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ベルリンに一人死す

ベルリンに一人死す みんなのレビュー

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みんなのレビュー6件

みんなの評価3.8

評価内訳

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6 件中 1 件~ 6 件を表示

2015/03/24 16:17

投稿元:ブクログ

<寡黙な男の小さな抵抗>

重厚な群像劇である。

時は1940年、ナチス支配下のベルリンが舞台である。
オットー・クヴァンゲルは熟練の家具職工長。几帳面に真面目に日々の職務をこなしてきた。堅物で特段の趣味もなく、節約しながら、妻と息子とともに暮らしてきた。
総統への忠誠を誓って生きてきた彼に、ある日、従軍していた息子が戦死したとの知らせが届く。絶望するクヴァンゲル夫妻。そしてオットーは、体制に疑問を抱き、ささやかな抵抗を思いつく。ささやかな、けれども露見したら必ず破滅が待ち受ける抵抗を。
この小さな「レジスタンス」を軸に、ユダヤ人富豪夫人、元判事、ゲシュタポ警部、競馬狂い女好きのちんぴら、ろくでなしの亭主に手を焼く郵便配達人、共産党運動家など、さまざまな人々の戦時下の人生が描き出されていく。

出てくる人々は等身大で、小ずるかったり、欲張りだったり、飲んだくれだったり、保身に走ったり、小心者であったりする。そして多くは、幸福とは言い難い最期を遂げる。
著者のファラダ自身、順調というにはほど遠い人生を送ってきている。アルコールや薬物に溺れ、事件も起こし、精神病院も拘置所も経験している。そして最終的には、薬物中毒を克服しきることができず、本作完成の数ヶ月後、53歳でこの世を去っている。
彼は多くの作家が亡命する中、ナチスに「望ましくない作家」とラベリングされてもドイツに留まった。ナチスドイツを内側から観察し続けたことになる。
彼がつぶさに見てきた社会の暗部が、この物語のぞっとするほどのリアリティの源である。

本作は実在の事件を元にして、ファラダによる換骨奪胎がなされた創作である。フィクションではあるが、著者の経験に基づいた挿話の数々には、当時のベルリンに潜り込んだような息苦しい臨場感がある。
本作のポイントは、主人公が決して「英雄的」な人物ではないことである。インテリでもなければ高邁な思想も抱いていない、「小市民」といってもよい人物が、ささやかではあれ、巨大なものに闘いを挑んだ、そのことの崇高さをこの物語は描いている。
一方で、体制側にいてもレジスタンス側にいても、人は卑劣にもなりうれば、気高くもなりうる、それもまた、本作のポイントであろう。
人を作るのは立場ではなく、結局は個人の資質であり、覚悟であるということか。

600ページ2段組となかなかのボリュームだが、意外に読みやすい。ファラダは「自分は物書きであって格調高い文学作品を書く作家ではない」と言っていたそうだが、本作は本質的には大衆小説なのかもしれないという気もする。デュマや吉川英治と通じるところがありそうである。
地味な筋立てであり、展開も恐怖と暴力と死に彩られて重苦しいが、先へと読ませる吸引力がある。

「ベルリンに一人死す」。原題は「誰もが一人で死んでいく(Jeder stirbt für sich allein)」。
死刑囚は結審後、独房に入る。だから「一人で」死んでいくわけである。「反社会的」とされて処刑された人々は、それぞれが「一人」死んでいったとしても、むろん、その数は一人や二人ではない。数千、数万、数十��、それとももっと多いのだろうか?
あらぬ疑いを掛けられて、無実の罪で死んだものも多かった。いや、そんな人が大半だったのかもしれない。その中で、体制に迎合して罰を逃れるもの、絶望して自死を選ぶものもあったが、なお、胸を張り、処刑台に進むものもあった。
「まっとうな」指導者を持たなかった人々は、自らが「まっとう」であるためには、一人一人立ち上がらねばならなかったのだ。それぞれが小さなよき種として。たとえ、枯れ野で芽吹かぬまま終わろうとも。

震える脚を踏みしめながらそれでもなお、一人立つことができるか。
この物語は読者一人一人に、その覚悟を問うているようでもある。

2015/08/13 07:59

投稿元:ブクログ

一人息子の戦死をきっかけに、労働者夫婦が始めたあまりに小さな抵抗運動。葉書にヒトラーの罪の告発を、労働者へ仕事のサボタージュを呼びかける文章を書きつづり、市内の公共の場所にそれを置き去りにする。
それは誰かの目に留まり、手に取られ、市民の手によって警察に、そしてゲシュタポの元へと届けだされ、そして、その行動は、世界を変えられなかった――。

出版は1946年。著者はナチス政権下で「望ましくない作家」に分類されながらもベルリンを離れず創作活動を続け、狂気と恐怖に支配された市民の全てを見ていた。
そして本書はそこで実際に起きた事件を下敷きに、当時の生々しさを行間いっぱいに満たして書き下ろされたもの。

2015/05/19 11:20

投稿元:ブクログ

分厚い本だけど読み始めたら止まらなくなってしまった。重い物語なのにストーリーの運びは軽快。あとがきを読んで著者は1930年代ドイツの流行作家だったと知って納得。ベストセラー作家の筆致。当時の新鮮な経験からの生々しい描写が戦時ドイツの非人間的に抑圧された社会を描き出す。裏表紙に書かれたドストエフスキーのような人間の本質をえぐるといった内容とは違うように思う。しかし、極端な、でも現実として存在した社会の中で人間がどのように行動できるかをよく描いている。

2015/04/29 10:06

投稿元:ブクログ

大変読み応えのある作品。
あまりの分厚さに読み終わるか…?と思いつつ読み始めましたが、気づけば最後まで読んでしまっていた。
実際にナチス政権下のドイツで起こった事件を元に作られたフィクション。
オットー、エリーゼというハンペル夫妻がモデル。
息子を亡くしたことから、ナチス政権への抵抗を呼びかけるはがきを書いてこっそりと置く、という行為を繰り返すオットー、アンナ・クヴァンゲル夫妻。
夫妻の行為は小さいことだし、それによって市民が立ち上がることもないし、それどころか恐怖に苛まれることになるのだけれど、「まっとうな人間」であり続けるために、続けていくしかなかったと。
いろんな人物が出てくるので前半、混乱してしまい戻って確認して…を繰り返しましたが、どの人物も強烈な個性を持っているので、読み進めるにつれ混乱することはなくなりました。
いかに「まっとうな人間」でありつづけることが難しい時代だったか。
それでも抵抗しようとした人々はいた。
「大きかろうと小さかろうと、嗅ぎつけられた最後、命はない」。
命がけの(本当にその通りになるのだが)クヴァンゲル夫妻の抵抗の記録だった。

2015/09/19 21:09

投稿元:ブクログ

ナチスに反抗して殺された中年夫婦の物語。実際の事件を下敷きにした小説である。楽しい話であるはずはなく、取り寄せたら思いがけず分厚い本で、読むのが憂鬱だったが、エド・マクベインの87分署シリーズを読んでいるような雰囲気で、読み出したら引き込まれた。ドキュメンタリーでは書きにくい当事者たちの心の動きを細かに書けるという点では、小説という技法は正しい選択だと思った。もちろん創作、推測ではあるけれど。当時の生きにくさ、いやらしさが改めて食い込んできた。

主人公の中年夫婦も、巻き添えになる犠牲者たちも、正義の味方として描かれるわけではない。共感できないところも、いやらしいところもある。実際はそういうものなのかもしれない。たぶんレジスタンスにも嫌なやつはいるんだろう。あまり感情移入しなかったのが、思ったより読みやすかった理由の一つなのかもしれない。

いずれにしても、理不尽と暴力がまかり通り、迫害と密告が幅を利かす、こういう世界には死んでも住みたくないと思った。死んでも住みたくなければ、そうなる前に命がけでも戦うしかない。 死んでも住みたくない世界を作るのも、同じ人間だと思うと慄然とする。

戦後、ゲシュタポの連中が報いを受けていればいいな、と思う。ナチスの一員だったと知られると大事になったと聞いているので、それなりのバチはあたったのではないかと思うが。
その一方で、日本の特高の関係者が処罰されたという話は聞いたことがないなと思い出す。出世した話は聞くんだけれど。

2014/10/31 20:30

投稿元:ブクログ

「あべこべの日」のハンス・ファラダ?
それは兎も角、此れは今読むべき本ですね。。。

みすず書房のPR(版元ドットコム)
http://www.hanmoto.com/jpokinkan/bd/9784622077039.html

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