サイト内検索

詳細検索

送料無料(~12/31)

1,000円以上の注文で3%OFFクーポン(1209-15)

hontoレビュー

仮面の商人(小学館文庫)

仮面の商人 みんなのレビュー

文庫

予約購入について
  • 「予約購入する」をクリックすると予約が完了します。
  • ご予約いただいた商品は発売日にダウンロード可能となります。
  • ご購入金額は、発売日にお客様のクレジットカードにご請求されます。
  • 商品の発売日は変更となる可能性がございますので、予めご了承ください。

みんなのレビュー0件

みんなの評価0.0

評価内訳

  • 星 5 (0件)
  • 星 4 (0件)
  • 星 3 (0件)
  • 星 2 (0件)
  • 星 1 (0件)
2 件中 1 件~ 2 件を表示

2015/01/12 10:36

投稿元:ブクログ

 フランス屈指のベストセラー作家、アンリ・トロワイヤが1993年に発表した『仮面の商人』。第一部の舞台は1930年前後のパリ、主人公は新人作家のヴァランタン。県庁に勤めながら、仕事中も上司の目を盗んで原稿を書いている。上司のフィルティエ女史は、彼になかばあきれつつも、宿題をしない息子をしかる母親のように接している。2,3日に一度はペリュランという学生時代の友人と食事をする。美食と昇進にしか関心がない俗物だが、ヴァランタンには、友人と言える人物がほかにいない。兄・ジョルジュはうぬぼれが強く、弟の気の弱さや純潔を嘲笑っている。作家としての第一作は、売れるどころか、文学界の話題にすらならない。
 そんな鳴かず飛ばず、四面楚歌のヴァランタンの前に、ミューズが現れる。とあるパーティで知り合った裕福な年増の女性・エミリエンヌは、彼の理解者となり、文学上のアドバイスを与え、さらには年齢差を越えて男女の関係を結ぶ。ところが幸せは長く続かなかった。子を身ごもったエミリエンヌは彼との関係を清算し、別の男と結婚するというのだ。ヴァランタンは、かわりに頭がからっぽのお針子・コリンヌとつき合うが、心は満たされない。失意のヴァランタン……第一部は彼の死をもって閉じられる。
 1992年へと時代を移した第二部、語り手はヴァランタンの甥であるアドリアン。ヴァランタンは〈生前は夢にも思わなかった名声を、死後に博し〉ている。アドリアンは叔父の伝記を書こうと、すでに高齢者となっている関係者にインタビューを重ねる。ここで語られる証言に、読者は驚かずには居られない。さらに、アドリアンは第三部で決定的な決断を迫られることになるのだが……。
 記憶は自分の都合のいいようにねつ造される。50年以上も前のことを思い出して証言する老人たちは、どこまで真実を語れるだろうか。資料を集め、記録をもとに、客観的な記述を心がけたと伝記作家は言う。しかし、物語として都合の悪い事実が見つかった場合、彼はどうするだろうか。そもそも文学的な評価とは何に基づいているのだろうか。私たち読者が「真実」と思い込んでいるものの正体はなんだろうか。トロワイヤは、この作品の発表当時、80歳を越えて老境にある。そして小説家としてだけではなく、『女帝エカテリーナ』『バルザック伝』などの評伝などでも知られている人物だからこそ、この物語が書けたとも言える。いくつもの問いを軽やかに皮肉で包んだ、上質な機知に富む作品である。

2014/12/26 01:36

投稿元:ブクログ

アンリ・トロワイヤというと、つい澁澤龍彦訳の『ふらんす怪談』と言いたくなってしまうが、こちらは『怪談』ではなく、評伝と並ぶ言わば『表』のトロワイヤ。
但し、凝った構成や登場人物のふとした行動など、『ふらんす怪談』収録作に見られる切れ味の鋭さ、人間観察眼の正確さに通じるところが随所に見られる。また、読者は知っている第一部の情報が、第二、第三部で歪められて行く様子は怪談ちっくでもある。『一番怖いのは人間』式の怪談。
さらっと文庫で出たが、もっと話題になってもいいような気がする1冊。

2 件中 1 件~ 2 件を表示