、そして自分のしていることの重要性を、思い出さなくてはならん。人類の営みの中には、武力によるものではない戦争もあり、敗北も勝利もあって、それは歴史書には記録されない」というものだ。教育に携わる人なら肝に銘じたい言葉である。

注目すべきは人物。たとえば同僚のマスターズ。大学は自分たち、世間に出たらやっていけない半端者のために作られた避難所で、ストーナーは世間に現実とは違う姿を、ありうべからざる姿を期待している夢想家にしてドン・キホーテだ。「世間に抗うべくもない。きみは噛みしだかれ、唾とともに吐き出されて、何がいけなかったのかと自問しながら、地べたに横たわることになるだろう」という予言めいた言葉を残し、戦死してしまう。

そのマスターズの陰画が他校から赴任してきたローマックス。頭脳明晰で弁が立ち、傲岸不遜。二枚目役者の顔を持ちながら背中に瘤を負い、脚を引き摺る小男というディケンズの小説にでも出てきそうな人物。この男がストーナーを目の敵にして生涯立ち塞がる。その嫌がらせの度合いが半端でない。ところが、世間ではこうした男に人気が集まり、出世も早い。弁証法的な役割を果たし、小説をヒートアップさせる名敵役だ。

シェイクスピアを蔵する英文学は恵まれている。ストーナーは大学では善良なエドガーを、家庭では、書斎から放り出され、居場所を探して放浪するリア王の役を演じる。「トムは寒いぞ」の科白ひとつで嵐の中を流離う老人の姿が眼前によみがえる。五十年という歳月を経て、再びこの小説が陽の目を見ることができたことが何よりうれしい。

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紙の本

死ぬ前に読み返したい一冊

2015/01/28 13:07

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:りー - この投稿者のレビュー一覧を見る

平凡なの男の平凡な生涯が淡々と描かれているだけなのに、この小説にこんなにも惹き付けられてしまうのは何故だろう。共感か同情か、あるいはそのとりたてて書き立てるべき事のない人生への憧憬からなのか。喜びも悲しみも、胸焦がす恋も骨肉を削る争いさえも静かに受け入れ、そっと心の中にしまい込むようなストーナーの生き方に、どこか救われたような、それでいて突き放されたような安らぎと寂寥感を覚えてしまうのだ。読み手の感情に大きな波紋を立てるような作品ではないけれど、ひっそりと心のどこかに息づいてしまう、そんな穏やかな作品。海外文学としては非常に読み易く、翻訳物に抵抗がある人にもお勧め出来る。

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紙の本

手元に置いておきたい本。

2015/09/27 21:00

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:オサム - この投稿者のレビュー一覧を見る

買って良かった。
手元において折に触れ読み返したい本。
毎朝、早起きをして一章づつゆっくり読む。
とても贅沢な時間を過ごした。
この小説の存在が、これからの自分を支えてくれる。

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紙の本

これは私の物語だ…

2016/10/24 21:52

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:さもさも - この投稿者のレビュー一覧を見る

ある英文学教師の半生を描いた物語。20世紀の初め、アメリカ・ミズーリ大学に入学した農家出身のストーナーは、ある講義に刺激されて英文学の道を進むことになる…艱難辛苦にあふれた人生を送った彼は、幸せだったか?様々な捉え方ができそうな小説。そして、読み進めるうちに、自分のことが書かれているような気がしてくる。

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2015/01/21 21:32

投稿元:ブクログ

ほんとうに、幸せ、不幸せなんてひとことでは言えないものなんだ。
人の一生は、一瞬、一瞬のつみかさねなのだ。
ストーナーは、かたときも手をぬくことなく、愚直に生ききった。
結婚は、幸せなものではなく、長年にわたる不和と苦しみを生んだし、情熱的な恋もめでたしめでたしとはならなかった。けれども、まっすぐに向き合ったから、つらい恋ではあっても、心のなかにすみかを見つけていつまでも留まることができたんだと思う。
文学への愛、教えることへの愛も、無骨で、けっして出世にはつながらなかったけれど、誠実にむきあったからこそ、死の床でもなにがしか心を支えてくれるものとなったのだろう。

もろもろの思いがこみあげて、最後、どうしても涙がこみあげてきたのだけれど、ひとことで言えるようなシンプルな感動ではないので、涙のわけは自分でも判然としないのだった。またきっと読み返すだろうと思う。

2016/11/07 08:52

投稿元:ブクログ

時代を越えて平均的な一人の男の人生に起こる喜びと悲しみを過剰に楽天的に捉えることなくむしろゼロサムかひょっとすると少しマイナスになってしまう収支を物語るとするならこんな風になるのだろうと思う。それ故に目を背けたくなるような物語であるとも言えるしどこまでも向き合わなければならない物語であるとも言える。もちろん目を逸らす方が楽な選択肢ではあるのだけれど読み飛ばしてしまうには惜しい何かがあるように感じてならない。

半世紀以上前に書かれた文章であるにもかかわらずそんな感慨を生むということはこの物語が優れて本質を捉えていることを意味するのだと解釈する。それでも読後の印象は手放しで賞賛を与えるようなものではないことはあとがきに記されたこの本の来し方が示す通りなのだろう。時代を越えて目の玉のくすんだ人は他の人々の自由な意思を顧みない。固く身を閉ざし殻の中にどれだけ熱いマグマが煮えたぎっていたとしてもその熱気を外に漏らすこともない。主人公の名前が示すように硬い石のように生きる。但し転がり続けて苔を生やすことはしない。

そんな生き方に惹かれるかどうか簡単には答えを出せないとは思うのだが他人の評価を気にせずに生きられたならばとは常に思う。主人公とて全く他人と関わらない人生を歩んでいるわけでもない。となるとそのせめぎ合いに悩むことになる。人が誰しも陥りがちなジレンマなど文章にして何が面白いのかと松浦寿輝なら言いそうな気もするが、自分探しの本質は自己肯定と自己否定のせめぎ合う中に身を置くと言うことであり、きっとこの本はそのことを捉えて肯定も否定もしない態度で書き切っているところが何か人の心を静かに揺さぶるのだと思う。自分探しなど考えて見たこともなかったつもりだったけれど案外これまでの人生なんて全て何かの理由が知りたくてここまで来ただけのような気もするし、だとしたらそれこそ大いなる自分探しの旅だったのかも知れないなという気分にさせられる本。

2015/06/15 23:16

投稿元:ブクログ

静かな小説である。
農場で生まれた一人の男が大学に進み、そこで生涯を捧げるべき学問と出会い、こつこつとそれに打ち込み、大学教師となり、一生を終えるまでの物語だ。
青春時代は人並みにすばらしく、楽しく語らう友人にも恵まれた。美しい娘を伴侶として迎え、娘を授かった。
とはいえ、彼の人生が順風満帆であったかといえばそうとは言えない。まばゆいほどの思い出も出来た一方で、波乱もあり、困難な日々もあった。
自分の力ではどうにもならない事態になったときも、男は淡々とそれに臨み、ときには負け、ときには小さな勝利を収めた。
そうして彼は、自分が進んだ大学から、その後、離れることもなかった。
その一部始終が静謐に流れるように綴られていく。

見知らぬ男のものでありながら、その人生の小さな事件の1つ1つは、どこか自分に起こったことのようでもある。
幼い子との親密で温かな、けれど確実に過ぎていく時間。
気難しい同僚との一時の心の通い合い。
恋い焦がれる相手との奇跡のような交情。
陥ることがわかっていながら避けることの出来ない窮地。
細部こそ違え、誰しもが経験する感情の揺れは、さざ波のような共感を誘う。

平易でありながら格調高い文体は、おそらく選び抜かれた言葉の1つ1つによって構築される。
たまさか。黙(しじま)。和毛(にこげ)。時折、ちりばめられる言葉にふと目が留まる。
そう、こんな繊細な言葉もあったのだ。
原文を美しい日本語となしえたのはもちろん、訳者の力によるところも大きい。
巻末の「訳者あとがきに代えて」に詳しいが、訳者は病を得つつ、本作を生涯最後の作品と定め、黙々と、淡々と、作業に臨んでいた。
その姿はどこか、不器用でひたむきな主人公にも重なる。
ストーナーへの挽歌とも言える本作は、訳者にとっての遺作となった。

人はただ只管、それぞれの生を生きる。
たとえ一頭の怪物すら倒せなくても。たとえ一人の乙女すら救えなくても。
偉業を成し遂げることがなくても。宇宙の真理に到達することがなくても。
己に与えられた場所で、己のなし得ることをなす。
そしてただ只管、それぞれの死を迎える。

「普通の人生」を生きることに対する、透徹した、しかし温かなまなざし。
それは赦しであり、また大いなる肯定でもある。
静かで悲しく美しい。
密やかな低声で謳われる、生の讃歌である。

2015/07/08 18:29

投稿元:ブクログ

凡庸な男のありきたりの人生が綴られている。それなのに何故こんなに胸を打つのか。

凡庸であること、平凡であることは、決してあたりまえのことではなく、様々な苦悩や我慢の先にそれはあるのだろう。ストーナー氏の思いは、大多数の一般人に共通する思いだと感じる。

地味で控えめな本作を、とても美しい言葉で訳してくれた訳者に感謝する。

2015/02/20 11:59

投稿元:ブクログ

ジョン・ウイリアムズ、ありふれた名前。聞いたことあるような気もするし、指揮者か作曲者か。作家としては聞いたことがない。一体誰だろう?と疑問に思いながらも特に予備知識もなく読み始めた。
農村出身の少年ストーナーは、無学だった両親に大学に行くことを希望され、入学したのは農学部だったが、シェイクスピアのソネットと出会ってしまい恋に落ちたように文学部に転部してしまう。(ああ…それでいいのか?と読者とまどう)
大学時代に親しかった同級生は戦争で帰らぬひととなり、友人ひとりは帰還して学内で出世していく。優秀な成績を収めたストーナーは大学で教鞭をとり、好意を持った女性とめでたく結婚して新しい生活をスタートする。しかしそこで他大学からやってきた曲者の学者が登場、どうやら障害があるらしい。その教授によって、なかなか賢いのだがずいぶん問題がある学生をストーナーが担当するゼミに送り込まれる。(さらに、この学生も身体が不自由というのが、無下に出来ない要素となっているが、そこはあえて深く言及されていない)
家庭では父親となったストーナー、愛らしい娘に恵まれたにも関わらず、妻との関係は迷走、教育の方針は不一致、家庭はますます不穏、教育に没頭するストーナー先生は、大学でようやく同じ星を見ている運命の人に出会ってしまう!…しかしこのキャサリンとの関係(ああ、もうこのへんで絶対これ足元すくわれるに決まってるよと読者はハラハラ)そしてやはり目をつけられていた不具の教授からアカデミックハラスメントに巻き込まれるのである。
仕事での良きパートナーでありながら、出会うのが遅すぎた愛しいキャサリンは職場を追われ、別の場所で本を完成さた彼女はそれをストーナーに捧ぐ。(このへんからすでにもう読者ぼろ泣き)
家庭不和となっったストーナーの妻の視点は全く書かれていないのだが、おそらく彼女も人生に抑圧されたゆえの壊れ方をしていったのだろう、彼女はさらなる変貌をとげ、その時代における「飛んでる女」をも演じ、ついに家庭は崩壊、愛しい娘は早まって出産、さらに娘の相手は戦死、しまいに娘はアル中になってしまう。(もう泣くしかない)しかしすべての受難を受け止めるこの主人公ストーナーのなんという強さよ!
大学でのストーナー先生は教育熱心で学生からの評判があったにもかかわらず、学内での出世は望まず、友人でもあった学部長に早期退職を勧告され、さらに追い打ちをかけるように病魔にも冒される。(もう涙とまらない)しかし読者は気付かされる、多くの人々は、こんなふうに、やりたいことをやり、ひとに出会い、平凡な人生を生きているということに。

さらにあとがきを読めば、遺作となった翻訳者の人生と主人公が重なり、読者はさらに涙することになるだろう。本と文学に溺れてきた読者のための、これこそがわたしたちの「本当に泣ける本」。

2015/12/02 21:08

投稿元:ブクログ

2015/12/02
静かな小説だった。
あらすじにしてしまうと何てことはない、一人の男の人生をなぞっただけの作品。
なのにどうして、早く先を読みたいと思うんだろう。
美しい日本語訳も、素晴らしい。

2015/08/08 21:57

投稿元:ブクログ

平凡な大学教師ストーナーの一生.
みなさん大絶賛なので,なかなかこういうことは言いにくいが,はっきり言って読むのはかなり辛かった.結婚の失敗,妻との軋轢・不和,子供との断絶,職場での同僚との軋轢,嫌がらせ,こういう事が,世の中によくある事でそれをうまく書いているなぁと客観的に感心できればいい.私はそれほど人生に余裕がなく,かなり滅入ってしまった.それがこの小説の力だと言えばそうなのだが,
元気のないときに読んじゃだめよ.

2016/02/17 15:45

投稿元:ブクログ

「訳者あとがきにかえて」まで含めて1冊の本として素晴らしい。
人生はままならないものだ(ままならなくしているのはストーナー自身であるとしても)ということを淡々と語っていく。
それでも、必要以上にあらがわず、多少もがきながらも受け入れ、あきらめ、生きて死んでいく。人間の人生はもしかしたらみんなこんなものかもしれない。

2016/12/10 10:20

投稿元:ブクログ

美しい本。
ストーナーの文学に対する恋が、自分自身とその周辺に対する受け身な姿勢と対比され浮かび上がる。

2017/03/01 22:13

投稿元:ブクログ

この本がいかに素晴らしいかは、巻末の解説だったり、背表紙とか帯の賞賛に書かれているので割愛(これが本当にその通りだからすごいのだが)。

割愛と言いつつ、以下内容紹介より引用。

”これはただ、ひとりの男が大学に進んで教師になる物語にすぎない。しかし、これほど魅力にあふれた作品は誰も読んだことがないだろう。――トム・ハンクス

半世紀前に刊行された小説が、いま、世界中に静かな熱狂を巻き起こしている。
名翻訳家が命を賭して最期に訳した、“完璧に美しい小説"

美しい小説……文学を愛する者にとっては得がたい発見となるだろう。――イアン・マキューアン

純粋に悲しく、悲しいまでに純粋な小説。再評価に値する作品だ。――ジュリアン・バーンズ

『ストーナー』は完璧な小説だ。巧みな語り口、美しい文体、心を深く揺さぶる物語。息を呑むほどの感動が読む人の胸に満ちてる。――「ニューヨーク・タイムズ」”

この本がどんな本か、というと、
「一人の男が大学で教師になり、死ぬまでの話」である。ほんとうにそれだけ。こんなプロットで面白いわけがない、と思われる方は多いかもしれないが笑

作中に常に漂っているのは靄のような悲しみの空気。ストーナーは悲しみに対し、ただひたすら耐え続けるのである。死ぬまで。

イギリスの作家、ジュリアン・バーンズは以下のように書いている。
「文学的な悲しみではなく、もっと純粋な、人が生きていくうえで味わう真の悲しみに近い。読み手は、そうした悲しみが彼のもとへ近づいてくるのを、自分の人生の悲しみが迫りくるように感じとる。しかも、それに抗うすべがないことも承知しているのだ」。
彼女が書いているように、悲しみの生々しさが、読み手の経験にものを言わせる性質であるが故、感情をもっていかれる。

ものすごく悲しい小説であるが、いや、悲しいがゆえに、自分にとっては人生の糧となる小説だ。

2015/07/05 19:07

投稿元:ブクログ

何か謎に満ちた得体の知れない出来事に巻き込まれるとか、特別スリリングな出来事が起きるというわけではなく、むしろ平凡な出来事が淡々と続くのですが、小説の世界に否応なくひき込まれて、ページをめくる手が止まらなくなる、そんな本です。
 本書のあとがきに詳しく書かれていますが、本書がアメリカではじめて刊行された1965年には一部の愛好家に支持されたものの、大きな評価を受けることなくやがて忘れ去られてしまったそうです。
 2006年に復刊されたときもアメリカでは多くの読者を獲得できなかったそうですが、数年後フランス人作家アンナ・ガヴァルダがこの小説を読んで感動し、翻訳したところフランスでベストセラーとなり、評判が広がってオランダ、イタリア、イスラエル、スペイン、ドイツで訳本がベストセラー入りし、ついにはイギリス、アメリカでも人気に火がついて、アマゾンでわずか4時間の間に一千部以上を売り上げるという驚異的な記録を叩き出したそうです。
 どんな話かというと、帯に書かれたトム・ハンクスの言葉どおりで「これはただ、ひとりの男が大学に進んで教師になるという物語にすぎない」といえます。
 訳者が述べる通り「平凡な男の平凡な日常を淡々と綴った地味な小説」です。ですが「そこがなんとも言えずいい」のです。日本語訳の文章も非常に優れていて、いかにも翻訳しましたといった不自然な表現は一切なく、訳者の本作に対する愛情が心に染みてくるような良い文章です。
 本好きな人には読んでほしい、そんな本です。

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