紙の本
70年を隔てた重み
2015/02/19 11:45
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投稿者:pandak - この投稿者のレビュー一覧を見る
戦争とそのあとにくる歴史の応酬が何とも居心地の悪い思いをさせる。誰もが総力戦の時代から逃れられず、それだから余計に戦争は短い間に恐ろしいまでに幼い記憶に刻み込まれる。そして今となっては身近なおとなたちの選択を批判できない。免罪の構造と人はいうが、むしろこうした営為を重ねてきたひとのみの持つ切なさ、苦しさを描き切ったところに本書の価値がある。
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壮絶。
国民レベルでの戦争の凄惨さを思い知らされる。
安易な反中感情は控えなければいけない。
生きようとする気持ちは持ち続けないと。
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★2015年4月7日読了『祖国の選択 あの戦争の果て、日本と中国の狭間で』城戸久枝著 評価B+
日中戦争によって引き起こされた中国残留孤児の体験とその後をつづる作品。この著者は、『あの戦争から遠く離れて』で2008年に大宅壮一ノンフィクション賞を受賞している。
この作品も同様に中国に残された残留孤児がどのような過酷で悲惨な体験をして、どのような思いでかの地を生き抜いたのか、その時の日本への思いはどうだったのか、また、夢かなって日本へ戻ってどのような思いで日々を過ごして来たのかを丹念に取材により描いている。
想像を絶する幼い頃の体験をトラウマのように抱えながら、それでも生き抜いてきた孤児達。彼らに対する故国日本の人々のあまりに冷たい仕打ち、逆に予想外に温かく孤児を育ててくれた例もあった中国人の育ての親。それでも帰りたかった祖国日本。平和な時代、何の生存や食べ物の心配もなく育った我々には想像も出来ない世界がここには描かれていた。
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「あの戦争から遠く離れて」の事実上の続編。
城戸さんの父、幹さんが引き揚げ中に親とはぐれ、残留孤児となり、養父母に育てられ、独力で帰国する様子。そしてそれを調べ上げていくというのが、「あの戦争~」の構成だった。今回は、さらに同じような体験をした人たちへと取材範囲を広げていく。そこには結婚と出産、子育てという著者の変化も交えてある。
二作を通して感じるのは、彼女の文章ってミニマムミュージックのようだな、ということ。同じ旋律・リズムを繰り返しつつも、少しずつ差異が生じていく。そこにミニマムミュージックの音楽としての面白みというか醍醐味がある。城戸さんの場合、敗戦・満州からの引き揚げ・残留孤児・帰国後の苦境といったテーマが話し手を変えて、何度も何度も現れる。読者はそうしたテーマを読み進めていくうちに引き込まれ、理解を深めていく。読んでいて何とも言えない迫力があり、思わず引き込まれた。
惜しむらくは各章の締めが単調で紋切り型ぽかったということ。そのあたりは編集者と相談して、少しずつ表現を変えたほうがよかった。
満州は満州でやってもらうとして、城戸さんにはそろそろ別のテーマにも取り組んでもらいたいところ。
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本としてのまとまりは欠けるかもしれないが、戦争の終わった後に中国に残されてしまった人、残ってしまった人のだいたいにおいて凄まじい人生の分かれ目を幾つかのケースについて描いている。共産党の八路軍が日本人の医者や看護婦などを使っていたことが個人的には驚きだった。
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自分の知らない戦後がこんなにあったなんて。辛い過去を語りたくない人たちもたくさんいると思うけど、著者の取材力はすごいな。