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みんなのレビュー6件

みんなの評価4.6

評価内訳

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6 件中 1 件~ 6 件を表示

紙の本

遂に完結! 最後は雑誌を巡るのだ。

2015/08/24 17:55

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ef - この投稿者のレビュー一覧を見る

荒俣宏編による「怪奇文学大山脈」も本巻をもって完結します。
 このシリーズ、荒俣氏による冒頭の解説がなかなか充実している上、巻末の作品解説もかなり読ませるという構成になっています。
 それぞれの巻の「狙い」が冒頭の解説で明らかにされているわけですが、最終巻の本巻では怪奇小説が掲載された雑誌を中心に考察されています。
 怪奇小説を掲載する雑誌ですから、かなり俗悪な物が多かったのは事実なのですが、だからこその面白さがあるのだと言います。

 さて、この雑誌についても系譜がありまして、荒俣氏なりの分析によりそれを追っていきます。
 最初は、イギリスの雑誌から入ります。
 「ザ・ブラックウッズ・エディンバラ・マガジン」、「ストランド・マガジン」、「ジ・アーゴシー」などの雑誌を紹介しつつ、それぞれの特色を論じます。

 次に見るのはドイツの雑誌です。
 「パン」、「シンプリチシムス」、「デア・オルキデーンガルテン」などの雑誌と、これらの雑誌に掲載された作家が紹介されていきます。

 そして、いよいよ出てくるのがパリの「グラン・ギニョル」です。
 これは雑誌ではなく、劇なのですが、これが残虐な血みどろ劇なのですね。
 1897年にモンマルトルの近くに「グラン・ギニョル劇場」が建ち、そこでもっぱらこのようなショッキングな劇が上演されていたのです。
 劇があるということは、その台本があるということです。
 アンドレ・ド・ロルドらの、グラン・ギニョル劇の台本が取り上げられています。

 そして最後に紹介されるのがアメリカのパルプ・マガジンです。
 劣悪な紙に扇情的な小説を掲載し、安価で売ったのがパルプ・マガジンというわけです。
 「ダイム」、「ホラー・テールズ」、「スパイシー」系、「アン・ノウン」そして極めつけ「ウィアード・テールズ」などなどの雑誌が氾濫しました。
 各雑誌によりそれぞれ特色があり、SMチックな作品を多く掲載するもの、エログロに徹し、検閲を逃れるため、検閲済みと未検閲の2ヴァージョンを発刊したもの、SFテイストを取り入れたものなど、様々でした。

 さて、本巻はこの様な雑誌を飾った代表的な作品を本編で取り上げてくれているわけですね。
 毎回書いているように、非常にマニアックなセレクトで、他のアンソロジーでは見たことがないような作品ばかりです。
 このジャンルがお好きな方は是非読まれると良いと思います。

 何よりも、非常に気になる記述もあることですし。
 それは、「おそらく本書は、私が西欧の怪奇小説史について真摯に語る最後の機会になると思われる。」と、荒俣御大が述べているのです。
 そんな……最後だなんて、と思うのですが、ご本人がそこまで書かれるのにはそれなりの理由があるのでしょう。
 その意味からも、このシリーズは見逃すわけにはいきません。
 この手の本は、油断しているとあっという間に絶版になってしまいます(私もこれまでに何度も泣きました)。
 興味をお持ちの方は、今の内に是非入手しておくことをお勧めします。

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紙の本

作品は無論だが、丁寧な前書きと手厚い作品解説が何より貴重な資料となる三巻。

2015/02/10 11:14

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:abraxas - この投稿者のレビュー一覧を見る

このシリーズも三巻目。副題に「西洋近代名作選 諸雑誌氾濫篇」とあるとおり、二十世紀の西洋怪奇文学を広く雑誌に渉猟したものである。70年代に日本でも怪奇幻想文学がブームを呼び、夢野久作や久生十蘭、小栗虫太郎などの作品が次々と復刊され、読み漁った。もっと他にないのか、と「新青年」の復刻本にまで手を伸ばしたが、ここに集められたのは、その種本にあたる本家本元の西洋の雑誌に寄せられた刺戟的な娯楽小説が中心である。

二巻目が、教養に恵まれた富裕層に向けられた作品の系譜をたどったものとすれば、本書は大衆向けの興味本位の扇情的な、俗にいうパルプ・マガジン等から拾い集めたものである。編者である荒俣宏が前書きにそう書いているのだからまちがいない。もともとこのシリーズ、世に埋もれた傑作、快作を紹介しようという編者の意図から編まれたもの。知ってのとおり、荒俣は該博な知識と資料の蒐集にかけては現代日本において他の追随を許さない第一人者である。

怪奇幻想文学と一口にいっても、上はヘンリー・ジェイムズの幽霊譚から、下はエロ・グロ・ナンセンスに溢れた大衆娯楽小説まで、その範囲は広い。ゴシック・ロマンスやE・A・ポオのように定評のある作品は、すでに紹介済みで、今更編者が手がけるまでもない。そこで、彼が目をつけたのが、安価で大量に流布され、使い捨てられた大衆誌に載った作家、作品である。ネーム・バリュウのある作家もいれば、日本では無名といっていい作家もいる。ただ、それらの果たした役割は大きい。

どんなジャンルであっても、それが世に出て、認められるまでには時間がかかる。淘汰され、名作、傑作と称される作品が掬い取られるまでに、目の荒い網からこぼれ落ちた銘品、佳品も数あるにちがいない。それを紹介せずにはおかない、という心意気が感じられるこのシリーズである。粗悪な紙質のパルプ雑誌を現地で買い漁るだけでなく、時間をかけ欠本を探し集めることで、発表当時の表紙画や挿絵、イラストまで大量に紹介できる強みが荒俣にはある。全巻所収の丁寧な前書きと手厚い作品解説が今後の研究者に寄与する何より貴重な資料となるだろう。

前置きにあるように、作品自体の質はそう高くない。フランスのグラン・ギニョル劇の戯曲や、そこから起こした小説、アメリカのパルプ・マガジンで量産された小説が中心なのだから、そこは仕方がない。そんななか、ヒッチの映画にもなった『三十九階段』の原作者ジョン・バカンの「アシュタルトの樹林」は、さすがに風格がある。南アフリカに邸宅を構えた旧友を訪ねた語り手が、変わり果てた旧友の秘密を探り当てると、小さな樹林の中に古い神を祀った神殿があった。ジンバブエの円錐神殿を完璧にしたような石造りの塔。キリスト教以前の太古の神々といえば、ラブクラフトが有名だが、それとは一味ちがった繊細な趣きに心惹かれるものがある。

アメリカのパルプ・マガジン系にもなかなか読み応えのある作品が選ばれているが、なかで一つ選ぶとすれば巻末に置かれたM・E・カウンセルマンの「七子」か。黒人奴隷の一家に生まれた七番目の女の子は、なぜか皮膚の色が白かった。悪魔の子といわれ、納屋に放置され、名前もただの「七子」とされていたところを、雇い主が知り、それがアルビノであることを教え、普通の暮らしに戻るが、彼女には他の子にはない力が備わっていた。アフリカン・アメリカンのルーツを感じさせるブードゥーの呪いがとんでもない悲劇を捲き起こす。幼い少女を主人公とするなら、これしかないだろうという「ひねり」と、静かな癒しを湛える結末が余韻を残す佳品である。

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2015/02/10 11:00

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2014/09/08 21:11

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2014/12/22 03:33

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2014/11/13 15:08

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