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みんなのレビュー11件

みんなの評価3.7

評価内訳

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11 件中 1 件~ 11 件を表示

紙の本

西欧を相対視させる習俗を持つ島で見つけた本は無限の挿入、改変が積み重ねられた「一冊の本」だった。

2015/01/05 16:07

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:abraxas - この投稿者のレビュー一覧を見る

世界をその中に収めた「一冊の本」という概念は、マラルメに限らず、すべての読書人にとって見果てぬ夢なのだろう。ここにもその夢にとり憑かれた一人の作家がいた。その本を見つけたのは、ある島を訪れた折のこと。北回帰線上の大西洋にあるカーボベルデとカナリア諸島の間に位置している、という。

もちろん架空の島である。だが、本書の半分はその島についての報告書といった体裁をとっている。その奇妙な本が存在するに相応しい島の紹介が、本書の約半分を占めているのだ。島民の奇異とも思える暮らしぶりは、単に珍奇な習俗としてではなく、ヨーロッパ的な論理や思考を相対視させるものとして、『ガリヴァー旅行記』や、レヴィ=ストロースの『悲しき熱帯』を想起させる。

征服者たちがデルタ地帯に開いた碁盤上の「下の町」を見下ろしながら、崖を流れ落ちる水を壁代わりにし、岩棚に造られた、言わば垂直のヴェネツィアである「上の町」に住み、固有名を持たず、家族や夫婦といった固定的な関係を持とうとしない島民の在り方は、ヨーロッパ人に対する、アンチテーゼとして読める。流れる水の壁に映る光や、その音を日がな一日愉しんで倦むことを知らない島民は、西欧の対極に当たるものとして、日本人に喩えられもするが、そこに美的なものを求めない点で異なるとされる。

沁みに名前をつけ、そのアモルファスな形状を愛するところや、腐敗に近いところまで熟成させた食物を好む点など、モノとモノとの間に境界線を引き、分離し、整理する西欧的な論理と相容れない、オリエンタルなユートピアを想像させるが、語り手はそこにユートピアめいたものを見出してはいないし、オリエンタリズム的な歪んだ飾り立ても廃している。あくまでも、非西欧的な習俗を持つ島としての意味しか持たせてはいない。

レポレロと呼ばれる蛇腹式の本は、挿入や削除が自由で、付箋が貼られたり、ポケットが設けられたり、というもの。今なら容易に想像できるようにリンクにリンクが張り重ねられたハイパーテクストのようなものだ。もっとも、島の本はアナログそのもので、水に晒されれば文字は消えてしまう。しかもそれは一向に構わない。また新しい文が書かれ、別の本が成立するだけのことなのだ。

さて、残りの半分は、その本に書かれていた物語の紹介になる。帯の惹句に「千夜一夜物語は完璧にアップデートされた。ボルヘスが冥土で悔しがっている」とあるように、今はプラハで暮らす語り手の記憶に残る物語が入れ子状に披露される。たとえば、仲のよかった二人の王が一人の女を同時に愛したために起きる惨酷な悲劇が、幾重にも折りたたまれた物語の層をつくり、フラクタルな図像やエッシャーの絵を思わせる無限回廊にも似たタピスリーを織り上げてゆく。

語り手は物語の続きを語ることを何度も中断し、別の物語を挿入して脱線を繰り返す。最後には、冒頭だけを提示し、後は読者が自分で続けるように勧める。誰の中にも物語りは秘められている。それを語りださなければ自分について知ることはできない、というのが語り手の持つ強迫観念なのだ。

前半の文化人類学者の紀行文的考察、後半の目くるめく異郷の物語群。どちらを好むかは読者の資質に寄るだろう。ただ、後半の物語、面白さは保証するが、鏡や迷宮のモチーフは重用されるものの、ボルヘスを引き合いに出すほどのものではない。既存の物語の意匠やモチーフを換骨奪胎し、アレンジして見せたまで、というよりも、作り話とは常にそういうものだったではないか。評者などは前半のかつて滞在した島の奇特な風習を淡々と語るその口調にむしろ好感を抱くものである。

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2014/12/06 13:07

投稿元:ブクログ

12/5 読了。
地図には載らないとある島に滞在した民俗学者の手記という体裁をとった、メタフィクションと言っていいのか、「書く」「読む」「想像する」ことに関する小説。
細い水流に四方を囲まれた岩の上に家を建て、ドアの代わりに向こうが透かし見える水のカーテンを使い、空間に満ちる匂いで時間を知る島の人びと。そこでは「モノ」と「イメージ」と「言葉」は繋ぎとめられることなくバラバラになり、定着することがない。島にある唯一の「本」はページ毎に無数のポケットがあり、蛇腹に折りたたまれた紙が入っている。「物語」と「脱線」と「注釈」の間に差異はなく、入れ子のように、あるいは百科事典のように、「本」の世界は膨らんでいく。ポケットは島の人びとによって勝手に足されたり剥がされたりするので、「本」に完成形はない。

チェコ版ネバーエンディングストーリー?そこまで甘い感じでもないけど。
田中優子「江戸の想像力」で、西洋では作品の最終完結性が重要視されるが中国や日本ではその限りではない、「『世界』(近世の芝居用語でストーリーと登場人物の大枠の意)が現実に向かって開いているので、『全体』というものは永遠に出来上がらないのだ」と話されていたのは、まるでこの話について書かれた文章のようだ。

2014/12/13 22:56

投稿元:ブクログ

細密画の一部分を切り取ってクローズアップして詳細を書き込んだ細密画の一部分を切り取ってクローズアップして詳細を書き込んだ細密画の一部分を・・・以下無限。枝葉の無限増殖。
永遠に終わらなくてもいいのに、と思ったよ。

2015/03/27 14:18

投稿元:ブクログ

名前のない島。我々とは大きく違う価値観で暮らす人々。果てしなく書き足され、書き直されてゆく本。マジックリアリズム。

2015/01/05 15:38

投稿元:ブクログ

世界をその中に収めた「一冊の本」という概念は、マラルメに限らず、すべての読書人にとって見果てぬ夢なのだろう。ここにもその夢にとり憑かれた一人の作家がいた。その本を見つけたのは、ある島を訪れた折のこと。その島とは文化人類学者らしい語り手が三年間にわたって逗留し続けた名もない島で、北回帰線上の大西洋にあるカーボベルデとカナリア諸島の間に位置している、という。

もちろん架空の島であることは言うまでもない。だが、本書の半分は、その島についての片肘張らない報告書といった体裁をとっている。その奇妙な本が存在するに相応しい島の存在が、本の約半分の分量を占めているのだ。島の地形から語りだされる島民の奇異とも思える暮らしぶりは、『ガリヴァー旅行記』や、レヴィ=ストロースの『悲しき熱帯』を想起させる。つまり、単に珍奇な習俗としてではなく、ヨーロッパ的な論理や思考を相対視させる力を持って描き出されている。

ヨーロッパから来た征服者たちがデルタ地帯に開いたローマを思わせる碁盤上の「下の町」を見下ろしながら、垂直のヴェネツィアとも呼ぶに相応しい、崖を流れ落ちる水を壁代わりにした岩棚に造られた「上の町」に住み、固有名を持たず、家族や夫婦といった固定的な関係を持とうとしない島民の在り方は、ヨーロッパが代表する現代人に対する、アンチテーゼとして読める。流れる水の壁に映る光や、その音を日がな一日愉しんで倦むことを知らない島民は、西欧の対極に当たるものとして、日本人に喩えられもするが、そこに美的なものを求めない点で異なるとされる。

沁みに名前をつけ、そのアモルファスな形状に意味を見出すところや、腐敗に近いところまで熟成させた食物を愛する点など、モノとモノとの間に境界線を引き、分離し、整理する西欧的な論理と相容れないある意味オリエンタルなユートピアを想像させるが、語り手はそこにユートピアめいたものを見出してはいないし、オリエンタリズム的な歪んだ飾り立ても廃している。あくまでも、非西欧的な習俗を持つ島としての意味しか持たせてはいない。ただ、島民の誰でもなることができる「王」の仕事が一日中海を見ているだけで侮蔑的な存在とされているところなどに、やや風刺や皮肉が感じられる。

その島民が読む本だが、レポレロと呼ばれる蛇腹式の本は、挿入や削除が自由で、付箋が貼られたり、ポケットが設けられたり、という存在様式は、今なら容易に想像できるようにリンクにリンクが張り重ねられたハイパーテクストのようなものだ。もっとも、語り手は、パソコンに向かってキイボードを叩いているらしいが、島の本はアナログそのもので、水に晒されれば文字は消えてしまう。しかもそれは一向に構わない。また新しい文が書かれ、別の本が成立するだけのことなのだ。

さて、残りの半分は、その本に書かれていた物語の紹介になる。帯の惹句に「千夜一夜物語は完璧にアップデートされた。ボルヘスが冥土で悔しがっている」とあるように、まさに入れ子状になった物語が、今はプラハで暮らす語り手の記憶に残るバージョンで披露されるというしかけ。前半の思索的な体裁はどっかへ打っ棄ってしまったかのようなはしゃぎぶり。プラハ生ま��の詩人、哲学者もやはり人の子。こういう想像力の増殖する物語の誘惑には耐えられなかったのだろうな、と苦笑してしまった。

仲のよかった二人の王が一人の女を同時に愛したために起きる惨酷な悲劇が、幾重にも折りたたまれた物語の層をつくり、フラクタルな図像やエッシャーの絵を思わせる無限回廊にも似たタピスリーを織り上げてゆく。水でできた彫刻を作れという、王の無理な命令を承諾した彫刻家が創りあげたのは、ジェル状の水の中に人食い魚が生息する彫刻。題材はダイオウイカに襲われる王の姿。語り手は、物語の続きを語ることを何度も中断し、別の物語を挿入して脱線を繰り返すのは『千夜一夜物語』に準じる。最後には、冒頭だけを提示し、後は読者が自分で続けるように勧めさえする。誰の中にも物語りは秘められている。それを語りださなければ自分について知ることはできない、というのが語り手の持つ強迫観念なのだ。

前半の文化人類学者の紀行文的考察、後半の目くるめく異郷の物語群。どちらを好むかは読者の資質に寄るだろう。後半の物語、面白さは保証するが、鏡や迷宮のモチーフは重用されるものの、ボルヘスを引き合いに出すほどのものではない。既存の物語の意匠やモチーフを換骨奪胎し、アレンジして見せたまで、というよりも、作り話とは常にそういうものだったではないか。評者などは前半のかつて滞在した島の奇特な風習を懐かしがるわけでも、厭わしく思い出すわけでもない淡々と語るその口調にむしろ好感を抱くものである。

2016/11/08 23:44

投稿元:ブクログ

増殖を繰り返すが根源には無への志向を孕んだ本。
自由に書き足し書き換え可能とはつまりwikipediaのことだ。

こういうアイデアは決して新機軸ではなく、むしろ古いくらいだ。
だから少しだけ退屈を感じてしまったのは正直な感想。
しかし読後、他の本になかなか移れず、細部を思い出してしまう。
結局すぐに再読して、細かなストーリーを抜き書きしてしまった。
つまりは魅力的な読書体験となった。

前半、文化人類学的に島民の生活を描いた上で、後半にその本の話に移行するからこそ、幻想味が備わる。
構成の妙。

千夜一夜物語、イタロ・カルヴィーノ、スティーブン・ミルハウザー、ミヒャエル・エンデ、ガルシア=マルケス、レーモン・ルーセル、ソシュール、マラルメ、スウィフト、レヴィ=ストロース、もちろんボルヘス。
他の人の感想を拾うといろいろな先行作家の名前が挙がるが、個人的にはここに、ミケランジェロ・アントニオーニ「欲望」(フリオ・コルタサル「悪魔の涎」)を足しておきたい。

2014/10/09 19:54

投稿元:ブクログ

「もうひとつの街」が良かったので、引き続き購入予定です。。。

河出書房新社のPR(版元ドットコム)
http://www.hanmoto.com/jpokinkan/bd/9784309206653.html

2015/08/02 09:48

投稿元:ブクログ

これは架空の島の滞在記であり、またその島の精神や哲学に対する考察記事でもあり、そして無限に増殖する物語への挑戦でもある。全てが創作であるにも関わらず、世界のどこかにあの島や「本」が存在するのではないか、そう感じるほど作中の世界観は突き詰められていたと思う。
文章は難解で、多分に抽象的。一字一句を目で追って全てを理解しようとすると、情報の海に溺れて読み切るのは困難かもしれない。理解できなくてもいいという気軽さで、雰囲気の波に流されなから読むのが良いと思った。

私がとりわけ面白いと思ったのは、島の「不思議」な生活や風習、価値観。作者は東欧の人で、その彼からみた「不思議」な島を書いたのだと思う。それは強烈なカルチャーショックを描き出そうとしてのことかもしれないし、到底理解できない謎として位置付けられているのかもしれない。そしてこの本を読んだ欧米の人も、同様の「不思議」さを感じたのかもしれない。
けれど私はこの島のあり方に、どこかでアジア的な、日本的な価値観との親和性を感じた。水の流れや沁みの変化に意味を見出したり、外部から来たものを寛容に受け入れているようで、実は全てを自分達風に変容させていたりする点など……。
だからこの島の「不思議」さは、私にとっては手の届かない異次元ではなく、ご近所に存在しているような、共感や憧れすら感じてしまうものだった。

2015/01/06 00:00

投稿元:ブクログ

架空の島を舞台にした幻想小説。
細部の描写を重ねて世界を表現するアプローチは『バベルの図書館』や『薔薇の名前』に通じるところがある。
作中に登場する本を読んでみたい……というか、その本の中に行きたいと思わせる1冊だった。

2014/11/28 20:40

投稿元:ブクログ

垂直の滝に建つ町、匂い時計、名を持たぬ住民、そして無限に増殖する〈本〉…驚異の想像力で語られる虚構の島をめぐる滞在記。Amazon.com/SF・ファンタジー部門1位獲得。

2016/03/13 20:06

投稿元:ブクログ

後半の本の中の物語ももちろん良いけど、前半の泥棒女が語る絵の話もよかった。物語は全て自分に帰ってくる?自分を映す鏡?難解で、読みにくくても、いい文学はあるのだ。

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