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長編ドキュメンタリー「鳥の道を越えて」

長編ドキュメンタリー「鳥の道を越えて」 みんなのレビュー

  • 税込価格:6486pt
  • 出版社:工房ギャレット
  • 取扱開始日:2014/11/20
  • 発送可能日:1~3日

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2015/05/30 00:03

投稿元:ブクログ

『鳥の道を越えて』というドキュメンタリー映画がある。平成26年度文化庁映画賞 文化記録映画優秀賞ほか、複数賞を受賞している。本書はそのパンフレットである。本というか50頁ほどの冊子だが、ISBNが付いており、ムック扱いになるようである。Amazonで購入も可能。
映画を見る機会を得たので、その内容と併せてまとめておきたいと思う。
本書は映画の副読本的なものといってよいのだろうが、映画に描ききれなかった部分を補完する点もあり、白黒とはいえ写真も多いので、独立で読んでも得るところは多いように思う。シナリオも収録されている。

著者(監督)は昭和54年、岐阜県東白川村に生まれている。やはりその地で生まれた祖父(昭和2年生まれ)から、かつては故郷の空が渡り鳥で埋め尽くされたと聞く。鳥たちは山の向こうから「鳥の道」を越えてきたという。季節になると、鳥屋(とや)という小屋が建てられて、「カスミ網猟」と呼ばれる猟が行われ、焼かれた鳥を子供たちが買っておやつにしたこともあったのだという。
しかし、著者が子供の頃、自然豊かな環境ではあったが、そうした渡り鳥はいなかった。
かつて、どのような猟が行われ、それがどうして消えていったのか。「鳥の道」とはどのようなものだったのか。
著者の旅が始まる。

著者は地元の高齢者などに聞き取りを行う。伝統狩猟に関する写真集との出会いもあり、東白川村での猟の様子が徐々にわかってくる。判明した鳥屋の場所を地図上に記していくと、稜線のややくぼんだ地帯に点在していた。鳥たちも峠を越える際は、幾分か低い部分をわたっていたようであった。さらに聞き込みを続けていくと、猟を手伝ったことがある人の話から、ただ網を張るだけではなく、囮や旗など、鳥をおびき寄せるさまざまな工夫がなされていたこともわかっていく。

鳥は飛ぶために体を軽量化させてきた生き物である。そのため、あまり多くの栄養を体にためておくことはできない。陸地を行く際は、移動しながら、あちらの木の実、こちらの木の実とついばむ。鳥に食べられた実の中には、種子がある。鳥が移動するにつれ、排泄物とともに種子も撒布される。そこから芽が吹き、鳥の好む木の実を付ける木が育つ。かくして、鳥の道に沿って、食料も確保される。鳥の道はまた、鳥の小腹を満たすパーキングエリアでもあったのだ。

カスミ網猟とは、鳥の通り道に、目の細かい網を張り巡らせる猟である。ある意味、鳥たちを一網打尽にするものだ。この猟は、日本全体でも実は狭い地方、岐阜を中心に富山・石川・福井といったあたりで主に見られる。著者は聞き取りをするにつれて、福井や石川で猟を行っていたのも、主に岐阜の東濃地方からやってきた猟師であったことを知る。著者の地元の地方である。この地では、少なくとも江戸時代からこうした猟が続いていた、少なくとも鳥屋が存在したことを示す史料が見つかっているという。

カスミ網猟は1947年に禁止されている。
GHQのオースチン生物資源局長が、あまりに多数の鳥が捕られる様子を視察して、種が絶滅するとの強い危惧を抱いたためである。
しかし、カスミ網の密猟は��強く続いた。それは伝統でもあり、あって当たり前の存在でもあった。暴力団の資金源となっていた例もあり、単純に解決するような問題ではなかったのだ。
保護活動と伝統猟とのせめぎ合いは、ときにきな臭い様相を帯びた。摘発しても摘発しても、猟は止まなかった。禁止の後も、実に50年もの間、密猟は続いていたのである。
地元にとっては負の側面もある歴史として、この猟について語りたがらない人もいた。

もう1つ、別の問題がある。
カスミ網猟はほぼ行われなくなったが、鳥の数は減り続けている。
明治期に狩猟の管理が甘くなり、多くの人が鳥猟を行うようになっために、鳥が激減したのも1つの要因だろうが、本当にそれだけなのか。カスミ網だけでない、他の理由はないのか。環境の変化により、「鳥の道」沿いにあったはずの食料が減ってしまったことを理由に挙げる人もいる。

著者は、祖父ら、鳥猟にどちらかといえば楽しい思い出を持つ人からも、保護活動に生涯を捧げてきた人からも、鳥あるいは鳥が運ぶ植物の研究者からも、現在鳥猟を行っている人からも、等しく、無垢な好奇心を持って話を聞いている。多くの人から突っ込んだ話が聞けたのは、著者の人柄によるところが大きいだろうと思わせる。
ドキュメンタリー映画の強さは、生の人間が自らの言葉で語る存在感である。必ずしも流暢でなく、必ずしも理路整然としていなくても、自らの経験を語る人々の言葉には強い説得力がある。

鳥の道を越えたその先には何が見えるのだろう?
消えてしまった鳥の群れだろうか?
かつての日本の山里の姿だろうか?
鳥獣狩猟の細かな技や工夫だろうか?
環境と生態系の関わりだろうか?
そして過去を見つめることで浮かび上がってくる「未来」の選択肢だろうか?

戦中戦後には、鳥の群れが通ると、夥しい羽根がかすめるために、峠の熊笹が枯れたという。
その群れはどこへ行ったのか?
鳥の道を越えた、山のあなたの空遠く。
思いを馳せるとさまざまなものが朧に浮かび上がってくるようでもある。


*映画のHPに上映予定も掲載されています。あまり大きい会場では掛からないようですが、お近くで上映がある方、機会があったらぜひどうぞ。

*作家・塩野米松(『棟梁』などの聞き書きで知られます)の巻頭言。いささか辛口ですが、ずんときます。

*島崎藤村の『夜明け前』には、加子母峠で捕れた鶫(つぐみ)を食べる場面があるようです。まさにこの映画の地方ですね。

*さまざまな網猟の歴史なんていうのも追ってみるとおもしろそうです。

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