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みんなのレビュー10件

みんなの評価4.7

評価内訳

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10 件中 1 件~ 10 件を表示

紙の本

デスクワークの政策家に

2015/09/30 15:26

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:タヌ様 - この投稿者のレビュー一覧を見る

刺激的なタイトルであり、経済政策の当事者にとってみれば、国民にご負担を願うとか辛抱をお願いするといった政策が、人の死につながるということを前提にしているのだと語っているのである。
経済学も抑制的な社会保障支出や景気抑制策の枠組みにも死亡例を前提にしてはいない。
公衆衛生学という学問に対する無知であったことなのだろうか、冷静に考えれば、独立事業者や失業の結果、何らかの疾病が同時期に生じれば、一時的8貧困あるいは悪化によって十分な医療を受けられず、結果死亡に通じるのはありうることなのだ。もちろん、これを因果関係と捉えるべきか、十分条件の一つであり、必要条件ではないと考えることもできる。
著者は実例のデータの積み重ねより実態はそう考えるべきではない、因果関係と捉えるべきではないかとの主張であり、説得力がある。
デスクワークの政策作りの人たちに沈思黙考も機会を与えるものである。

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2017/03/11 00:13

投稿元:ブクログ

公衆衛生学の観点から経済政策を分析し、社会経済政策の健康への影響について論じている。政策について語る際には、その経済的効果だけではなく、人間への影響にもしっかり目を向けるべきであるというスタンスである。
本来、医療の世界では、薬や治療の効果を評価するために大規模なランダム化比較試験が行われているが、社会経済政策となると、そのような実験を行うのは現実的ではないので、研究対象にしたい状況にきわめて似た状況を過去の歴史のなかから探してくる方法である「自然実験」を利用して、研究を行っている。具体的には、1930年代の大恐慌時のイギリスとアメリカの対応、ソ連崩壊後のロシアとポーランド、アジア危機時のタイとマレーシア、欧州危機時のアイスランドとギリシャなど、同じ不況に巻き込まれた地域で、異なる為政者が異なる政策を実施した事例について比較検討している。
その上で、不況下での緊縮財政は景気にも健康にも有害であると結論づけ、社会保護政策への投資など、賢明な選択をすれば、人命を犠牲にすることなく経済を立て直すことができると主張している。
自分自身はどちらというと財政健全化論者だが、著者たちの研究結果とそれに基づく主張には首肯せざるをえない。経済政策は、経済成長や財政だけではなく、国民の生死、健康に関わるものだということを強く感じた。政策に携わる者に大きな示唆を与える本である。

2015/12/28 13:49

投稿元:ブクログ

タイトルの答えは予想通り。人々の健康は経済政策に左右され、不況下の経済政策の失敗は健康にとって有害。

著者の指摘は以下の通り
1. 有害な方法は決して取らない
2.人々を職場にもどす
3.公衆衛生に投資する

まあ結論は普通だ。

2016/01/06 16:27

投稿元:ブクログ

緊縮政策は人を殺す。不況でなく、不況への対策が人々の幸不幸を左右する。不況時にいわゆる医療、教育、福祉へのバラマキ政策がいかに大事か。銀行への資金注入、軍事費を減らさないことが役に立たないか(効果乗数が1より小さい)。定性的に結論は分かった。欲を言えば、定量的な推定値(1カ所だけ終章にあったが)が知りたくなった。

・ポーランドの例を見れば明らかなように、民営化そのものが悪いわけではない。問題は民営化のスピード。
・医療に市場原理を導入すれば効率的になるわけではない。アメリカの医療制度は多くの人を締めだしてきたが、アメリカの保健医療支出はどこの国よりも多い。
・医療サービスでは失業による自殺リスクを大幅に下げることはできない。失業手当も。ALMP( 《Active Labor Market Policy》積極的労働市場政策)のみ効果あり。
・緊縮政策は一種の経済イデオロギーであり、小さい政府と自由市場は常に国家の介入に勝るという思い込み。

2015/03/15 22:06

投稿元:ブクログ

最近、読んだ本では1、2に上げられるほど面白く、一気に読みきった。翻訳もこなれており、読みやすいというのもあった。不況下で財政緊縮策か財政刺激策かという選択において、健康に対する影響を疫学的に明らかにした本である。結論は財政緊縮策を取った国は、健康も悪化する上に、経済成長もしないということである。アイスランドとギリシャの比較で詳述されている。しかし、世界の保守勢力の人達は財政緊縮策にこだわる。それを、「緊縮政策は一種の経済イデオロギーであり、小さい政府と自由市場は常に国家の介入に勝るという思い込みに基づいている。だがそれは社会的に作り上げられた神話であり、それも、国の役割の縮小や福祉事業の民営化によって得をする立場にいる政治家に都合のいい神話である」と、喝破する。危機に際してほど、民主主義が求められ、そのためには裏付けがありそして根拠のある政策を見る目が必要である。そのためには私達自身が信頼できるデータを学ぶことが大事であろう。日本の現在の政策は世界的な潮流であるが、その結末は他の国の結果や歴史から明らかであろう。

2015/01/11 16:17

投稿元:ブクログ

結論はすでに帯に書いてあるが、福祉や衛生に支出をしなかったり、不況下で労働者保護をおこなわなかった国は、死亡者が多かったことを、ここ近年の主要国のデータをもとに分析したもの。

でも、よく考えたら、いまのように社会福祉や衛生に対する国策がなかった中世では、飢餓や病気での死者が多かったのだから当然ともいえる。

2016/07/13 14:42

投稿元:ブクログ

不況下における緊縮政策が、いかに危険なものであるのかよく分かる。日本においても、消費税の5%の引き上げにより、自殺者3万人越えとなった。当時の政策担当者は、どのような責任をとったのであろうか。

2015/09/06 10:56

投稿元:ブクログ

原著題名は「The Body Economic Why Austerity Kills」。

公衆衛生学的な観点、つまり人の命をはじめとする健康アウトカムに着目して、経済政策がどのような影響を与えるかについて解説した本。

不況時に緊縮財政か財政出動か(特に公衆衛生施策への予算)の取り扱いによって国民にどのような影響を与えるのかについて豊富なNatural experimentの結果をレビューしている。

結論から言えば、少なくとも公衆衛生的には予算を削ると人の健康は損なわれ、それは長期的な視座では経済成長に影響を与えるということのようだ。

不況時には当然どこから予算を削るか、という話になるが、政府支出乗数という考えに基づいて取捨選択がなされるべきだろう。

乗数の求め方が議論になるだろうが、経済イデオロギー(小さい政府はすばらしい、国営は非効率であり民営の方が素晴らしい、市場経済が最も効率的だ、等々)で政策を決定されるよりは、統計学者W・E・デミングが言う「神の言葉は信じよう。だが、それ以外の者は皆データを示すべきだ」にあるよう、数字に主に基づいた政策決定が求められるだろう。

ロバート・ケネディによる半世紀前にされた、経済成長に対する盲目的な崇拝に対する風潮は、現代では以前にもまして、響くのではないだろうか。
「わが国のGNPはすでに8000億ドルを超えています。しかしこのGNPには-アメリカ合衆国をこのGNPで評価するというなら-このGNPには、空気汚染や、たばこの広告や、高速道路で多発する事故の犠牲者を搬送する救急車といったものも含まれているわけです。治安悪化で必要になった特殊な鍵や、それをこじ開けようとする犯罪者を収監する刑務所の費用も含まれています。無計画な都市開発で伐採されたアメリカスギや失われたアメリカスギや失われた自然も含まれています。ナパーム弾も、核弾頭も、暴動鎮圧用の装甲車も含まれています。子どもたちにおもちゃの銃を売るための、暴力シーンだらけのテレビ番組も含まれています。
ところがそのGNPは、子供たちの健全な教育を発育を促したり、教育の質を高めたり、遊びの楽しさを教えたりすることには役立っていません。GNPには詩の美しさも、結婚の絆の深さも、討論会で披露される知性も、公務員の誠実さも含まれていません。わたしたちの機知も、勇気も、知恵も、学識も、思いやりも、国への忠誠心も勘定には入っていません。要するに、GNPという数字には全てが含まれているようでありながら、実は人生の価値を高めるものは含まれていないのです。この数字はアメリカのすべてを教えてくれるようでありながら、わたしたちがなぜアメリカを誇りに思うかについては何も教えてくれません。」

内容の各論は以下のとおり。
・ソ連崩壊後のアルコール乱用とメンタルイルネスによる若年者の自殺率の上昇
・アジア通貨危機における各国の対応による健康被害の差異(インドネシア・タイとマレーシアの違い)。マレーシアでは「貿易を伴わない為替取引」こそ通貨危機の原因だと述べ、これを「不要、非生産的かつ不道徳的なもの」と断じ対ドルレートを固定し、政治圧力に屈せず国内��済を保護した。
・アイスランド危機の顛末(民間銀行の破たんの補償を国民が行うことを拒否し、健康被害を抑えた)
・ギリシャの顛末(IMFやEUの緊縮財政策を飲み、悲惨なことに)
・米国フォークロージャー危機時の状況(ウェストナイル熱の流行等、基本的な衛生インフラの整備がなされなければ大変なことになるというエビデンスに。また、借金の担保として、持ち家を差し押さえたところで結局家の価値自体が下がっているのだから意味ないのではないいか。家がなくなることの悪影響(本人にもそうだし、それによって社会に与える負担)を考えると何が何でも家を差し押さえてもデメリットの方が勝るように思われた)
・失業への対策について。単なる詩行手当よりは、北欧諸国が行っている積極的労働市場政策(ALMP)が日本でも必要だろう。労働科学的にもそうだろうし、就業への積極的な支援が、ソーシャルキャピタルなどの構築につながり、公衆衛生学的にも効果的だと感じた。
・家を失うとどうなるか。家を失うことによる個人への影響と社会への影響が書かれている。個人の責任に帰することは簡単だが、そうすることで社会が支払うコストも総合的に考えて、債務者や病人、貧しい人への政策をするべきだろう。

全般的に、マクロの指標について、国家間もしくは経時的に分析を行った研究の概説がなされている。マクロ指標であるので、必ずしも直接的な因果関係が示すことができているわけではないが、豊富なデータがその欠点を補い、比較的robustな結果になっているのではないだろう。参考文献が膨大であり、全てにあたることはできないがとてもおもしろかった。

緊縮財政を飲み、財政支援を受けたところで、それが国民を救うのではなく、債権者保護にしかなっていないという思いを強くした。
債権者保護をしなかった場合の経済影響はもちろん大きいのだろうが、基本的に投資は投資したものが責任を負うべきで、「too big to bankrupt」というのは考えものだと思う。国民全体で負担するにしても、債権者が最も痛みを負うべきだろう。

※参考文献の記載に一部誤記あり。(例えば、結論の6の論文はHealth Policyではなく、Global Healthに掲載されている)

2014/12/16 22:10

投稿元:ブクログ

原題:THE BODY ECONOMIC

草思社 
http://www.soshisha.com/book_search/detail/1_2086.html


David Stuckler
公衆衛生学修士、政治社会学博士。王立職業技能検定協会特別会員。イェール大学、ケンブリッジ大学、オックスフォード大学などで研究を重ね、現在、オックスフォード大学教授、ロンドン大学衛生学熱帯医学大学院(LSHTM)名誉特別研究員。著書にSick Societies: Responding to the Global Challenge of Chronic Diseaseがある。オックスフォード在住。

Sanjay Basu
医師、医学博士。オックスフォード大学大学院にローズ奨学生として学ぶ。現在、スタンフォード大学予防医学研究所助教、また同大学にて疫学者として従事。サンフランシスコ在住。

橘明美
英語・フランス語翻訳家。お茶の水女子大学文教育学部卒。訳書にチャールズ・マレー『階級「断絶」社会アメリカ』、ユベール・ヴェドリーヌ『「国家」の復権』(ともに草思社)、マイケル・ラルゴ『図説 死因百科』(紀伊國屋書店)ほか多数。

2017/01/25 14:16

投稿元:ブクログ

大不況に於ける経済政策が、人の生命にどのような影響を与えるのか、実際に起きた具体例を基に公衆衛生学からわかりやすく分析をした一冊です。主として緊縮政策で公共支出を削減したことで起こる様々な人々に対する弊害を例として挙げています。難しい経済用語は殆ど無いので、とても分かりやすく読みやすい本でとても為になりました。

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