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支配者 下 みんなのレビュー
- C.J.サンソム (著), 越前 敏弥 (訳)
- 税込価格:946円(8pt)
- 出版社:集英社
- 発売日:2014/11/20
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紙の本
モグラと呼ばれた王
2023/01/21 17:45
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投稿者:pinpoko - この投稿者のレビュー一覧を見る
表紙に掲げられた有名なヘンリー8世の肖像画。
綴れ織りのダブレットに細かいスラッシュが入り、中のシャツをいっぱい覗かせており、宝石の縫い付けられたビロードの帽子に凝った細工の金の鎖と、王の権威をこれでもかと見せつけてはいるものの、その顔の表情たるやゲタのように真四角な輪郭に小さな油断ならない目と薄く引き結んだ口元が、なんともいえない酷薄さを醸し出している。王としての理想ははるか遠くに忘れ去り、自らの権力を脅かすものには徹底的に弾圧を加える。この当時の王のすべてがここに表れているのがこわいくらいだ。
近くによるものには何かしらの災いをもたらさずにはおかない邪悪な権力者からはどうにかして離れていたいものだが、そうもいかないのが微妙な立場にいるシャードレイクの辛いところだ。彼以外で一番この巡行で被害を被ったのはおそらくキャサリン王妃だろう。自分の身を守れない人間にはあまりにも恐ろしいのが、こういった権力者に支配されている宮廷だ。彼女の不倫が処刑理由になっているが、本作ではそれよりもっと大きな影響のある別の不倫が隠れたテーマになっている。詳しい内容はぜひ読んでいただきたいところだが、作者あとがきでこのもうひとつの不倫事件は、その当事者の片割れが自ら告白したものだということを知って驚いた。
その告白が事実かどうかは不明だが、まったくあり得ないことではないのが本作の人々を巻き込んだ悲劇の始まりとなっている。だがセシリー・ネヴィルが息子エドワード4世没後にこの告白をした裏には、嫁であるエリザベス・ウッドヴィルの権力掌握を阻止しようとしたという事情も考えられる。
つまるところ王たる資格とは、立証不可能な血脈などではなく、その行いにのみ帰結するものだというのが、作者の言いたかったことだと思う。
シャードレイク、今度こそ不毛な宮廷の権力争いから離れて、一弁護士として市井の人々のために生きてほしいものだ。
この後のシリーズが翻訳されていないようなのが残念だ。
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