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2016/09/23 21:26

投稿元:ブクログ

 過去の愛読愛蔵版全集、谷崎松子『倚松庵の夢』『湘竹居追想』、丸谷才一のエッセイ「批評家としての谷崎松子」等で部分的に発表されていたものと合わせ、計351通の書簡を収録(うち谷崎書簡243=未発表のもの180、松子95、重子13)。全体を5つのブロックに区分、千葉俊二氏による背景の解説が付されている。
 まずはこれだけの規模の書簡(多くは「持たせ文」とのことだが)が残っていたこと自体が驚き。その前提のうえで書くのだが、この書簡集は、千葉氏が惜しんでいるように、いわゆる「往復書簡」にはなっていない。あるブロックは谷崎から松子宛ての書簡が集中的に存在し、別のブロックでは、松子・重子から谷崎宛の書簡のみが並んでいる。それがあまりにも〈絶妙な抜け方〉をしているのだ。これはどんなメッセージへの応答なのか、谷崎が/松子・重子がどんな怒りや悲しみや悦びの感情を伝えたうえでの反応なのか――。まさに、中期以降の谷崎テクストがそうであったように、あらかじめ〈仕組まれた空白〉として、読者の想像力を誘い込んでいるような気さえする。
 1944年末に日本空襲が本格化したのち、敗戦後までの書簡がまったく脱落しているというのも気に掛かる。

 いずれにしても、新たに発見された創作ノート「松の木影」とのかかわりが問題になるだろう。いわゆる古典主義時代、谷崎は松子を「憧れの存在」として遠ざけながら、図々しくにじり寄る所作をくりかえす。そして、その「演技」を重子にも共有させようとする。この関係性の記憶がどのように変化していったのか、また、谷崎にとってのこうした「成功体験」が、その後どのように反復され、相手との関係がどのように変化していったか、という点にも想像をたくましくさせられる。
 自分ではここから何かを発想しようとは思わないけれど、予想外に面白い1冊だった。

2015/10/18 12:47

投稿元:ブクログ

恋ふ人をみぬめのうらにすむ海人のしほたれてのみくらす頃かな
 谷崎潤一郎

 1932(昭和7)年8月、谷崎潤一郎から、あこがれの女性根津松子に送った書簡の中の歌である。

「みぬめ(敏馬)のうら(浦)」は「万葉集」にも登場する地名で、神戸市灘区近くの海浜のこと。ここでは、恋い慕う人を見ることもできず、という掛詞【かけことば】として使われている。自分は、その海浜に住む「海人」のように、潮水に濡れ、会えない切なさで涙に濡れて暮している日々ですよ、という歌意。古風ながら、知的な香りのただよう歌でもある。

 松子は、大阪で美人姉妹と名高かった森田家四姉妹の次女。当時は、大阪船場の豪商根津清太郎の妻であり、夫妻ともに芸術を愛し、関西ではパトロン的存在でもあったという。

 他方、谷崎は、最初の妻千代を佐藤春夫に「譲渡」するという、有名な「細君譲渡事件」を経て、20歳以上も年下の丁未子【とみこ】と再婚したころであった。

 この度、千葉俊二編で刊行された「谷崎潤一郎の恋文」は、谷崎が松子と出会った27年から63年までの書簡が収録されている。戦災をはさんだ期間でもあり、往復書簡として双方きちんと残されているわけではないが、サブタイトルに「松子・重子姉妹との書簡集」とあるように、松子の妹重子と谷崎との書簡も併せて収録されているところが興味深い。

 姉妹は、谷崎の代表的長編「細雪」などのモデル。小説を読み、書簡も併せて読み…さまざまな発見の可能性に満ちた書だ。

(2015年10月18日掲載)

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