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2015/01/06 12:50

投稿元:ブクログ

まるごと、ホッキョクグマ。研究者と写真家による、ディープで楽しい1冊である。

近年の研究結果と併せて、豊富な写真でこの魅力的な肉食獣を追っている。ホッキョクグマについて何がわかっているか、同時に何がわかっていないかを記載する、真摯で科学的な態度に好感が持てる。ホッキョクグマ研究のこれまで、今、そしてこれからを感じさせる。写真からは、堂々たる成獣の迫力と子グマの愛らしさ、極地の自然の厳しさが存分に味わえる。
ホッキョクグマ研究者でなくては気づかないようなクマの生態に関わるこぼれ話や、クマと共に生きる人々にとって、ホッキョクグマがどのような意味を持つのかといった民俗学的なエピソードも興味深い。そういう意味では、学術的でありつつ、読み物としても十分楽しい。
監訳者も研究者であり、各章の翻訳を何人かで分担している。幾分、生硬に感じる箇所もあるが、科学的に正確であることが担保されている点は安心して読めると言ってよいだろう。

ホッキョクグマの生息域として、地球を北のてっぺんから見た地図が頻出する。見慣れないからはじめは少し戸惑うのだが、なるほど、カナダとロシア・ノルウェーは、グリーンランドを挟んでこのように近いのか、ということに思い至る。アメリカ大陸とユーラシア大陸、2つの大きな陸地に囲まれる地域に、ホッキョクグマは住んでいる。

ホッキョクグマは約100種いる海生哺乳類の1種である。このうちの食肉目には、ホッキョクグマをはじめ、アザラシやアシカ等が含まれ、いずれも水陸両生である。
ホッキョクグマで特筆すべきはなんと言ってもその大きさで、大人の雄では800 kgを超えるものもいる。一方で生まれる子供は親に比べると非常に小さく、0.7 kg程度である。これは母グマの0.2~0.3 %でしかない。驚くべきことだが、母グマは絶食期間中に出産と子育てを行う。交尾は通常、春。そこからせっせと採餌に励み、体脂肪を蓄える。秋から初冬に掛けて、母グマは巣穴を掘り、長い冬を巣に籠もって過ごす。外に出られないまま、出産し、授乳を行う。冬籠もり前に体脂肪を十分に蓄えることができなければ、生まれた子グマは栄養不足で死んでしまうことになる。母グマはその厳しい条件の中、通例、2頭の子グマを産み、育てる。無事、春を迎えられると、母グマは子グマを連れて海に向かい、狩りをし、子グマに授乳しながら、2歳半で子供が離乳するまで育て上げる。

ホッキョクグマは極端な性的二型を取る。オスとメスの大きさが著しく違うのだ。大きなオスほどメスと交尾できる可能性が高くなる。メスを巡るオス同士の戦いは非常にシビアで、犬歯が折れることもある。たいがいのオスは多くの傷を負っている。研究者は傷で個体識別することもあるという。

寒冷地に住むものならではの特徴も多い。
被毛は中空になっており、天然の断熱材として働く。換毛期は5月から9月。換毛期を迎えるまでは、毛は伸び続ける。一方で、子グマの毛はふわふわで短く、長期間は体温を維持できない。子グマを連れた母グマは子グマが泳がなくてよいように気を配る。
ホッキョクグマの耳や目は小さい。厳しい外気に当たり、凍��や雪盲の可能性を抑えるためである。大きな体に小さな目や耳という外見は、ホッキョクグマの見た目の魅力を増している。

こうした興味深いクマの生態を追う研究者たちは、ヘリコプターでクマの足跡を探しては、行方を追いかける。蛇行する足跡を追うヘリで乗り物酔いを起こしつつ、運良くクマに行き当たれば麻酔銃を撃ち、タグを付ける。狩りの痕跡を見つければサンプルを収集する。厳しい天候に阻まれることも多く、また対象が大型肉食獣であるため、危険は付き物である。
野生動物の調査に当たる際には、介入しすぎて本来の行動が損なわれるようなことがあってはならないし、かといって近づいていかなければまったくわからないこともある。相手が凶暴である可能性があり、また周囲に身を隠すものがない氷の世界であることも困難に輪を掛ける。
総じて、ホッキョクグマの研究者には、辛抱強さが必要という。

北極圏に住む人々にとっては、ホッキョクグマは大きな存在である。神話や伝承も多く、イヌイットには特に豊富である。毛皮はもちろん、骨もフォークや矢じりなどの道具を作るために用いられてきた。肉の分配には慣習があり細かい決まりがある。
おもしろいこぼれ話としては、肝臓に関わるものがある。イヌイットなどには、ホッキョクグマの肝臓を食べると「ひどい目に遭う」という言い伝えがある。20世紀初頭、デンマークの探検隊グループも、実際に、肝臓を食べて吐き気やめまい、下痢などの「ひどい目」に遭った。その後の研究により、これはビタミンA過剰症のためであることがわかった。ホッキョクグマの主要な餌であるアザラシは多くのビタミンAを持つ。動物では、ビタミンAは8割方が肝臓に蓄積されるため、ホッキョクグマの肝臓を食べるとこうした症状が出たのだという。ビタミンA、取りすぎはよくないのですねぇ・・・。

近年、ホッキョクグマを脅かすのは、多くは人為的な環境変化である。
スポーツハンティングといった狩猟で狩られ、大気汚染・水質汚染のために免疫系や神経系に異常を持つものが見られ、また多くはないが観光で生態を乱される例もある。石油掘削などの資源開発も北極圏に及んでいる。ホッキョクグマは頂点捕食者であり、食物連鎖の上方にいるため、汚染物質が蓄積しやすい。また、子グマの場合には、母グマの乳から汚染物質が伝達されることになる。結果、体の小さい子グマに高濃度の汚染物質が蓄積されることもある。
何よりも著者が懸念しているのは、地球温暖化の影響である。海氷が融ける時期が早まり、母グマが早めに陸地に上がる傾向が増しているという。海氷域が小さくなり、餌のアザラシが少ない地域のみに氷が残るような事態になれば、クマは生き残ることが困難になる。

ホッキョクグマを守るためにも、まず、多くの人にこの魅力的なクマのことを知って欲しい。
それが著者のねらいであり、本書はそのねらいを満たすには十分な1冊と言えるだろう。

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