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深沢七郎氏のデビュー作「楢山節考」の他、初期の短篇を収録した貴重な一冊です!
2020/08/16 10:49
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、『笛吹川』や『人間滅亡の唄』、『百姓志願 都会を離れた自由人の日記』、『庶民烈伝』、『人間滅亡的人生案内』といった名作を次々に発表されてきた深沢七郎氏の作品集です。深沢氏と言えば、何と言ってもデビュー作である『楢山節考』が有名です。この作品は、当時、辛口の批評家として知られた正宗白鳥氏をして「人生悠久の姿がおのづから浮かんでゐる」と言わしめた作品でもあります。同書は、そのデビュー作をはじめ、その他の初期短篇、中央公論新人賞「受賞の言葉」、伊藤整氏、武田泰淳氏、三島由紀夫氏による選考後の鼎談などが収録されています。文壇に衝撃をもって迎えられた当時の様子を再現した一冊です。
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昔はよかったというのは本当か
2019/01/27 20:34
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
作者は日本の古くからの暗部を小説という形で抉り出す。「楢山節考」は役に立たなくなった老人(この作品では70才)を山に捨てにいくという風習。山に捨てられた老人は自ら命を絶つのであろう。この作品のおりんは、口減らしのためのこの因習を家のためにと受け入れている。もちろん、「いやだいやだ」と抵抗する老人もいる(この人は息子に谷底へ突き落とされた)。望まれずに生まれた子供は、売られるか、すぐ殺される。古い日本に「あのころはよかった」と話を盛って、思いをはせるのは個人の自由だろうが、貧しい日本には当たり前の光景だったのだろう。同じく、余分な存在「東北の神武たち」の”くされ”君の哀れさも筆舌しがたい
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民俗学の物語性としてもおもしろい
2015/12/18 11:31
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投稿者:アトレーユ - この投稿者のレビュー一覧を見る
表題作は、簡単に言うと、姥捨て山のお話。他にも、当時は人口の大多数であった地方の下層民たち、そこに口承で伝わる歌や躍りなどの民俗的なものも加えて、土着の日常を描いている作品群。予想外に端正な文章だった。こうゆうの、すごく好き。「一生懸命生きている」からって清廉潔白・聖人君子なわけはなく。嫉妬、盗っ人もいれば、親を思う子の気持ち、子を思う親の気持ち、いろんな思いが日常の中を渦巻いて流れていく。それを垣間見れる小説って滋味があっていいなぁと思う。
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表題作の二つは再読。この二つの他に、初期短編、「楢山節考」の戯曲バージョン、中央公論新人賞受賞時の深沢の短文や選考委員の講評などが収められている。
「楢山節考」をかなり久しぶりに再読しながら思ったのは、自己(主人公)が運命を、共同体の「掟」を、他者のまなざしを受け入れながら、静かに自-死するというテーマ。自死のテーマは深沢はその後あまり直接的には取り上げていないため、それが最も鮮烈なこの作品が、やはり代表作ということになるのだろう。
この、他者のまなざしのもとで慫慂と死を受け入れるというテーマは、そういえば、カフカのものである。深沢はカフカとは全くちがうコンテクストに乗せて、同等の自-死に至る境地に到達している。その心理的経過は民俗的な、個と集団とが分離しきらないいかにも日本的な世相に基づいており、深沢はそれを「庶民」の世界として敷衍的に書き続けた。「死」への視線は、「人類滅亡教」という少々ふざけたノリに紛らせて、戯作的な方向に進んだ。
私は彼のそうした戯作的方向が好きだ。カフカ的シビアさはときに見えにくくなるが、それでも、どこかで「死」の主題が見え隠れしているはずだ。
新人賞の選考委員として鼎談しているのは伊藤整、武田泰淳、三島由紀夫。この得体の知れない新人作家を、彼らはそれぞれのコンテクストに引き寄せて理解しようとしているが、成功していない。特に三島由紀夫は深沢の芸術的洗練の無さを嫌がっているようだが、三島の「インテリジェンス」は、深沢文学の不気味な輝きの前では哀れなくらいだ。若干似たところのある不気味さを有する泰淳も、ちょっと見当外れな発言をしている。
悪文で、近代的小説としての芸術的洗練とは全くかけ離れた深沢文学の衝撃的な魔力は、何冊読んでも、いまだにその全容を明らかにされていないように思える。
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古き良き日本の姿形がこういう文化だったら、私は今のほうが確実に良いと思う。老人捨てられてるし。フィクションとして読む、この収録物語自体は好きです。でも余韻をぶち壊す外野の解説等が後半多すぎるよ。
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楢山節考を初めて読んだ。
これに限らず、本書に収められている短編から、日本の暗闇があった時代が、質感と共に目の前に浮かぶ作品である。
こうした時代を経て、僕らは無機質な部屋にいるのだと実感する。
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本当は風流夢譚が読みたかった。
話自体はなんだか後味悪く怖い
むしろ、巻末の三島や武田の対談が面白い
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癌を告知された母は生きることに執着せず、淡々と準備して旅立った。その潔さを思い出すたびに死に直面した人の心の中はどうなんだろうかと思っていた。
おりんは病んでおらず、逆に歯を折らないといけないほどに丈夫だった。死に直面していたわけではなく、自ら選んだと言える、何のために?家族のため?生きて迷惑をかけることを案じた自分のため?
どんな状態になっても生きていける社会を作っていきたい。
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古典としてよくとりあげられる。今回、読む機会を持った。内容は姥捨て山と思ったら、それはそうもあるけどそれだけではなかった。三島も絶賛している。もっと早く読めばよかったと思う。
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今までにない読書体験だった。
深沢七郎は、言わなければよかったのに日記を読んで、楢山節考を読まなきゃとおもい、古本屋で購入。
エッセイに度々出てきていたおりんという人物、なんだろう、昔話のような曲調で日本人としての思想の核の部分を歌詞にしかけているのにもかかわらず、満足感はない、歌詞の足りていない音楽、のような…。
深い部分もあるのだが、欠けている部分もある、それが掴みきれない魅力なのか。
油断したら終わってる、これがいい余韻が残るわけではない。
本人が元々ギターをやっていたのは知らなかった。
なんだか掴みどころのない変わった人なのか、深沢七郎。
後半のいろんな解説がとてもおもしろかった。